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(1) 標的組織である肝臓における安全性評価

ミリプラチン懸濁液の標的組織である肝臓については、臨床投与方法と同じ方法により イヌに肝動脈内投与した評価系で評価した。投与液濃度は懸濁用液に懸濁可能な昀大濃度 とし( 20 mg/mL)、投与容量は、臨床での昀大投与液量( 6 mL/man)に相当する 0.12 mL/kg

(2.4 mg/kg)、又はそれを上回る 0.2 mL/kg(4 mg/kg)とした。臨床での適用時には、カテ ーテルを用いて固有肝動脈の可能な限り末梢から腫瘍の大きさに応じた投与液量が投与さ れるため( 2.7.3.1、2.7.3.3 参照)、標的とする腫瘍部位以外の周辺部分(正常組織)が投与 液に曝露される可能性が低い( 2.7.2.3.2.3参照)のに対し、非担癌動物を用いる非臨床試験 においては、投与部位周辺の正常組織が投与液の全量に広く曝露されることになる。従っ て、正常血管及び組織への曝露は臨床における肝動脈内投与に比べて十分に高いと考えら

れ、今回用いた投与量で、正常血管や正常組織への安全性評価が可能と考えた。

ミリプラチン懸濁液をイヌに肝動脈内投与した薬物動態試験結果から、ミリプラチンが 選択的に肝臓中に送達され、薬物が肝臓から循環血中に移行する速度が非常に緩やかであ ると考えられた。また、投与後 13週経過した時点においても投与量の約 1/6~1/10が未変 化体として肝臓内に存在しているが、これらは肝臓の血管中に塞栓した状態、又はマクロ ファージ様の細胞に取り込まれた状態で存在し、肝実質細胞に広く分布することはないと 考えられた( 2.6.4.9参照)。

ミリプラチン懸濁液をイヌ肝動脈内に単回又は計 6 回反復投与した結果、肝臓で血管内 への投与液の塞栓によると考えられる虚血性変化に加えて、ミリプラチンの直接的な影響 の可能性も示唆される ALT(GPT)、AST(GOT)あるいは ALPの上昇が見られたほか、重 篤な変化は認められず、上述の肝臓内動態を反映した結果であると考えられた。 また、単 回投与と比べ、反復投与によっても、毒性の増強は見られず、新たな毒性の発現も認めら れなかった。なお、投与部位である血管の局所刺激性については、一般毒性試験結果から 血管障害を示唆する所見は認められなかった。一方、ラット皮下注毒性試験の投与部位の 変化から、ミリプラチン懸濁液が血管周囲へ漏出した場合には、本薬と接触する組織部位 でミリプラチン懸濁液に対する異物反応に起因した炎症性変化が惹起される可能性がある と考えられた。

(2) 全身における安全性評価

ミリプラチン懸濁液を肝動脈内投与後、未変化体として肝臓に長期間滞留することが確 認されているが、肝臓から循環血中(血漿中)へ移行したミリプラチン由来の白金成分は 大部分が蛋白結合型で存在し、その多くは有機溶媒で抽出されない不可逆的な結合をして いるものと推察された。活性体 DPCについては、 in vitroの評価系で検出されるものの、 in vivo では検討を行ったいずれの試料からも検出されなかった。ミリプラチン懸濁液から放出さ れた DPCは蛋白やアミノ酸などの血清成分と速やかに結合して消失することが確認されて おり、循環血中では極めて低濃度で存在し、循環血中遊離型白金成分に占める DPCの割合 は極めて低いと考えられた。また、ミリプラチン肝動脈内投与後の主要排泄経路は尿中で あり、蛋白との不可逆結合体も昀終的には蛋白の分解により分子量の小さい遊離型成分と なり、尿中へ排泄されると推測された( 2.6.4.9参照)。

