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第 3 章 韓国における非テレビ視聴行動の動機分析―テレビを視聴しない理由に関す

第 3 節 考察

本章では、インタビュー調査を通して、韓国において「テレビ機器視聴」の必要性が低 減している理由について理解することを目指した。日本におけるインタビュー調査結果を 参照することで、韓国人が「テレビ機器視聴」を行わない理由の独自性についてより鮮明 にすることを試みた。

韓国の若者層を代表する大学生の間で「テレビ機器視聴」が行われない理由として、「リ アルタイム視聴の必要性のなさ」「視聴手段の多様化」「テレビ番組の内容・質」「住居環境」

「日常生活の忙しさ」「視聴テレビ番組の固定化」、そして「過去の経験」の 7 点が指摘さ れた。

「リアルタイム視聴の必要性のなさ」という理由には、テレビ番組を放送時間にリアル タイムで見ることの必要がないこと、他メディアを通してニュースやスポーツ中継などに 接触していることなどを含む。「視聴手段の多様化」は、パソコンを所有していればテレビ

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機器購入の必要がないこと、YouTube を通してハイライト映像を視聴していること、スマ ートフォンを使用していること、などがこれにあたる。「テレビ番組の内容・質」を理由と してあげた人は、多チャンネル化やケーブル・テレビなどの影響を指摘している。「住居環 境」とは、本インタビューを通じたコンテクストとしては、特に寮に住むことで部屋にテ レビ機器を所有していないことが中心にある。「日常生活の忙しさ」は、勉強などを家以外 の場所で行うことが多いため、在宅時間が短いことが背景にある。「視聴テレビ番組の固定 化」は、ながら視聴・暇つぶし視聴の減少による目的志向型のテレビ視聴行動によるもの である。そして、「過去の経験」とは、高校時代や家庭環境などの影響からくるものである。

一方、日本人が「テレビ機器視聴」を行わない理由としては、「視聴手段の多様化」「テ レビ番組の内容・質」「物理的な影響」「日常生活の忙しさ」「過去の経験」、そして「生活 習慣の改善」の6点が指摘された。

「視聴手段の多様化」には、YouTubeによって映像を視聴すること、知人にテレビ番組 の録画を依頼すること、テレビを見られる自宅外の場所で視聴すること、などが含まれる。

「テレビ番組の内容・質」では、特にバラエティ番組の騒がしさに対する嫌悪感が指摘さ れている。「物理的な影響」としては、地デジ化や故障後にテレビ購入の必要性を感じてい ないためにテレビ機器購入に至らなかったパターンが含まれている。「日常生活の忙しさ」

では、勉強、アルバイト、サークルなどによる在宅時間の短さがあげられている。「過去の 経験」とは、過去からの継続的なテレビ視聴習慣のなさや、テレビ番組を見ないことの習 慣化などを含んでいる。「生活習慣の改善」とは、テレビを所有しないことで生活習慣を改 善させようという意思がみられることなどがこれにあたる。

韓国における「テレビ機器視聴」を行わない理由として特徴的だったのは、「リアルタイ ム視聴の必要性のなさ」「住居環境」、そして「視聴テレビ番組の固定化」であった。これ らの理由は、日本人の若者にはみられなかった。ここから、韓国の若者層が「テレビ機器 視聴」行動における特殊性を有していると指摘することができる。「リアルタイム視聴の必 要性のなさ」は、韓国ではテレビ機器以外の多様なオンライン・メディアを通して情報に アクセスすることが容易に可能であることを示唆しており、若者層のメディア接触行動と して定着している韓国社会のブロードバンド・メディア環境をフルに活用した、通信・放 送融合型の統括的なコンテンツ流通が整っているという特徴が表れている。「住居環境」に ついては、韓国では学生の一般的な住居形態のひとつとして学生寮があり、そこでの生活 がメディア利用行動に影響をもたらしている可能性が見出された。そして、「視聴テレビ番

