• 検索結果がありません。

分であるのに対し,分析試料中のCPおよびEMの保持時間は,それぞれ7分 および10分であり,標準品と一致していない。

 本章では,これまでの催吐アルカロイド分析条件を再検討し,ピーク形状が 良好かつCPおよびEMの保持時間が標準品と試料とで差の小さい,トコン中 の催吐アルカロイドの新規HPLC条件を確立した。さらに,その条件を用いて 節間切片に形成された小さな不定芽のアルカロイド分析を行ない,微量分析の

可能性を検討した。

Table 6 根抽出試料と標準品におけるCPおよびEMの保持時間の違い

Retention time(min)

Standard

Extract Difference(sec)*

Yoshimatsu   CP   10.79±0.004

&Shimomura1) EM  l5.16±0.006

The Japanese   CP   lO.26±0.011

Phamlacopoeia2)EM  14.03±0.009

ll.00±0.022    12.6±0.027 15.60±0.025    26.1±0.030

10.39±0.012     7.5±0.003 14.31±0.006    16.7±0.003

*Di ffe rence(sec)は,標準品および抽出試料におけるCPおよびEMの 保持時間の差を示す。

1)Yoshimatsu and Shimomura, Phytochemical Analysis(1993)

2)The Japanese Pharmacopoeia XV(2005)

第一節 材料および方法 第一項 材料

 既報10)を一部改変し,トコンの培養不定根からアルカロイドを抽出した。凍 結乾燥した根を乳鉢で粉砕し,約50mgの粉末試料にlmlの10%アンモニア 水を加え,よく撹拝した。さらに30mlのジエチルエーテルを加えて,5分間 抽出し,抽出液全量を綿栓ろ過した。ろ液は1本のサンプルびんに回収し,窒 素ガスで抽出溶媒を濃縮後,真空ポンプを用いて更に減圧乾固した。これを1ml のメタノールに溶解し,100plずつに分割したものを個々に窒素ガスで濃縮,

乾固し,分析まで一20°Cで保存した。

 Emetine hydrochlorideは,Sigma社より購入した。Cephaeline hydrochlorideは,

Teshimaらの方法30)に従い,トコンの根から単離および精製を行なった。

第二項 分取TLCを用いて抽出したアルカロイドの精製

 試料のHPLC分析におけるCPおよびEMの保持時間が標準品よりも遅れる

要因を明らかにするため,約2gの培養根を,第三章 第一節 第一項で述べ た方法に従って抽出した。適量のメタノールに溶解した不定根の抽出試料を,

シリカゲルプレート60F254(MERCK)にスポットし,クロロホルムーメタノ ールー10%アンモニア水(100:10:1)で展開した。アルカロイドは,UVラン プで検出し,UVランプ下で可視できるバンドを個別に回収した。回収したシ

リカゲル粉末はそれぞれクロロホルムーメタノール(2:1)で抽出し,窒素ガ スで濃縮,乾固し,使用するまで一20°Cで保存した。

第三項 HPLC分析条件

 試料はメタノールに溶解し,5plをHPLC分析に用いた。催吐アルカロイド

の分析には,以下のHPLCカラム, TSKgel ODS−120A(250 mm x 4.6 mm i.d.,東

ソー),CAPCELL PAK C18MGII, ACRおよびUGI20(250 mm×4.6 mm i.d.,資

生堂)を使用した。流速は,CPおよびEMの保持時間およびピーク形状を考慮

し,カラム毎に0.8〜1.2m1/minの範囲で設定した。カラム温度は60°Cとし,

検出は285nm(UV検出器)で行なった。各試料は3回分析し,各化合物の保 持時間およびピークの半値幅は平均値を示した。本実験のデータは,Multi

Station LC−8020(東ソー)により算出された。

 Yoshimatsuらが報告した条件17)は,カラム:TSKgel ODS−120A,移動層:10

mM sodium l−heptanesulfbnate(2%リン酸水溶液でpH 4.0に調整)一アセトニ

トリル(67:33),流速:1.O ml/min,カラム温度:40°Cで再現した。

 日本薬局方20)に記載されている条件は,カラム:TSKge10DS−120A,移動層:

20 mM sodium 1−heptanesulfonate(2%酢酸でpH 4.0に調整)一メタノール(50:50),

流速:1.3ml/min,カラム温度:60°Cで再現した。

第二節 結果および方法

第一項 分取TLCにより分画した抽出物のHPLC分析

 トコンの根の抽出試料を分析した際に生じる,CPおよびEMの保持時間の標 準品との差を引き起こす要因は,抽出試料中に含まれている爽雑物であると考

えられる。そこで,根の抽出試料を分取TLCにより分画した。分取TLCで得

られたcPおよびEMに相当するバンド(Fig.21, Fr. 4およびFr. 2)を回収し,

それぞれの抽出液をYoshimatsuらの分析条件17)を用いてHPLC分析した(Table 7)。標準品におけるCPおよびEMの保持時間はそれぞれ10.722分および15.099 分であったが,分画していない不定根抽出エキスを分析すると,CPIO.955分,

EMは15.388分に溶出され,標準品との保持時間の差はCPで約14秒, EMで 約17秒あった。しかし,この抽出エキスにCPおよびEMの標準品を混合して 分析を行なうと,標準品との保持時間の差は3秒以下と小さな値になった。一 方,分取TLCによって得られたCP画分およびEM画分の保持時間は,標準品

