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自主管理企業における人材育成

ドキュメント内 ユーゴ労働者自主管理の挑戦と崩壊 (ページ 177-200)

1.はじめに

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章において、ユーゴ企業の訓練は企業内が中心であり、内部昇進制が主流 であることが明らかになった。そこで、この章では、ユーゴの教育訓練の制度と その運用を検討する。個別企業でおこなわれていることが、制度全体の中でどの ように位置づけられていたのかを明らかにしてみたい。

ユーゴにおいてもわが国同様、技能形成の中心は企業内にあった。

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歳前後で 学校教育を終え、 65歳の年金支給開始年齢までの40年間を企業の中ですごすのが 普通で〉あった。 40年間の職業生活を通して、企業の内部と外部でさまざまな教育 訓練が行われていた。ユーゴの職業訓練を理解するには、ユーゴ企業が従業員の 訓練をどのようにおこなっていたかを観察することがいちばんの近道である。そ こで、この章では、従業員約

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人の通信機器製造会社の訓練体系を検討すること を通して、ユーゴ全体の教育訓練制度を考える。次節でこの会社の「職業訓練規 則」の内容を簡単に紹介し、その特徴としてあげられた点の背景を説明する。第

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節以降は、教育訓練にたいする企業のインセンティブ、公的職業資格制度が主 たる論点となる。

2 .

教 育 訓 練 規 則

ここでとりあげる中規模通信機器メーカーの「教育訓練規則j は、

A 5

版で

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ページにわたる堂々としたものである。全部で

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つの章からなり、

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の条文で構 成きれていた。その章だてを示せば、表

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のようになっていた。

第l章「総則」で概略を述べたあと、教育、職業遂行能力養成(具体的には O]T)、専門的能力養成について詳細に規定する。なかでも、第2章「教育」には

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の条文がつかわれており、学校教育とのかかわりの強きを示している。これら

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つの分野はわが国企業でもみられる教育訓練であるが、第

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章「社会秩序維持、

9 自主管理企業における人材育成 175  国防、自主管理遂行のための能力養成」はユーゴならではのものである。ユーゴ は、労働者によって企業を運営する体制(労働者自主管理)をとっており、従業 員全員に経営管理面の能力が要求されていたからである。では、以下、(イ)訓練の 目的、(ロ)訓練の内容、付訓練対象者とその選考方法、の

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点からこの「規則j を 検討しよう。

9‑1 従業員の教育訓練に関する規則 l章 総 則 ( 第1‑9条)

2章 教 育 ( 第10‑77条)

(1)  正規の学生に対する奨学金 (10‑41条) (2)  実習生に対する報奨 (42‑50条) (3)  企業外のOff‑JT (51‑69条)

一夜間学校への派遣 (52‑56条) 奨学金支給 (57‑69条) (4)  専門試験 (70条)

(5)  企業内Off‑JT (71‑77条) 3章 職 務 遂 行 能 力 養 成 ( 第78‑80条) 4章 専 門 的 能 力 養 成 ( 第81‑98条)

(1)  圏内での養成 (82‑83条) (2)  外国での養成 (84‑88条) (3)  企業内での養成 (89‑91条) (4)  外国語学習 (92‑96条)

(5)  他企業の労働者に対するセミナー (97‑98条) 5章社会秩序維持,国防,自主管理等遂行のための能力養成

(99‑104条)

6章 講 師 謝 礼 ( 第105‑117条) 7章 付 則 ( 第118‑120条) 教育訓練の目的

教育訓練の目的は第

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条に述べられており、つぎの

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点があげられている。生 産の発展、労働生産性の上昇、仕事の効率化、社会経済全体の繁栄である。これ らのうち4番目以外はわが国企業にも共通する教育訓練の目的である。ユーゴに おいてもおそらく、中心は前の

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つにあったとおもわれる。それは、従業員の教 育訓をとおして企業を発展きせようとする考え方がこの「規則」の基礎になって

いたからである。

社会主義国の企業も資本主義国の企業同様、従業員の教育に対するインセン

176  11部 労 働 者 自 主 管 理 企 業 の 経 営

ティブをもっていた。では、そのインセンティブはどこから出てくるのか。労働 者にとって、あるいは企業の経営者にとってのインセンティブはなにか。わが国 企業と同じように考えてもいいのだろうか。この点が検討すべき最初の問題であ

る。

教育訓練の内容

9‑ 1

に示した「規則」の章だてからもわかるように、教育訓練の内容は

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つに大別きれる。(イ)学校教育、(ロ)職務遂行能力養成、付専門的能力養成、(ニ)自主 管理能力養成である。

人は、労働者として働くのに必要な基礎知識を学校教育において習得する。卒 業して企業に働きはじめたとき、学校教育で得た知識・能力が現実の生産労働に そのまま適用できないことを知る。知識・能力を生産に役立てるには、両者をつ なぐ何らかの訓練が必要で、ある。職務遂行能力養成とは、各人がもっている知識・

能力をいかに使うかを教えることである。技術は常に進歩している。新しい技術 の習得を怠っていると、何年かのちにとりかえしのつかないことになりかねない。

専門的能力養成とは、技術進歩についていくための訓練を意味するo

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つめの自主管理能力等の養成は、労働者自主管理という休制をとっていた ユーゴに独自のものである。ユーゴの企業を運営するのは、そこで働く労働者自 身であった。企業の従業員規模によって、労働者全員が直接、管理運営にあたる 場合と、代議員をとおして間接に参加する場合があった。それゆえ、経営管理能 力を身につけることが教育訓練の重要な項目としてあがっているのである。

