第4章 総合考察
第1節 自閉症児の特徴
1.本研究のまとめ
(1)体型分類
非白閉症群と比較すると、どの学部においても「痩せ」の
害■1合は高く、 「肥満」の割合は低い傾向が見られた。小学校 群と比較すると、 r痩せ」の割合は低く、 r肥満」の割合も 低い傾向が見られた。
以上の結果から、学年が上がるにつれ、非自閉症群や小学 校群は太りやすい傾向が見られたが、自閉症群は、肥満度の 変化は見られず、自閉症児肥満について「小学校高学年以降
になると肥満が大きな問題となる」と述べた下田・山西ら
(2001)の先行研究とは違った傾向が考えられた。しかし、
文部科学省の平成22年度「学校保健統計調査」による通常学 校の児童生徒の肥満傾向児・痩身傾向児の割合と比較すると、
自閉症群は「肥満」の書1」合が高く、 「痩せ」の割合も高い結 果となった。
つまり、通常学校の児童生徒よりも、 「肥満」の割合が高 いことは言えるが、小学校高学年以降ではなく、低学年の頃 から「肥満」の傾向がある反面、 「痩せ」の傾向も強いと考 えられた。
(2)体型印象
学年が上がるにつれ、「肥満」の割合は高くなるが「痩せ」
の割合は変わらず、 r標準」の書1」合が低くなる傾向が見られ 108
た。
体型分類と体型印象を比較すると、体型分類では「痩せ」
であっても、体型印象で「標準」だと感じていたり、「標準」
であっても「肥満」だと感じていたりする傾向が見られた。
非自閉症群や小学校群と比較すると、体型分類から体型印象 で「肥満」が増加している割合は自閉症群が特に高く、保護 者のr肥満」への意識の高さが考えられた。しかし、実際の 体型分類では、前述したようにr痩せ」の傾向も強いが、r痩 せ」への意識は低いと考えられた。
(3)自閉症群の食行動における特徴
自閉症群の回答において割合が高かった上位5項目は、順に rあまり噛まない」、rばっかり食べ」、r和食べ嫌悪感」、
「早食い」、 「食感嫌い」であった。非自閉症群の回答にお ける上位5項目の中で共通していた食行動は、「あまり噛まな い」、 「ばっかり食べ」、 「和食べ嫌悪感」、 「早食い」で あった。小学校群の回答における上位5項目の中で共通してい た食行動は、 rばっかり食べ」、 r早食い」であった。
つまり、3群間で共通していた項目は、 「ばっかり食べ」と
「早食い」であったことから、 「あまり噛まない」と「和食 べ嫌悪感」とr食感嫌い」は自閉症群に特有な食行動である 可能性が考えられた。3つの食行動を3群間で比較すると、ど の食行動においても、知的障害を伴い、自閉症を併せ持つこ
とで関連性が高まる傾向が見られた。
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また、学年が上がるにつれて、自閉症群は割合にほぼ変化 がなかったことから、食行動の改善が難しく、成長とともに 食行動特性が強化されていくと考えられた。
(4)自閉症群の感覚過敏における特徴
どの学部においても、全ての感覚過敏は過半数以上の割合 を示し、非自閉症群や小学校群よりも高い割合を示す傾向が 多かった。川崎ら(2003)は、知的障害を伴う自閉症者を対 象に感覚過敏の検討を行った結果、知能の程度に関わらず、
自閉症の大多数の者が聴覚過敏や触覚過敏等の問題を有して いることを明らかにしていた。つまり、先行研究と同様の傾 向が学童期から思春期においても示すことが今回の調査で示 唆された。また、自閉症群は、年齢が上がるにつれ現れる変 化の割合が他の対照群よりも少なく、健常児者や知的障害児 者よりも感覚の過敏さは残りやすいと考えられた。
(5)自閉症群の食行動と感覚過敏の一致率における特徴 rばっかり食べ」と各感覚過敏では、どの感覚過敏も学年 が上がるにつれ割合が高まっていたが、 「視覚過敏」との一 致率が一番高い割合を示した。小学校群と非自閉症群におい ては、学年が上がるにつれ「触覚過敏」との一致率のみ書1」合 が高まる傾向が見られた。そのため、年齢が上がっても「ば っかり食べ」の食行動が残る場合にはr視覚過敏」が関連し 110
ている可能性が特に強いことが示唆された。高橋ら(2008)
による研究においても、自閉症学生と健常学生との割合差が 一番大きい感覚過敏はr視覚過敏」であった。自閉症児であ
っても、 r視覚過敏」が小学校群とは違った特性があるとい うことが考えられた。
r早食い」と各感覚過敏では、 r触覚過敏」以外は学年が 上がるにつれ書1」合が高まっていた。低学年では「嗅覚過敏」
