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第三章 Halorubrum sp.ejinoor の持つアーキロドプシンの大腸菌

3.4 アーキロドプシン光反応サイクルアーキロドプシンの光反応

3.4.2 結果

アーキロドプシンレーザー誘起吸光度変化

HeAR 試料のレーザー誘起吸光度変化より HeAR の光反応サイクルを検討した。

図 3.10 では室温で測定を行った結果を示している。図 3.10a では 7 から 60 μS までの吸光度変化、図 3.10b では 60 から 3.3 mS、図 3.10c では 3.3 から 100 mS までの吸光度変化を示している。60 μS と 3.3 mS のスペクトルはそれらの特徴 的な中間体が飽和状態である時間を示している。光産物の極大波長はおよそ 590 nm に現れ、この吸光度の減ることに対応して M 中間体を示す 400 nm の吸光度が 増加している (図 3.10a)。その吸光度の増加は 60 μS で飽和状態になる。長波 長側では、590 nm (BR:K 中間体に由来する)の吸光度が 7μS で増えていて、そ の後減少していた。時間とともに図 3.10b では、M の減ることによってオリジナ ル吸光度 555 nm が戻り (完全に戻っていない)、また、もっと長波長の吸光度 が増加している。この増加している吸光度が N と O の混合中間体を示す吸光度 と考えられた。3.3 mS で、N と O の混合中間体が飽和状態になる。図 3.10c で は短波長(およそ 350 nm)の吸光度や N と O の混合中間体の減ることでオリジナ ル HeAR の吸光度が増加してもとに戻っている。その短波長がおそらく 400 nm の吸光度の減ることで生成した未知の光産物(中間体)と考えられた。HeAR の 光サイクル反応をもっと詳しく解明するため、二重差スペクトルを取った。図 3.10d は図 3.10a の 7 μS の吸光度変化をベースラインにして引いた二重差スペ クトルである。その結果、590 nm に現れた吸光度 (図 3.10a)から M 中間体へ変 更したことを分かる。図 3.10e は図 3.10b の 60 μs の吸光度変化をベースライ ンにして引いた二重差スペクトルである。M の減ることに従って、長波長の吸光 度が増加していることが分かる。つまり、それが N と O の混合中間体を示して

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いる。しかし、短波長の産物の量が N/O 混合中間体に比べ圧倒的に少ないため、

図 3.10b と図 3.10c で短波長の変化を見られなかった。図 3.10f は図 3.10c の 3.3 mS の吸光度変化をベースラインにして引いた二重差スペクトルである。す べての中間体の減ることでオリジナル吸光度が増加してもとのHeAR に戻ってい る。つまり、光反応サイクルが終わっている。

光を当てて数 μS 以内に 590 nm 付近の吸光度が増加していて、M の生成と伴 に減少している。これは K 中間体に由来する吸光度変化と思われる。次に、K 中 間体を経て M 中間体(400 nm)へ移動する。次に、M から短波長の中間体と N/O の 混合中間体を生成する。それらの中間体のどっちらが先に生成しているか、M 中 間体の減ることで一緒に生成しているかは今の段階では分からない。この結果、

BR の光サイクルと大きく違っていることを分かる。BR では K 中間体を経て L(550 nm)中間体に行き、その後 L から M、M から N (550 nm),と O 中間体 (670 nm)に 行って元の BR に戻っている[8]。BR の光サイクルでは、M 中間体と O 中間体が 同様の速度でもとの BR に戻る。HeAR のオリジナル極大波長が 550 nm ため、HeAR の L 中間体については判断できない。HeAR では M 中間体は先になくなり、短波 長の中間体と N/O 中間体を生成し、その短波長の中間体と N/O 中間体の減るこ とに応じて元のHeAR に戻っていると考えている (図 3.11)。

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図 3.10 : HeAR 光反応サイクル。図 3.8a-c は 7 から 60 μS, 60 μSから 3.3 mS, 3.3 mS から 100 mS の間の差スペクトル吸光度変化を示している。上向き矢印は吸光度の増 加していることを示している。下向き矢印は吸光度の減少していることを示している。

図 a では 7.0, 10, 20, 32, 60 μSの差スペクトル吸光度変化を示している。図 b では 60, 317, 935 μS と 1.7, 2.35, 3.3 mS の差スペクトル吸光度変化を示している。図 c では 3.3, 5.63, 8.73, 13.83, 33.96, 61.8, 76, 98.6 mS の差スペクトル吸光度変化 を示している。図 d は図 a の 7 μSの吸光度をベースラインとして引いた二重差スペク トルを示している。同様に図 b とcは 60 μS と 3.3 mS の吸光度変化をベースライン にして引いた二重差スペクトルである。HeAR 試料は溶液(0.15% DDM, 50 mM HEPES, 100 mM NaCl, pH 7.0)に溶解して室温で測定を行った。

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図 3.12 : HeAR 遺伝子を持つ大腸菌のイオンポンプ活性。赤バーは光 (590 ± 8.5 nm)を当てた時間である。HeAR 遺伝子を持つ大腸菌を 1M NaCl 溶液に懸濁して測定を行った。

図 3.11 : 予測されるHeAR 光反応サイクル模式図。

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