本研究では、一次の誤信念課題3題・自己信念変化課題3題・二次の 誤信念課題3題を実施し、二次の誤信念課題を通過できなかった「心の 理論」未獲i得の高機能自閉症三者としてを、「心の理論」未獲i得として、
計7名を選定した。対象王者7名に対し、訓練用3課題を用いて指導を 行った。この訓練に入る前に、プリテストとして、訓練用課題3課題を 用い、対象児の未獲得部分を同定してから訓練を始めた。
それぞれの対象二者7名に下位認知スキル訓練を行った結果、各課題 に正答するようになり、その後、般二丁課題1〜3を実施したところ対 象児者7名とも般化用課題に正答することができた。
このような二次の誤信念課題の理解を可能にした下位認知スキル訓 練の研究は見当たらず、下位認知スキル訓練を実施したところ、本研究 では以下のことが明らかになった。
対象二者が誤答した他者の知識について訓練したところ正答できる ようになったことは、言語を用いての訓練が有効であったのではないか と思われる。また、「見えない」ことと「知らない」ことを言語及び絵 本を使用して訓練することで、他者の頭のなかにある目に見えない知識 の状態を紙芝居風の絵の視覚刺激を手がかり(媒介)として推定できる ようになったのではないかとも思われる。大六(1999)は、他者の知
Wimmer&Perner,1988)
本研究においては、対象三者に言語で質問し訓練をするため、文脈を 理解し対象児が正しく応答しているかどうか、つまり言語理解が正常の 範囲であるのかどうかを確かめるために絵画発達語彙検査をスクリー ニングテストとして使用した。その結果、語彙年齢は正常範囲であるこ とが確認されてはいるが、誤信念課題を通過し、言語に問題もなく質問 の文脈を理解している場合でも、理由付けは誤答をしていた。
対象児者7名はプリテストの段階で7名とも他者の知識状態を説明 するという理由付けはできていなかった。プリテスト及び訓練における 対象児への理由付けの質問が、「見ている→知っている」と「見ていな い→知らない(わからない)」という関係を少しでも意識させたのでは ないかと思われる。子安(1997)は、心の理解を獲得していくために は、対人的経験が必要だが、その時にことばが果たす役割も重要である
とし、何かを思考する際には内言は必要不可欠であると述べている。ま た言語なしで思考が成立するのは、空間的知能(ある人の顔を思い出そ
うとする場合)、音楽的知能(楽器の音色がどう違っていたかを想像す る場合)、身体一運動的知能(コンピューターのキーボードで単語を打 つときの指の動きを再現する場合)という3点をあげでいる。
理由付けの言語化訓練では、3〜7回の訓練を必要としたが、正答で きるようになった。訓練の回数に個人差はあるが、これは個々の対象児 者の発達水準の違いがあったためと思われる。近藤(1974)は、知覚 を認識にまで深める中心的な働きは思考であるとし、頭の中で状況を作 って見通しを行い、問題を解決することができるが、それは言語によっ
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て行われると述べている。理由付けの言語化訓練は、対象児の思考を促 進したのではないかと思われる。
それぞれの質問のどの部分を何回訓練すればそれぞれの質問に正答 できるようになったかは、対象児者ごとに異なっていた。誤答をした場 合に、絵本を使用して訓練をしたことによって、理由付けの言語化まで 形成をすることが可能であった。絵本を使用して訓練することは、視覚 刺激を用いた訓練となり、言語化の訓練に有効であったと考えられる。
このことは、自閉症児者に対して他者の「知識」についての学習可能性 を示すものであると思われる。
また、それぞれの質問を順々にしていくことが誤信念課題ができるよ うになったと考えられる。すなわち、易から難への質問の繰り返しが、
記憶と思考の働きを促進し誤信念課題に正答する認知機能を育ててい った可能性がある。
また、誤信念課題に正しく答えられることと、理由付けができること は別であった。理由付けができていなくても、誤信念課題が正答できて いる場合があったためである。そして、本研究の対象児は誤信念課題に 正答する訓練よりも理由付けに正答するまでの訓練の方が、訓練回数が 多かった。このことから、理由付けを言語化する認知スキルは誤信念課 題に正答:する認知スキルよりも高度な認知スキルであるということが
今後の課題
二次誤信念課題を通過した対象児のフォローアップ調査(残り2名)
それぞれの質問に応じて訓練していったわけであるが、訓練を何回か 繰り返さなければ、正答することができなかった。訓練数が少なくて も、誤信念課題が通過できるように、さらに下位認知スキル訓練質問 を改良すべきではないかと思われる。
