第 3 章 NaOH-KOH 共晶溶液を用いた Eu123・Eu124 の低温合成と成膜への応用
3.6. 結言
溶融水酸化物が高温において高い腐食性を有するため、溶融水酸化物法で RE123 あるい
はRE124 を成膜するにあたっては腐食を避けるためにより低温において成膜を行う必要が
ある。そこで、RE123·RE124 の低温成膜を目的とし、溶融水酸化物による低温成膜の条件 の検討のため
1. フラックスとして KOH を用いた際の、RE2Cu2O5相の生成の有無による RE123·
RE124相の生成阻害の検討。
2. フラックスとしてKOH及びNaOH-KOH共晶溶液を用いた際の、RE123·RE124の 成膜下限温度の検討。
の2つに関して研究を行い、以下の知見を得た。
1.に関して
(i) KOHフラックスを用いた際は、550°C以下の低温溶液中においてはY123あるい はY124 の低温合成を行うことが出来なかった。発生した異相は YCuO2であった。
(ii) KOHフラックスとEuを用いて合成した場合には、Yよりも低い温度における合
成に成功し、相形成の下限温度は500Cであった。用いるBa原料によって生成相 が変化し、BaCO3を用いた場合は Eu123 と Eu124 の二相が確認できたのに対し、
BaO2を用いた際にはEu124が単相で得られた。
2.に関して
(i) KOHのみの溶液を用いた際の、Eu123あるいはEu124の成膜下限温度は500Cで あった。これは1.で得た粉末合成の結果と同様であった。しかし、得られた相はよ り低温で合成するほどEu123の回折がEu124に対して強くなり、550°C以下の合成 においてはEu124に由来する回折が消失した。
(ii) NaOH-KOH 共晶溶液をフラックスとして用いることで、KOH を用いた場合より
も50C低い、450CにおいてEu123あるいはEu124の成膜に成功した。
(iii) 使用するBa原料によって生成される相が変化し、BaCO3を用いた場合はEu123・
Eu124の2相混在膜が、BaO2、BaOH2·8H2Oを用いた場合には、Eu124膜が得られる ことが明らかとなった。
(iv) 膜厚の温度依存性から、成膜温度が高いほど、得られる膜の膜厚が厚くなる傾向
が示された。これは高温であるほど溶解度が高いことや、物質の移動が促進される ためであると考察される。また、Ba(OH)2·8H2O を用いた場合は、Ba そのものが溶
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液になるために、Baが不足した状態になると考察され、このために成膜速度が遅い と考察される。
(v) いずれの Ba 原料を用いた場合においても、450C で SrTiO3 (100)上に成長した
Eu123あるいはEu124は、Cube on Cubeでエピタキシャル成長しており、良好なc
軸配向性並びに面内配向性を示すことが明らかとなった。
(vi) NaOH-KOH 共晶溶液を用いて得られた膜の電気抵抗値の温度依存性から、450C
の低温成膜によって得られたEu124膜は、これまでの報告よりも高い温度において ゼロ抵抗を示し、低温において成長するEu124が良好な超伝導特性を示すことが明 らかとなった。これ対して、Eu123が主相として確認された膜はゼロ抵抗を示さず、
その要因はc軸長から、EuとBaの置換によるものであると推察される。
(vii) 450C で得られたEu124 膜は、BaO2とBa(OH)2·8H2O を用いた場合で Tcが異な り、これらの膜のc軸長が異なることから、Eu124においても、EuとBaの置換が 生じる可能性があることを示した。
これまでのLPE法においては、900C以上の高温環境が必要であり、KOHを用いた溶融 水酸化物法においても、成膜の際に600C前後の温度が必要であったが、REとしてEu、ま たフラックスとしてNaOH-KOH共晶溶液を採用することによって、450Cという低温環境
においてEu123あるいはEu124が成膜可能であることを示した。
得られたEu123あるいはEu124相は液体窒素温度(77 K)以上の転移温度を有さなかった。
次章においてはこれらの膜のTcの改善を報告する。
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