標的組織である肝臓における安全性評価は、上述のとおりイヌで臨床投与経路の肝動脈 内投与により実施したが、本剤の薬物動態学的な特徴から肝動脈内投与では全身性への安 全性評価としては十分に高い曝露を達成できない。従って、ミリプラチン懸濁液が循環血 中へ移行した場合の全身への影響を把握するために、より高い全身曝露を達成しうる系と して、ラット及びイヌの静脈内投与による毒性評価、並びに昀大曝露を長期間達成しうる 系としてラット皮下投与による毒性評価もあわせて実施した。このラット皮下投与につい て薬物動態を確認したところ、ミリプラチン懸濁液は大部分が投与部皮下に滞留し、徐々 に血中へ移行し、主として尿中へ排泄された。投与後の滞留部位は異なるものの、皮下投

与時の薬物動態は肝動脈内投与時と質的には同様の特性を示し、かつ、十分な全身曝露が 得られた( 2.6.4.9、2.6.4.3.3参照)。

イヌの反復肝動脈内投与では臨床適用頻度を考慮して、 1回目投与後に 4週間間隔で 2回 目投与を行い、その後 13週間の観察期間を設けた。これを 1クールとし、連続 3クール繰 り返すことにより、 1年間に 2.4 mg/kgのミリプラチン懸濁液を計 6回反復投与した結果、

昀終投与後に前期第 II相臨床試験における昀大曝露量(血漿中総白金濃度: 54 ng/mL)と ほぼ同等の血漿中総白金濃度( Cmax:41~44 ng/mL)を示した。肝臓の血管内への投与液の 塞栓によると考えられる虚血性変化に加えて、ミリプラチンの直接的な影響の可能性も示 唆される ALT(GPT)、AST(GOT)あるいは ALPの上昇が見られたが、全身に対する影響 は極めて弱く、また、単回投与と比較して変化の増強や新たな毒性の発現も認められなか った。

ラット及びイヌの 1 ヵ月間反復静脈内投与では、ミリプラチンエマルション製剤を投与 した結果、主としてエマルション製剤ビークルの塞栓によると考えられる血液循環障害が 見られたほか、ミリプラチンに起因すると考えられる変化として、ラットでは造血系への 影響、肝酵素の上昇、腎機能パラメータの変動(尿蛋白・潜血陽性、尿素窒素及びクレア チニン増加など)、肝臓の障害性変化、肺の泡沫細胞及び動脈壁肥厚、心臓への影響、腎臓 の障害性変化など、イヌでは肝臓小肉芽腫、肝臓及び脾臓の大食細胞の浸潤又は集簇、血 小板数減少、骨髄の M/E 比増加などが認められた。イヌの試験において、肝臓及び脾臓の 異物処理像と考えられる変化以外は 1 ヵ月間の休薬により回復性が認められていることか ら、全身に対する影響は軽度なものと考えられた。

ラットの皮下投与では、ミリプラチン懸濁液を単回( 1回投与、 2週間観察)、1ヵ月間( 1 回/2週、計 2回投与、 4週間観察)及び 6ヵ月間( 1回/4週、計 7回投与、 28週間観察)に わたり投与した。単回投与の結果、投与部位である頸背部皮下組織にミリプラチンに対す る異物反応と考えられる変化が認められたのみで、全身性の毒性は極めて弱く、概略の致 死量は 50 mg/kgを上回った。 1ヵ月間投与の結果、単回投与試験と同様に投与部位である 頸背部皮下組織に炎症性変化、並びにそれに関連した血液生化学的検査パラメータの変動 が認められた。これらの変化は溶媒のヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル投与でも認め られたが、その程度はミリプラチン懸濁液投与でより強く認められた。ミリプラチンによ る全身性の毒性を示唆する変化は認められず、 1 ヵ月間投与における無毒性量は雌雄共 50

mg/kgと考えられた。 6ヵ月間投与の結果、 6.25 mg/kg群から投与部位(頸背部皮下組織)

