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第 4章 二重反転プロペラ装備船の有効伴流

4.1 緒言

二重反転プロペラ装備時にはシングルプロペラ装備時に比べて有効伴流係数 1-wが小さくなることが多く報告されている。佐々木[25]や小久保ら[24]は二 重反転プロペラ装備時の有効伴流係数 1-w がシングルプロペラ装備時に比べ 10%近く低下している実験例を示しているが、その原因については舵の影響を 示唆するに留まり十分な説明はなされていない。しかし、著者の経験では Fig.

4.1 に示すように舵非装備時にも二重反転プロペラ装備船とシングルプロペラ 装備船では明白な有効伴流係数 1-w の違いが認められる。Fig. 4.1に示す例は タンカーの試験結果だが、コンテナ船、ばら積み船、旅客船と船種を問わず二 重反転プロペラ装備船では有効伴流係数 1-w が小さくなる傾向が認められる。

有効伴流係数1-wは尺度影響を大きく受けるパラメータであり、かつ、それに よる推進効率改善量はプロペラ単独性能の向上に匹敵するほど大きくなること もあるため、実船馬力推定法を考える上で、その性質について考察することは 重要である。

そこで、本章では段階的にプロペラと船体の干渉について考える。まず完全 流体中において Hess&Smith 法[34]を用いてプロペラ前方に配置した回転体と プロペラの干渉を計算し、二重反転プロペラおよびシングルプロペラ作動時に どのような差異があるか調べる。次に、境界層理論を用いてその流場の差異が 境界層の発達およびプロペラに流入する流速に及ぼす影響について考察する。

最後に、CFDを用いて実際の船体上に発達する境界層について調べ、実験と同 様にシングルプロペラ作動時に比べ二重反転プロペラ作動時には有効伴流係数 1-wが小さくなることを確認する。これらの検討を通じ、二重反転プロペラ装 備船ではシングルプロペラ装備船に比べ伴流利得が大きくなる原因について考

Fig. 4.1 Effective wake coefficient of CRP and Single Propeller(SP) 0.5

0.55 0.6 0.65 0.7

0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18

1-w

Froude Number

SP

CRP(unit) CRP(fore) CRP(aft)

完全流体中の回転体周りの流れ 4.2

まず、完全流体中において回転体をプロペラ前方に配置した時に二重反転プ ロペラとシングルプロペラでどのような流場の違いがあるか調べる。第 2章で 示した計算法の中で舵にあたる部分を回転体に置き換えて計算した。ただし、

回転体に揚力は発生しないため束縛渦は配置せず、吹出しパネルのみ回転体表 面に配置している。

計算対象 4.2.1

計算した回転体の形状をFig. 4.2に、プロペラおよび回転体の要目をTable 4.1、

Table 4.2に示す。回転体の形状は、後で境界層計算結果の妥当性を検証するた

めに回転体周りの流場計測も実施している文献[41]内の形状を模擬している。

プロペラは Fig. 4.1 に例として示した自航試験時に使用したものを相似で変形 させたもので、第 2章で計算を行ったTable 2.2の二重反転プロペラとシングル プロペラを相似変形させたものである。シングルプロペラの位置は前プロペラ と合わせた場合(以後、“前位置”)と前後プロペラの中間位置(以後、“中央位 置”)に置いた場合の 2ケースについて計算を行った。なお、Fig. 4.1の自航試 験では前後プロペラの中間位置にシングルプロペラを配置している。

Fig. 4.2 Body of revolution

Table 4.1 Principal particulars of propellers

CRP SP

MP714

(geosim)

MP715 (geosim)

MP423 (geosim)

Diameter (m) 0.126 0.108 0.126

Pitch Ratio 0.88 0.92 0.7

Number of Blades 5 4 4

Boss Ratio 0.2159 0.2509 0.18

Propeller revolution ratio of forward

propeller to aft propeller n1/n2 0.769 - Distance from back end of body to GL (m) 0.063 0.0852 0.063,0.0741

Table 4.2 Principal particulars of body of revolution

Length (m) 1.62

Diameter (m) 0.2

シングルプロペラと二重反転プロペラの前方流場の違い 4.2.2

計算条件をTable 4.3 に示す。二重反転プロペラの回転数は自航試験時の推力 係数 KTに合うように調整し、シングルプロペラの回転数は二重反転プロペラ と同じ推力を発生するように調整した。

二重反転プロペラ作動時とシングルプロペラ作動時の回転体表面のプロペラ 誘起速度を Fig. 4.3 に示す。二重反転プロペラ作動時の増速量はシングルプロ ペラ前位置に比べて小さく、シングルプロペラ中央位置に比べると若干大きく なる。二重反転プロペラの推力発生中心が前後プロペラのおおよそ中間位置で 代表されるとすれば、前者の場合二重反転プロペラの方が推力発生中心が物体 から離れているため増速量は小さく、後者の場合は物体からの距離がシングル

Table 4.3 Calculation condition

CRP SP

MP714

(geosim)

MP715 (geosim)

MP423 (geosim)

V (m/s) 1 1

n (rps) 14.4 18.7 0.7

T (kgf) 1.896 1.894

0.986 0.910

KT 0.357 0.198

Fig. 4.3 x component of velocity on the surface of body of revolution (above: SP is located at the forward propeller, below: SP is located at the middle of aft and

forward propeller)

