第 4 章 評価
4.5 考察
62
63
分かった.従って,音声チャット,文字チャットのどちらか一方のみを用いて も,作業に支障が無いように改良する必要があると考える.また,今回の被験 者の組み合わせによっては初めて会話する方もおり,教員のアイスブレークが 十分でなかった可能性も考えられるため,このことが影響している可能性もあ る.
また,教員のシステム利用ログの分析の中で,文字チャットを確認するため に頻繁に一括観察画面と詳細観察・介入画面に切り替えていたことに関し,一 括観察画面に文字チャットを実装することでその煩わしさは解消できるのでは ないかと考える.その際,一括観察画面で一度に見れる情報量が多くなると,
教員が混乱してしまうことも考えられるため,ボタン切り替えで表示する等の 配慮が必要であると考える.
更に,一括観察画面の中で,個人で学習しているのか,共同で学習している のかが判断出来ないという問題もあった.今回設定した模擬授業では,学習者 役の被験者の数が少ないこともあったため大きな問題にはならなかったかもし れないが,グループの人数が多くなるにつれ,学習者グループの中での活動量 に差が生まれることも考えられ,場合によっては全く活動を行わない学習者が 出てくることや,グループの活動が特定の学習者の行動だけに支配されてしま うことも考えられる.これらを防止するためにも教員が一括観察上で,誰がど の程度作業しているのかを観察出来る必要が出てくるのではないかと考える.
教員のアンケート結果から,教員は,介入を行うことで学習者の作業を停滞 させることを懸念することが分かった.従って,直接介入する形として,単に 学習者の作業を一時停止するようなやり方だけでは不十分であることが分かっ た.学習者の作業を極力阻害せず,教員が学習者に伝えたいことを伝えられる 仕組みが望まれる.また,教員の行動分析の中で,教員が学習者にタスクを与 える際には,個人学習のタスク,共同学習のタスクというように,いくつかの
64
ステップに分けて学習状況を把握していることが分かった.従って,既存研究 で挙げられた古賀らのツールのように,学習の進捗状況を教員が分かり易く把 握できる仕組みを考える必要がある.
既存研究との比較の中で,グループ間での交流が今までにほとんど考えられ ていないことも分かった.模擬授業の中でも,教員から「グループ間の交流は 出来ないか」との要望があった.これは,単にグループだけで意見をまとめる のではなく,全体としての意見をまとめることで,一体感を与える学習を行い たいという背景からであると考える.従って,グループ間での交流もサポート できるよう改善していく必要があると考える.
提案するシステムには限界も存在する.今回提案したシステムは,アイディ アを図示し,相手と共有する共同学習を対象としてきたが,共同学習にも様々 な種類があり,提案システムでは完全に支援しきれないものがある.例えば,
KJ
法という学習方法は,カードに関連する連想事項を各グループのメンバーか ら出させ,類似のものをまとめて,これらを並べていくことで整理し,発想,論理の流れ,理屈付け,創造性の訓練を行うために用いられるが,これをシス テム上で行う場合には,学習者が描画したものを一つのオブジェクトとし,自 由に動かせる必要が出てくる.このような共同学習を実現するためには,要求 を最初から定義し直し,設計を行う必要がある.
また,提案システムの設計として,個人でも学習が出来るようページの参照 を同じグループで同期しないよう設計したが,グループのメンバーが多くなっ てくると,それぞれのグループメンバーが他のメンバーが今どのような活動を しているのかを把握できず,共同学習自体が崩壊する可能性もある.提案シス テムはあくまでも
2~6
名程度の少人数グループを前提として設計を行ったが,もし
1
グループにそれ以上の人数を割り振りたい場合には,別にシステムを設 計し直す必要がある.65
更に,提案システムで教員が観察できるのは描画内容と文字チャットのみと していたが,現実の共同学習で教員が観察しているのは学習者の作業内容だけ ではない.教員は,学習者の表情,声のトーン,グループの雰囲気等,システ ム上では見ることが難しいものも観察しながら,その都度適切な指導方法を考 え,学習者に対しケアを行っている.これをシステム上で支援するためには,
ビデオカメラの利用等を検討しながら,設計を行う必要がある.