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考 察

ドキュメント内 ↓ 鴬 第 二 糠 … (ページ 50-58)

本研究で私は、(1)TBが時間依存的にペリシスティック細胞の死を引き起こ すこと、(2)精巣断片器官培養においてIGF-1,nNRG1で促進される精原細胞

の増殖活性はTB処理により影響されなかったが、SCFで誘導される精原細胞 の増殖活性は著しく抑制されること、を示した。これらの結果から、器官培養 系においてIGF-IとnNRG1はセルトリ細胞に作用し、SCFはペリシスティッ

ク細胞に働くことが強く示唆された(Fig.10)。また、(3)TB処理によって、分

子量一L9kDaの物質がセルトリ細胞バリアーを通過すること、(4)精巣断片長 期器官培養において、TB処理によりnNRG1が精原細胞から精母細胞への分化

を誘導すること、を示した。これらの結果から、NRG1による精母細胞への分 化の達成は、ペリシスティック細胞死、またはセルトリバリアーの破壊と深く

関係していることが考えられた(Fig.12)。

以前、私はペリシスティック細胞を殺すために、哨乳類でライデイッヒ細胞 を特異的に殺す作用のあるethanedimethanesulfbnate(EDS)を使用して実験を行

った際、TB処理だけでもペリシスティック細胞死を引き起こせることを発見 した。TBは通常死細胞を染色するのに使われるが、ヒトcelllineAPRE-19(Peters

e t a 1 . 2 0 0 7 )

や ヒ 0 0 5 ) に ト 1 . , 2 n e t a i k i a ( K o d j l i u m i t h e e d e p g m e n t a l p i 対 e t i n r す る 毒 性

や、ラット肥tinalganglioncellに対して量、時間依存的に神経毒性を示すこと

が報告されている(Jineta1.,2005)。イモリ精巣断片におけるTBによる作用も時

間依存性を示した。5時間処理では間質に存在する体細胞だけの死を引き起こ

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したが、9時間処理では間質細胞だけではなく、その内側のシストに存在する いくつかの精原細胞とセルトリ細胞も死んでいたことから、TBは間質に存在 する全ての細胞に影響するが、セルトリ細胞はペリシスティック細胞よりTB に対して抵抗力があると考えられる。

様々な動物種において、FSHはセルトリ細胞に作用し、活性化されたセルト リ細胞は種々の因子を産生して生殖細胞、筋様細胞やライデイッヒ細胞に刺激

を与える(Jegou,1993;JegouandPineau,1995)。しかし、羊膜類(ロ甫乳類、鳥類、

肥虫類)と無羊膜類(両生類、魚類)において、生殖細胞と体細胞の位置関係 は異なる。羊膜類精巣では、思春期以降一定数のセルトリ細胞が存在している 精細管からなっており、セルトリ細胞は精細管上皮の周期に従って分化が進行 するいくつかの異なるステージの生殖細胞と常に接している。一方、無羊膜類 精巣では、生殖細胞とそれを取りまくいくつかのセルトリ細胞から成るシスト

と呼ばれる最小単位が存在し、セルトリ細胞は同調した同じステージの生殖細 胞とのみ接触している。ロ甫乳類においては、隣り合うセルトリ細胞間に形成さ れる血液・精巣関門によって、精上皮は基底部と内腔部に分けられる。精原細 胞と前細糸期精母細胞は血液・精巣関門の外(基底部)にあるが減数分裂の進 行に伴い内部へ移行し、第一精母細胞と減数分裂後の細胞は内腔部に存在する。

この関門は密着結合(tightjunction)と呼ばれる結合構造から成り、低分子を選 択的に内腔部分へ輸送する(WOngandCheng,2005)。従ってロ甫乳類では、増殖

因子を外界から添加すると直接に精原細胞や体細胞に作用させることができ る。一方、イモリ精巣では、精原細胞はシスト内でセルトリ細胞に囲まれてお り、セルトリ細胞の間はシストの内外を仕切る血液-精巣関門を形成している

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(Jineta1.,2008)。この関門はシスト内外の物質の移動に関してサイズ選択的に

