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データと方法

ドキュメント内 2013 年度(平成 25 年度) 博士論文 (ページ 73-77)

第 2 章 研究の背景

第 2 節 データと方法

本論文では、韓国におけるデジタル時代の映像視聴行動について理解するために、予備 的分析を行ったうえで、その結果から得た知見をもとに、本論文の中心をなす韓国の若者 層を象徴する大学生の「番組ダウンロード」および「ダウンロード視聴」と「テレビ機器 視聴」の利用行動と動機に対する調査・分析を実施した。本節では、2つの分析における目 的について述べ、続いて分析にあたって行われた調査のデータと方法について言及する。

第3章の予備的分析では、韓国の若者によるテレビ機器離れの理由について理解するこ とを試みる。インターネット環境やモバイル環境が十分に整備されている韓国社会では、

オンライン映像コンテンツにアクセスすることは容易であり、これまでの映像視聴と異な る形態の映像コンテンツ視聴行動が行われていることが予測される。10代および20代の若 者層は、①ダウンロードを含むオンライン映像視聴の比率が高く、他方、②テレビ機器を 通した映像視聴頻度が低く、しかも③スマートフォンの所有率が高いとの調査結果(放送 通信委員会、2013)からも、若者層が先導する形で、韓国社会におけるメディア視聴行動 のあり方は変化しているようにみえる。

第3章の分析では、②の「テレビ機器を通した映像視聴頻度の低下」に着目し、まず既 存メディアであるテレビ機器を通した映像視聴行動について理解することを目指した。デ ジタル時代の韓国におけるテレビ映像視聴行動について理解するため、オンライン・メデ ィアに関連する分析を行う前に、従来の映像コンテンツ視聴メディアであるテレビ機器を 通じた視聴行動に焦点を当てた検証が必要だと考えた。若者層を代表する韓国の大学生に インタビュー調査を実施することで、「テレビ機器視聴」のあり方における変化について理 解することを目指した。韓国における若者層がもつ「テレビ機器視聴」の独自性を明らか にするため、同じ東アジアに属するデジタル先進国である日本の若者による「テレビ機器 視聴」に関する調査結果を参照する。

第4章の本調査・分析では、デジタル時代の韓国におけるテレビ番組視聴行動について 理解するため、「ダウンロード視聴」による「テレビ機器視聴」の代替可能性について検討

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することを目指す。予備的分析を通して、韓国の若者の間で、テレビ機器による映像視聴 の必要性が低下している現状とその理由に関する分析結果を示すが、本分析を通して、テ レビ機器による映像視聴に代わる映像視聴手段である「ダウンロード視聴」と「テレビ機 器視聴」との関連性について理解することにつなげていきたい(竹村、2013b)。

加えて、予備的分析で対象とした既存メディアを通した映像視聴手段「テレビ機器視聴」

に関する分析の中で示された、「テレビ機器視聴」に替わる映像コンテンツ接触手段である

「ダウンロード視聴」および「番組ダウンロード」についてより理解を深めることを目指 した。「テレビ機器視聴」と「ダウンロード視聴」および「番組ダウンロード」の利用状況 と利用動機を比較することで、韓国の大学生がどのような充足を持ってふたつの映像視聴 手段を区別して利用しており、そこに代替可能性が存在するかどうかを予測することが可 能だとの理由から、研究目的を果たせると考える。比較分析の結果から、各利用動機と社 会的要因およびメディア環境要因との関係についても明らかにしたい。

本論文の調査においては、「利用と満足研究」の主流アプローチである量的調査ではなく、

インタビューを通した質的調査のアプローチを用いる。それは、本研究で扱う「テレビ機 器視聴」を行わない理由、「番組ダウンロード」および「ダウンロード視聴」に関する先行 研究が十分に存在しないためである。そのような研究分野においては、他のメディアを対 象とした先行研究が扱ってきた指標を単に当てはめるのではなく、質的調査のアプローチ を用いて、その利用行動の根本にある意味について理解することが適切だと考える。

本研究において、大学生を採用したのは、特に10代、20代では、①ダウンロードを含む オンライン映像を視聴している比率が高く、②テレビ機器を通した映像視聴頻度が低く、

そして③スマートフォン所有率が高いこと(放送通信委員会、2013)などから、先進的な デジタル・メディアユーザーであり、従来と異なる映像視聴行動が展開されていることを 検証するための代表的な調査対象となり得ると予測したからである。また、大学生を代表 とする若者層を対象に調査を実施することが、多様な利用行動と動機の発見につながるこ とも理由としてあげられる。今後、幼少期からデジタル・メディアに慣れ親しんでいる世 代が社会を構成する中心世代になっていくことを踏まえると、若者層をターゲットとして 映像視聴行動について適確に理解することは、将来の韓国における人々の映像視聴行動を 考えるうえでも有用だと考える。

