IAAの抽出は, Weilerらの方法36)を一部改変して行なった。収穫した試料約 100mgを液体窒素中で粉砕し,80%メタノールを加えて室温で12〜16時間静 置した。遠心分離後,上清を新しい容器に移し,残渣に80%メタノールを約1 ml加えて超音波処理を行なった。遠心分離後,上清を合わせ,窒素ガスで抽出 溶媒を濃縮し,凍結乾燥機にて乾固した。メタノール200μ1に溶解し,ジアゾ メタンを含むジエチルエーテルを加えて試料中のIAAをメチル化した。窒素ガ スにて溶媒を濃縮,乾固したものを0」MTris−HCIバッファー(pH 7.5)lml に溶解し,ELISA用サンプルとした。
(2)trans−Zeatin riboside(t−ZR)およびisopentenyladenosine(IPA)
サイトカイニンの抽出は,Dobrevらの方法37)を一部改変して行なった。収穫 した試料約100mgを液体窒素中で粉砕し,メタノールー水一ギ酸(15:4:1)
を加えて一30°Cで12〜16時間静置した。遠心分離後,上清全量をSep−Pak†Cl8 カートリッジ(Waters社)でろ過した。ろ液を窒素ガスで濃縮後, l Mギ酸1ml に溶解し,Oasis MCXカートリッジ(Waters社)にアプライした。 l Mギ酸1ml およびメタノール1mlで洗浄後,1.25%アンモニア水でサイトカイニンヌクレ オチドを溶出した。続いてt−ZRおよびIPAを含む1.25%アンモニアin 60%メ タノール溶出液約1.5mlを回収し,窒素ガスで濃縮,乾固した。これをTBSバ
ッファー(pH 7.5)1mlに溶解し, ELISA用サンプルとした。
第四項 ELISA法による植物ホルモンの定量
植物ホルモンの定量は,ELISA法により行なった。 IAAにはPhytodetek⑱ IAA
Test Kit,サイトカイニンにはPhytodetek⑭ t−ZR Test KitおよびIPA Test Kitを用
いた。各キットのモノクローナル抗体の交さ反応性をTabie・3〜5に示す。Table 3
IAAモノ
クローナル抗体の交さ反応性38)Compound Cross・reaCtrivity(%) Compound Cross−reactrivity(%)
lndole−3 asetic acid
Indole−3・asetic acid(non−methylated)
Indole−3−asetone
【ndole−3・propi[》nic acid
Indole−3 butyric acid lndole−3ρacetealdehyde
㎏dole−3 acetoaldehyde(non−methylated)
lndole_3●ethanol
㎞dole−3−glyoxylic acid Indole−3句acetonitriie Indole−3−pyruvic acid Indole−3−lactic acid
Indole−3−acylic acid
lndole^3−aldehyde(non・metbylated)
㎞dole−3−acetamide Indole−3−a㏄tylglycine
㎜・Ω防B⁝㎝⁝㎝−㎜肪∬Ω−の tndole−3−acetylalanine lndole−3−acethylphenylalanine lndole−3−acethyl, Dレaspaltic acid
lndole−3・acethyl−myo−inositol−ester(non.methylated)
5−Hydroxindole−3−acetic acid l−Naphthylacetic acid 2−Naphthylacetic acid 2.3−Dichlorophenoxyacetic ac{d
:1,4−【)iehloTophenoxyacetie acid
3、5・Dichlorophenoxyacetic acid Phenylacetic acid
lmidazoleacetic acid Ur㏄anic acid L・Tryptophan D」Tryptophan
1.5
0.6 0.5 0.2 0.02
0、1
0.03 0.OI
o.Ol Iess thaii O.0|
0.0|
0.Ol O,05
0.04 0、1
PhytodetekOP IAA rest Kit lnstructions.▲こり
Table 4 t−ZRモノ
クu一ナル抗体の交さ反応性39}
Compound Cr()ss−reactrivity(%) Compound Cross−reactrivity(%)
かαη∫−Zeatin riboside
Dihydrozeatin Dihydrozeatin riboside cJ∫.Zeatin ribosi也 c輌s−Z泌atln
rans●Zea白n