作用し、精子形成全ステージにおいて、低分子物質(-500Da)はバリアを通 過できるが、1.9kDa以上の物質は浸透できない(Jineta1.,2008)。従って、器

官培養で添加された増殖因子は高分子であるためシスト内に通過できず、精原 細胞に直接刺激を与えることができないと考えられた。

我々の研究室における以前の研究では、FSHはIGF-I(Yamamotoeta1.,2001)、

Ig-NRG1(OIaleta1.,2008)、SCF(Abeetal.,inp岬aIation)のmRNA発現を促進

させることから、これらの3つの増殖因子はセルトリ細胞で発現することが示 唆されていた。今回、私の実験においても、この3つの増殖因子のmRNA発現 はFSHRと同様にTB処理によって影響されなかったという結果は以前の結果と

一致する。器官培養では、これらの3つの増殖因子は精原細胞の増殖を刺激す る。しかし、本研究では、TB処理により、SCFで刺激された精原細胞の増殖活 性だけが抑制された。又、TB処理によって体細胞でのc-kitmRNAの発現量が減

少したことから、c-kitはペリシスティック細胞で発現し、SCFは直接にペリシ スティック細胞に作用し、精原細胞の増殖を刺激することが示唆された(Fig.10)。

出生後の哨乳類精巣において、c-kitはライデイッヒ細胞と、typeA(A1からM)

とTypeBの精原細胞と精母細胞に強く発現する(Manovaeta1.,1993;

Yoshinagaeta1.,1991;Vincenteta1.,1998)。両生類でも、c-kitはライデイツヒ細

胞と生殖細胞に発現する(RaucciandDiFioIe,2007)。イモリペリシステイック

細胞は、後期精子形成ステージにおいてテストステロンを産生する能力がある と報告されたが、△5-3β-HSDが検出されない初期精子形成ステージ(Imaiand

Tanaka,1978)における役割については、今まで報告されていない。今回、SCF

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に よ る 精 原 細 胞 増 殖 に お け る ペ リ シ ス テ ィ ッ ク 細 胞 の 役 割 に つ い て の 我 々 の この研究結果は初報告である。

ロ甫乳類のSCFは分泌型と膜結合型の2つのタイプが存在し、セルトリ細胞に より産生される(Rossieta1.,1993)。膜結合型は分泌型より生殖細胞の増殖と生

存に重要であるが(Tajimaeta1.,1991)、分泌型のSCFは精上皮にある生殖細胞

の生存因子として作用し(Hakovirtaeta1.,1999)、精原細胞増殖を刺激する(Rossi eta1.,1993;Fengeta1.,2000)。一方、分泌型SCFは生存因子として成熟ライデイ

ッヒ細胞に働き、EDSで誘導されたライデイッヒ細胞死に対してライデイッヒ 細胞の生存回復因子の役割を果たし、分泌型SCFはセルトリ細胞から離れてい

るライディッヒ細胞に重要な働きをすることが認められている(Yaneta1., 2000)。この結果は、イモリの精巣においてのSCFがFSHによって活性化された

セルトリ細胞から産生されて間質へ分泌され、ペリシスティック細胞に作用し、

ペリシスティック細胞で何らかの増殖因子が産生され、精原細胞の増殖を促進

したかも知れないという考え(Fig.11)に類似している。また、もう一つの可能

性として、シスト内では、FSHによって精原細胞と接しているセルトリ細胞内 の分泌型又は膜型SCFの発現が増加され、SCFが直接に精原細胞を機能するの

も考えられる(Fig.11)。仮に分泌型と膜結合型両方ともイモリ精巣に存在する としても、SCFによって活性化されたペリシスティック細胞がどのように精原 細胞の増殖を刺激するかは、まだ不明である。噛乳類では、セルトリ細胞とラ イデイッヒ細胞の相互依存、及びセルトリ細胞と筋様細胞に対するライデイッ ヒ細胞から産生されたテストステロンの重要な役割は広く知られているが、こ れらの細胞の間で交換されるテストステロン以外のシグナルについての情報

