第 3 章 放射線治療におけるシンボリックデータ解析の適用 17
3.8 考察
図 3.24: IBEDにおける治療計画 (Type3,通常のα/β比)
図 3.25: 倍加時間による影響
OARのDVHの形状には,腫瘍とOARの位置関係がある.一様な分布の場合,最 適治療計画は,腫瘍とOARのδとα/βによってのみ影響を受ける(Mizuta et al.,
2012).強度変調放射線療法や画像誘導放射線療法などの放射線照射技術の最近の進
歩により,OARへの放射線照射量を減らしながら(つまり,δiが比較的低い),腫 瘍に高精度で放射線を照射できるようになった(Tom´eet al., 2001).言い換えれば,
これらはOARへのDamage effectを減らし,腫瘍へのEffectを増やすことを可能に する.
照射の影響を現実的に推定するために,高線量の範囲でLQモデルを適用しない ように注意する必要がある. LQモデルは用量効果を計算するのに便利なモデルで はあるが,in vitroの場合の細胞の生存データの結果に基づいて構築されている.一 次項と二次項への影響をそれぞれ示すパラメーターαとβが必要であるこのモデル は,低用量範囲では効果を十分に推定するが,高用量範囲では放射線照射の効果を 過大評価することが知られている.つまり,高用量範囲での影響の曲線は線形であ るため,LQモデルは2次項による過剰な影響を推定する(Kirkpatrick et al., 2008;
Miyakawaet al., 2014).線量効果を計算する別のモデルであるUSCは,代わりの線 形曲線を使用して放射線のより現実的な効果を表すことにより,高線量の範囲での 二次効果を軽減する(Park et al., 2008). USCは,低用量範囲のLQモデルと高用 量範囲の2モデルを組み合わせている.高線量の範囲とは,腫瘍またはOARへの 放射線がDt,1またはDt,0の移行線量を超えることを意味する.高用量範囲の2次曲 線を線形になるように修正することにより,USCは組織の実際の状態をより現実的 に推定する.LQ-Rに基づく結果は,しばしば低分割放射線療法ではなく一回の照 射のみが最適な回数であることを示すが,結果は一般的に実用的ではない.前述の
ように,LQ-Rに基づく最適な照射線量が高線量の範囲にある場合,最適治療計画 の導出にはUSC-Rの使用が適している.
前立腺がんや乳がんなどの低α/β比のがんに対する放射線治療では,低分割照射 が最適であるとされている(De Bariet al., 2016; Di Francoet al., 2017; Valleet al., 2017; Zhou et al., 2015). 一方,いくつかの報告では,高α/β比のがんにおいて も低分割数で治療すべきであると考えられている(Ma et al., 2012; Lartigau et al., 2009; Laineet al., 2015). さらに,さまざまながん(例えば,悪性神経膠腫,肝が ん,胆管がん,脳動静脈の機能不全)に対する低分割放射線治療は,従来の放射線 療法と同じまたはより有益な結果をもたらすことがしられている(Khanet al., 2016;
Amelio et al., 2010; Huanget al., 2016; Greco et al., 2004; Honget al., 2016; Jones et al., 2007).
本研究の結果は,IBEDモデルでの最適照射回数が,高α/βがんのASFモデルで のそれよりも多いことを示している. さらに,IBEDモデルを使用した治療計画は,
一部のOARで極端な多数回の放射線治療を推奨することを示している. 実際の現 場でIBEDモデルを使用するときは,治療時間が長くなる可能性のある過剰な回数 を照射する可能性があるため,注意を払う必要がある. それに対して,ASFモデ ルの結果は,OARのさまざまなDVHについて計算された場合でも,一貫して臨床 診療の範囲内にある. したがって,ASFモデルは,IBEDモデルと比較して,OAR の広範なDVHの照射計画を導出する際にロバストであることを実証している.
本研究は,ASFを用いた最適治療計画が臨床使用の範囲での計画を示唆している のに対し,IBEDは高α/β比のがんに対して極端な多分割放射線治療を推奨する場 合があることを示している. この違いは,OARの非一様なDVHが原因である. 一
方,ASFで得られた結果は,現実的な治療の範囲内にある. したがって,照射計画 を導出するためのASFの使用は,高/低α/β比のがんの両方に適していることが考 えられる.ただし,放射線療法における他のがんタイプの最適な治療計画や副作用 の発生についてはさらに研究する必要があるが,現在の結果はモデルに基づいた放 射線治療計画が最善であると考えられる.