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船の推進試験は船体の抵抗を調べる抵抗試験とプロペラと船体の干渉を調べ る自航試験から構成される。自航試験ではプロペラの回転数、推力、トルクを 計測し、船体とプロペラの干渉係数、いわゆる自航要素(推力減少率 t、有効 伴流率 w、船後プロペラ効率比R)が得られる。ここで得られた結果を用いて 実船の馬力を推定するため、自航要素を正しく求めることが重要であることは いうまでもない。

ところが、シングルプロペラでは試験解析法が十分確立されているのに対し、

二重反転プロペラの場合はそうではない。二重反転プロペラを一つの推進器と みなす解析法、二つのプロペラの組合せとみなす解析法等、幾つかの解析法が 提案されており、標準的な解析法として認知されているものは存在しない状況 である。

本章では、まず実船馬力推定における自航試験解析法の位置づけについて説 明する。次に、これまでに提案された自航試験解析法を整理し、おのおのの解 析法とその特徴を述べた後で、より合理的にプロペラの作動状態を表現するた めに後プロペラに流入する前プロペラ後流を回転流成分と軸流成分に分離する 解析法について提案する。その後で、前後プロペラで流入速度が異なる場合に おいて、各解析法で解析される自航要素にどのような違いが生じるか考察し、

提案する解析法の妥当性を示す。

実船馬力推定における自航試験解析の位置づけ 3.2

本節では、シングルプロペラの実船馬力推定法として最も広く用いられてい る ITTC 1978 Performance Prediction Method[30](以後、“ITTC法”と呼ぶ)を例 にして、実船馬力推定における自航試験解析の位置づけについて簡単に説明す る。

ITTC法における抵抗試験(Resistane test)、自航試験(Self propulsion test)、プ ロペラ単独性能試験(Propeller open water test)の関係を Fig. 3.1に示す。

Fig. 3.1 The procedure of ITTC 1978 performance prediction method

係数 KQ)を求める。次に、抵抗試験を実施し、船体抵抗 Rmを計測する。実船 の抵抗を推定するために、ここで得られた抵抗は尺度影響を受ける粘性成分と それ以外の造波成分に分離し、船体浸水面積 Sm、船速 Vm、水の密度mで無 次元化して次式により表す。

2

2 1

m m m

m tm

V S C R

Fm tm

W C k C

C  (1 ) ここで、

(3.1)

Ctm : 模型全抵抗係数 CW : 造波抵抗係数 k : 形状影響係数

CFm : 模型平板摩擦抵抗係数

実船の全抵抗係数Ctsは、実船レイノルズ数に対応する平板摩擦抵抗係数CFs

と粗度修正係数CFを用いて次式により計算される。

F W

Fs

ts k C C C

C (1 )   (3.2)

抵抗試験後に、プロペラを装備して自航試験を実施する。ここで、模型と実 船では粘性抵抗が異なるため、その抵抗差 FD(Skin friction correction in self propulsion test)の力で電車を曳引してプロペラの荷重度を実船相当に合わせる ようにする。

) ( tm ts

m m m

D S V C C

F  2

2

1  (3.3)

Fig. 3.2に自航試験の模式図を示す。自航試験で計測された回転数nm、推力

Tm、トルクQmから、船体との干渉を表す自航要素を以下に示す手順により求 める。

(1) 推力減少率 t

プロペラ非装備時に比べてプロペラ作動時には船尾圧力が低下し、船体を曳

(2) 有効伴流率 wm

船体表面の境界層および舵の存在によりプロペラに流入する速度 VAは船体 速度 Vmに比べて遅い流れになる。船体速度 Vmに対する流入速度減少量の比 を有効伴流率wmと呼び、推力一致法を用いて(3.5)式により求める。推力一致 法とは自航試験時の推力係数 KTmと一致する前進係数 Jmをプロペラ単独性能 から求めて、それを自航試験時の前進係数とみなす解析法である。ここで、(3.5) 式中の Dmはプロペラ直径を示す。

m m m m m

A

m V

J D n V

w 1V 1 (3.5)

