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第 3 章 順圧 S-model-EnKF

3.3 インパーフェクトモデル実験

3.3.3 考察

誤差共分散行列の固有値より小さくなっている.

しかし,観測値と解析値の差を見てみると,その卓越する誤差パターンは傾圧不安 定波である.S-model-EKFとS-model-EnKFによって見積もられる解析誤差と実際の 誤差は異なることを示している.これはEKF,EnKFがモデルバイアスに非常に敏感 であるため,順圧S-modelの大きなバイアスの悪影響を受けたものと考えられる.こ のことは,共分散膨張係数をパーフェクトモデル実験より大きな値にし,アンサンブ ルスプレッドを広げてやらないとS-model-EnKFが動作しないことからも,モデルバ イアスが非常に大きいことがわかる.EnKFによるバイアス補正は,Beak (2006)な どで行われており,そのような手法を実装する必要がある.もしくは,共分散膨張を multiplicative inflationではなく,モデルバイアスを考慮するような摂動を解析アンサ ンブルに足し込むadditive inflationを用いるという方法もある.

S-model-EKFとS-model-EnKFのRMSEの比較という点では,S-model-EnKFアン サンブルサイズが250以上でないとS-model-EKFを近似できない.10事例の平均から もこのことは確かめられた.これは,パーフェクトモデル実験でアンサンブルサイズ が100で十分でサンプリングエラーを除去できるという結果と異なる.モデルのバイ アスが大きい場合,アンサンブルサイズを大きくして,さまざまな可能性を考慮する ことが必要であるため,より大きなアンサンブルサイズが必要なのかもしれない.順

圧S-modelは初期値敏感性が小さく,外力の推定にバイアスがあると考えられている

ため,加藤 (2006), 近藤 (2006)で用いられているバイアス補正アンサンブルを組み込 むか,Buizza (1999)のStochastic physicsを導入すれば,アンサンブルサイズを小さ くできる可能性がある.

EnKFは無限のアンサンブルメンバーをそろえることでサンプリングエラーがなくな り,EKFを近似できる.しかし本実験では,アンサンブルサイズ300のS-model-EnKF と410のS-model-EnKFと1000のS-model-EnKFではその解析値にほとんど違いは見 られず,アンサンブルサイズはモデルの自由度以下であっても十分であることが確か められた.これは,モデルによる変数間の拘束により,モデルの実質的な自由度は見 かけの自由度より小さいこと示しており,少ないアンサンブルメンバーによるサンプ リングエラーは残るのもの,それはずっと小さいものであると考えられる.さらに順

圧S-modelは非線形モデルであるため,非線形モデルの線形化を必要とする.また,本

実験は波数空間での同化実験であるため,実空間で同化実験を行う場合には局所化を

適応することができ,よりアンサンブルサイズを小さくできると言われている.ただ,

パーフェクトモデル実験で示したように,実空間では局所化によって本来取り込まれる べき離れた点の重要なシグナルを無視してしまう可能性があるので注意が必要である.