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総括

ドキュメント内 小川, 篤生 (ページ 142-147)

6.1 はじめに

高速道路をはじめ、我が国の公共構造物の維持管理に関して、これまで行われてきたいわ ゆる事後保全から予防保全へ移行すべきであるということが最近多くの機関において強調さ れている。

国においても、平成 24年 8 月に国管理の国道の維持管理に関する有識者検討会の初会合 が開かれ、今後 50 年間の更新費用の推計結果などが示されている。それによると、橋梁関 係の更新費がピーク時には年間 1500 億円に上ると試算しており、損傷が軽微な段階で補修 する予防保全を実施した場合、年間の修繕費は現状と同規模の 775 億円~1000 億円必要に なるとの見通しも示している。

コンクリート構造物に関しては、15 年ごとの床版防水や伸縮装置交換、35 年ごとの床版 ひび割れ注入などを行えば圧縮できるとしている。

一方、各機関において予防保全の重要性を認識し、BMS の開発も積極的に取り組まれて いる。ネクスコにおいても、橋梁構造物のライフサイクルコストを最少にするために、また 限られた予算を有効に使うため、そして社会への説明責任を果たすために、BMS の開発が 推進されている。

しかしながら、管理の現場においては、限られた予算の中において未だに事後保全で精い っぱいという状況であり、劣化・損傷のひどいコンクリート構造物を、その場限りとしかい えない対策工法で補修している例が多くみられる。維持管理に割り当てられる予算が、限ら れた予算であるからこそ最も有効な執行が望まれる。

そのためには、BMS の完成を待つばかりでなく、より実践的な取り組みが必要となる。

本研究では、橋梁の点検データが豊富で、しかも我が国の代表的な環境下にある関西地区の 高速道路を研究対象として選択し、その劣化損傷の実態把握と劣化要因を分析した。

その結果、コンクリート構造物の劣化損傷が凍結防止剤散布によって促進されること、ま た桁端部に集中して発生することなどが、具体的な数値として明らかになった。

これまで、桁端部の損傷が多いという漠然とした感覚は橋梁エンジニアに認識されていた が、関西地区の橋梁においても、橋梁上部構造の支間部(一般部)に比較して、桁端部の損 傷面積率が約8倍となり、またその損傷は凍結防止剤の散布量に影響されるという結果がで た。これにより、これまで以上にジョイントからの漏水を防止するなど桁端部の保全に注力 していくべきであるということが明確になった。

また、鋼橋のRC床版の損傷が他の橋種に比較して激しいということも再認識されたこと から、舗装面からの凍結防止剤を含んだ水がコンクリートへ浸透する事を防止すべきである ということも分かった。

本研究では、劣化損傷の要因分析に留まらず、損傷拡大を未然に防止し、橋梁の LCC を 少なくできる具体的な各種対策に関する開発もおこなっている。

以下に、本研究から得られた結果を要約するとともに、今後の課題を記して本論文の結論

137 とする。

6.2 本論文により得られた成果

「第4章 コンクリート上部構造劣化対策の既往事例に関する検証」において、

高速道路における劣化損傷の激しい鋼橋のRC床版、およびコンクリート橋の桁端部の損 傷対策に着目し、過去に実施された代表的な2つの事例について検証を行った。

(1)「4.2 鋼橋RC床版の劣化要因の分析と上面増厚による補修効果の検証」によって、以

下のことが明らかになった。

① 鋼橋の床版厚に着目すると、昭和47年~54 年のRC床版(床版厚180~210mm)にお いて、とりわけ端部に損傷が発生しやすく、昭和55年以降のRC床版(床版厚210mm 以上)では逆の傾向がみられる。これは昭和 55 年から、床版が第一対傾構まで下面増厚 が規定されたことによるものと推定される。

② 上面増厚の増厚厚さが上面増厚工法設計・施工マニュアル(案)で定められた 60mm 以 上の場合は健全度が高い傾向にある。

③ 第1回上面増厚から最短3年と早期に再施工された径間もあるが、それらは施工条件 等に制約があったためであり、「劣化が著しく進展していない段階に適用する、十分な施工 時間を確保する、桁端部における止水対策を確実に実施することなど」が満足されれば、