次にプロペラ面からプロペラ前方方向に流線追跡してみると、Fig. 4.4に示す ようにシングルプロペラの位置に関わらず二重反転プロペラの流線の方が内側 になり、縮流範囲が狭くなっていることが分かる。粘性流体中では物体表面に 近いほど遅い流れになるため、縮流範囲が狭いとプロペラ面への流入速度は二 重反転プロペラの方が遅くなることになる。Fig. 4.5にプロペラ直前(10%D前

による影響が支配的となり距離の遠い後プロペラによる増速率を合わせてもシ ングルプロペラの増速率には及ばない。結果として二重反転プロペラの方がシ ングルプロペラに比べ誘起速度は小さくなり、プロペラ直前の流線が内側に吸 い込まれる量も少なくなっていると考えられる。

Streamline of SP Streamline of CRP

Streamline of SP Streamline of CRP

Fig. 4.5 Calculated induced velocity at 10%D forward of SP and the forward propeller of CRP

粘性流体中の回転体周りの流れ 4.3

次に、前節で検討した回転体周りの流れに粘性の影響を考慮した場合につい て考える。プロペラ非作動時の流場(公称伴流)とプロペラ作動時の流場(有 効伴流)の違いは、主にプロペラ作動による境界層特性の変化と縮流の存在に よって生じるため、それぞれについて以下のような検討を行った。

(1) 物体表面上の境界層の発達

二重反転プロペラおよびシングルプロペラが作動している時の物体表面流速 を入力値として境界層計算を行い、物体表面上に発達する境界層の違いについ て調べる。

(2) 縮流の影響

物体後端からプロペラまでの間の流れは非粘性とし、永松ら[43]に倣って渦 度方程式を用いて物体後端の伴流の変形を求めてプロペラ面における流速分布 を推定する。

境界層計算の解法 4.3.1

境界層理論の基本的な考え方は、境界層と呼ばれる物体表面近くの薄い流体 の内部だけで粘性を考え、その外は理想流体として取り扱う、というものであ る。そして境界層内においてナビエストークス方程式の各項のオーダーを検討 し、境界層の厚さは物体の厚さに比べて十分に薄く、境界層内の圧力変化はな い、という仮定の下で微小項を無視することにより簡略化して得られる運動方 程式が境界層方程式である。簡便な解法として、運動方程式そのものを解くの ではなく、境界層厚さ方向に積分した式を解く積分型の解法が広く用いられる [42]。層内の流れの詳細を知ることはできないが、簡便な計算ながらも物体表 面の限界流線や物体近傍の流れの大略を知ることができる。本研究においては 二重反転プロペラ作動時とシングルプロペラ作動時の境界層発達について定性 的な違いを調べることを目的として、以下に示す積分型境界層方程式を用いた

圧力、流体の密度および動粘性係数をp、、とする。また、s、n方向の摩 擦応力成分をs、nとおくと、s、n 方向の積分型境界層方程式は微小 2 次流 れを仮定して次式で表される。

KU s

s U U

s U 

 

11 1 1

11

2 (4. 1)

   

 

 K U n

s U

1 11 2 2 21

2 (4. 2)

ただし、K、K2はs、n方向の尺度hs、hnを用いた n、s方向の測地的曲率で あり、(4.3)式で表される。また運動量厚さ11、21、排除厚さ1、2は(4.4)、

(4.5)式で表される。

s h h

K h n

n

s

 

 1

1

n h h

K h s

n

s

 

 1

2 (4. 3)

 

0

11 1 

 d

U u U

u 、21

0 2 d U

uv (4. 4)

 

0

1 1 

 d

U

u 、2

0 d U

u (4. 5)

(4.1)、(4.2)式を解くためには局部摩擦則と補助方程式が必要であり、局部摩

擦則には(4.6)式に示す Ludwieg-Tillmann の式、補助方程式には(4.8)式に示す Entrainment の式を用いた。

268 0 678 11

0

2 0123 10

. . .

 

 

 

 U

U

H

w (4. 6)

ここで、wは壁面の摩擦応力を表す。H は形状係数であり、(4.7)式で表され る。

11 1

 

H (4. 7)

G

G

P K

F

 

G

s

1 11

11

 (4. 8)

s U P U

 1 

また、境界層内の速度分布を仮定する必要があるため、主流方向の速度分布 には指数法則を用いる。二重反転プロペラとシングルプロペラでは前方に誘起 する速度分布が異なるため、層内の速度分布も影響を受けると推測されるが、

その影響の違いを表すことのできる適当な手法がないため本研究においては同 一の式を用いて速度分布を仮定することとする。

m

U

u 

 



 、

2

1

 H m

1

1

  m

(4.10)

これらの式を用いると(4.1)、(4.2)式は、以下のような11、H が未知数であ る連立常微分方程式に整理され、形状係数 H と運動量厚さ11の初期値を与え ると、数値的に解くことができる。

 

1 11

2 11

11  2 

 H P K

U ds

d w

(4.11)

     

   

 

P

H

H G

H G U

H G

H G H

G G F ds

dH w

 

 

  1 1

2 11

11

 (4.12)

境界層計算では境界層外の流れを完全流体として取り扱うが、通常物体周り のポテンシャル流れを解いて、それを入力値とすることが多い。しかし、物体 の回転半径に比べて境界層厚さが大きい場合には物体そのものではなく排除厚 さを考慮した等価物体周りの圧力分布を境界層内における平均的圧力とみなし て計算した方が実際の境界層の発達を良く推定できることを戸田ら[41]は指摘 している。

本研究においても戸田らに倣い等価物体を仮定して Hess&Smith 法[34]によ り、その周りの流れを解くこととした。戸田らは実験結果から排除厚さを求め、

それを物体の厚みに加えて計算しているが、本研究では実験値がないため、物

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