とほぼ一致していたが,これらに他の画分(Fig.21, Frs.1,3および5)の抽 出液を混合してHPLC分析を行なうと,CPおよびEMの保持時間は標準品より も遅くなった(Table 7)。以上の結果から,分析サンプル中のCPまたはEM含 量が低くなると,その化合物の標準品との保持時間の差が出るということがわ かった。保持時間がずれると,それに伴ってピーク面積が増減し,同じ化合物 量でも検量線のピーク面積に一致しなくなる。すると正確な定量ができず,特 に微量分析には大きく影響すると考えられる。よって,抽出試料と標準品との 間で起こるCPおよびEMの保持時間の違いを解消するのは非常に重要であり,

これまでのHPLC分析条件の再検討を行なった。

廿ont

Fr.1:un㎞own alkaloids Fr.2:emetine

Fr.3:protoemetine Fr.4:cephaeline

,         l

,         ,

i   iFr.5:rest part ofFrs.1−4

      t

−一 @    (others)

0「191n

    Fig. 21 トコンの根の抽出エキスの分取TLC模式図

プレート:シリカゲルアルミプレート60F254,展開溶媒:クロロホル ムーメタノールー10%アンモニア水(100:10:1),検出:UVランプ

(254nm)。

Table 7 CPおよびEMの標準品および分取TLC画分抽出液のHPLC保持時間

Sample

Cephaeline       Emetine

Rt(min)  Difference(sec)  Rt(min) Difference(sec)

Standards       10.722

Total extract      lO.955 Total extract+statndards       lO.830

④cephaeline        lO.753

②emetine       一

④CP+②EM+③protoemetine lO.894

④CP+②EM+①unknown  10.905

④CP+②EM+⑤others   lO.925

       15.099

13.98        |5.388       17,34 4.86        15.217       7.08

1.86        −      一   一        15.045       −3.24

10.32       15.318     13.14 10.98        15.373       16.44 12.18        15.395       17.76

HPLC分析は, Yoshimatsuらの条件17)を用いて行なった。

第二項 イオンペアHPLC分析条件の検討

(1)有機溶媒

 移動層の有機溶媒には,Yoshimatsuらの方法17)ではアセトニトリルが,日本 薬局方20)ではメタノールが用いられている。これらの条件で標準品および不定 根抽出エキスの分析を行ない,CPおよびEMのピークのテーリングファクター

(As)を算出した。 Yoshimatsuらの条件17)では, CPでAs=0.25であったが,

日本薬局方に記載されている条件20)では,CPはAs=0.33とAs=1に近づき,

Yoshimatsuらの条件17)で分析した場合より対称なピークとなっていた(Fig. 22)。

そこで,有機溶媒をメタノールと同じアルコール系のエタノV−一一・・ルに換えて分析

を行った結果,EMのAsがo.38となり,よりピークが対称形になった(Fig.22)。

以上の結果から,有機溶媒にエタノールを用い,他の条件の検討を行なった。

100.

50.

一一一『一一『一 u

10. OO

AA・==O.27

50.

t_一一..._  蹴□.」

B)MeOH(The Japanese Phamacopoeia)

      CP

10.00

一 一一 P

  cLli    l    t    !

 ■i20.00

|   100. 但v

1 C)EtOH       CP

ch.1

EM

i  5α00「

堰o

      As=0.33     As=0.38

x

Fig.22

10.00  ,画

20.00 ・

有機溶媒が異なる条件におけるCPおよびEM標準品のHPLCクロマトグラム

および各ピークのテーリングファクター(As)

A:Yoshimatsu and Shimomura, Phytochemical Analysis(1993)

B:The Japanese Pharmacopoeia XV(2005)

C:カラム;TSKgel ODS−120A(東ソー),移動相;20 mM sodium

 1−heptanesulfonate(2%酢酸でpH 4.0に調整)一エタノール(65:35),

 流速:1.O ml/min,カラム温度;60°C,検出波長;285 nm

(2)カウンターイオン溶液のpH

 カウンターイオン溶液のpHを調整する試薬として, Yoshimatsuら17)は2%

リン酸水溶液を使用し,日本薬局方20)では酢酸が採用されている。リン酸を用 いた方が酢酸を用いた場合よりも化合物の分離が良好であり,また,ピークの 半値幅が小さいことから,ピークがシャープであることが判った(Fig、 23)。こ の結果より,以後の実験ではカウンターイオン溶液のpH調整に2%リン酸水

溶液を使用した。

5050505050 44332211

︵8・・三ヨ毛=

●●

●EM

●CP

   standard      extract      standard      extract

      2%CH3COOH       2%H3PO4

 Fig.23 cPおよびEMピークの半値幅に対するpH調整試薬の影響

移動層:10mM sodium 1−heptanesulfonate(pH 4.0)一アセトニトリル

(67133),流速:1.O ml/min,カラム温度:40°C,検出波長:285 nm。

 20mM sodium 1−heptanesulfbnate水溶液のpHを2%リン酸水溶液で3.0,3.5 および4.0に調整し,ピークの半値幅に対する影響を調査した。

 pH 3.5において,抽出試料におけるCPおよびEMピークの半値幅は標準品 におけるピークの半値幅とほぼ同等で,安定した分析を行なうことができると 判明した(Fig.24)。以後の実験において,カウンターイオン溶液のpHは3.5

とした。

関連したドキュメント