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目 的

ドキュメント内 小川, 篤生 (ページ 45-54)

第 3 章 凍結防止剤散布によるコンクリート構造の塩害に関する 既往研究の分析と考察

1) 目 的

路面の凍結防止と融雪・融氷の促進を目的とした凍結防止剤の散布に関して、当時、我が国 ではその状態についての報告は皆無という状況のため、東北地域の各行政機関にアンケートを 実施している。

2) 調査結果

主な調査結果は以下のとおりとなっている。

① 凍結防止剤散布の有無

凍結防止剤の散布は、建設省、日本道路公団および県の各事業所では総て実施しており、散 布率は100%となっている。市町村では、地域(県別)でかなりのばらつきがある。

② 凍結防止剤散布の基準 a)散布決定の判断基準

建設省、道路公団では、各事業所で総て散布決定のための判断基準を定めている。また、各 県土木事務所では75%、市町村では41%が何らかの散布決定のための基準を定めている。

b)散布基準量の設定

道路公団100%、建設省97%、県土木事務所74%、市町村では13%で散布量の基準を設定し ている。道路公団、建設省では、30g/m2に散布基準量を合わせている。

c)凍結防止剤の種類と比率

道路公団では、塩化カルシウム(CaCl2)は、古河以北の寒冷地域で多く使用、以南の比較 的温暖な地域では、塩化ナトリウム(NaCl)と使い分けているようであるが、後者の専売 枠がはずれ、コスト的にも前者の約1/1.8と廉価のこともあり、NaClに移行していく様子に ある。建設省関係では、96%がNaClを採用している。

④ 平成元年度凍結防止剤の散布実績

・総散布量

総散布量は、散布延長距離・車道幅員によって変わるが、道路公団の事業所(平均)で766ton、

建設省関係事業所では102ton、県土木の一事業所当り49tonとなっている。

(3) 実構造物中の塩化物含有量

凍結防止剤の散布をうけている東北各地の実際のコンクリート構造物からサンプルを採取 し、塩化物含有量を測定している。

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その結果、新しい構造物においては、特にコンクリートの表面部分に多くの塩分が蓄積され、

古いコンクリートにおいては、表面から数センチメートルまで蓄積が進んでいる。中にはすで にコンクリート中の鉄筋が腐食して、かぶりコンクリートがはげ落ちているものも見られてい た。

(4) 将来の予測と今後の対策

調査結果から将来の劣化を予測している(平成6年当時として)。

主な内容は、

① コンクリート構造物中の鉄筋錆

凍結防止剤がすでに広い範囲でコンクリート中に蓄積し始めており、年とともにそれが、

中の方へと移動していることが明らかになった。したがって、コンクリート中の鉄筋の腐 食が我が国で問題になるのは時間の問題である。

② コンクリートの凍害

凍結防止剤の影響を受けたコンクリートの凍害は、主にコンクリートの表面剥離である。

これは、すでに多くの道路構造物において発生しているが、その内でもひどいのはコンク リート2次製品である。

この調査結果から、今後の対策として、

鉄筋の錆に対しては、構造物を作る時に、あらかじめ使用鉄筋をエポキシ樹脂塗装鉄筋す る等の配慮の必要性を指摘するとともに、コンクリートの塩害に対しては、凍結防止剤の影 響を受ける全てのコンクリートにおいて、水セメント比を小さくし、空気量を多くすべきで あると結論付けしている。

3.2.2 融雪剤によるコンクリート構造物の劣化研究委員会報告2)

融雪剤によるコンクリート構造物の劣化に関して、コンクリート工学協会において平成9年 から2年にわたり研究がなされた。

当該研究は、3.2.1に紹介した土木学会コンクリート委員会報告(平成6年)において、凍結 防止剤による塩害問題を提起したが、その後十分な対策も行われておらず、益々状態は悪化し ているとの認識のもと行われたものである。以下に委員会報告の概要を示す。

(1)序文

融雪剤の種類はいろいろあるが、性能や価格の点から我が国で一般的に使用されている融雪 剤は塩化カルシウムや塩化ナトリウムなどの塩化物がほとんどであり、これらは種々の作用で コンクリート構造物を劣化させる。

一方、我が国の融雪剤の使用量は欧米諸国に比べれば未だ少ないため、現時点ではコンクリ ート構造物の劣化の事例は少ないと思われているが、このまま毎年融雪剤の散布が繰り返され れば、その塩化物はコンクリート部材中に徐々に蓄積されて行き、ある限度を超えたときに一 斉に劣化が発生するようになると考えられる。

塩化物が作用したために起こるコンクリート部材の劣化は、コンクリート表面の激しいスケ ーリング劣化として現れる凍害、アルカリ骨材反応の促進、コンクリート中の鉄筋の急速な腐

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食などが主なものであるが、いずれもひとたび劣化が発生する段階になるともはやこれらの劣 化を止めることは難しく、完全に元に戻すことは不可能である。従って、これらに対しては、

未だ劣化が発生していない時点で劣化の発生を予測し、あらかじめ防止対策を講じておかなけ れば取り返しのつかない大変なことになる。

(2) 融雪剤による我が国のコンクルート構造物の劣化の現状

我が国の国道、高速自動車道等における標準的な融雪剤散布量は、20~40g/m2で、米国に おける散布量と同程度である。

融雪剤散布地域といっても、積雪地域と寒冷少雪地域とでは道路管理者の考え方に相違が見 られ、積雪地域では、機械的な除雪が主であり、融雪剤はその名前の通り融雪が主目的で、冬 期間の交通確保のうえでは補助的手段である。一方、寒冷少雪地域では、凍結防止を主目的と しているので、管理者は一般に凍結防止剤と呼んでいる。

