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  ウィレムスは著書の中で、幅広い内容について記述しており、大きく①音楽と関わるための 諸要素について思想と実践の両側面から記述したもの、②音楽教育について心理学や哲学の見 地から検討したもの、③音楽療法、に分類することができる。そのために音楽家や音楽教育家

113 Ibid., p. 88.

114 Ibid., p. 88.

115 Ibid., p. 86.

のみならず、教育学者や心理学者、哲学者といった多領域にわたる専門家の論考を援用しなが ら、音楽について、また、音楽教育のあり方について、多角的に検討している。これらの著書 は、音楽教育思想について記述しているものでも教育実践に関する具体的な内容が含まれる。

他方、第

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章に述べる教育実践について記述した『教育の覚え書き帳』にも音楽教育の理想や 理念が含まれており、そのことによって抽象的な内容になっている部分もある。したがって、

両者は相互に内容を補い合っている面があると考えられる。

  また、ウィレムスの音楽教育思想は、音楽の三要素「リズム、メロディ、ハーモニー」と人 間の生の三要素「生理的な生、情動的な生、精神的な生」のそれぞれの要素の密接な関わりに 基づいて展開されていくことも明らかとなった。いくつもの著書の中でそれを示す図表を用い ていることから、ウィレムスが音楽教育家となるより以前に確立したこの思想が晩年に至るま でほとんど変化していないことがわかる。

 

ウィレムスが内的聴感の重要性を唱えた言説や、その育成に向けて提案した学習課題は、学 習者が音を内的に聴く意識に積極的に働きかけており、いずれも効果的であると考えられる。

しかし、これらのアプローチの中では、教育の成果を指導者が確認するという視座が欠けてい るように思われる。内的聴感の育成に向けた教育実践では、学習者に「何が」、「どのように」

聞こえているのかを確認しにくいという難しさが伴うため、それは無理のないことであろう。

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章に記述するように、ウィレムスの音楽教育実践では、子どもたちができるかできないか を確認するよりむしろ、多種多様な音や音楽に多く触れさせていく。さらに、ウィレムス自身 が、「よい音楽家たちだけは、彼らが今から演奏することになるものをきく」と述べているよ うに、内的聴感を演奏などの音楽活動に効果的に作用させていくためには、いつまでもそこに 集中的な意識を向けているのではなく、そこからさらに無意識のレベルにまで昇華させていく ことが重要なのではないかと考えられるが、ウィレムスの思想や教育実践の中では、意識の先 のことまでは触れられていないように見受けられる。

  当然ながら、内的聴感の育成を目指す教育実践一つをとってもこれまで見てきた方法に全て

が集約されているということではなく、他の音楽要素との兼ね合いや学習者の実態に応じて用

いられる課題が選ばれ、多様に変化し、展開させていく必要があるものと考えられる。

4 章  ウィレムスの音楽教育実践

  「音楽は言葉であり芸術である。ゆえに、母国語と同じように発達させることができる。(中 略)最初に子どもが話す時にはまだ読み書きを学んでいないのと同様に、私の音楽教育はト音 記号からではなく、音響の世界における能動性と感受性を浸透させることから始める。」

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ウィレムスの音楽教育には、音楽の諸要素をまずは感覚として習得させた後に理論を教えるこ とを段階的に行っていくという特色があり、まさに第

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章で述べた新教育運動の「知識を与え る前に経験させる」という考えに基づいている。この方法によって、ウィレムスは理論と実践 とが乖離しない音楽教育を構築している。

  本章では、ウィレムスの音楽教育実践の諸相を明らかにしていく。第

1

節では、

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冊におよ ぶ一連の指南書である『教育の覚え書き帳』のうち、現在も入手が可能なものの内容を分析す る。第

2

節では、筆者が参加した

2014

年のウィレムス国際会議および

2015

年のウィレムス国 際セミナーで聴講した公開レッスンを基に、その指導内容の言語化を試みる。第

3

節で、『教 育の覚え書き帳』の内容が現在の教育実践の中でどのように反映されているのかを考察する。

  『教育の覚え書き帳』は、特に若い指導者に向けた音楽教育実践に関する指南書として書か れている。しかし、抽象的な文章で書かれた箇所も多かったり、楽譜が提示されるに留まって いたりするために、それを読み進めるだけでは生きた実践の様子が浮かび上がってこない。さ らに、具体的な実践内容について説明されている箇所についても、例えば微分音程の聴き分け や即興演奏など、導入期の子どもに向けた実践内容としては高度なのではないかと考えられる 実践が多く含まれている。ウィレムスは「全ての子どもに音楽教育を」与えるべきであると主 張しているが、この主張と先述した実践内容の高度さは、ともすると矛盾しているかのように 見受けられる。

  本章では、現在行われているウィレムスの教育実践内容を補うことによって、『教育の覚え

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フランスのリヨンにあるウィレムスの音楽教室「リメア(Ryméa)」のウェブサイトより

http://rymea.opentalent.fr/la-pedagogie/(2015

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日閲覧)

書き帳』の記述のみでは読み取ることができなかった実践の場の雰囲気や指導者の教育的意図 の言語化を試み、その実態に迫りたい。

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節  『教育の覚え書き帳(Carnets pédagogiques)』の概要と分析