第 2 章 研究の背景
第 3 節 まとめ
第 2 章ではまず、人々がメディアをどのように利用しているかを解明しようとする、メ ディアの「利用と満足研究」について、歴史的にレビューした。Herzog(1944/ 1977)に よるラジオドラマ・シリーズに関する研究をはじめ、「利用と満足研究」の起源とされるメ ディア利用行動研究が行われた1940年代、そして子どものテレビ視聴行動を中心に研究が すすめられた1950年代から1960年代前半まで、さらに「利用と満足研究」アプローチを 用いて、特にテレビ視聴行動について多くの知見が積み重ねられ、最も大きな理論的発展 を遂げた1960年代後半から1980年代にかけて、3つの時代に分けて先行研究をまとめた。
1960年代以降の「利用と満足研究」では、①メディア充足のタイポロジーや充足とメデ ィア接触およびメディア選択との関連性、②メディア充足と社会的・心理的要因との関連 性、③充足とメディア効果、④期待する充足と獲得した充足、そして利用と充足に関わる 要因を包括的にまとめた⑤マス・メディア消費の充足に関する統合モデルについて、取り 上げた。
加えて、続く第3章と第 4章の調査研究における直接的な理論的根拠となる①メディア の非利用に関する「利用と満足研究」、そして②メディアの代替可能性に関する「利用と満 足研究」についても取り上げた。メディアの非利用に関する「利用と満足研究」は、「利用
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と満足研究」アプローチによる先行研究の多くが、「特定のメディアを利用している人のメ ディア利用行動」について理解しようとした研究であるが、「特定のメディアを利用してい ない人の非メディア利用行動」について解明しようとするものである。そして、メディア の代替可能性に関する「利用と満足研究」は、新しく登場・普及したメディアと既存メデ ィアの利用行動を比較し、関係性を検証することで、ニュー・メディアによる利用行動が オールド・メディアによる利用行動を代替する可能性があるかどうかを理解する研究アプ ローチである。
2つの研究視点をもとに、韓国社会における若者層の映像視聴行動について考えると、オ ンラインの映像コンテンツ接触手段が多様化したことが、既存の映像視聴メディアである テレビ機器を通した映像接触行為に影響を及ぼし、「テレビ機器視聴」を行わないという非 利用行動が生じている可能性がある。その一因として、新しく登場・普及した映像視聴手 段の利便性が、テレビ機器より高いということが考えられる。他方で、新たな映像視聴手 段によって、「テレビ機器視聴」が人々のメディア接触行動から消滅することはないにしろ、
何かしらの影響を受けることも否定できない。多くの映像視聴メディア・チャンネルが存 在する時、人々は異なる充足をもって複数の映像視聴手段を使い分け、多様な充足を得て いることが予測される。
本論文の目的は、デジタル時代の韓国における若者層の映像視聴行動について理解する ことであるが、まず予備的分析では、韓国の若者による既存メディア離れ、すなわちテレ ビ機器離れの理由を提示することを目指した。そして、テレビ機器離れの大きな原因のひ とつである新しい映像視聴手段である「ダウンロード視聴」について、本調査・分析を実 施した。本調査を通して、「ダウンロード視聴」と「テレビ機器視聴」の利用行動および利 用動機を比較し、メディアの代替可能性について考える。
続く第 3 章では、予備的分析・調査として、韓国の若者層を代表する大学生が「テレビ 機器視聴」を行わない理由について分析し、日本の若者層に対するインタビュー結果を参 照しながら、現代の韓国の若者層がもつメディア利用行動の独自性に関する知見を示した い。
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