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局所アンサンブル変換カルマンフィルタ (LETKF)

局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(Local Ensmeble Transform Kalman Filter, LETKF)は,Hunt (2005), Hunt et al. (2007)で提唱されたアルゴリズムで,LEKFに ETKFのアンサンブルアップデート手法を組み込んだEnKFで,並列計算に非常に優 れている.LETKFは各格子点を中心とする小領域(local patch)を持っており,それ

ぞれのlocal patchで独立に解析できる.この点は,観測を1個ずつしか同化できない

Serial EnSRFと大きく異なり,LETKFは実用性に優れている.

LEKFは,格子点の周りのlocal patch内のアンサンブルを使って解析を行う.その 際に,local patchでの予報誤差共分散を主成分分析し,その主成分を用いて効率的に 解析を行う.詳細は三好(2006) およびOtt et al. (2004) を参照していただきたい.さ

らにLETKFは,予報誤差共分散の主成分分析を行わず,アンサンブルアップデート

の際にETKFのアンサンブル変換を取り入れることで,アンサンブル予報誤差を解析 アンサンブルに一度に変換する.そのため,非常に効率よく計算できるようなアルゴ リズムになっている.Harlim and Hunt (2005) によると,LETKFとLEKFをいくつ かのモデルに適応して比較実験を行ったところ,データ同化性能にほとんど違いがな いことが確かめられている.

LETKFでは,local patch内のm個のアンサンブルメンバーが張るm次元空間内で 解析を行う.まず,local patch内の物理空間でのN ×N予報誤差共分散行列Pf を規 格化する(Nのサイズはlocal patch内の格子点数×予報変数である).m次元空間内で のm×m予報誤差共分散行列P˜f = I

m−1と定義すると,物理空間での予報誤差共分 散行列Pf は,

Pf = 1

m−1Ef Ef>

= 1

m−1EfI Ef>

= Eff Ef>

(2.51) と表すことができる.LETKFを含めてEnKFは,モデルの不完全性および,少ない アンサンブルによる共分散の見積もり誤差などが生じるため,予報誤差共分散が過小 評価されてしまう.そこで,KFおよびEKFと同様に共分散膨張を行ってやる必要が

ある.具体的には,

f ←−(1 +δ) ˜Pf (2.52)

のようにP˜fを置き換える.δは膨張係数で,0よりわずかに大きい数である.

ここで,アンサンブル・アップデートをアンサンブル変換行列Tを用いて表すと,

Ea =EfT (2.53)

となる.これより,物理空間での解析誤差共分散行列Paは,

Pa = 1

m−1Ea(Ea)>

= 1

m−1EfTT> Ef>

(2.54) で与えられる.さらに,式(2.51)と同様に,m次元空間内でのm×m解析誤差共分散 行列P˜aを用いて,物理空間での予報誤差共分散行列Paを表すと,

Pa = 1

m−1EfTT> Ef>

= Efa Ef>

(2.55) となる.つまり,m次元空間内での解析誤差共分散行列P˜aを求める必要がある.そ こで,KFの解析誤差共分散Paを求める式(2.22)に,EnKFのカルマンゲインKの式 (2.36)を代入する.

Pa = [IKH]Pf

=

IEf h

(m1)I+ HEf>

R−1HEf i−1

HEf>

R−1H 1

m−1Ef Ef>

= 1

m−1Ef Ef>

1 m−1Ef

h

(m1)I+ HEf>

R−1HEf i−1

HEf>

R−1HEf Ef>

= 1

m−1Ef Ef>

1 m−1Ef

h

(m1)I+ HEf>

R−1HEf i−1

h

(m1)I+ HEf>

R−1HEfi

(m1)I Ef>

(2.56)

ここで,(m1)I+ HEf>

R−1HEf =A と置くと,

Pa = 1

m−1Ef Ef>

1

m−1EfA−1[A(m1)I] Ef>

= 1

m−1EfI Ef>

1

m−1Ef

I(m1)A−1

Ef>

= 1

m−1Ef(m1)A−1 Ef>

= EfA−1 Ef>

= Ef h

(m1)I+ HEf>

R−1HEf i−1

Ef>

(2.57) よって,m次元空間内でのm×m解析誤差共分散行列P˜aは,

a= h

(m1)I+ HEf>

R−1HEf i−1

(2.58) である.共分散膨張を考慮する場合,式(2.51)から,

a=

(m1)I

1 +δ + HEf>

R−1HEf −1

(2.59) と表すことができる.さらに,観測演算子Hを非線形演算子Hに置き換えると,HEf は,

HEf 'H( ¯Xf +Ef)−H( ¯Xf) (2.60)

となる.

