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公的扶助・社会福祉  .1 公的扶助

ドキュメント内 デンマークにおける国と地方の役割分担 (ページ 56-72)

B. Income tax

4. 主要歳出分野における国・県・地方政府の役割分担の現状

4.2 公的扶助・社会福祉  .1 公的扶助

(根拠法令)

  デンマークの公的扶助(生活保護)は、積極的社会救済法(

Active Social Policy Act

) を実施根拠としている55

(実施主体)

  生活保護(現金給付)に係るサービスは、市が実施している。但し、全国一律の基 準で給付水準を保証するため、国(社会福祉省

Ministry of Social Affairs

)は基準を設 定するとともに、支出実績に応じて返済金(

Reimbursement

)を市に支出している56

(内容)

生活保護は、失業、疾病、妊娠、出産、離婚、別居、配偶者の死亡等によって、自 らの生活に必要な経費を得ることが困難になった者であって、保険などに未加入の者 への最低限度の生活を保障する制度である。生活保護給付の給付用件は、デンマーク に居住又は在留(過去

8

年のうち

7

年以上)しているもので、以下が求められる。

図表9-66  扶助の要件

・失業、疾病、妊娠、出産、離婚、別居、配偶者の死亡等、事故の生活状況が実際に 変化したこと

・自己又はその家族の生活を維持することができないこと

・他の方法では生活の維持に必要なものを得ることが出来ないこと

・市から就労に関する申し出を受けている場合には、合理的な理由なく、これを拒否 していないこと

・資産を有していないこと

(出所)厚生労働省(2003「世界の厚生労働2003」より

  給付内容(全国基準)は、図表

9-67

のとおりである。給付額はいずれも課税対象所

55 以下、厚生労働省(2003「世界の厚生労働2003EU 2006”Social protection in the Member States of the European Union, of the European Economic Area and Switzerland” より。

56 ヒアリングによる。

得となる。

図表9-67  給付内容

年齢 扶養する子供の有無 給付額

無 月額 

DKK2,721

(親と同居)

月額 

DKK5,638

(親と別居)

25

歳未満

有 上記に子供

1

名月額

DKK969

を加算 無 月額 

DKK8,749

(失業手当の

60%

相当)

25

歳以上

有 月額 

DKK11,625(失業手当の 80%相当)

無 月額 

DKK6,639 60

歳以上

有 上記に子供

1

名月額

DKK2,169

を加算

(出所)厚生労働省(2003「世界の厚生労働2003EU 2006”Social protection in the Member States of the European Union, of the European Economic Area and Switzerland” より

  なお、特に生活保護の給付を得ている

25

歳未満の者に対しては、生活保護の給付開 始時点から起算して

13

週間以内に、就職に向けて雇用プロジェクトに参加することが 義務付けられている57。また、給付期間が継続して

6

ヶ月以上になる場合には、一定 限度、給付額が減額される。

(財源)

生活保護給付に要する経費の財源は、主として税であり、市の自主財源(所得税・

固定資産税)及び一般補助金がこれに相当する。国は市に対して、給付実績に応じて 給付額の

1/2

について、返済金(Reimbursement)を支出している58

図表9-68  生活保護における国と地方の財源分担

主体 制度

国 県 市 その他

生活保護 50% 50%

(出所)The Ministry of Social Affairs2002“Social Policy in Denmark”より

57 日本労働研究機構欧州事務所(2003「デンマークの労働事情とデンマークモデル」より。

58 厚生労働省(2003)「世界の厚生労働2003」、Workshop on Local Employment Development(2005) http://www.jil.go.jp/english/events_and_information/050209_report.htm より。

4.2.2

家庭・児童手当、妊産婦手当 

(根拠法令)

  デンマークの家庭・児童手当は、児童手当法(

Child Benefit Act

)を実施根拠にして いる。妊産婦手当は、疾病給付法(

Sickness Benefit Act

)を実施根拠としている。

(実施主体)

  家庭・児童手当、妊産婦手当の給付は、市が行っている。国(社会福祉省

Ministry of

Social Affairs

)は、手当給付の財源を保証している。

(内容)