以上は教育訓練の内容を、獲得される能力別に分類したものだが、これをさらに、

9‑ 1 教 育 訓 練 の 内 容 正規の学生・生徒一「奨学金

」 実 習

企業の従業員一一一一寸‑‑OJTによる職務能力養成

L{)ffJTー「企業内一「職務能力養成のためのセミナー L専門的能力養成のためのセミナー

」 企 業 外T一 学 校 へ の 派 遣

L専門的能力養成のためのセミナ一派遣

9 自主管理企業における人材育成 177 

訓練の対象と訓練がおこなわれる場所によって整理することができる。図

9‑1 

がそれである。

ユーゴ企業の教育訓練をわが国企業のそれと比べると、

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つの点で大きく異 なっていた。ひとつは、正規の学生・生徒を訓練体系のなかにとりこんでいたと ころであり、他のひとつは企業外のOff‑]Tとして学校への派遣を重視していた 点である。わが国企業のなかにも学生に対する奨学金制度をもっているところあ る。しかし、わが国の場合、そのような企業はごく一部にすぎない。他方、ユー ゴでは中規模以上の企業のほとんどが奨学金制度をもっているといわれていた。

また、学生・生徒を実習生として積極的に受け入れようとしていたことも、ユー ゴ企業の特徴だといえる1)。教育関係者も、学校における職業教育のしめくくりと して実習を重視していた。

では、企業へ実習にいった学生や生徒は、そこでどのような作業をしたのか。

学校教育全体の中で、実習はどの程度の比重をしめていたのか。こういった問題 が第

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の検討課題である。正規の学生に対して奨学金をはらう、あるいは実習の 機会をあたえることは、早目に優秀な人材を確保するという側面をもっている。

ユーゴ企業は、どうしてそうまでして優秀な人材をとろうとしたのか。そのイン センティブはどこからでてきたのか。正規の学生・生徒を訓練体系のなかにとり こんでいたことは、この節の最初に指摘された疑問と通じる面がある。

ユーゴ企業は、労働者を正規の学校へ送って勉強させていた。それは、学校教 育が公的職業資格制度と密接なつながりをもっていたからである。ユーゴでは、

原則として、終了した学校の種類によって個々人の資格がきまった。企業内の職 務にはすべて資格要件がさだめられており、その資格をもたない人はその職務に つくことができなかった。上位の資格をとるためには、正規の学校へ通うか、公 的資格賦与の権限をもっ訓練機関へいかなければならなかった。企業が労働者を 普通学校へ派遣するのはこのような事情によっていた。

では、公的職業資格制度とは具体的にどんなものだったのか。また、企業はそ れをどの程度重視していたのか。職務ごとに決められた資格条件は、ほんとうに まもられていたのだろうか。公的資格制度の内容とその実際の運用が、検討すべ き第

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の問題である。

178  II部 労 働 者 自 主 管 理 企 業 の 経 営 訓練対象者の人選

企業の教育訓練の大枠は、「年間教育訓練計画」によって設定された。教育訓練 の種類ごとに、予算、人数、派遣先等を定めた。ただし、この段階では、まだ「誰 が」訓練を受けるかまでは決まっていなかった。

年間教育訓練計画の決定は、つぎの手順でおこなわれた。まず、人事部が「中 期人材需要予測」をもとに草案を作成する。中期人材需要予測は、企業の経営計 画の一部をなし、企業の発展のために必要とされる人材の確保を目的としていた。

人事部は、次年度の生産計画や販売計画をにらみながら、新たに必要とされる人 材を予測した。そして、それを既存の従業員を訓練することによってまかなうの か、新規採用によってまかなうのかをきめた。具体的な証拠はなにもないが、企 業はまず再訓練の可能性を検討したようである。

人事部がつくった草案は、職場での討論にまわされた。労働者自主管理とは、

企業の意思決定に労働者の意見をできるかぎり反映させることであった。それゆ え、どのような案も一度は末端の職場までおろされた。ただ、個々の職場ですべ ての問題を詳細に検討することは事実上不可能なので、金銭関係の項目を除いて、

職場討論のなかから強力な修正意見がでることは少なかった。

職場討論を経た人事部案は、労働者評議会において、討論、決定された。労働 者評議会は各職場から選出された代議員によって構成され、企業の事実上の最高 意思決定であった。そこで決定されたものは、企業の正式な政策となった。

このような手順を経てきめられた教育訓練計画を実摘するのは、人事部と「労 働関係調整委員会」であった。実習生の人選は人事部が単独で、おこない、その他

の人選は「委員会」が担当した。

この委員会は、管理的職務についていない労働者の中から、労働者評議会が任 命した。任期は2年、連続して 3期つとめることはできなかった。勤務時間中の 活動も一部認められていたが、基本的には勤務時間終了後に活動した。したがっ て、メンバーのほとんどは教育訓練に関しては素人であり、おそらく人事部の人 選をチェックすることが主たる活動になっていたと予想される。委員会の構成人 数は企業ごとにちがうが、従業員数

5 0 0

人程度の中規模企業だと

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人が普通の

ようであった。

ドキュメント内 ユーゴ労働者自主管理の挑戦と崩壊 (ページ 177-200)

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