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第二章 Halorubrum sp.ejinoor のロドプシン類タンパク質

2.6 菌体膜の光反応

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2.6.2 結果

菌体膜分離と吸収スぺクトル

培養した He と Hs を遠心により落として集めるとそれぞれ赤色と紫色をして いた (図 2.13)。内モンゴル塩湖の写真をみると赤色の塩湖であることを分かる。

おそらく好塩菌の色から湖が赤になったと考えられた。

Hs の紫膜(PM)と赤膜はショ糖密度勾配遠心よりきれいに分離された(図 2.14 右)。しかし、He の膜は Hs の膜のようにきれいに分離できなかった (図 2.14 左)。分離できなかった膜を Cell membrane (HeCM)と名付けた。それらの吸収ス ペクトルを測定するとHsPM では 570 nm に極大吸収波長を持ち、これが BR の吸 収を示している (図 2.15)。HeBM の吸収スペクトルにはカロテノイドのピー クが見られた。つまり、HeCM には大量のカロテノイドが含まれていることが分 かる(図 2.15)。Hs の菌体膜では PM はバッチ状の特異的な構造を持ち、BR 二 次元結晶構造を取っているため、ショ糖密度勾配遠心より紫膜と赤膜を分離す

2.13 : 菌体色の比較。左図はHalorubrum sp. ejinoor 菌色である。右図は

Halobacterium salinarum 菌色である。

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ることができる[2, 47, 48]。しかし、He の膜をショ糖密度勾配遠心より分離で きなかったため、Hs の紫膜のように特異的な構造を取っていないと考えられた。

図 2.14 : Halorubrum sp. ejinoor とHalobacterium salinarumのショド密 度勾配遠心より分離。左図は Halorubrum sp. ejinoor 菌体膜の分離を示し ている。その膜を Cell membrane (CM)と名付けた。右図は Halobacterium salinarum 菌体膜の分離を示している。分離した膜をそれぞれ Red membrane (RM) と Purple membrane (PM)と名付けた。

図 2.15 : CM と PM の吸収スぺクトル。試料を 50 mM HEPES, pH 7.0 で調整 して測定を行った。

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菌体膜光反応

BR と HR が光を受容するとレチナールが all-trans から 13-cis に異性化して、

いくつかの中間体を経て元に戻る光化学反応サイクルを行う。BR の場合、K, L, M, N, O 中間体を持ち、最後に元の BR に戻る[49, 50]。HR の場合は L1, L2, N, O, HR` 中間体を経て元の HR に戻る[9, 51]。光反応中間体はそれぞれの特徴的 な吸収極大をもっている (図 1.6)。

特に、重要なのは M 中間体がただ BR の光サイクルに存在していて、HR にはな いことである。HsPM のレーザー誘起吸光度変化から BR を示す波長 570 nm の吸 光度が減るのに対応して、M 中間体を示す 410 nm の吸光度が増加している。つ まり、BR の光反応が始まって、BR から M 中間体が生成していることが分かる。

そのあと、M 中間体が減ると共に、O 中間体を示す 670 nm の吸光度が増加して いる。同時に BR を示す 570 nm の吸光度も増加している。つまり、M が、次の O 中間体に変化していることがわかる。最後に M と O 中間体が完全になくなると、

BR も完全に元に戻った (図 2.16c)。このようにHeCM の結果から M 中間体を示 す 410 nm の吸光度の変化が BR の M 中間体と同様に出ていることが分かる。つ まり、この M 中間体の変化はHeAR 由来の中間体と考えられた。

HR では L と O 中間体はクロライドイオン濃度依存的に平衡していると報告さ れている[43]。つまり、クロライドイオン増加に伴い、平衡が N へ移動、逆に クロライドイオンを減らすことで N 中間体も減っていくことが分かっている。

HeCM 菌体膜試料をクロライドのある条件 (図 2.16a)とない条件で (図 2.16b) 500 nm の吸光度を比較したところ、大きな吸光度変化の違いを見られた。この 現象から、HeHR 由来の L 中間体の吸光度変化を示していて、分離できなかった HeCM 膜に HeHR も存在していると考えられた。

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O 中間体を示す 670 nm の吸光度変化も見られた。しかし、BR と HR にも O 中 間体が存在するため、この結果からHeAR 由来か、HeHR に由来する O 中間体かを 判断できない。以上の結果より、HeCM に HeAR と HeHR が含まれ、それぞれの光 反応サイクルを行うことができていることを明らかにした。

図 2.16 : HeCM とHsPM のレーザー誘起吸光度変化の比較。HeBM 試料をクロライ ドイオンがあるとない条件で四つの波長、570, 410, 500, と 670 nm で測定を行 った。(a) HeCM を 50 mM HEPES, 1 M Na2SO4 ( Clなし) に溶解して測定を行った。

(b) HeCM を 50 mM HEPES, 1 M NaCl ( Clあり) に溶解して測定を行った。(c) HsPM を 50 mM HEPES, 1 M NaCl ( Clあり) に溶解して四つの波長、570, 410, 500, と 670 nm で測定を行った。

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