本論文では狭線幅なTHz波を室温において周波数可変で小型な光学系から発 生することのできる差周波発生を用いた広帯域で高出力な THz 波発生の実現に 向け、THz波差周波発生光源として優れた特性を併せ持つGaSe結晶の溶液成長 方法の確立と成長したInxGa1-xSe混晶を用いた高効率THz波発生を実現した。
5.1 溶液成長の成長速度高速化と高品質 In
xGa
1-xSe 混晶の作製
In、Sn、Bi、Sbの4つの溶媒を用いてGaSeの溶液成長を行い、In溶媒を用い た温度差法による成長において、これまでのGa溶媒からのGaSe結晶の成長と 比較して(001)面垂直方向の厚さを5 倍増加することに成功した。また、In溶媒 中のGaSeの溶解度を温度ごとに測定し、GaSeをIn溶媒に溶解することで、Ga 溶媒に Se を溶解する場合と比較して Se の溶解度及びその温度係数が増加する ことを明らかにした。
In溶媒からのInxGa1-xSe混晶の成長にトラベリングヒーター法を用いて過飽和 状態を制御し、最大温度勾配の方向も合わせて制御することにより成長方向の 揃ったInxGa1-xSe混晶の成長に成功した。また、熱物質移動シミュレーションに より過飽和度分布の広がる坩堝壁面の角度と(001)の成長方向についての関係を 予想した。
5.2 In
xGa
1-xSe 混晶を用いた高効率 THz 波光源
成長温度を変えることにより InxGa1-xSe 混晶の In 組成を変化することが可能 であることを、異なる成長温度で成長した結晶のIn組成を評価し、示した。そ れぞれの In 組成の InxGa1-xSe 混晶において機械的特性、電気的特性、光学的特
第5章 総括
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性についての評価を行い、無添加GaSeと比較してInxGa1-xSe混晶では層間結合 力が増加すること、Gaサイトを占有するInが電気的に中性であることを確認し た。厚さ415 µmのInxGa1-xSe混晶からのTHz波発生強度の(001)面内角度依存性 について、結晶の構造に由来する六回対称の THz 波強度変化を確認することが 出来た。また、InxGa1-xSe混晶のIn組成と位相整合角度の関係を明らかとし、In の増加により屈折率または複屈折性が減少することを示唆した。Ga溶媒から成 長した厚さ100 µmのGaSe結晶と比較して、厚さ860 µmのInxGa1-xSe混晶から のTHz波発生の発生効率は79倍向上し、低温での溶液成長において成長速度の 高速化により高品質で厚いInxGa1-xSe混晶をTHz波発生に用いることでTHz波 発生効率の向上に成功した。
5.3 In
xGa
1-xSe 混晶を光源とした THz 波応用
In 溶媒からトラベリングヒーター法により成長した In 組成 2.5 at%の InxGa1-xSe混晶を光源としてTHz波による非破壊イメージング応用を行い、10.6 THzにおけるイメージングにおいて空間分解能は800 µm、3 THzのイメージン グにおいては2 mmであることを確認した。また、InxGa1-xSe混晶から発生した THz波により、1-3 THzにおいてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニ ルの分光測定を行いうことでそれぞれの吸光度の差やポリプロピレンの吸収ピ ークを確認することができ、周波数を変えてイメージングを行うことでそれぞ れの樹脂材の識別を行うことに成功した。
5.4 結言
様々な THz 波発生方法の中でも実用的な利点を多く有する差周波発生におい
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て、広帯域で高出力な THz 波光源材料として期待される GaSe 結晶の実用化に 向け、その成長方法の確立と成長した結晶の特性評価、THz 波発生の高効率化 を行った。高品質なGaSeの成長方法である溶液成長において課題となっていた 成長速度の遅い問題を、In 溶媒を使用することにより解決し、In 溶媒中におけ る溶質の溶解度とその温度係数の増加についても明らかにした。また、トラベ リングヒーター法と最大温度勾配方向の制御により成長方向の揃ったInxGa1-xSe 混晶を低速で成長する方法を確立し、THz 波発生に必要な口径と厚さを有する 高品質なInxGa1-xSe混晶の作製に成功した。このInxGa1-xSe混晶を用いてTHz波 発生を行うことにより、結晶構造に由来する THz 波の強度変化をバルク結晶に おいて確認することができ、In 組成による屈折率または複屈折性の変化が、位 相整合角に影響を与えることを明らかとした。最後に同軸位相整合による THz 波発生の効率が厚さにより大きく変化することを確認し、成長速度を高速化し た厚い InxGa1-xSe 混晶からの THz 波発生により、Ga 溶媒から成長した無添加 GaSeと比較して、発生効率を79倍に向上することに成功した。発生効率を向上 した InxGa1-xSe 混晶を光源として THz 波のイメージング応用と分光測定を行う こともでき、本研究の成長方法により成長した InxGa1-xSe 混晶が THz 波の応用 においても有用な結晶であることが示された。