5.2 理論
5.2.2 線量計測への影響
5.2.2.1 部分体積効果
標準計測法12は小照射野(一般的な治療装置ではおよそ4 cm×4 cm未満)での水吸収線 量計測では部分体積効果をあらかじめ評価することを推奨しており、部分体積効果を評価す る方法の一つとして電離箱の電離体積の範囲の二次元の線量分布を平均する方法50,51)を示し ている。フィルムなどの空間分解能が高い検出器で得られた照射野 A の軸外線量比 OAR(A, x, y)であるとき、電離空洞の長軸の長さおよび半径がそれぞれ lおよび r である電離箱を使 用した場合の部分体積効果による平均誤差ε(A, l, r)(%)は次式で予測できる。
2 2
2 2
100 ( , , ) 1 d d
( , , )
d d
l r
l r
l r
l r
OAR A x y x y A l r
x y
ε − −
− −
=
∫ ∫
−∫ ∫
(5.1)ここで、分母は図5.3に示される矩形Aの面積、分子はAの面積と電離空洞が存在する±l/2 およびの±r範囲でのOAR(A, x, y)を積分したBの面積の差を表しており、ε(A, l, r)はこれらの 相対差(B-A)/Aの百分率である。
部分体積効果を補正するには式5.1を次式のように変形し、部分体積効果補正係数kpvを評 価し、補正項の一つとして取り扱う。
2 2
pv 2
2
d d ( , , )
( , , ) d d
l r
l r
l r
l r
x y k A l r
OAR A x y x y
− −
− −
=
∫ ∫
∫ ∫
(5.2)60
図5.3 部分体積効果の概略図51)
61 5.2.2.2 線量率
一般的な線量計測プロトコルでは電離箱のイオン再結合補正に計測が簡便である2点電圧 法22)を推奨している7,17)。2点電圧法 22)によるイオン再結合補正係数ksは以下の式で算出す ることができる。
2
1 1
s 0 1 2
2 2
M M
k a a a
M M
= + +
(5.3)
ここで、M1は常用電圧V1による電位計の表示値、M2は常用電圧の1/2以下の電圧V2による 電位計の表示値、a0、a1およびa2は電圧比 V1/V2ごとに与えられた係数であり、表 5.1に示 す。
表5.1 パルス放射線のイオン再結合補正係数の計算に用いる定数22)
この 2 点電圧法は線量計の挙動が Boagの理論式に基づくことを前提としている。2 点電 圧法自体では線量計の挙動を証明することはできず、挙動が理論に沿わない場合、ksを計測 する際に数パーセントの誤差が生じる可能性がある16)。そのため事前に最適な印加電圧の調 査およびDPPとksの関係について評価するべきであると勧告されている16,48)。
最適な印加電圧の確認には、印加電圧Vの逆数(1/V)に対して電位計の表示値Mの逆数
(1/M)をプロットする方法がある16)。1/V-1/Mプロットの直線部を外挿した切片、つまり印 加電圧が無限大(1/Vがゼロ)、から飽和した測定値Msatが得られるため、常用電圧Vにおけ る測定値M(V)とMsatからイオン再結合補正係数は以下の式から算出できる。
sat
s ( )
k M
=M V (5.4)
このように1/V-1/Mプロットによるイオン再結合補正係数の算出では複数の電圧設定によ る測定が必要となる。
次にDPPとksの関係については、DPPを変化させてksを複数点プロットすることにより評価 することができる。空洞電離箱におけるksは、DPPが増加するほど大きくなり、線形に変化す ることが報告されている48)。
V1/V2 a0 a1 a2
2.0 2.337 -3.636 2.299
2.5 1.474 -1.587 1.114
3.0 1.198 -0.875 0.677
3.5 1.080 -0.542 0.463
4.0 1.022 -0.363 0.341
5.0 0.975 -0.188 0.214
62 5.2.2.3 エネルギースペクトル
線質Qの光子線の水吸収線量を決定するためには、基準線質Q0との線質による電離箱応答 の変化を補正する必要があり、具体的には測定対象であるビームのエネルギースペクトルを 知る必要がある。しかし、直接計測することは困難であり、あらかじめモンテカルロ法にて 計算されたエネルギースペクトルを使用して電離箱応答の変化を求めておく手法が一般的
である7,17)。この線質変換係数kQは線質指標TPR20,10と関連づけられており、標準計測の際には
TPR20,10を計測することでkQを求めることが可能である。現在の標準計測12はFFビームを対象
としたkQを提供しているため、エネルギースペクトルが異なるFFFビームのkQとTPR20,10の関 係を評価する必要がある。特に、図5.4に示すとおりkQの変化の要因の大部分を占める阻止能 比の変化を評価する必要がある。
図5.4 ( / )L ρ w,airとファーマ形電離箱(30013)のkQおよび擾乱補正係数24)
0.93 0.94 0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1.00 1.01
0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85 kQ
(L/ρ)
w,air
Pwall
Pdis
Pcell
Ratio
TPR20,10
63