III. 1.3.4. 1 回介入群(One time intervention)における学年別比較
III.2. ディトレーニングについて
III.2.1. 考察
夏の大会終了後,引退した対象中学校3年生野球部員生徒12名に対して,引退 直後の体力時と,半年間のディトレーニング期間を経た低下体力時の2回にわたり 体力測定をおこなった.
文部科学省集計による同年代の体力測定・テストと高校1年生の体力測定・テス トの一覧から(表135-139),同年代の全国平均と然程差はないことが伺える.
中学部活動生活の中で 3 年生の運動部活動については,7‐8 月にかけての大会
項目 標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差
体 1 身 長 (cm) 433 165.60 6.37 579 165.52 6.53 335 165.54 6.67
2 体 重 (kg) 428 53.42 7.73 573 53.39 8.36 335 54.73 8.65
格 3 座 高 (cm) 418 87.79 4.45 566 87.70 4.29 324 88.24 4.24
1 握 力 (kg) 435 35.20 7.04 579 35.61 7.26 339 36.32 7.04
2 上 体 起 こ し (回) 437 30.71 6.95 581 29.73 5.81 340 30.61 5.56 3 長 座 体 前 屈 (cm) 437 49.20 11.32 580 46.96 10.10 340 48.06 9.58 4 反 復 横 と び (点) 429 56.05 6.65 574 55.38 6.77 340 55.56 6.26 5 20m シ ャ ト ル ラ ン (回) 278 94.91 22.51 377 97.51 21.59 236 95.81 22.53
* 持 久 走 (秒) 177 370.19 45.95 246 361.55 41.94 134 363.46 47.99
6 50m 走 (秒) 431 7.53 0.60 573 7.47 0.55 336 7.39 0.56
7 立 ち 幅 と び (cm) 428 213.76 24.32 574 214.16 21.77 337 215.72 22.74 8 ハ ン ド ボ ー ル 投 げ (m) 435 24.93 5.87 577 24.28 5.58 340 25.71 5.10
9 合 計 点 389 51.59 9.85 554 50.69 9.22 331 52.15 9.23
(注)20mシャトルランと持久走は選択実施 テ
ス
ト
都 市 階 級 区 分
区 分
年 齢 別 ・ 男 女 別 14歳(男子)
小 都 市 町 村
大・中都市
項目 標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差 標本数 平均値 標準偏差
体 1 身 長 (cm) 527 168.40 5.90 605 168.22 5.86 209 168.35 5.41
2 体 重 (kg) 520 58.49 8.79 603 58.18 9.04 208 58.70 8.96
格 3 座 高 (cm) 511 89.51 3.86 580 89.84 3.85 205 90.11 3.42
1 握 力 (kg) 525 38.67 6.72 610 38.76 7.23 210 38.28 6.90
2 上 体 起 こ し (回) 528 29.27 6.10 612 29.18 6.50 209 28.89 5.75 3 長 座 体 前 屈 (cm) 528 48.88 10.80 613 47.54 10.56 210 48.62 10.44 4 反 復 横 と び (点) 523 54.71 7.06 608 54.84 7.63 209 54.00 6.94 5 20m シ ャ ト ル ラ ン (回) 290 80.05 24.14 400 85.42 26.68 128 82.92 22.33
* 持 久 走 (秒) 254 377.62 50.04 257 385.90 57.87 100 377.24 54.65
6 50m 走 (秒) 519 7.46 0.62 600 7.51 0.68 208 7.51 0.61
7 立 ち 幅 と び (cm) 521 217.19 25.35 597 216.75 25.44 208 216.24 23.89 8 ハ ン ド ボ ー ル 投 げ (m) 526 25.18 5.71 608 24.31 5.80 210 24.96 5.49
9 合 計 点 500 50.93 10.07 573 50.78 10.68 201 50.17 9.74
町 村
区 分
テ
ス
ト
年 齢 別 ・ 男 女 別 15歳(男子)
都 市 階 級 区 分 大・中都市 小 都 市
が終わると現役引退となる.引退した多くの選手が運動部活動を終了し,翌年4月 の高校入学まで活動を休止しているのが現状である2 ).しかし,引退に伴うディト レーニングにより,これらの体力要素が低下するのではないか.また,低下した体 力のままで次のステップ,つまり,高校入学直後から急に上級生とともに高強度の トレーニングをおこなうことにより,スポーツ外傷・障害発生が増加することが懸 念されている50 ) .文部科学省集計による高校生の体力測定・テストの一覧と比較 して,やはり全体的に身体レベルが上がっている中でディトレーニングによって低 下した身体能力のままトレーニングをおこなうことは傷害につながるのではないか との報告もあることから,野球選手に必要な体力要素として,筋力,柔軟性,敏捷 性,持久力が挙げられ51 ) ,低下した体力要素の詳細を明らかにし,ディトレーニ ング中にどの要素に焦点を当て,どのような運動をおこなっていけば良いのかを明 らかにすることで,障害予防につながると考えた.しかし,測定の結果,野球選手 に必要な体力要素で有意に低下したものはなかった.これには成長に伴う骨格筋の 増大が大きく関わっていると考える.
この年代の男子の体脂肪率や皮下脂肪厚は一般的に横ばい状態であるか,トレー ニングを継続していれば減少する.また,トレーニングと体脂肪に関する研究でも,
トレーニングによって体脂肪は減少し,除脂肪体重が増加する.逆に,ディトレー ニングによって体脂肪は増加し,除脂肪体重が減少すると報告されている 51 ) .こ れは骨格筋量を表していると考える.実際の測定結果を見ても骨格筋は増加してお り,増加分の筋力が発揮されれば,体力の低下を覆い隠すことができるのではない かと考えた.このことから,約半年間のディトレーニング期間があったとしても,
この年代の成長による身体組成が,野球に必要とされる体力要素の低下を招かなか った結果となったと考える.本研究の課題として測定人数の少なさがあげられる.