次に,解析アンサンブル平均x[N¯ ×1]を求める.解析アンサンブル平均x¯は,

a= ¯xf +K yo−H(¯xf)

(2.61) と表される.式(2.36)を代入すると,

¯

xa = ¯xf +Eft

(m1)I+

HEft >

R−1HEft −1

HEft >

R−1 yo−H(¯xf)

= ¯xf +Efta

HEft >

R−1 yo−H(¯xf)

(2.62) と変形することで,カルマンゲイン行列を直接求めずとも解析値を求めることができる.

アンサンブルアップデートは変換行列Tにより与えられるので,式(2.55)より,

T= m−1

a 1

2 (2.63)

となり,新しい初期摂動を求めるためには,解析誤差共分散行列P˜aの平方根が必要で ある.P˜aの平方根は一意ではないが,

a 1

2 が対称になるように選ぶ.そのためには まず,

a −1

を固有値分解する.

a =

(m1)I

1 +δ + HEf>

R−1HEf −1

=

VΛV>−1

= VΛ−1V> (2.64)

a 1

2 = VΛ−1/2V> (2.65)

Vは固有ベクトル,Λは固有値を対角成分に持つ行列である.このようにすることで,

aの平方根を求めることができる.これより,LETKFのアンサンブルアップデートは,

Ea = EfT

= Ef h

(m1) ˜Pa i1/2

= Ef

m−1VΛ−1/2V> (2.66)

で与えられる.

以上から,解析値と解析アンサンブル摂動が求まったので,これを元に次のアンサン ブル初期値は解析の式(2.62)とアンサンブル・アップデートの式(2.66)から求めることが できる.ただしここでは,便宜上,アンサンブル平均x¯a,f[N×1]を束ねて,X¯a,f[N×m]

とし,¯xa,f をX¯a,f に入れ替えた.つまり,X¯a,f =

¯

xa,f,a,f, · · · ,a,f

で,N ×m 行列である.

Xa = ¯Xa+Ea

= ¯Xf +Efta

HEft >

R−1

yo−H( ¯Xf)

+Ef

m−1VΛ−1/2V>

= ¯Xf +Eft

a

HEft >

R−1

yo−H( ¯Xf)

+

m−1VΛ−1/2V>

(2.67) このようにして,次のアンサンブル予報のためのアンサンブル初期値を作成すること ができる.

LETKFの計算効率性は,式(2.59)の逆行列計算とアンサンブル変換行列Tを求め

る計算を,1回の固有値分解で共有しているところである.さらに,式(2.67)におい て,解析アンサンブルを計算する過程で,巨大なN ×m行列Ef を乗じる回数が1回

で済むようになっている.これは,たいていの場合N mであるため,LETKFでは 計算量が少なくなる.

このようなLETKFの特徴は,全球雲解像モデルNICAMにEnKFを適応する際に必 要となる技術で,LETKFの並列計算効率は実装するにあたって非常に重要である.た

とえばSerial EnSRFは並列化ができないためすべてのアンサンブルメンバーを1ノー

ドに読み込まなければならず,高解像モデルの全メンバーの全球データを1ノードに 読み込むのは難しい.LETKFでは領域ごとに分割して並列化可能なので,1ノードに は全メンバーの局所化領域分のデータを読み込むだけでよいため,高解像モデルであっ てもEnKFの実装が可能となる.

LETKFは,局所化をアルゴリズムに取り入れたものとなっているが,LETKFの局

所化は,観測誤差局所化 (observation localization)と呼ばれており,予報誤差共分散 行列ではなく,観測誤差共分散行列に局所化を施す.つまり,局所化関数L(r)の逆数 を観測誤差共分散行列にかけてやることで,遠く離れた観測の観測誤差を無限大にし,

局所化を実現する.具体的には,LETKFを構成する式の中には観測誤差共分散行列R の逆数R−1が含まれているので,式(2.49)の局所化関数を用いて,

R−1 ←−L(r)R−1 (2.68)

のように置き換えると,

K =

PfH> HPfH>+R/L(r)−1

(2.69)

式(2.50)の一般的な局所化と上式(2.69)を比べると,観測誤差局所化の方が局所化の効

果が小さい.しかし,Miyoshi et al. (2005)ではLEKFに,またMiyoshi and Yamane (2007)では,LETKFに観測誤差局所化を適応し,LEKFおよびLETKFが安定して動 いているのを確かめている.

以上をまとめると,LETKFでは1つの格子点を中心とするlocal patchを構成する.

このlocal patchのサイズは,格子点距離によって決められており,直方体のような形

をしている.解析はlocal patch内のすべての格子点上の変数に対して行われる.当然,

同化される観測もlocal patch内のみの観測である.解析値はlocal patch内すべての格 子点において作成されるが,local patchの中心の格子点の解析のみを保存する.以上 の操作をすべての格子点において行うことで,全球の解析値を得ることができる.