Zeatin riboside・51・monophosphate Dihydrozeatin riboside−0−glucoside Dihydrozeatin−0−gluooside Zeatin−0・gluooside Zeatin riboside,0.glu◎oside Isopentenyl adenosine Isopentenyl adenine 6−FurfUrylaminopurine
伽臼ロu柵咀⁝Ω︒8肪︒9㎜
6−n−Hexylaminopurine6−Benzylarninopurine−9−glucoside 6−Benzylaminopurine 7−glucoside 6−Benzylaminopurine 3−glu◎oside 6・Amino−3 dimethylallylpurine Adenosine
Ad㎝ine Guanine
Guanosine−5㌧triphosphate Cytosine
Cytidine
Inosine−5 −triphosphate 6−Piperidino−1−purine
0.2
0,7
1ess than O.01 0.06 0.7
1ess than O,Ol less than O.Ol less than O.01 1ess than O.Ol less than O.01 0 0.Ol less than O.Ol
PhytOdetekac −ZR Test Kit lnstructionsより
Table 5
IPAモノ
クローナル抗体の交さ反応性40)Compound Cross−reactrivity(%) Compound Cross−reaCtrivity (%)
lsopentenyladenosine D口1y(irozeatin
Dihydmzeatm nboside ci.s−Zeatln c ぶ一Zeatin nb◎side
力ans−Zeatin
rans−Zeann riboslde
iratts−Zea加ribOside−5 ・monopbosphate Isopentenyl adenine
DihydτozeatirvO−91ucoside Dihydrozeatjn riboside・θ一glucoside Zeatin−()−glucoside
Zeatin nb◇side^0−glucoside 6⇒Furfutylarniopurine 6一η吟Hexylaminopurine 6−Benzylaminopu日rine−9−9Iu◎oside 6−Benz)tlaminopし1rine.7 gluooside
6−Benzylaminopurine←3−91ucoside 67Amino−3−di tethylallylpurine
100 0.5 0.7 0,01 0.Ol O.3
04 0 53.1 0 0 0 0 0
1ess⑰劔0.Ol O.08 0 0 0.2
Adenme Adenosine Guanine
Guanosine−5 −tnphosphate CytOSine
Cytidine
lnOSine−5㌧trlphosphate
GPipendino−1−purtne
4・(2−Ethylhexyamno)−2−methylpyrrolo
(2、3一力・pyrimidine
4−lsobutylamin《>2・me血ylpyπolo
(2、3・カーpyrimidine
4−Allylammo−2−methylpyπolo
(2,3一ば)−pyrirnidine
十(1」−dimethyト3−hydroxy・propylamlno卜pyrimldine 2・methylpyrrolo(2,3・∂トpyrimidine
十(3−Hydroxpropylamino) 2・methylpyrrolo
(2、3・力・pyhm▲dine
000000
0.02
less than O.OI
0
0
0
0
0
PhytOdetek IPA Test Kit InstTuctions.#り
第二節 結果および考察
第一項 ELISA法によるIAAの分析
節間切片における不定芽形成過程のIAAレベルの変化を,切片の頂芽側およ び基部側に分け,培養o日目から49日目まで経時的に調査した(Fig.17)。
876543210
(.モ壱£bo§這§5盲gg︒乏一
0 7 10 14 21 28 49 (days)
Fig.17 不定芽形成過程における節間切片中のIAAの含量と分布
IAAは,不定芽誘導0および7日目では,検出限界以下の値であった。不定 芽の形成が確認され始める誘導10日目から定量可能な量で検出され始め,21 日目に最大値を示した。その後,28日目ではIAA含量は低下しておりその3 週間後の49日目でも同等の値を示したことから,不定芽がある程度大きく生育 すると,IAAの生産が制御されている可能性が示された。
また,節間切片の基部側と比較して,頂芽側でIAAが多く検出された。これ は,節間切片に形成された不定芽を切除せずに節間切片と一緒に収穫および分 析を行なったため,不定芽にて生産されたIAA量が頂芽側の切片のIAA含量