20年近い寿命が期待できる。

(2)「4.3 ジョイントレス構造の供用後の損傷評価と適用限界」によって、以下のことが明

らかになった。

① ジョイントレス構造の供用後の調査により、橋長50m以下であれば、問題となる損傷 の発生が見られないことから、ジョイントレス構造の適用が可能であることが明確になっ た。一方で、ジョイントレス構造としての橋長の限界は、100m程度(伸縮桁長は橋長の 1/2の50)であることも分かった。

また、橋長50~100m程度では、アスファルト路面のクラックが発生する事例が多いた め、予想交通量や維持管理の状況を踏まえて、採用の可否を判断することが推奨される。

② すべての構造に共通して留意しなくてはならないこととして、橋梁の劣化要因である 路面からの排水を完璧に遮断するためには、きめ細かい構造詳細の追及など更なる取り組 みが必要である。

「第5章 コンクリート上部構造に関する各種劣化対策の開発」において、

コンクリート構造物の耐久性向上に関する種々の方策の内、とくに凍結防止剤散布により 発生する塩害への劣化対策の開発において、以下の結論を得ることができた。

(3)「5.2 ポリブタジエンフォームによる桁遊間止水材の開発と評価」によって、コンクリ ート上部構造の桁端部から凍結防止剤を含む塩水が漏水することを防止し、桁端部の劣化 損傷を未然に防ぐことができ、しかも温度変化に伴う橋桁の伸縮にも追従できる構造を開 発した。

開発にあたっては、その構造に最も適した止水材料として高密度ポリブタジエンに着目

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し、桁遊間止水材として要求される性能である「伸縮性、接着性、止水性、バネ定数、耐 久性、施工性」の確認を行った。

また、高速道路橋として供用中のコンクリート上部構造の桁端部は、漏水や粉塵でコン クリート表面が非常に汚損されていることから、狭隘な場所である桁端部の表面を処理で きる工法の開発も重要となる。本研究では表面処理工にWJを使用することとし、ノズル をフルフロート・ロータリー・ジェットノズルとし、2 本の支柱間に緊張したワイヤを移 動する工法を考案した。また、実橋において試験施工を実施した結果、良好な結果を得る ことができた。

(4)「5.3 凍結防止剤散布を受けた構造物への表面含浸材による塩害補修」によって、近年

コンクリート構造の劣化損傷を予防する方策として採用事例が多くなっているシラン系 表面含浸材の対策効果に関する室内試験及び現地試験結果から、改良されたシラン系表面 含浸材を標準適用量で塗布すれば、従来品に比べて優れた処理性能を持つことが確認でき た。

予備試験となる室内試験では、主成分および標準適用量の異なる市販のシラン・シロキ シサン系表面含浸材4種類と、比較用として材料に改良が加えられていないヘキシルトリ エトキシランを使用した。

室内試験結果から、改良された表面含浸材を標準適用量塗布すると、いずれも従来の含 浸材より良好な性能が期待できること、他方、施工時のコンクリート品質のばらつきを考 慮し、含浸層の均質性を確保するには、適用量をある程度以上確保することが望ましいこ となどが分かった。

現地試験は、凍結防止剤が多量に散布され、上部構造の漏水の影響を受ける橋脚を対象 として実施した。

現地試験において、水分率測定および分極抵抗測定の経年結果から、いずれの含浸材に おいても腐食抑制効果が認められたが、含浸処理による水分制御のみでは腐食の完全な抑 制は困難であり、抑制効果には限界があることも確認された。

(5)「5.4 RC中空床版橋の桁端部補修工法の開発」によって、凍結防止剤散布により塩害

を受け損傷が発生したRC中空床版の桁端部の補修を確実に実施できるネクスコ西日本独 自の工法を開発した。

本研究では、数回に及ぶ模擬試験体での試験と、実橋における試験施工の結果、良好な ハツリ性能を有するはつり方法と、湿式吹付工法による断面修復技術を確立し、狭隘な場 所でのコンクリート上部構造桁端部補修システムを構築することができた。

模擬試験体での実験においては、2 穴広角ノズルを用いて狭隘な空間でコンクリートを 平滑に除去できることを証明し、また、湿式吹付によって確実に断面修復ができることの 確認、さらに、付着強度確保のためには、ハツリ面処理は水を噴霧して湿潤状態にし、吹 き重ね層間の処理は水噴霧と粗面仕上げが最適であることを確認した。

実橋での試験施工おいては、本補修工法が実橋に適用できることを証明するとともに、

施工後の品質確認方法についても提案することができた。

ドキュメント内 小川, 篤生 (ページ 142-147)

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