第2章 本論文における問題意識と全体的目的
② 自己愛人格目録短縮版(NPI-S)の因子分析
自己愛人格目録短縮版(NPI-S)に対して因子分析(主因子法)を実施した.因子回転は,
因子間の相関を許容する斜交回転(promax回転)を用いた.因子数は,固有値2.0以上の 3因子を抽出した.その結果,因子負荷量が.33以上を有することを条件として,3因子パ ターンを確定した.30項目による全分散のうち,回転前の3因子によって説明できる割合
は44.3%であった.
Table 3-1-1 自己の障害目録の因子分析結果(promax回転後の因子パターン;N=336)
項 目 内 容 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
対人恐怖心性
5 人からの評価をいつも気にしている .80 .08 -.09
2 人からきらわれないかということばかり気になる .79 -.01 .00
1 人から変な目でみられないかといつも気にする .76 .10 -.04
4 人から批判されることがとても恐ろしい .70 .05 .04
3 人と話をするとき、自分が軽蔑されていないか、批判されていないか
と常に注意している .66 .08 .02
7 人から拒絶されないように、あらゆる努力をする .62 .04 -.19
6 何でも人に合わせようとする .55 -.10 .19
12 人の反応を、いつも敏感に観察している .53 .20 -.08
9 人から求められるような自分を演じてしまう .51 .08 .02
11 自分の考えに自信が持てない .47 -.10 .26
10 人と衝突することがとても恐ろしい .47 -.15 .19
35 バカにされることがとても恐ろしい .45 .21 .04
13 自分を責めてしまいやすい .43 -.18 .05
自己愛的憤怒
30 人が自分の期待通りに動かないことで、猛烈に 腹が立つことがよくある .03 .72 -.09
34 周りの人がくだらない人間に思えることがよくある -.14 .67 .15
38 周りの人が、常に自分の期待に従ったらいいと思う -.17 .66 -.15
37 気持ちを察してもらえないことで、猛烈に腹をたてることがよくある .05 .64 .05
24 周りの人に対して腹を立てることが多い -.01 .63 .15
36 周りの人が自分に対して気が利かないと、腹を立てることがよくある .14 .58 .03
42 特別に有利な取り計らいをされる事を期待している .15 .50 -.15
40 自分を批判する人間を敵対視してしまう .10 .44 .01
41 人に対して影響力を持ちたいという気持ちが強い -.07 .43 .35
回避性傾向
15 人とコミュニケーションをとることが苦手だ -.05 .13 .74
17 自分を出さないようにしている .03 .11 .65
26 大勢の人の注目を浴びるようなことが大の苦手である .03 -.09 .65
18 人見知りが激しい -.09 .12 .65
20 自己主張できない .24 -.13 .60
29 人といると疲れるので、一人になると心底ほっとする -.08 -.36 .54
23 人間関係を煩わしく感じる .05 .28 .54
16 自分は人に対して心を閉ざしている -.05 .23 .47
8 いつも遠慮がちである .32 -.11 .43
22 自分は社会に適さない人間だと思う .09 .26 .40
因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
Ⅰ ―
Ⅱ .29 ―
Ⅲ .24 .15 ―
Table 3-1-2 NPI-S尺度の因子分析結果(procrustes回転後の因子パターン;N=336)
項 目 内 容 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
注目・賞賛欲求
23私は、みんなの人気者になりたいと思っている .78 -.03 -.02 2私には、みんなの注目を集めてみたいという気持ちがある .77 -.13 .16 8私は、どちらかといえば注目される人間になりたい .72 .00 .21 26私は、人々の話題になるような人間になりたい .69 .14 .06 14私は、多くの人から尊敬される人間になりたい .65 -.08 .01 5私は、みんなからほめられたいと思っている .61 .08 -.09 29人が私に注意を向けてくれないと、落ち着かない気分になる .57 .05 -.23 11周りの人が私のことを良く思ってくれないと、落ち着かない気分になる .50 -.01 -.35 17私は人々を従わせられるような偉い人間になりたい .46 .11 -.06 21ここと言うときには、私は人目につくことを進んでやってみたい .38 .01 .27
優越感・有能感
4私は周りの人たちより優れた才能を持っていると思う .08 .78 -.01 7私は周りの人達より有能な人間であると思う .16 .71 -.01 16私は周りの人に影響を与えることができるような才能を持っている .10 .70 .01
1私は才能に恵まれた人間であると思う .09 .69 .04
10私は周りの人が学ぶだけの値打ちのある長所を持っている .08 .63 .11 28周りの人たちが自分のことを良い人間だといってくれるので、自分でもそ
うなんだと思う .03 .60 -.12
25私は、どんなことでも上手くこなせる人間だと思う .04 .56 .15 13周りの人々は、私の才能を認めてくれる -.21 .55 .06 22私に接する人はみんな、私という人間を気に入ってくれるようだ .00 .47 .01 19私が言えば、どんなことでもみんな信用してくれる -.17 .33 .11
自己主張性
24私は、自己主張が強いほうだと思う .06 -.10 .75 3私は、自分の意見をはっきり言う人間だと思う .08 -.09 .75 6私は、控え目な人間とは正反対の人間だと思う .16 -.18 .62 15私はどんなことにも挑戦していくほうだと思う .02 .08 .57 12私は、自分で責任を持って決断するのが好きだ -.12 .11 .57 27私は自分独自のやり方を通すほうだ -.27 .19 .53
30私は、個性の強い人間だと思う -.01 .15 .50
9私はどんな時でも、周りを気にせず自分の好きなように振る舞っている -.08 .12 .49 18これまで私は自分の思う通りに生きてきたし、今後もそうしたいと思う -.11 .17 .38 20いつも私は話しているうちに、話の中心になってしまう .30 .04 .36
因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
Ⅰ ―
Ⅱ .30 ―
Ⅲ .30 .32 ―
見いだされた因子は,その項目内容から因子Ⅰは「注目・賞賛欲求」,因子Ⅱは「有能 感・優越感」,因子Ⅲは「自己主張性」とした.以上の項目により各因子に対応する下位尺 度を構成し,それらの内的整合性をCronbachのα係数で検討した結果,下位尺度Ⅰは.82,
下位尺度Ⅱは.83,下位尺度Ⅲは.78 であった.見いだされた各下位尺度の項目得点を合計 し,それぞれ「注目・賞賛欲求」得点(平均=30.0, SD=7.12),「有能感・優越感」得点(平均
=24.6,SD=6.79),「自己主張性」得点(平均=30.4, SD=6.53)とした(Table 3-1-2).