(3) 船後プロペラ効率比 R

船尾でプロペラが作動する自航試験ではプロペラ単独性能試験時のようにプ ロペラ面内において一様な流れになっていない。そのために、プロペラ単独性 能試験時と同一回転数で同一推力を発生する場合でも、トルクは単独性能試験 時と異なるものになる。この比を船後プロペラ効率比Rと呼び、推力一致法を 用いて(3.6)式により求める。(3.6)式中の KQmは自航試験時の推力係数 KTmに 対応するプロペラ単独性能試験時のトルク係数である。

m Qm m m

R Q

K D n2 5

   (3.6)

nm, Qm

Tm

Rm FD

Vm VA

影響を受けると考え、実船の有効伴流率 wsを求める。

次にプロペラの作動状態を示すプロペラ荷重度 KTs/Js

2 を(3.7)式により求 める。

  

2

2

2 2 1 1 s

ts s

s s

Ts

w t

C D

S J

K

  (3.7)

プロペラ荷重度KTs/Js2に対応する前進係数Jsとトルク係数KQsを実船に装 備するプロペラの単独性能から求めれば、実船のプロペラ回転数nsと実船馬力 PDは(3.8)式および(3.9)式により計算できる。

 

s s

s s

s J D

V n  1w

(3.8)

R Qs s s D

D K n

P 2 3 5  (3.9)

このように自航要素を用いて実船馬力が推定されるが、本章では自航試験解 析法について述べ、実船におけるプロペラ作動状態の算出方法や有効伴流率 wsの推定法については第5章で述べることにする。

従来の自航試験解析法 3.3

二重反転プロペラ装備船の自航試験解析法は解析に使用するプロペラ単独性 能(Propeller Open Water Characterisctics, POC)により Fig. 3.3に示すように、

①二重反転プロペラ単独性能を用いる解析法、②二重反転プロペラ作動時の前 後プロペラ単独性能を用いる解析法、③前後プロペラの単独性能を用いる解析 法、の 3種類に大別される。本節では各解析法について概説する。

解析に用いるプロペラ前進係数 J、推力係数 KT、トルク係数 KQの添字 O、 P、C および有効伴流率 w の添字 R、I、ex はおのおの以下のとおりである。

また、添字 iは前後プロペラの区別(1:前プロペラ、2:後プロペラ)を示す。

プロペラ単独性能 J、KT、KQの添字

O : プロペラ単独試験時の特性(Open water test) P : 自航試験時の特性(self Propulsion test)

C : 二重反転プロペラ単独試験時の前後プロペラおのおのの特性 (Contra rotating propellers)

有効伴流率 wの添字

R : 有効伴流率w中の舵伴流成分(Rudder)

I : 有効伴流率w中の前後プロペラ干渉成分(Interaction)

ex : 有効伴流率wから前後プロペラ干渉成分を除いた成分(EXcluding)

Fig. 3.3 Kind of propulsion system used in self-propulsion analysis

二重反転プロペラ単独性能を用いる解析法 3.3.1

二重反転プロペラを一つの推進器とみなし、前後プロペラの推力およびトル クを合計した二重反転プロペラ全体の単独性能を用いて推力一致法で解析する 解析法で、通常のシングルプロペラの場合(ITTC法)と手順は変わらない。そ のため、従来の解析システムをそのまま使用できるという大きな利点がある。

しかし、前後プロペラ個々の作動状態が分からない、という問題がある。

この解析法では二重反転プロペラの単独性能を用いて以下のように有効伴流 率 wおよび船後プロペラ効率比 Rを求める。手順はシングルプロペラの場合 と同じであるため、本解析法についても“ITTC法”と呼ぶ。

(1) 初めに二重反転プロペラの単独試験を実施する。前進速度VA、回転数ni

(2) 次に自航試験を実施し、模型速度 Vm、回転数 ni、推力 TPi、トルク QPi

から、船体前進係数 JP、推力係数 KTP、トルク係数 KQPを次式により求 める。

1 1D n

JP  Vm4

1 2 1

2 1

D n

T KTP TP P

  、 5

1 3 1

2 2 1 1

D n

Q n Q

KQP n P P

  (3.11)

(3) KTPに相当する前進係数 JO、トルク係数 KQOを二重反転プロペラ単独性 能から求め、有効伴流率 w および船後プロペラ効率比 Rを次式により 求める。

P O

J w 1J 、

QP QO

R K

 K

 (3.12)

(4) なお、推力減少率tは抵抗試験により得られる船体の全抵抗 Rmおよび摩 擦修正量FDを用いて次式により求められる。推力減少率の求め方は各解 析法で共通のため、以後は求め方の記述を省略する。

2 1

1

P P

D m

T T

F t R

 

 (3.13)

