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義務(初等・中等)教育

ドキュメント内 デンマークにおける国と地方の役割分担 (ページ 72-79)

B. Income tax

4. 主要歳出分野における国・県・地方政府の役割分担の現状

4.3 義務(初等・中等)教育

(根拠法令)

デンマークの義務教育は、憲法

76

条及び義務教育(小・中学校)法を実施根拠しと している。

図表9-81  デンマーク憲法76

§

76

All children of school age shall be entitled to free instruction in primary schools. Parents or guardians making their own arrangements for their children or wards to receive instruction equivalent to the general primary school standard shall not be obliged to have their children or wards taught in a publicly provided school.

(出所)http://www.folketinget.dk/pdf/constitution.pdf より抜粋

  義務教育に関する基本法である義務教育(小・中学校)法(

Folkeskole

73

(Consolidation) Act

)の構成は、以下のとおりである。

図表9-82  義務教育(小・中学校)法の構成

Part 1

  義務教育の目的

Part 2

  義務教育の構成内容

Part 3

  学校教育における組織体制

Part 4

  教員

Part 5

  入学・運営

Part 6

  市における義務教育の実施体制

市議会,学校評議会,学校長,アドバイザリー委員会

Part 7

  県における義務教育の実施体制

Part 8

  教育費

Part 9

  教育に関連する苦情

Part 10

  その他関連事項

Part 11

  学校議会

Part 12

  導入、運用に係る規定

(出所)http://eng.uvm.dk/publications/laws/folkeskole.htm?menuid=2010より

(実施主体)

  義務教育の実施は、義務教育(小・中学校)法に基づき、市が責任を持っている。

同法

6

章において、実施主体の内容が整理されている。

73 "Folkeskole"は、市が運営する小中学校を意味する。

図表9-83  義務教育実施主体

Part 6

  市における義務教育の実施体制

○市議会(

Municipal Council

市における義務教育の責任主体。

市議会は、義務教育の目標、枠組み、活動を規定するとともに、学校活動を監視 する役割を持つ。

具体的には、予算、学校長の任命、学校の規模・構成、教育水準、学校区、登校 日、クラス人数、教育指針、カリキュラムなどを決定している。

また、権限の一部は、学校評議会(

School Board

)に委譲することが認められてい る。

○学校評議会(

School Board

各学校に設置することが義務付けられている。構成員は、保護者代表

5

名か

7

名、

教師代表

2

名、その他学校の職員である。各委員は投票権を有している。その他、

生徒から代表が

2

人選出されるが、制度個人や教師に関わる事項に関しては、議 論に参加できないことになっている。

• 学校会議は、議会からの委任を受けて、学校運営に関する基本的な方針の範囲内 において、実務的な意思決定を行っている。

• 具体的には、学校運営に関する実務事項、学校と家庭の橋渡し、児童の情報収集

(教育に必要な範囲内で)、教師の役割分担、課外教育の内容、各校の予算、教科 書選定、運営規則、評価、次年度のカリキュラム案の検討及び作成、その他議会 に対する提言、年次報告書の作成を行う。

○学校長(

Headmaster of the School

学校単位で任命される。

学校長は、学校運営と教育の責任を持つ。

具体的には、学校内での人事及び監督、次年度のカリキュラム案の作成、課外活 動の内容の提案、配分された枠内での予算案の作成

○アドバイザリー会議(

Advisory Bodies

教育専門会議: 学校長に対してアドバイスを行う会議。

生徒会議:  高学年の学年に設置される会議。

(出所)Folkeskole (Consolidation) Act より

(内容)

  義務教育は

7

歳〜15歳(1学年〜9学年)を対象としている74。教育内容は、既述の ように、義務教育(小・中学校)法の下、各市が内容を決定して実施している。また、

2

学期制が採用されており、一般的には、

1

学期は

8

月〜

12

月で、

2

学期は

1

月〜

6

月 であるが、詳細についても各市が定めることになっている。以下は、同法の規定のう ち、義務教育課程において義務付けられている教育内容である。

図表9-84  義務教育課程において義務付けられている教育内容

ヒューマニティ

デンマーク語(各学年)

英語(

3

9

年生)

キリスト教学(各学年)

歴史(

3

9

年生)

社会(

8

9

年生)

実学

体育(各学年)

音楽(1〜6年生)

芸術(

1

5

年生)

裁縫、木工、家計(

4

7

年生

, 1

つ以上)

科学

算数(各学年)

科学技術(各学年)

地理学(

7

8

年生)

生物学(7〜9年生)

物理、化学(

7

9

年生)

(出所)The Folkeskole (Consolidation) Act より

74 以降は、高校(3年間)、大学学士(3年間・学士)、大学修士(2年)制となっている。また、外務省 資料によると、「デンマークでは、義務教育を終了した生徒の約48%が高等学校に進み、更に約42%が 高等教育機関に進学する。また、義務教育を終了した者の80%が教育を継続して、その内75%が教育の 資格を獲得する」との状況である。http://www.joes.or.jp/world_school/05europe/infoC52900.html