  家庭・児童手当、妊産婦手当の主な内容は次の通りである。なお、いずれの手当も 課税対象外として扱われている。

○  家庭・児童手当

◆  一般家族手当59

General Family Allowance

18

歳未満の児童に対して、年齢に応じ、一般家族手当が給付される。給付対象は第

1

子以降で、給付期間は

18

歳未満である。所得制限はない。

図表9-69  児童手当給付額(2003年)

児童年齢 給付額(年額)

0〜2 years DKK 13,204

3

6 years DKK 11,932

7〜17 years DKK 9,388

(出所)The Ministry of Social Affairs

◆  普通児童手当(

Ordinary Child Allowance

ひとり親、あるいは夫婦がともに公的年金の給付を受けている家庭に対して、子ども

1

人当たり年間

DKK3,916

が給付される(

2001

年)。

59 人口問題審議会報告(1999「少子化に関する諸外国の取り組みについて」

http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1106/h0628-2_4.html#12 及びThe Ministry of Social Affairs(2002) “Social Policy in Denmark”より。

◆  特例児童手当(Extra Child Allowance)

ひとり親に対する普通児童手当の補足として、子どもの数に関係なく年間

DKK3,980

が給付される。

◆  特別児童手当(

Special Child Allowance

ひとりの親、両親を失った子ども、或いは親権が確立していない子どもに対して、子 ども1人当たり年間

DKK11,280

が給付される(

2002

年)。但し、両親がいない場合に は

2

倍の額が給付される。

◆  双子以上手当(

Multiple Birth Allowance

双子以上が出生した家庭に対して、子どもが7歳になるまで、子ども

1

人当たり年間

DKK6,440

が給付される(

2002

年)。

◆  養子手当(Adoption Allowance)

養子になった外国の子どもを養育する家庭に対して、年間

DKK37,130

が給付される

2002

年)。

◆  障害児養育支援(

Children with Disabilities or Suffering from Serious Illness

障害児を養育する家庭に対して、児童の養育に必要な費用に基づいて療育手当が給付 される。また、療育によって失われた所得に対する補償も給付される。なお、市が負 担するこの療育手当、所得補償のうちの

50%は、返済金(Reimbursement)を通じて国

から市に拠出されている(社会サービス法

131

1

))。

○  妊産婦手当

◆  妊産婦手当(

Daily Cash Benefits in Connection with Pregnancy and Maternity

) 被雇用者及び自営業者について、出産前

4

週間以降、疾病などにより仕事に従事でき ない場合には出産前

8

週間以降において、休暇を取得する権利が付与されるとともに、

日割現金給付が受けられる権利が発生する。給付額は、一週間単位の上限額

DKK3,203

を前提に、所得に応じて調整される。また、出産後

14

週間、母親には休職に伴う日割 現金給付が受けられる権利が発生する。続く

32

週間において、両親に対して休職に伴 う現金給付が受けられる権利が発生する。なお、休暇は、出産後

48

週間まで取得でき る。

(財源)

  家庭・児童手当、妊産婦手当の財源は、税(国税)である。なお、家庭・児童手当 のうち、障害児療育手当は、国税が

50%

、市の負担が

50%

である。

図表9-70  家庭・児童手当、妊産婦手当における国と地方の財源分担

主体 制度

国 県 市 その他

家庭・児童手当 妊婦手当 障害児療育手当

100 100%

50% 50%

(出所)The Ministry of Social Affairs(2002) “Social Policy in Denmark”より

4.2.3

児童福祉(保育所) 

(根拠法令)

  デンマークの児童福祉(福祉)を含む社会福祉関連サービスは、社会サービス法60

(Consolidation Act on Social Services)を実施根拠としている。

(実施主体)

児童福祉(保育所)に係るサービスは、同法に基づいて市が実施している。

また、同法では、施設ごとに保護者会(

Parent’s Board

)の設置が義務付けられてお り、施設の運営においては同会が関与している。

(内容)