二重反転プロペラ作動状態における前後プロペラ単独性能を 3.3.2

用いる解析法

二重反転プロペラ作動状態における前後プロペラおのおのの特性を自航解析 に用いる解析法が、Ohら[32]や佐々木ら[16]により提案されている。この方法 は ITTC 法と異なり、前後プロペラ個々の自航要素を求めることができるとい う特徴がある。また、他方のプロペラからの誘起速度を含んだプロペラ特性を 用いるため、解析される有効伴流率 w および船後プロペラ効率比Rは前後プ ロペラの相互干渉影響をある程度除いた値となっている。船尾では前後プロペ ラに異なる速度の流れが流入して単独性能試験時と相互干渉が変化する。そこ で、佐々木は前後プロペラに流入する舵伴流の大きさの違いに着目し、その違 いのために生じる見かけの伴流について考慮することにしている。ただし考慮

考慮する場合を“佐々木法”と呼ぶ。

(1) 二重反転プロペラの単独性能試験から前後プロペラおのおのの前進係数 JCi、推力係数KTCi、トルク係数KQCiを求める。

i i

A

Ci n D

J  V 、 2 4

i i TCi Ci

D n K T

  、 2 5

i i QCi Ci

D n K Q

  (3.14)

(2) 自航試験を実施し、各プロペラの推力係数 KTPi、トルク係数 KQPiを求め る。

i i

m

Pi n D

J  V 、

4 2

i i

Pi

TPi n D

K T

  、

5 2

i i

Pi

QPi n D

K Q

  (3.15)

(3) KTPiに相当する前進係数 JCi、トルク係数 KQCiを(1)の単独性能から求め、

有効伴流率wiおよび船後プロペラ効率比Ri を次式により求める。

Pi Ci

i J

w 1J 、

QPi QCi

Ri K

 K

(3.16)

さらに佐々木法の場合、舵伴流率 wRiによる影響を以下のように考慮する。

(4) まず、舵伴流率wRiを舵の最大翼厚 tmax、プロペラ半径Ri、舵代表位置(舵 前縁から30%位置)とプロペラとの距離diを用いて次式により求める。

2



 

 

i i i R i

Ri R

d D u t A

w max

ここで、

i

i D

A 0.35tmax

 

2

1

1 1

2 1 1 1

i

Ti i

i i i

R w g d R w C

u ( / )( )( )

1 2

1

) / ( ) /

/ (

i i

i i i

i d R

R R d

d

g   

(3.17)

1

2 R

R

R w w

dw  

R

I dw

w 1 0.25 、wI2 0.6dwR (3.18)

これは、後プロペラへの舵伴流が大きい場合(dwRが正の場合)に、後プロペ ラの荷重度が大きくなり後プロペラから前プロペラに誘起される速度が大きく なって単独性能試験時よりも前プロペラ流入速度が速くなること(wI1<0)、逆 に前プロペラから後プロペラへの誘起速度は小さくなり後プロペラ流入速度が 遅くなること(wI2>0)を意味する。(3.16)式より得られる有効伴流率 wi に は相互干渉変化分を含んでいるが、プロペラに流入する実質的な船体と舵の合 計有効伴流成分 wexiは次式により表すことができる。

Ii i

exi w w

w   (3.19)

前後プロペラの単独性能を用いる解析法 3.3.3

前後プロペラおのおのを一つの推進器として取り扱う解析法を Oh ら[32]や 石田ら[31]が提案している。前項の解析法では解析に用いるプロペラ特性に前 後プロペラの相互干渉影響が含まれるのに対し、この解析法では自航要素に相 互干渉影響が現れることになる。例えば有効伴流率 wは船体もしくは舵による 減速分だけでなく他方のプロペラによる増速分を含んだものとなるため、他解 析法に比べかなり小さい値になる。

Ohは干渉影響を考慮しない解析法を示しているが、その場合、有効伴流率 w の物理的な意味合いが他解析法と異なるため、後述するように実船馬力の推定 をする際に問題が生じる。一方、合理的に有効伴流率 wの尺度影響を取り扱え るように、石田は船体および舵に起因する伴流と相互干渉による伴流を分離す る解析法を提案している。相互干渉を合理的に求めることで、前後プロペラに 異なる伴流が流入する場合も、佐々木が提案しているような簡易式を用いるこ となく、単独試験時からの相互干渉変化を考慮することができる。

この解析法では有効伴流率wおよび船後プロペラ効率比 を以下のように

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