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総括

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(k667) (ページ 117-128)

本論文においては、REBCO系超伝導体の線材応用の現状の課題に対して、溶融水酸化物

法並びにRE124 の熱分解プロセスを用いることで、その解決を図ることを目的として研究

を行い、それぞれの章において以下のことを示した。

第1章では、超伝導の発見から、応用における背景を述べ、現在のREBCO系超伝導体の 応用上の問題を提起し、本論文における研究目的の設定を行った。

第2章では本研究に用いた測定手法並びに実験原理を論述した。

第3章ではRE123並びにRE124の形成温度を低下させることを目的として、種々のBa原

料粉並びにフラックスを用いて結晶相の合成を試み、合成温度の低温化に成功したためこ の旨を論述した。REとしてYを用いるよりも、Euのようなイオン半径の大きなREを用い ることで、合成温度が低下することを明らかとした。さらに、溶融水酸化物としてKOHで はなく、NaOH-KOH共晶溶液を用いることで、さらなる合成温度の低温化に成功した。他 の手法では800–1000°C以上必要であったRE123・RE124の形成温度が溶融水酸化物法を用 いることで450°C まで下がることを報告した。しかし、形成されたRE123・RE124 は応用 の目安である90 K程度のTcを示さなかったため、Tcの改善が求められることが明らかとな った。

第4章では、第3章で得られたEu124膜が90 Kの転移温度は示さないものの、他手法で 形成されるものより良質な Tcを示すことに着目した。溶融水酸化物法で形成された Eu124 膜を熱分解してすることでEu123膜を形成し、これがTczero=93 Kと、高い特性示す膜であ ったため、この旨を論述した。熱分解温度は熱処理中の酸素分圧を下げることによって低下 し、P(O2)=10−4atmで熱分解することで625°CにおいてEu123膜を形成することに成功した。

熱分解によって得られた Eu123膜は熱分解後も c 軸配向性を維持しており、応用に適する 膜であることが明らかとなった。熱分解後のEu123膜のCuの元素マッピングから、Cuが 数µmオーダーの集まりで膜内ないし膜外に析出することが明らかとなった。上記のことか ら、第 4 章の溶融水酸化物法による低温結晶成長プロセスと、第5 章の熱分解プロセスを 組み合わせることで、全プロセスを600°C前後と低い温度に抑えて90 Kを超える高いTc

示すRE123膜が形成可能であることを明らかにした。

第5章では、Y124超伝導体の転移温度の向上に向けて、これまでに報告されたSr添加Y124 の Tcの変化に対して問題を提起し、先行研究とは異なる手法として溶融水酸化物法を用い

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てSr添加Y124を形成し、Tcと結晶のc軸長の変化からTc向上のメカニズムを検討した。

溶融水酸化物法を用いて形成されたSr 添加Y124はSr の添加量の増加に従ってTcが上昇 し、先行研究よりも高いTcを示すSr添加Y124の形成に成功した。また、合成温度の低下 に伴ってTcが向上することが明らかとなった。Tcc軸長の関係から、先行研究ではSrと Y124結晶中のBaが置換することによってTcが変化すると考えられていたのに対し、本研 究で得られた結果から、SrとY124結晶中の Yが置換することによってホールドープ効果 でTcが向上するという考察を論述した。

第6章では第5章で得られた結果をもとに、溶融水酸化物法を用いて高いTcを示すSr添加 Y124膜を基板上に形成し、通電特性を評価することを目的として研究を行った。溶融水酸 化物法を用いてSr添加Y124の形成を試み、NdGaO3基板上に二軸配向したY124を形成す ることに成功した。形成されたY124はSrの添加によってTcが上昇し、最大でTconset=90.7

K, Tczero=85.8 Kを示す膜を得ることに成功した。しかし、基板元素の拡散によってTcがわ

ずかに低下することが明らかとなった。

上記に示したとおり、溶融水酸化物法という手法が高いポテンシャルを有しており、これ までにないコストパフォーマンスを有する REBCO 系超伝導薄膜を形成する可能性を秘め ていることが、本論文によって明らかとなった。