  児童福祉サービスは、市が直営で提供する他、契約に基づき民間を通じてサービス を提供することが認められている。市は、入所希望児童を全て受け入れる義務がある ことから、各市において、住民ニーズ等に応じて、サービス提供量及び提供主体の調 整が行われている。主な児童福祉サービスの内容は次の通りである。

60 以下を参照。http://eng.social.dk/index.aspx?id=80ec876c-1437-4e9f-b3a6-80a583009422

◆  保育所(Day-Care Services for Children)

デンマークの託児施設は、下記のようにライフスタイルに応じて多様に選択できる点 が特徴である。

図表9-71  デンマークの託児サービス

施設名 概要

託児所 Crèches

生後6ヶ月以上3歳未満の乳幼児が利用できる施設。主に市街地に設置。

家庭保育

Local authority child minding

生後6ヶ月以上3歳未満の乳幼児が利用できる家庭保育サービス。入所、料 金は市が決定する。

幼児保育所 Kindergartens

3歳から6歳が通園する施設。

学童保育所 After-school centers

義務教育対象の6歳から10歳が通園する施設。通常は学校に併設。

年齢統合型施設

Age-integrated institutions

6ヶ月から6歳までの異年齢の子ども達が通う。

共同資金拠出型施設 Pool schemes

運営費の支援に関して地方自治体と合意している特定の親により運営され る施設。

少年クラブ Youth clubs

自立と社会活動への参加を助長することが目的とする主に高学年の児童・生 徒を対象にした施設。

(出所)The Ministry of Social Affairs2002 “Social Policy in Denmark”より

(財源)

サービスの提供及び施設運営に係る費用は市及び保護者が負担している。市の財源 は主に税及び一般補助金である。保護者は、サービス提供及び施設運営に係る予算額 の

30%

を負担することになっており、この基準を目安に各市において利用料金が設定 されている。なお、入所希望を満たす必要性がある一方、建設・整備の財源が不足す る場合、市は保護者の自己負担割合を

33%

にすることが許容されている。

図表9-72  保育所における国と地方の財源分担 主体

制度

国 県 市 その他

保育所 70% 30%

(利用料金)

(出所)The Ministry of Social Affairs2002 “Social Policy in Denmark”より

◆  ショート・スティ

  ショート・スティは、障害児を養育する家族の負担を軽減するための施設で、施設 の整備・運営は、県が行なっている。

  利用申請は、市を通じて行われ、週末に滞在するか、短期間継続して滞在するか、

のいずれかの形態で利用される場合が多い。本人の障害の程度や家族の状況等に応じ て、市からクーポンが発行されるため、利用者は利用日数分のクーポン券を施設に提 出する仕組みになっている61

  障害児入所施設の建設・運営は、県が所管しており、その費用の一部について、市 は実費を超えない範囲で次の年間基本料金(

Basic Tariff

)を拠出している。県が整備・

運営する心身障害児向けの施設(特別デイケア施設、クラブ施設)での滞在の場合、

年間で

DKK283,000

が市から運営主体である県に支出される(社会サービス法

131a

)。

◆  障害児入所施設

  デンマークでは、通常、障害児は一定期間、家庭生活を送り、その後、家庭生活を 営むことが困難な状況になった際、市の措置により障害児入所施設に入所する62。施 設では、家庭生活に近い環境において障害児が自立できるように支援することを目標 にしている。かつて施設は、大規模施設が多かったが、現在は小規模施設が多い。ま た、施設入所と同様の機能を果たす制度として、障害児を養育家庭に預ける制度もあ る。

  障害児入所施設の建設・運営は、県が所管しており、その費用の一部について、次 の年間基本料金(Basic Tariff)を拠出している。心身障害者向けての長期療養施設、

61 仲村、一番ヶ瀬(1999)「世界の社会福祉  デンマーク・ノルウェー」より。

62 仲村、一番ヶ瀬(1999)「世界の社会福祉  デンマーク・ノルウェー」より。

ドキュメント内 デンマークにおける国と地方の役割分担 (ページ 56-72)

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