教育省担当者の発言

○義務教育関連法

• Folkeskole (Consolidation) Act は、義務教育の内容に関する枠組法である。定員、カリキュラ

ムなどに関して手引は示されているが、市の裁量で学級定員、カリキュラム、教科書を決 定している。教科書は、原則的には教師・学校の責任で選定されるが、各学校で必要な種 類、数量、更新の速度は、市、学校によって様々である。

• 現場の教員によると、

教育手段選択の自由

が保障されていて、学校内の指導者および同 僚との協議の下に自由に教育内容、方法が選択できることになってはいるが、予算がそれ に追いついておらず、文字どおりの自由はなかなか実践できない、とのことである。

• なお、各県には教材センターが設置されており、これは地方自治体再編後も何らかの形で 存続する。教材センターには一定数のテーマ参考書セットなどが揃っており、各学校はク ラス用セットを借り出すことができる。

○教員養成

• 義務教育の教員資格は、時間給の教師(パートタイマー)を除いて、教員養成学校(専門 高等学校)を通じて取得する。その他の方法は存在しない。

• 公立学校の教師が加入する組合の力が非常に強い。校内指導者(校長、副校長)も一般教 員と同じ組合に加入しているため、実態としては「校内に管理指導者がいない」と言い換 えることもできる。

• 義務教育の教員養成は、単一教育課程である。全員が全ての科目を教え、同一の賃金を受 け取る。教職が使命であるとの考え方は遠い過去のことであり、学校の教師は賃金生活者 となり、社会におけるプレスティージが低迷し、現実問題となっている。教員組合の独占 的立場を破る何らかの措置が必要であるが、難航している。また教員の社会的地位向上の ため、教育機関を大学レベルに昇格させる動きが他国では見え始めており、フィンランド などはその一例である。

○学力テスト

2007

年度よりテストが導入される。これは全国一様のテストであり、デンマークにとっ ては、一種の文化革命である。おそらく三学年以上ということになろうが、任意ではなく、

全国同時に同じ問題がテストされる。すでに任意で

9

学年卒業試験が実施され、成績簿が 作成されてきたが、今回は強制テストが各学年で行われるようになる。

• 導入されるテストは、平均値などを基に各市における教育内容、質を評価するものであっ て、個人の成績を格付けするものではない。子ども当人、両親、教師の間での話し合いの 際、用いられることはあるが、テストの結果が子どもの進学等に直接影響するものでもな い。

(財源)

  義務教育に要する経費の財源は、主として税であり、市の自主財源(所得税・固定 資産税)及び一般補助金がこれに相当する。経費には、学校運営に係る物件費、教員 の給与、施設維持管理・修繕・建設など、全ての支出が含まれている75。また、特定 補助金も財源の一つであるが、これは特定目的(移民・難民の基礎的な言語能力の習

75 義務教育(小・中学校)法 Part 8  Expenditures in Relation to the Folkeskoleより。

得等)のために支出されるもので、経費全体の一部を占めているにすぎない。

図表9-85  義務教育における国と地方の財源分担

主体

制度 国 県 市 その他

義務教育 100%

(出所)教育省へのヒアリングより

教育省担当者の発言

• 教員給与、学校の運営費、学校建設・修繕費など、すべて市の学校教育予算で賄われる。

教育分野を含め、市の責務達成の目的で一般補助金(包括補助金)が国庫から支給されて いる。

• 特定補助金は、顕著に何かが不足していると見られる場合(コンピューターの導入が国平 均より明らかに遅れている/特定プログラムが必要とされる/特定教科書の購入が必要 である/学校に支給されている地図などが極度に時代遅れである等)に対して補助される ものであり、年間総額

DKK3

5

億に相当である。これは、学校教育費総額

DKK400

450

億に対して限界的金額でしかない。特定補助金支給は主として政治家の政策シグナルとし て活用される感が強い。但し、現在税率上昇にストップがかかっている状態なので、市か らの要望が多い。

  以下、デンマーク統計局資料より、義務教育関連支出に関連するデータを整理する。

図表9-86  デンマークにおける教育関連支出の動向

1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003

Public expenditure (2003 prices)

Total 91,329 93,850 99,013 99,534 102,959 108,764 110,053 114,256 114,495 114,844

Basic school education 38,422 38,866 40,872 41,312 43,515 44,196 45,610 48,185 49,289 49,750 Upper secondary education 18,935 20,810 20,586 22,196 21,700 20,633 19,274 19,189 18,663 19,728 Higher education 18,070 19,233 20,960 19,201 20,581 23,302 24,302 26,718 26,575 26,272 Adult education 12,461 11,224 12,914 13,078 13,373 16,994 16,934 15,938 16,858 16,415 Administration, support etc. 3,439 3,715 3,702 3,747 3,790 3,639 3,933 4,226 3,110 2,679 Total public expenditure on

education as % of GDP

7.4 7.4 7.6 7.5 7.7 8.0 7.8 8.1 8.1 8.2

(出所)Facts and Figures 2005  Table 3.1 Public expenditure on education and training, by level of education, 1994 – 2003 より

図表9-87  デンマークにおける教育関連支出全体に占める義務教育費の割合

(出所)Facts and Figures 2005  Table 3.1 Public expenditure on education and training, by level of education, 1994 – 2003 より

39.0%

39.5%

40.0%

40.5%

41.0%

41.5%

42.0%

42.5%

43.0%

43.5%

44.0%

1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年

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