融雪剤による劣化防止対策は、一般的な塩害対策と同一である。新設する構造物においては、

エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用、防水工の施工、断面の増厚等、融雪剤の散布を考慮した材料の 選定、設計・施工上の配慮が行われなければならない。既設の構造物の場合、設計・施工時に は特別な防止対策を施されていないものが多く、近年損傷が顕在化してきたものが多い。

(3) 融雪剤による鉄筋の腐食

当該研究では、融雪剤がRC部材に及ぼす影響は、融雪剤としてNaClやCaCl2・2H2Oを使用 する限りにおいては鉄筋腐食に関しては従来の塩害と大きく相違することは無いとしている。

また、塩害では塩化物がほぼ均一に構造体表面からコンクリート中に浸透するのに対して、

融雪剤では構造形状などにより塩化物が集中・偏在的に構造体表面やコンクリート中に蓄積さ れるものと考えられるとしている。

したがって、鉄筋腐食の現状を捉えると共に、高濃度塩化物のコンクリートへの浸透や化学 的変質や空隙の変化による腐食の助長なども考慮する必要があるとし、さらに、今後問題とな るであろう劣化に対する補修・補強工法に関しても知見を出来るだけ集約して、活用できるよ うにしている。

1) 融雪剤の浸透およびコンクリートへの影響

道路施設(床版、橋脚、境界ブロック)などで融雪剤の散布によるコンクリートへの浸透結果 の一例を紹介している。その例によると、供用期間25年のコンクリート床版上面の塩化物イオ

ンは2~6kg/m3に達し、床版上面から5~8㎝の深さでも鉄筋腐食の可能性が高いことを示して

いる。

2) 融雪剤による鉄筋腐食の状況

① 腐食のメカニズム

腐食のメカニズムについて、当該委員会では以下のように推察している。

融雪剤中の塩化物がコンクリート中あるいはひび割れなどを経由して鉄筋表面に蓄積され て、この濃度があるしきい値を超えると不動態被膜を破壊し腐食が開始される。この時期以 降は水あるいは酸素の供給条件、コンクリート抵抗などにより、反応速度が変わると考えら れ、基本的には塩害の形態と同様と考えられる。塩害との相違は、塩化物の濃度や浸入経路、

腐食位置、部材性能への影響などである。

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② 高架橋継手部での腐食

融雪剤を含んだ水溶液が排水設備の不備や目詰まりのために滞留し、継手部近辺のコンクリ ート中鉄筋の腐食を引き起こす。また、継手部からの漏水は特定の経路を流れ落ちるため橋 脚や橋台のコンクリート部材も損傷させることとなる。漏水防止、排水設備の維持が劣化防 止に有効であるとしている。

③ RC床版のひび割れからの塩分浸透と腐食

床版上面にひび割れが発生するとアスファルト舗装を介して到達した塩化物イオンが容易 にコンクリート中に浸透し、鉄筋の腐食を助長するおそれがある。施工に起因する初期欠陥 や荷重作用によるひび割れの発生の可能性も高く、特に、沈降ひび割れはかぶりが小さいほ ど相対的な沈下量が大きくなるために鉄筋腐食が発生しやすくなると推察している。

3.2.3 高速道路橋における床版の塩化物イオン浸透予測3)

当該研究では、ネクスコ中日本の高速道路の管理において問題となっている路面凍結防止剤 散布による塩害の予防保全対策を目的に、路面凍結防止剤散布量(t/年・km)に着目した地域条 件別にコンクリート床版内部の塩化物イオン濃度を整理している。また、当該研究では、特に 塩害の影響により床版取替工事等の大規模な補強を行っている鋼橋のコンクリート床版に着 目し、床版上面においてφ25㎜の塩分分析用コア採取、床版下面においてφ20㎜の塩分分析 用ドリル削孔を実施し、それらの試料から、塩化物イオン含有量試験を実施している。その結 果、路面凍結防止剤散布量の多い地域においては、上側鉄筋位置で鋼材腐食発生限界濃度

1.2kg/m3を超過している箇所が多く確認された。上記より、コンクリート床版は、路面凍結防

止剤散布の影響による塩化物イオン浸入の可能性が高いと考えられるとしている。

(1) 調査

当該研究は、ネクスコ中日本の管理する東名高速の東京ICから三ケ日IC間の3地域

(A地域:凍結防止剤を少量≪3t/年・㎞程度≫散布する地域、

B地域:凍結防止剤を大量≪9t/年・㎞程度≫に散布する地域、

C地域:凍結防止剤をごく少量しか≪0.3t/年・㎞程度≫散布しない地域)

と、凍結防止剤を非常に多く≪15~20t/年・㎞程度≫散布している地域として、長野道の岡 谷JCTから豊科IC間のD地域を塩化物イオン濃度の調査位置に選定している。上記地域を選定 した理由としては、路面凍結防止材散布量が極めて多い長野道、ほとんどない地域から多い地 域まである東名高速を選定し、路面凍結防止剤散布量の違いによりどの程度塩化物イオンが浸 透しているか把握するためである。

(2) 得られた結果

路面凍結防止剤散布量の違う4地域のコンクリート床版を対象に塩化物イオン濃度を調査し た。その結果、塩化物イオンの浸透は、路面凍結防止剤散布量の多さに大きく影響することが 確認された。

東名高速の中で路面凍結防止剤散布量の割合の多いB地域の路面凍結防止剤散布量9t/年・

kmの条件の場合は、約4年で上側鉄筋位置まで鉄筋腐食発生限界濃度1.2kg/m3に到達すること

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