に含まれているためと考えられた。しかし,不定芽誘導49日目の節間切片と形 成された不定芽を分割してIAAの分析を行なった結果,不定芽のIAA含量は
極微量(検出限界以下)であり,一方,節間切片では頂芽側にIAA分布が片寄 っていた。また,植物体の部位別のIAA濃度がどのようになっているかを調査 するため,葉を切除した培養20週目のトコンシュートを頂芽,茎および根に分
けて収穫し,それぞれIAAの分析を行なった。その結果, IAAは根に多く分布 しており,頂芽のIAA含量は微量で,茎はその中間の値を示した。以上の結果 より,組織の齢と状態によってIAAの移動速度および蓄積量が異なることが推 察された(Fig.18)。植物体においては,下方に根というIAAの輸送先が存在
しており(組織の状態の違い),頂芽で生産されたIAAは根に移動する。節間 切片および形成された不定芽では,不定芽(若い組織)の頂芽で生産されたIAA は直ちに基部側(節間切片)に向かって移動するが,節間切片には根というIAA の輸送先が存在せず,また,不定芽よりも古い組織内でのIAAの移動は若い組 織内での移動速度より遅いのではないかと考えられた。
基部側:
若い頂芽側
馴 ぬ
頂芽側 IAA移動
Fig.18推定されるIAA移動の模式図
オーキシンの極性移動に関しては,トコン不定根切片についての報告7)があ
る。オーキシン極性移動阻害剤(2,5,5−triiodobenzoic acid;TIBA)を添加した培
地にて培養した不定根切片からの不定芽誘導を行なった結果,不定芽形成が著 しく抑制された。TIBAにより切片に蓄積されたIAAが不定芽形成を阻害して いると考えられ,トコン不定根切片からの不定芽形成において,内生オーキシ ンの極性移動は不可欠であると述べている7)。今後,節間切片においても Yoshimatsuらが行なったTIBAの実験を行なうことにより,オーキシンの極性 移動と不定芽形成の関係を明らかにすることができるであろう。
第二項 ELISA法によるtrans−zeatin ribosideおよびisopentenyladenosineの分析
サイトカイニンには,シュートの形成を促進する作用があることが知られて おり41),節間切片からの不定芽形成において,サイトカイニンがどのように関 係しているのかを明らかにするため,その濃度レベルと変化を調査した。Fig.19に,不定芽形成過程の節間切片および形成された不定芽のt−ZR含量 をを経時的に分析した結果を示す。IAAは,不定芽誘導0および7日目では検 出限界以下であったのに対し,t−ZRは,0日目から微量ではあるが定量可能な 値で検出された。7日目には,0.1pmol/mgという微量であるが,急激に増加し ていた。このとき,節間切片の表面は,ドーム状の小さな芽が形成され始めて いる状態であった。また,t−ZRは,基部側よりも頂芽側で多く検出された。
t−ZRは,7日目に約0.l Plnol/mgまで急激に増加した後は,多少の増減はあ るが,49日目までほぼ一定の値を保っていた。
6
}0.4 ・壱
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竃。.31 ξ 蹴・aL
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ξ
0 7 10
目
14
■目目
21 28 49 (days)
Fig.19 不定芽形成過程における節間切片中のt−ZRの含量と分布
IPAの含量についても,同様に調査した。 t−ZRとは異なり,IPA含量には大 きな変動があり,不定芽誘導14日目に約0.35pmo1/mgの最大値を示した(Fig.
20)。しかし,7日目に急激に増加していたこと,頂芽側で多く検出されたこと はt−ZRと一致しており,これらのことが不定芽形成に重要であることが推察さ
れた。
また,本実験では,サイトカイニンはIAAの1/20程度の量しか検出されず,
組織内において,ごく微量のサイトカイニンで劇的な変化が起きていることが
考えられた。
≦o.4
傷
慧α3き
ξo.2 ξ
§°
≦ o
一
臼Apical
■Basal
■o
7 10 14 21 28 49 (days)
Fig.20 不定芽形成過程における節間切片中のIPAの含量と分布
第三節 小括
不定芽形成において,誘導7日目にサイトカイニン含量が急激に増加し,こ れが不定芽形成に重要な役割を果たしていることが推察された。形成された不 定芽の茎頂部にて生産されたIAAは,直ちに基部側へ輸送され,節間切片の頂 芽側にIAAが蓄積することが考えられた。
トコンは,植物ホルモン無添加で不定芽を形成するが,頂芽優勢など植物ホ ルモンが関与する現象も認められた。これらの現象に対抗する化学処理や物理 的刺激を施すことにより,切片全体に不定芽が形成され,全ての芽を伸長させ
ることができれば,さらに増殖効率が上昇すると考えられる。