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は殆どない(JegouandPineau,1995)。

一方、TB処理はnNRG1とIGFIによって刺激される精原細胞増殖活性にほと んど影響がないことから、nNRG1とIGF-Iの受容体は主にセルトリ細胞にあるこ

とが示唆された。以前、イモリ精巣から、ErbB2、ErbB4(Abeeta1.,2008)とIGFIR

(Yamamotoeta1.,2001)cDNAが単離され、それらのmRNAはすべて生殖細胞

と体細胞の両方に発現していた。ラット精巣において、ErbB1、ErbB2、ErbB3、

ErbB4は精原細胞(Hamraeta1.,2007)のほかに、ライデイツヒ細胞、セルトリ 細胞、筋様細胞のような様々な体細胞にも発現された(Hoebeneta1.,1999;

Wahab-Wahlgreneta1.,2003)。哨乳類精巣のIGF-IRは生殖細胞と体細胞に存在し、

後期ではセルトリ細胞(Borlandeta1.,1984;OonkandGIootegoed,1988)とライ デイッヒ細胞(Handelsmaneta1.,1985;Lineta1.,1986;Saezeta1.,1988)に発現し

ている。マウスのIGFIRは精原細胞と第一精母細胞に加えてセルトリ細胞にも 発現している(LpirandLeGac,1994)。私の今回の結果では、ErbBs(2と4)と

IGFIRmRNAの発現はTB処理によって殆ど影響されなかったことから、

ErbBs(2と4)とIGF-IRはセルトリ細胞と生殖細胞で発現していることを強く示 唆した。このことから、NRG1とIGF-Iはセルトリ細胞に作用して、精原細胞の

増殖を促進したと思われる。以上のことをまとめると、FSHはセルトリ細胞を

活性化し、活性化されたセルトリ細胞がIg-NRG1とIGFIを産生し、精原細胞の

増殖を促進すると考えられた。

私の以前の研究では、プラスチックシャーレに付着して培養中のセルトリ細 胞にTBを48時間以上添加することによって、セルトリ細胞間の接着が壊され、

それぞれのセルトリ細胞が丸くなって、シャーレの底から浮遊したことから、

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TB処理でセルトリバリアーを破壊することができるではないかと考えた。そ こ で 、 私 は T B 処 理 に よ る セ ル ト リ バ リ ア ー 構 造 に 対 す る 影 響 に つ い て 、

micropeloxidase(MW~1.9kDa)を用いて精巣断片への浸透性を調べた。その結果、

TB処理することでmicIopemxidaseがセルトリバリアーを通過したことが見ら

れた。イモリ精巣にはセルトリ細胞間バリアーが存在する(Jineta1.,2008)ため、

NRG1は直接に精原細胞を刺激できず、体細胞を介して精原細胞の増殖を刺激

する(Ozlemeta1.,2008)が、精母細胞への分化は促進しない。しかし、今回TB

処理後の精巣長期器官培養においては、精母細胞への分化を誘導したことから、

TB処理によってセルトリ細胞間バリアーが破壊されてNRG1はバリアーを通 過し、直接に精母細胞への分化を誘導したのか、あるいはTB処理でペリシス ティック細胞を殺すことによって、ペリシスティック細胞から分泌される分化 抑制因子を消失することによって、精母細胞への分化を誘導できたのかも知れ

ない値i9.12)。

イモリ精巣器官培養において、FSH(Jieta1.,1992)とIGFI(Nakayamaet

a1.,1999)は精原細胞から精母細胞への分化を誘導する。今回の研究結果では、

TB処理後でもFSHとIGFIは精原細胞から精母細胞への分化を誘導できた。この 結果から、FSHとIGFIはセルトリ細胞を介して分化に作用することが強く示さ れた。しかし、IGFIはセルトリ細胞を活性化することで、どのようにして精原 細胞の増殖と分化を刺激するのかは未だ不明である。器官培養では、FSHと IGF-I両方ともIGF-ImRNAの発現を上昇させる(Yamamotoeta1.,2001)ことか

ら、IGF-IはIGFIによるセルトリ細胞から放出される因子についての候補の一 因子であり、純化された精原細胞に対してIGFIの影響を調べる実験を行う必要

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