が、高学年では「味覚過敏」との一致率が一番高い書11合を示 した。学年が上がるにつれ、小学校群ではr聴覚過敏」のみ 割合が低くなり、非自閉症群では「触覚過敏」のみ割合が高 くなる傾向が見られた。また、小学校群において割合が過半 数の割合を示したのは、高学年での「嗅覚過敏」との一致率 のみであり、 「早食い」の食行動が現れる要因に感覚過敏が 関連する可能性が低いことが考えられた。非自閉症群では、
低学年ではr味覚過敏」、高学年ではr味覚過敏」とr触覚 過敏」が一番高い割合を示し、知的障害を伴うことで「味覚 過敏」や「触覚過敏」との関連性が強まる傾向が見られた。
そのため、自閉症を併せ持つことでr早食い」の食行動が 継続して現れる要因としては、 r嗅覚過敏」が関連している
可能性が特に強いことが示唆された。高橋ら(2008)による 研究においても、健常学生との書11合差が大きかった感覚過敏 と本人が求める感覚過敏の理解支援はともに、二番目に高い 害I」合を示した感覚過敏は「嗅覚過敏」であった。自閉症児で あっても「嗅覚過敏」は特性が現れやすい感覚過敏であると いうことが考えられた。
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(6)自閉症群の保護者の意識の特徴
「気になっていること」では、「好き嫌い」と「噛まない」
とr食べ過ぎ」がどの学部においても上位5項目に挙げられ ていた。「工夫していること」では、「細かく切る」と「野菜 を摂る」と「調理法を変える」が上位5項目に挙げられてい
た。「困っていること」では、「好き嫌い」が、「改善したこと」
では、「食べる量」が挙げられていた。
以上の結果から、「好き嫌い」の一つである「野菜を摂る」
ために「調理法を変える」工夫をしたり、「噛まない」ことを できるだけ減らすために「細かく切る」工夫をすることで、
r食べ過ぎ」が改善してr食べる量」が減ったり、という関 連性が考えられた。また、それぞれの意識において、項目数 を比較すると、自閉症群が特に多いことから、さまざまな食 行動を保護者は気にしたり工夫したりしていることが示唆さ
れた。
2.自閉症児の食事指導のありかた
これまでに述べた、自閉症児の食行動と感覚過敏の特徴を 踏まえた上で、食事指導のありかたを考察する。
「あまり噛まない」という食行動を配慮した支援として、
一食の摂取量は変えずに品数を増やしたり、食材を大きめに したりといった工夫が考えられる。「和食べ嫌悪感」を理解し た支援としては、初めて食べるものは量を少なくしたり、見 112
た目を楽しくしたり細かくしたりといった工夫が考えられる。
また、r食感嫌い」に対しては、事前に舐めたり舌の上で味見 することを促したりといった工夫が考えられる。
「ばっかり食べ」に対しては見た目に配慮を施し、好きな 食べ物を複数の品数に入れたり、一晶ずつ小皿に分けていっ たりといった工夫が考えられる。 r早食い」に対してはにお いに配慮を施し、できたての料理を出したり、味付けを薄く
したりといった工夫が考えられる。一
今回の質問紙調査結果から、自閉症児は肥満及び痩せ、食行動上 の問題や感覚過敏が多く、また成長による改善が少ないことが明ら かになった。しかし、それと同時に、保護者の努力している部 分も多く見られた。普段の食事から学ぶことは最も実践的で
あり、身にっくことも多い。したがって食習慣が形成される 児童期の食教育における家庭の役割は大きい。
また、こうした食習」1貫から、自閉症児は小学校低学年の頃 からr肥満」やr痩せ」の傾向が強くなりやすく、 r標準」
の体型でいることが難しい。しかし、保護者は「肥満」ばか り意識が注目しやすく、 「痩せ」の体型であることに気付き にくい。そのため、「肥満」に対する不安を軽減し、「痩せ」
も含めた体型に対する助言などの支援も必要であると考えら
れた。
一方、学校給食においても、味覚過敏がある場合には弁当 の持参を認めたり、周りの音やにおいが気になる場合には別 室で給食を食べることを認めたり、無理強いさせないなどの 丁寧な配慮が必要である。恐怖心が残ると、結果として食行 113
動問題は継続してしまう。そのため、食べた努力を褒めるこ とで、嫌なことを自力で成し遂げたことへの誇りを与えたり、
おしゃべりしながら楽しめる食卓にしたりする指導が重要だ
と考えられる。
以上の調査結果から、今、自閉症児の食育に求められてい るのは、自閉症の障害特性と感覚過敏へのアセスメントを充 分に行った上での指導であると考える。
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