●膵外分泌機能は、脂肪便の有無と BT-PABA 試験で判定します。
●膵内分泌機能は、血糖、HbA1c とブドウ糖負荷試験で判定します。
解 説
表 1 おもな消化酵素(膵酵素)と分解される栄養素
消化酵素(膵酵素) 分解される栄養素 アミラーゼ 炭水化物
トリプシン 蛋白質・ペプチド(塩基性アミノ酸)
キモトリプシン 蛋白質・ペプチド(芳香族アミノ酸)
エラスターゼ 蛋白質・ペプチド(エラスチン)
リパーゼ 脂質(トリグリセリド)
定すると膵外分泌機能の低下の程度を判断できます。もうひとつの検査法(BT-PABA 試験)では、キモトリプシンという蛋白質を消化する消化酵素によって分解 される薬(BT-PABA)を飲んでもらい判定します(図 1 参照)。正常な人ではこの薬 は消化酵素によりほぼ完全に分解され、PABA が吸収され、6 時間のあいだに 90 % 以上が尿へ排泄されます。しかし、膵臓の働きが悪くなると、この薬を分解する力 が落ちるため、尿の中に一部しかでてきません。このような簡便検査では膵臓の外 分泌機能がかなり悪くならないとわかりません。また、膵臓の機能がよいにもかか わらず悪いと判定されてしまうこともあります。一度の検査で膵外分泌機能が悪い と判定されても、慎重に再度、確認する必要があります。
膵内分泌機能の検査
慢性膵炎が進行すると内分泌腺(ランゲルハンス島)の働きも悪くなり糖尿病を合 併します(「よくある質問 2」参照)。慢性膵炎に合併した糖尿病は膵性糖尿病とい われ、通常の糖尿病と異なり、インスリンの分泌だけでなく、グルカゴンの分泌も 悪くなっています(「よくある質問 10」参照)。通常の糖尿病と同じように、膵性糖 尿病でも血糖(ブドウ糖)の測定と、長期間の血糖値の指標である HbA1c(グリコ ヘモグロビン)などを測定することにより診断します(図 2 参照)。血糖や HbA1c の値が境界領域の場合には、ブドウ糖の入った液を飲んだあと、30 分ごとに採血
2
3
:慢性膵炎の診断についてPABA PABA PABA
尿量 6h PABA BT−PABA
0.5g 200mL
PABA PABA PABA BT BT−PABAPABA BT−PABA
キモトリプシン キモトリプシン キモトリプシン
慢性膵炎では消化酵素(キモトリプシン)の分泌が低下しているので、検査薬(BT-PABA)の分解が低下 し、尿へのPABAの排泄が低くなります。
(成瀬達:慢性膵炎診断.図説消化器病シリーズ14 膵炎、膵癌、早川哲夫編、メジカルビュー社、p101-120、2001より)
図 2 糖尿病の臨床診断基準(日本糖尿病学会 2010 年)
血糖値のみ 糖尿病型 血糖値とHbA1c
ともに糖尿病型
HbA1cのみ 糖尿病型
再検査 再検査
(血糖検査は必須)
糖尿病
糖尿病の典型的症状 確実な糖尿病網膜症 のいずれか
なし あり
血糖値と HbA1c ともに糖尿病型
血糖値 のみ 糖尿病型
HbA1c のみ 糖尿病型
いずれも 糖尿病型 でない
血糖値と HbA1c ともに糖尿病型
血糖値 のみ 糖尿病型
HbA1c のみ 糖尿病型
いずれも 糖尿病型 でない
糖尿病 糖尿病
糖尿病疑い 糖尿病疑い
3〜6 ヵ月以内に血糖値・HbA1cを再検査 1 ヵ月以内になるべく
糖尿病型:血糖値(空腹時≧126mg/dL、OGTT 2時間値≧200mg/dL、随時≧200mg/dLのいずれか)
HbA1c(JDS値)≧6.1%[HbA1c(国際標準値)≧6.5%]
HbA1c(国際標準値)(%)は現行のJDS値で表記されたHbA1c(JDS値)(%)に0.4%を加えた値で表記する。
(糖尿病 53(6):450-467、2010より改変)
図 3 経口ブドウ糖負荷試験
100 200 300
120 分 90 60 30 0
血糖
mg/dL
膵性糖尿病
健常人 10
0 30 50 40
20
120 分 90 60 30 0
インスリン
mU/mL
膵性糖尿病 健常人
慢性膵炎ではブドウ糖刺激に対するインスリンの分泌が低下しているので、高血糖になります。
75gブドウ糖負荷試験の判定区分
糖尿病型 空腹時血糖値≧126mg/dL または 2時間血糖値≧200mg/dL 境界型 糖尿病型でも正常型でもないもの
正常型 空腹時血糖値<110mg/dL かつ 2時間血糖値<140mg/dL