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謝辞

本研究の遂行および本論文の執筆にあたっては、学士の頃より博士課程に至るまで長 い間に渡って指導教員として終始暖かい御指導をいただきました島根大学自然科学研 究科山田容士教授に心より感謝し、厚くお礼申し上げます。また、本論文の作成にあた り、多くの助言とご協力をいただきました島根大学自然科学研究科舩木修平助教に心よ りの感謝を申し上げます。

また、論文の執筆にあたって貴重なご意見・ご助言を下さいました島根大学総合理工 学研究科三好清貴教授、梶川靖友教授、宮崎英敏教授に深く感謝いたします。

本研究における重要な役割を果たす磁気測定にあたっては、島根大学自然科学研究科 西郡至誠准教授に大変お世話になりました。心より厚くお礼申し上げます。また島根大 学総合理工学部物質科学科(現 総合理工学部物理・マテリアル工学科)の教員の皆様方 には、学士時代より多くの学びを与えて頂き、多大なお力添えを頂いておりました。心 よりお礼申し上げます。

本論文は2013年4月から2019年9月にかけて、著者が島根大学総合理工学部物質科 学科並びに島根大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻に所属した間に遂行され た研究をまとめたものです。その間に研究室において細かい実験指導から、研究の進め 方を指導して頂きました中山文也先輩には深く感謝申し上げます。また、井上創太先輩、

菊池大樹先輩には、多くの研究指導・議論をいただきました。心より感謝申し上げます。

また、修士時代、お互い切磋琢磨し、夜が更けるまで議論や実験を共にした奥西亮太君 には、篤くお礼を申し上げます。さらに、長い間修士と博士課程を共にした杉浦怜君に は、研究グループは違いましたが、研究においては深く、熱い議論を交わさせて頂きま した。心より感謝申し上げます。

そして最後に、私事とはなりますが、日々より大学院における研究を援助し、経済的 にも、精神的にも支えて頂きました著者の両親である宮地威富,宮地阿佐子に心よりの 感謝を申し上げます。本日まで風の如く、目には見えないけれども確かな暖かい心で支 えてくださいましたことを、今一度、深く感謝させていただきます。

令和元年7月22日 宮地 優悟

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研究業績

発表論文

1. “Fabrication of c-axis Oriented Epitaxial EuBa2Cu3O7- and EuBa2Cu4O8 Films on SrTiO3 (100) Substrate by Molten Hydroxide Method at 450°C”

Yugo Miyachi, Shuhei Funaki, Yasuji Yamada Physics Procedia 65 (2015) 129–132

2. “溶融水酸化物法で成膜されたEuBa2Cu4O8膜の熱分解によるEuBa2Cu3O7– 膜の低温形 成プロセスの検討”

宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士 低温工学 54 (2019) 187–191

3. “Increasing the Tc of YBa2Cu4O8 to 90 K by Sr doping via the KOH flux method” Yugo Miyachi, Shuhei Funaki, Yasuji Yamada

Japanese Journal of Applied Physics 58 (2019) 070906

発表論文(その他)

1. “Liquid Phase Growth of YBa2Cu3O7-x at Low Temperature Using KOH FLUX”

Yasuji Yamada, Shuhei Funaki, Fumiya Nakayama, Ryota Okunishi, Yugo Miyachi Physics Procedia 58 (2014) 50–53

2. “Low Temperature Fabrication of REBa2Cu3Oy Epitaxial Films on SrTiO3 (100) Substrate Prepared by Molten Hydroxide Method in 1-atm Air”

Shuhei Funaki, Yasuji Yamada, Yugo Miyachi, Ryota Okunishi Physics Procedia 65 (2015) 125–129

3. “Low-Temperature Fabrication of Nd123 Epitaxial Films by KOH Flux Method Under Ambient Pressure”

Shuhei Funaki, Yasuji Yamada, Yugo Miyachi, Ryota Okunishi IEEE Transactions on Applied Superconductivity 26 (2016) 7201404

117 学会発表(国内)

1. “水酸化カリウムを用いた YBa2Cu4O8バルク体の作製”

宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士

2013年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 香川, 2013年7月

2. “溶融水酸化物法を用いたREBa2Cu3O7–の合成と生成温度領域の検証”

奥西 亮太, 中山 文也, 宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士

2014年 第61回応用物理学会春季学術講演会, 東京, 2014年3月

3. “溶融水酸化物法を用いて作成したYBa2Cu4O8のSr置換効果”

宮地 優悟, 中山 文也, 舩木 修平, 山田 容士

2014年 第61回応用物理学会春季学術講演会, 東京, 2014年3月

4. “KOH flux法で作製したREBa2Cu3O7–の超伝導特性と合成温度の関係"

奥西 亮太, 宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士

2014年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 島根, 2014年7月

5. “金属有機化合物分解法を用いたYBCO膜の作製と評価"

児島 康大, 荒川 幸治, 磯谷 佑太, 大西 浩平, 奥西 亮太, 宮地 優悟, 舩木 修平, 山 田 容士

2014年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 島根, 2014年7月

6. “溶融水酸化物法によるEuBCO合成の低温化"

宮地 優悟, 舩木 修平, 奥西 亮太, 山田 容士

2014年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 島根, 2014年7月

7. “KOH flux法を用いて低温合成したREBa2Cu3O7–の超伝導特性”

奥西 亮太, 宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士

第75回応用物理学会秋季学術講演会, 北海道, 2014年9月

8. “KOHフラックス法を用いた1気圧大気中におけるRE123膜の低温成膜"

舩木 修平, 山田 容士, 宮地 優悟, 奥西 亮太, 西郡 至誠 第75回応用物理学会秋季学術講演会, 北海道, 2014年9月

9. “溶融水酸化物法を用いたEuBCO膜の低温成膜”

宮地 優悟, 奥西 亮太, 舩木 修平,山田 容士

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第75回応用物理学会秋季学術講演会, 北海道, 2014年9月

10. “REBCO超電導体の溶液相からの低温直接形成法”

山田 容士, 舩木 修平, 中山 文也, 宮地 優悟, 奥西 亮太

2014 年度秋季低温工学・超電導学会, 福島, 2014年11月

11. “溶融水酸化物を用いたREBCOエピタキシャル膜の低温成膜”

舩木 修平, 山田 容士, 宮地 優悟, 奥西 亮太

2014 年度秋季低温工学・超電導学会, 福島, 2014年11月

12. "低温NaOH-KOHフラックス中で液相成長させたEu123, Eu124膜の特性評価"

宮地 優悟, 奥西 亮太, 舩木 修平, 山田 容士

第13回低温工学・超電導若手合同講演会, 大阪, 2014年12月

13. “KOH flux法で合成したRE123相の酸素分圧の制御によるRE/Ba置換の制御"

奥西 亮太, 舩木 修平, 宮地 優悟, 山田 容士

第62回応用物理学会春季学術講演会, 神奈川, 2015年3月

14. “KOHフラックス法を用いたREBa2Cu3Oy膜作製時の酸素分圧制御によるRE/Ba置換の 抑制"

舩木 修平, 奥西 亮太, 宮地 優悟, 山田 容士

第62回応用物理学会春季学術講演会, 神奈川, 2015年3月

15. "NaOH-KOHフラックス法を用いて成膜したEu123,Eu124膜の特性評価"

宮地 優悟, 舩木 修平, 奥西 亮太, 山田 容士

第62回応用物理学会春季学術講演会, 神奈川, 2015年3月

16. “DCスパッタで作製したY123種膜を用いた溶融水酸化物法によるY124膜の作製"

添田 圭佑, 児島 康大, 奥西 亮太, 宮地 優悟, 舩木 修平, 山田 容士

2015年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 徳島, 2015年8月

17. “KOHフラックス法によるREBa2Cu3OyのRE/Ba置換の改善に向けた合成条件の検討"

奥西 亮太, 舩木 修平, 山本 諒太郎, 宮地 優悟, 山田 容士

2015年度応用物理・物理系学会中国四国支部合同学術講演会, 徳島, 2015年8月

18. “KOHフラックス法による高Tcストロンチウム添加Y124膜の作製と評価"

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(k667) (ページ 117-128)