本論文の研究調査では、韓国においてインタビュー調査を実施した。韓国ソウルの 3 大 学に通う大学生を対象にインタビューを行い、データを収集した。2012年11月に、32名

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に対して、通訳者を通してインタビューを実施した。日本語でのインタビューが可能な学 生については、日本語で行った。インタビューを受けた学生の内訳は、A大学8名(男性4 名、女性4名)、B大学15名(男性9名、女性6名)、C大学9名(男性4名、女性5名)

で、年齢は19才から28才までであった3

インタビュー方法は、執筆者と対象者との個人面接で、半構造化面接の手法が用いられ た。主な質問項目は以下の通りである。

① テレビ視聴を行わない理由

② (テレビ機器を所有していない場合)テレビ機器を所有しない理由

③ 映像をダウンロードするための機器、方法、ダウンロードする番組ジャンル

④ ダウンロードした映像を視聴する機器、方法

⑤ テレビ機器による番組視聴スタイル

⑥ 番組ダウンロードによる、テレビ機器視聴への影響

⑦ 番組ダウンロードの動機、テレビ機器視聴の動機

上記の質問項目の中から、①テレビ視聴を行わない理由、および②テレビ機器を所有し ない理由に関する回答は、第 3 章で調査結果の報告を行う韓国における非テレビ視聴行動 に関する分析において用いた。第 3 章は、若者層において「テレビ機器視聴」の頻度およ び必要性が低下している理由を探ることが目的であるため、①および②の回答結果をもと に分析を行った。③以下の質問項目に対する回答は、第 4 章で言及する韓国における「番 組ダウンロード」および「ダウンロード視聴」と「テレビ機器視聴」の利用行動と動機に 関する分析を行う際に使用した。

なお、インタビュー対象者に対する倫理的配慮として、インタビュー開始前に、インタ ビューの録音、論文執筆の際のデータ使用について許可を得た。論文執筆目的としてのみ のデータ使用、匿名によるデータ引用について説明し、答えにくい質問については回答し なくてもよい旨を伝え、録音を開始した。

インタビュー対象者の選択方法と人数の妥当性は、質的調査アプローチのひとつである

「修正版グランデッド・セオリー(M-GTA)」(木下、2007)に依拠している。M-GTA の

3 韓国では、大学在学中に休学することも多く、男性は約2年間の兵役義務があり、大学在 学中に服務するため、日本に比べ、大学生の年齢幅が広い。

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手法に従い、「分析焦点者」を「韓国ソウルの大学に通う大学生」に「方法論的限定」をし、

その範囲に収まる人物を調査対象者とした。本研究のリサーチ・クエスチョンに対し、32 名のインタビューを終えた時点で十分説明が可能だと判断したため、調査を終了した。

本研究のデータは、佐藤(2008)が提唱する質的データ分析法に沿って、以下のように 手続きが進められた。

① オープン・コーディング:トランスクリプションをもとに、1行ごとにその内容を表し たコードを振る。

② 焦点的コーディング:より抽象的・概念的なコードを割り当て、コードを集約する。

③ マトリックスの作成:各インタビュー対象者を行、各コードを列にしたマトリックス を作成する。

④ 継続的比較:マトリックスをもとに、焦点的コード間の比較、インタビュー元データ と焦点的コードの比較、インタビュー対象者間の比較、事例間の比較という 4 タイプ について、継続的に比較・分析を繰り返す。

⑤ 概念モデルの構築:焦点コード間の関係を図で示す

⑥ 概念モデルの再文脈化:概念モデルを、文章に書き戻す。

次に、韓国のデータと比較・参照するために用いられた日本の若者層の非テレビ機器視 聴に関する調査概要についても記しておく。日本の若者層を対象としたインタビュー調査 は、関西圏に住む「テレビを所有していない」大学生を対象として行われた(竹村、2012)。 テレビ機器を通した視聴をしない理由について、韓国の若者層の利用行動および利用動機 と比較・検討することが分析目的であるため、インタビュー対象者は、テレビ機器を通し た視聴を確実に行っていない「テレビを所有していない」大学生に限定した。

2011年11月から2012年1月にかけて、12名に対してインタビューが実施された。12 名のインタビューを終えた段階で、リサーチ・クエスチョンに回答できるだけの十分なデ ータを得ることができたと判断したため、調査を終えた。インタビューを実施した12名の 性別は、男性7名、女性5名で、インタビュー当時の学年は、1回生が2名、2回生が1名、

3回生が9名、所属学部は文系が9名、理系が3名であった。

インタビュー方法は、著者と対象者との個人面接で、半構造化面接の手法が用いられ、

各人1時間程度であった。主な質問項目は以下の通りである。

ドキュメント内 2013 年度(平成 25 年度) 博士論文 (ページ 73-77)