第 3 章 放射線治療におけるシンボリックデータ解析の適用 17
3.6 実データに即した DVH への適用
放射線が照射されていないが,その一部に高線量が照射されている(Type3)として DVHを作成した.治療対象のがんについては,α/β比が高い一般的ながんとα/β比 が低いがんのどちらについても設定している.パラメータは,α1 = 0.15,β1 = 0.015
(高α/β比がんの場合),α1 = 0.01,β1 = 0.017(低α/β比がんの場合),α0 = 0.04, β0 = 0.02,Tk = 0,Tpot = 28,Dt,1 = Dt,0 = 6と設定した.最適な照射計画は,
腫瘍に対して総線量が70Gy,照射回数30回とした場合でのOARに対するdamage
effectが最小化するような最適一回線量dと総照射回数Nを求めた.
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
020406080100
d
Volume(%)
ype1 D V H
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
020406080100
d ype2 D V H
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
020406080100
d ype3 D V H
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
010203040
d pe1 differential DVH
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
010203040
d pe2 differential DVH
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
010203040
d pe3 differential DVH
図 3.9: シミュレーションDVHと差分DVH
表 3.4: 前立腺がんにおける最適治療計画
Bladder LQ-R USC-R
Risk Group ASF IBED ASF IBED
High 12.44/1 12.44/1 18.71/2 21.69/3 Intermediate 14.94/1 14.94/1 26.19/3 28.90/4 Low 15.01/1 15.01/1 36.40/3 29.11/4 Rectum
High 12.44/1 12.44/1 21.69/3 21.69/3 Intermediate 14.94/1 14.94/1 28.90/4 28.90/4 Low 15.01/1 15.01/1 29.11/4 29.11/4 total dose / #fractions
となった. すなわち,リスクグループに関係なく,ASFとIBEDで計算された前立 腺がんの結果はほぼ同じである. したがって,ASFまたはIBEDのいずれかによる 治療計画は,この場合には少数回の分割照射が優れていることを示唆している.
3.6.2 肺がんにおける最適治療計画の比較
次に,肺がんの最適治療計画を導出した(α1/β1= 10). 結果を表3.5に示す.導 出された治療計画は,LQ-RまたはUSC-Rに基づくASFおよびIBEDの脊髄,気 管,食道でほぼ同じとなった. ただし,ASFとIBEDの結果は,他のOARとは異 なる.ASFは少数回の分割照射が最適であるが,IBEDは多数回での分割照射を推 奨している. まとめると,一部のOARは明らかに低分割照射を必要とするが,他 のOARは低分割照射または高分割照射で結果が分かれており,ASFとIBEDの選 択によってそれらは変わることがわかる.
表 3.5: 肺がんにおける各OARの最適治療計画
LQ-R USC-R
OARs ASF IBED ASF IBED
SC 23.27/1 23.27/1 45.70/6 45.70/6
Trachea 23.27/1 30.67/2 47.48/7 49.25/8 Esophagus 23.27/1 23.27/1 47.48/7 47.48/7 Bronchus 23.27/1 70.57/31 49.25/8 70.57/31 Aorta 59.73/16 70.00/30 59.73/16 70.00/30 PA 23.27/1 75.73/41 49.25/8 75.73/41 Lung 23.27/1 73.27/36 49.25/8 73.26/36 total dose (Gy) / # fractions
3.6.3 シミュレーション DVH への適用
最後に,3種類のシミュレーションDVHでの最適治療計画を導出した.ASFと IBEDの最適解が低α/β比のがんでほぼ同じであった. しかし,IBEDのType 2お
よびType 3DVHの結果では,高α/βがんにIBEDを使用する場合,最適治療回数
は非常に大きくなった.Type 1では,高/低α/β比がんの最適な照射数は,LQ-R またはUSC-Rのいずれかに基づくASFまたはIBEDとほぼ同じである.Type 2で は,低α/β比のがんに対する照射計画はほぼ同じである. 一方,高α/βがんの場 合,IBEDを使用した最適治療回数は,LQ-RとUSC-Rの両方に基づくASFの場合 よりもはるかに多くなる.Type 3では,高α/βがんの場合,LQ-RおよびUSC-R に基づくASFでは治療回数が少なく,IBEDでは数が大きくなった.
表 3.6: シミュレーションDVHにおける最適治療計画
LQ-R USC-R
High α/β ASF IBED ASF IBED
Type 1 23.27/1 23.27/1 42.15/4 49.25/8 Type 2 23.27/1 78.91/48 43.92/5 78.91/48 Type 3 23.27/1 81.85/55 40.37/3 81.85/55 Low α/β
Type 1 12.45/1 12.45/1 21.70/3 18.73/2 Type 2 12.45/1 12.45/1 24.68/4 21.70/3 Type 3 12.45/1 12.45/1 24.68/4 15.75/1 total dose (Gy) / # fractions
3.6.4 α/β 比との関係性
肺がん治療,前立腺がん治療のOAR,シミュレーションDVHにおけるOARに おいて,α/β比の影響を考えると,α/β比が小さいがんに対するOARについては,
少数回の照射が最適となった.治療対象であるがんのα/β比が小さいことは,OAR のα/β比に近くなることから,放射線照射により生じるダメージが両者で類似する ようになるためと考えられる.