の炎症性変化が、 25 mg/kg 群ではそれに関連した血漿蛋白の変動、血漿総コレステロール 及び肝臓重量の増加が認められ、更に、 12.5及び 25 mg/kg群では投与部位に悪性線維性組 織球腫が認められた。投与部位への影響を除いた全身性の毒性に対する無毒性量は、雄で は 25 mg/kg、雌では 12.5 mg/kgと考えられ、全身性への影響は極めて低いものと考えられ た。なお、ラット 6 ヵ月間皮下投与試験で得られた無毒性量における投与期間終了時の血 清中総白金濃度( Cmax)は、雄で 610 ng/mL、雌で 640 ng/mLであり、前期第 II相臨床試験 における昀大曝露量(血漿中総白金濃度: 54 ng/mL)の約 11倍に相当する。

更に、安全性薬理試験として、ミリプラチンエマルション製剤の単回静脈内投与での一 般症状及び行動、中枢神経系、呼吸・循環器系、自律神経系、消化器系、泌尿器系、血液 系(溶血・凝固時間)及び in vitroでの平滑筋、血液系(血小板凝集)に及ぼす影響をそれ ぞれ検討した結果、エマルション製剤ビークルに起因すると考えられる変化以外には認め られず、重篤な副作用を引き起こす可能性は低いものと考えられた( 2.6.2.4参照)。

以上のとおり、臨床投与経路である肝動脈内投与による検討のほか、より高い全身性の 曝露を達成しうる静脈内投与及び皮下投与による検討の結果、主として投与部位における 変化が認められ、全身に対する影響は軽度なものであった。本剤の薬効発現は、標的組織

(腫瘍局所)への選択的なミリプラチン懸濁液の送達及び標的組織での活性体成分の曝露 に起因しており、一方で、循環血中の活性体成分の曝露が極めて低いことから、全身性の 影響が極めて軽度であるとの特徴を有する。すなわち、ミリプラチン懸濁液の有用性は、

本剤の薬物動態学的特徴に起因すると考えられた。

(3) ラット 6ヵ月間皮下投与で発現した悪性線維性組織球腫について

上述のとおり、ミリプラチン懸濁液をラットに 6 ヵ月間皮下投与の結果、 12.5 及び 25

mg/kg群では投与部位に悪性線維性組織球腫が認められた。ミリプラチン並びにその活性体

である DPCは遺伝毒性を有することが確認されていることから、皮下組織に長期間滞留し たミリプラチン懸濁液の遺伝毒性作用により、皮下に腫瘍が発現した可能性は否めない。

しかし、全身曝露系の皮下投与であるにもかかわらず、悪性線維性組織球腫はミリプラチ ン懸濁液が長期間滞留した皮下組織のみに限局的に発現し、その他の器官・組織には原発 性の腫瘍性病変並びに皮下悪性腫瘍の転移も認められなかった。ラットの皮下組織におけ る発がんに関しては、非遺伝毒性物質であっても、多くの物質(糖、塩化ナトリウム、水 溶性の着色料、プラスチックなど)について、皮下に長期間滞留することによる類似の腫 瘍発生が報告されており文献 2)、本試験における悪性線維性組織球腫発生にはこれらと同様の

「異物性発癌」が関与している可能性が高いものと考えられた。また、臨床投与経路であ る肝動脈内投与で実施されたイヌの 12ヵ月間歇反復投与試験では投与部位(肝臓)を含む 器官及び組織において腫瘍性変化は認められなかったことからも、本試験で見られた悪性 線維性組織球腫は、皮下で特異的に発現した「異物性発癌」の可能性が高いと考えられる。

これらのことを考慮すると、ヒトへの肝動脈内投与において、ラットの皮下投与で発現し た腫瘍性病変が発現する可能性は低いと考えられる。

(4) 生殖発生毒性評価

代替投与経路である皮下投与を用いて、 SD系ラットにおける受胎能及び胚・胎児発生に 関する試験、出生前及び出生後の発生並びに母動物の機能に関する試験、及び NZW種ウサ ギにおける胚・胎児発生に関する試験を実施した。その結果、ミリプラチンには胚・児致 死作用及び催奇形作用はなく、胎児発育にも影響を認めなかったが、ラットの 25 mg/kg以 上の投与で母動物の機能に及ぼす影響として乳腺の発達不全及び哺育不良に伴う全児死亡

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