第4章 構造、ディテールレイヤーの分類と検索
4.2 画像処理の構造的解析について .1伊勢型紙の格子構造と単位構造
4.2.2 自己相関関数処理
伊勢型紙のような繰り返し画像の構造を評価し、格子構造や単位構造を抽出するとき、
フーリエ変換を行い、パワースペクトルを求め特徴を抽出する方法がよく用いられる[38]
[39]。フーリエ変換は、周期などを求める代表的な手法である。伊勢型紙をフーリエ変換 した例を図4.3に示す。図4.3(b)は、4.3(a)の原画像をフーリエ変換してパワースペクトル
(a)原画像 (b)フーリエ変換した画像
(パワースペクトル画像) 図4.3 伊勢型紙をフーリエ変換した画像
を求めたものである。図4.3に示すようにフーリエ変換は、原画像を変換してもう一枚の画 像を作る処理方法であるため、処理によって作られた画像から何らかの情報を読みとらねば ならない。フーリエ変換で求められるパワースペクトルの位置は波数であり、周期や格子を
求めるには、その逆数を計算しなければならない。また、今回用いる伊勢型紙のような2 値画像は、矩形波のような立ち上がりがあり、基本周波数に倍音が重なって、輝点が幾つ も現れる。このため、格子構造や単位構造を求めることが難しい。さらに、直感的に格子 構造や単位構造が分からないことも問題である。
フーリエ変換と同様の画像変換に、自己相関関数処理がある。自己相関関数処理は、
データのノイズを取り除くことや、繰り返し周期を求めるために利用されてきた[40][4几
2次元の関数′(ェ,γ)が与えられているとき、自己相関関数は次の式(4.1)で計算される。
g←,V)=加血湘‑〟,ツーソ如
(4・1)ここで、A=g(0,0)である。
自己相関関数処理のイメージを図4.4に示す。自己相関関数処理は、同じ画像を(u,V)だ
画像(b)
原画像(a)を、(u,V)だけずして画像(l))をつくる.
原画像(a)と画像(b)について、座標(又,〉′)にあるピクセルの輝度の積を取る.
すべての領域についてその積の値を加算する,
図4.4 自己相関関数処理のイメージ
けずらしてすべての画素の乗算を行い、その後総和を求めるという計算である。式(4.1)と 図4・4から分かるように、繰り返し紋様において、n周期ずれたときに輝点が生ずる。自己
相関関数処理をした画像の輝点の座標は波長を表している。輝点が波長を表していること から、自己相関関数処理した画像から、格子点を求め、格子構造を抽出することができ る。さらに、格子点で囲まれた部分を切り出せば、自己相関関数処理された単位構造を 抽出できる。
自己相関関数は、その計算過程で、全画面の領域について積分を行っている。このた め、手彫りによる微妙なゆらぎや、スキャナーに起因するノイズを無くすることができる。し かも、倍音などの余分な情報がないことから、自己相関関数は格子構造と単位構造を求め るのには非常に都合がよいと考えられる。
自己相関関数の計算式(4.1)が示すように、これをそのまま計算すれば非常に計算コスト がかかる。しかし、自己相関関数はフーリエ変換とウイナー・ヒンチンの定理でつながって
いる[42]。
ウイナー・ヒンチンの定理とは、次のようなものである。なお、ここでは、記述を簡単に するために、1次元の数式で説明する。
標準化していない自己相関特徴を自己共分散といい、式(4.2)で表される。
g(f)=J′(Tげ(ぃりdT
一方、よく知られた畳み込み演算は、式(4.3)で表される。
甜)㊥ム(り=J錘)耕一T)dT
(4.2)
(4.3)
式(4・3)のム(T)=′(T),ム(T)=′(イ)とすれば、/(T‑f)=′(‑(ト一丁))であるから、式(4.2)と
式(4.3)は同じものであることが分かる。つまり、自己共分散の計算は、/(T)と′(‑(トT))の畳み込み演算である。ここで、フーリエ変換の演算子をFとすれば、畳み込み演算の
フーリエ変換は、式(4.4)のように、それぞれの関数のフーリエ演算の積となることが知られ
ている。
F㍑(ズ)㊥以ズ))=Fh(ズ))F(以ズ))
(4.4)これらのことを、式(4.2)に当てはめると、式(4.2)は次式のように表現することができる。
F(g(f))=F(′(り㊥/卜り)=F(′(り)F(〃‑f))
(4.5)なお、′(f)が実関数であるとき、F(/(‑り)=F*(′(f))が成り立つ(*は共役複素数)。
g(の)=F(/(f))と表現すれば、g(‑〟)=g■(∽)、g(叫g*(叫=lg(可I2であり、式(4・5)は式
(4.6)のようになる。
F(′(r斯(/〔f)=F(′¢)F*(ル)=g¢区*¢)=l対局2(4・6)
式(4.6)は、元の関数′(f)のパワースペクトルを表している。この関係を用いて式(4.5)の逆 変換を式(4.7)のように求めれば、式(4.2)は次のように求めることができる。
g(り与仲)伸一f)dT=F車(り)l2)
(4・7)これがウイナー・ヒンチンの定理である。
この後、g(0)の値で正規化すれば自己相関関数が求められる。フーリエ変換には良く知 られたFFTを使うことができ、従って簡単に自己相関関数の計算を行うことができる。