練習曲というものは1つの曲につき概ね1っのテクニックを習得できるように書かれている。
それはエチュード、コンサートエチュードといえども例外ではない。例えば、ショパン練習曲集
<Op.10−1>や<Op.25−12>、〈Op.10−8>には主にアルペッジョのテクニックが用いられて いる。このようにショパンの練習曲にはそれぞれにアルペッジョ、オクターヴ、重音、和音、半音 階、パッセージワークなどの中で、特定の1っから2つのテクニックが主に用いられている。
一方リストの超絶技巧練習曲集(第3版)は、1つの技巧の習得というよりは、ほとんどの曲に それぞれ標題もついており、幅広く彼のピアニストとしてのヴィルトゥオジティを披露することが 可能な演奏会用の独立した楽曲という色合いが濃い。とはいえ、1曲中にある特定の技巧を繰 り返し用いている。例えば、第1番はアルペッジョ、第4番は重音などの練習曲であるといえる
だろう。
この章ではショパン、リストの他の作品における様々なピアノ技巧にも注目しながら、それぞ れの練習曲をアルペッジョ、オクターヴ、重音、和音、半音階などのテクニックごとに分類し、シ ョパンの練習曲とリストの練習曲とを比較することにより、その奏法に総じてどのような違いがあ るのかを明確にしていきたいと考える。
第1節アルペッジョ
1)ショパン練習曲集
<Op.10−1>は、左手はオクターヴ、右手にアルペッジョのテクニックが用いられており、主
目的に作曲されている。上行形のアルペッジョでは手の平、指の間を柔軟に拡げ、指を伸ばし て10度ないし11度先の鍵盤をつかんだ後、アルペッジョの先頭の音に戻って拡張を繰り返す。
すなわち行きつ戻りつするアルペッジョである。
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5−1への移行では指と指の問を狭め、手を縮める素早い動作が要求され、手を柔軟に拡
げ指を伸ばす動作と連続して行われる。また5指にあたる音は上行形、下行形ともにアクセン トがついており、上行形は5指を起こすように立て、下行形では5指に重さをおくようにすると 腕が疲れることなく弾きとおすことができる。ショパンはこの曲で手の柔軟性(伸縮性)をより一層高める為に、あえて手の移動無しには 弾くことの不可能な10度ないし11度の音域を用いており、脱力できるようアクセントを用いて 手の収縮と拡張を繰り返し、ストレートに上行するのではなく行きつ戻りつする独特のアルペッ ジョを生み出している。アルペッジョを弾く際に支えとなるのは2指であり、この指を支えにして
<Op.10−1〉
42〜43小節では、1−5と5−1のすばやい交替が行われる。
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70、72小節では黒鍵の使用により、2拍ごとにポジションを変える必要がある。
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<Op.10−1>
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ひきかえ、〈Op.25−12>で用いられるアルペッジョの幅は1オクターヴの範囲内ではあるが同 じ鍵盤上で5−1、または1−5と指を置き替え上行、下行する特徴をもっており、同じ動きの反 復を伴うアルペッジョである。
これらをよりレガートに弾く為には手首を柔軟に保ち、指を縮めて置き換える際に音が切れ ないようにすることが大切である。左手の一拍目、三拍目にアクセントが付いている版もあり、
その音に重さを持たせてあとはレガートに素早く指を移動させる動作を行う。