・H:appe(1995)は、心の理論課題を通過することと言語能力との関連 性を指摘しているが、今後、心の理論課題で必要とされる言語レバー トリーにはどのようなものがあるのかという点について明らかにして いく必要があると考える。
・今回の般化課題は、単純な人・物の変更だけであったので、今後さら に般化課題の検討をする必要カミあると思われる。
・今回の訓練後、日常的なコミュニケーションにおいてどんな変化があ つたかを調査する必要があると思われる。
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第5章 要約 1.問題と目的
健常幼児の場合には、4歳頃から誤信念課題を通過できるようになる
(Perner,1991;Astington,1995)。しかしながら、自閉症児の場合に は、MAが4歳以上になってもこの誤信念課題を通過できない者が多い。
これは自閉症児には、「心の理論」の障害があるためと説明されている。
自閉症児の「心の理論」の障害は改善が可能なのであろうか。この疑問 を解くために、奥田(1999)は、他者の知っていることの「推論」の基礎
と考えられている他者の見えと他者の知っていることとの関係を調べる 研究を行った。
しかしながら、一次の誤信念課題を通過した高機能の自閉症児に、二次 の信念課題が解決できない場合、どのような認知スキル訓練を行えば二次 信念が理解可能になるかの研究は見当たらないように思われる。
そこで本研究では、「心の理論」指導研究をベースにして、自閉症児が 二次の信念課題を通過できるようになるために必要な認知条件とは何か
を明らかにする。
個人が「心の理論」を有しているか否かを調べる誤信念課題において、
一次の誤信念課題を通過はできるが、二次の誤信念課題は未通過の自閉症 児に、どのような下位認知スキルを訓練すれば、二次の誤信念課題が通過
2.方法 1)実験期間
実験は、1人の対象児につき、1回あたり30分〜1時間程度行われた。
実験期間は2001年6月〜11月の平日夕方および土・日に行われた。
2)実験場所
実験は、対象二者の自宅において実施された。
3)対象児者の選定及び対象児
本研究の対象三者は、A市内およびB市内に在住の高機能自閉症児者
(C学校における学校医による診断に基づく)7名の中から一次の誤信念 課題を通過することはできるが、二次の誤信念課題を通過することができ なかった自閉症児者7名(男子7名)であった。
4)対象二者選定課題・実験(指導)課題
実験課題としては、誤信念課題の移し替え課題3題(一次誤信念課題)・
自己信念変化課題3題・二次誤信念課題(絵本形式)6題(訓練用課題3 題・般下用課題3題)であった。
5)手続き
(1)対象児者の選定
実験者が対象児者に、個別に実施した。一次誤信念課題・自己信念変化課 題を高機能自閉症児者に実施し、各3課題(計6課題)とも正答した対象 児者に、さらに絵本形式の二次信念課題を実施し、この二次信念課題を誤 答した高機能自閉症児者が対象となった。
(2)下位認知スキル訓練
下位認知スキルの訓練は、対象児者選定の後、訓練課題用絵本を用いて
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個別に実施した。訓練に入る前に訓練課題用絵本を用いたプリテストが行 われ、対象児の未獲得部分を同定し、その部分から訓練を開始した。正答 の場合は、言語賞賛をし、誤答の場合は正答を提示し、絵本のページを戻 して、ストーリーをもう一度話しながら、対象児者に再度同じ質問をする という方法で正答できるまでこの手続きを繰り返した。
訓練課題における質問は、訓練用課題1ではA〜S(Sは理由付けの質 問)まで、訓練用課題2ではA〜W(Wは理由付けの質問)まで、訓練用 課題3ではA〜X(Xは理由付けの質問)まであった。質問一覧の後に、
正答の例と正答に対する実験者の反応と誤答の例と誤答に対する実験者 による訓練を示す。訓練課題用の絵本を用い、対象三者に訓練が行われた。
3.結果
1) 対象二者選定のための誤信念課題の結果
7名の対象児者のうち、5名が二次誤信念課題および理由付けの3課題 を誤答した。対象者3は二次誤信念課題3課題は正答したが、その二次 信念の理由付けはできなかった。対象児4は二次誤信念課題のうち、1 課題は正答したが、理由付けカ§できなかった。対象者7においては、自 己信念変化課題が3課題とも誤答であったため、訓練によって自己信念 変化課題が正答できるように指導してから、二次誤信念課題を実施した。
2) 対象児者者7名のプリテスト・訓練・般化課題の結果