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組の固定化」は、韓国の大学生が勉強で忙しいため、放送時間に自宅でテレビ番組を視聴 できないという韓国の大学生の生活事情や、多様なテレビ番組視聴手段が存在するため、

自ら検索してアクセスすることが可能なオンライン映像視聴手段に関わるメディア環境事

情などが関連しているようにみえる。

韓国と日本で共通してみられた理由である「視聴手段の多様化」「テレビ番組の内容・質」

「日常生活の忙しさ」「過去の経験」についても、共通した結果を得た一方で、根底部分で それらの理由をもたらす要因として、韓国の特殊性がみられた。韓国における「視聴手段 の多様化」では、「テレビ機器視聴」を代替する手法として「ダウンロード視聴」の利用と スマートフォンによるハイライト映像視聴の影響が顕著であった。「テレビ番組の内容・質」

に対しては、有料テレビ放送が加速させている多チャンネル化の広がりにより、これに相 応するように、韓国のテレビ放送環境も大きく変化していることが、影響を及ぼしている ようにみられた。「日常生活の忙しさ」については、韓国の大学生らの学業による忙しさが 目立った。「過去の経験」では、高校時代に、大学進学に向けて長時間勉強することが一般 的な韓国の受験事情が、大学生らの現在の映像視聴行動に影響を与えていることが示され、

韓国社会の独自性が、どこにおいても反映されていることが実感される結果となった。

本分析をまとめると、韓国における映像視聴行動において、テレビ放送と同じ映像コン テンツにアクセス可能な「ダウンロード視聴」手段の存在が、「テレビ機器視聴」を減少さ せる主要因となっている可能性は否定し難い。映像データをダウンロードすることにより、

テレビ機器を通さずともテレビ番組を視聴できることが、韓国の大学生らによるテレビ機 器の非所有にもつながっていた。また、テレビ番組データのダウンロードによって、いつ でも好きなテレビ番組を視聴することが可能になり、放送時間にテレビ番組を見るという 行為の必要性が低下していることが、「テレビ機器視聴」を減少させているといえる。

ただし、韓国の若者層を代表とみて調査した大学生にとって、テレビ機器の存在価値は 総体的に低下している。それにもかかわらず、テレビ機器の持つ重要性が一概に失われて いるとはいえない点も、特筆される点である。韓国でインタビュー調査を行った対象者の 中には、「テレビ機器視聴」を頻繁に行っている大学生も存在した。「ダウンロード視聴」

の活発な利用がある一方、積極的に「テレビ機器視聴」を行っている大学生も存在した。

さらには、「番組ダウンロード」によって、テレビ機器による視聴時間やその必要性が減少 したとはいえないという意見もあった。「テレビで面白いと思ったものをダウンロードする ので、テレビで面白いと思わせ、番組を選択させ、興味を持たせるという点では、テレビ

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本調査から得られた知見として、韓国の若者層による映像視聴行動の中で、テレビ機器 が映像視聴メディアの主流であった時代とは異なる状況が生まれていること、そのひとつ の要因が「番組ダウンロード」という新たなデジタル・メディア環境に支えられた背景に ある可能性が示唆された点が、一番のポイントとしてあげられる。したがって、この知見 をもとに韓国の若者層による映像視聴行動を理解するにあたり、「番組ダウンロード」およ び「ダウンロード視聴」がどのように行われているかを明らかにする必要があるとの考え に至った。「番組ダウンロード」および「ダウンロード視聴」と「テレビ機器視聴」との関 連性をより詳しくみることで、映像視聴行動に影響を及ぼしている韓国独自の社会的要因 を踏み込んで説明することができ、メカニズムの一端を解明することができると考える。

続く第4章では、「テレビ機器視聴」の代替視聴行動として、韓国の若者層を代表する存在 である大学生の間で最も頻繁に行われている「番組ダウンロード」および「ダウンロード 視聴」に関する利用行動と動機の調査結果を報告し、さらに考察を行うこととする。

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第4章 韓国における「テレビ機器視聴」および「番組ダウ

ドキュメント内 2013 年度(平成 25 年度) 博士論文 (ページ 91-96)