体力測定はまだ協力を得られていない学校がほとんどであるため,引き続き協力を 働きかけていきたいと考えている.
IV. 総合考察
先行研究においては,野球における障害調査報告は各年代で多角的におこなわれてきた.
しかし,先行研究の多数が横断的研究であり,成長期野球選手の年次変化を調査したもの,
障害予防に働きかけるものは少ない.
本研究より,本研究において中学校入学前からの痛みが多い現状も明らかとなり(表 3), その結果を踏まえ重要なことは,介入することによって痛みを軽減させるということではな く,痛みの状況を把握することである.継続した観察研究と介入研究によってケア意識を持 たせ定着させること.ケア意識の向上により有痛率がどのように変化するのかを明らかにす ることが重要かと考えた.また,先行研究の問題点と課題,予備研究の結果により,縦断的 な観察研究と介入研究が,障害予防の環境改善と障害予防意識の改善に必要であることが考 えられた.アンケート調査による観察研究の継続とコンディショニング指導による直接的な 介入研究,中学生野球部員の体力特性の把握をおこなうことが障害予防の環境改善と障害予 防意識の改善に繋がると考え,本研究において中学生野球部員に調査対象を絞り,指導内容 及び障害発生に関する調査を実施し,観察研究と介入研究の結果を得た.
観察研究より,身体に有する痛みについて,6 年間の各年度の関係をみてみると,有意な 関連性が認められ,痛みを有する者の低下が示唆された.これは,アンケート調査・コンデ ィショニング指導による継続した観察研究と介入研究の関与が影響したと推察される.継続 した観察研究,介入研究によってケア意識が向上したことは,アイシング,ジョギング,マ ッサージで身体に対するケアをおこなっていると,介入群でより多くの項目で高値を示す結 果から推察される.この結果は,より身体に対するケアに関して介入群で実践していること の裏付けになるのではないかと考えた.また,観察研究であるアンケート調査をおこなうこ とでケア意識が向くようになった項目からも6年間の中で,アンケート調査でケア意識が向 くようになったと有意に差を示した.実数で比較しても高値を示し,非介入群では有意差を 認めなかったことから,介入群でより意識してこのアンケート調査に取り組んでいることが わかる.アンケート調査でケア意識が向上する,これも介入効果の一つであると考えている.
ケア意識の向上・実践の改善を見るための項目としては,ストレッチ講習会は役に立って いるか,講習会を受けて身体に気をつけるようになったか,Home programはおこなってい るか,ストレッチ講習会を希望するかの項目を挙げた.結果,ストレッチ講習会は役に立っ ていると答えた生徒が6年間で関連性があることを有意な差で示し,実数で比較しても高値 を示した.これがケア意識向上の一助となっていると考えたが,講習会を受けて身体に気を つけるようになったかの項目では有意な差を認めなかった.役に立っていると感じさせてい るにもかかわらず,気をつけさせるまで至っていないことが今後の課題点としてあげられる.
また,介入群への質問項目に関して,方法にも記載したが介入受け入れ良好な中学校に限定 されており,実際に講習会を開いてもらっている立場から否定的な回答は答えづらいことも 考慮する必要がある.このため,結果の解釈は慎重さが求められると考える.
介入研究において,コンディショニング指導による結果は観察研究の考察に上述した通り である.次のステップ(高校野球)での障害予防に繋げる一つの指標とするための研究であ るディトレーニングに伴う中学生野球部員の体力特性であるが,引退に伴うディトレーニン グにより,野球に必要とされる筋力,柔軟性,敏捷性,持久力の体力要素が低下するのでは ないか.また,低下した体力のままで次のステップ,つまり,高校入学直後から急に上級生 とともに高強度のトレーニングをおこなうことにより,スポーツ外傷・障害発生が増加する ことが懸念されている 50 ) .との報告もある.このことから,低下した体力要素の詳細を明 らかにし,ディトレーニング中にどの要素に焦点を当て,どのような運動をおこなっていけ ば良いのかを明らかにすることで,障害予防につながると考えた.しかし,測定の結果,野 球選手に必要な体力要素で有意に低下したものはなかった.これには成長に伴う骨格筋の増 大が大きく関わっていると考える.中学部活動生活の中で3年生の運動部活動については,
7‐8月にかけての大会が終わると現役引退となる.引退した多くの選手が運動部活動を終了 し,翌年4月の高校入学まで活動を休止しているのが現状である2 ).しかし,骨格筋の増大 により,体力要素の低下は見られなかったことで,体力測定だけでは測れない項目を,つま り,技術的要素を調査しなければならないことが課題としてあげられる.
今回の観察研究結果は自由記載の項目の記載をしなかったが,痛むときどうするかのアン ケート調査項目に関して,休まないと答えた人数が半数近くいた.痛くてもできる練習はあ ると前向きな回答を寄せた生徒もいたが,中には監督に知られたくない,レギュラーから外 されたくないといった後ろ向きの意見が多数寄せられた.スポーツをおこなう者にとって,
レギュラー獲得は第一目標であり,障害を負った場合のチーム内フォローアップ体制の整備
(安心して報告できるようなチーム作り等)が必要であると考えられる.知られたくないと 答えた生徒の多数は,病院へも行かない現状がある.これは障害を助長する多くの要因の一 つであると考え,より一層の観察研究・介入研究の継続した活動が必要であると考えている.