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コンクリート上部構造劣化対策の既往事例に関する検証

ドキュメント内 小川, 篤生 (ページ 54-83)

4.1 はじめに

本論文第2 章において、関西地域における高速道路橋のコンクリート上部構造の劣化の原 因として、凍結防止剤の散布による塩害が極めて厳しいことが明確になった。

特に、鋼橋のRC床版の損傷事例が顕著であること、またコンクリート上部構造の桁端部 の損傷が激しいことが点検データから明らかになった。

本章では、これら凍結防止剤を含む水による塩害に対して効果的であると思われる2つの 代表的な対策事例に絞って検証する。

4.2 においては、鋼橋の RC 床版の損傷状況と要因を詳細に分析するとともに、代表的な 補修工法である上面増厚工法の補修効果の分析を行う。

また4.3においては、桁端部の損傷を防止するための代表的な手段の一つである「橋梁伸 縮装置(ジョイント)そのものを無くす構造であるジョイントレス構造」の評価と、適用限界 について考察する。

4.2 鋼橋RC床版の劣化要因の分析と上面増厚による補修効果の検証

4.2.1 分析概要

鋼橋のRC床版の代表的な補修工法である上面増厚工法の評価を実施し、今後の補修方針 について検討するため、ネクスコ西日本の関西地区管内の全ての鋼橋RC床版を対象に、劣 化要因と上面増厚工法による補修の効果分析を行った。

第1に、建設年次毎の構造諸元に着目して対象床版をグルーピングするとともに、既往の 点検結果に基づいて、損傷発生部位、損傷形態別の損傷箇所数に応じて算出される径間単位 の評価点を求めた。

第2に、評価点に影響を及ぼす各種要因の影響について分析を行い、桁端部、中でも昭和 55年以前に建設された「桁端部が打ち下ろされていない床版端部」の劣化が著しいこと、お よび凍結防止剤の散布量が多い区間において損傷発生率が高いこと、また、この傾向は桁端 部において、より顕著であることを明らかにした。

第3に、上面増厚施工後の期間と評価点の関係に着目して分析を行い、厚さ60mm以上の 上面増厚が施工された床版は再施工まで20年近い寿命を有することを明らかにした。

4.2.2 分析対象

図-4.2.1~図-4.2.3に、関西地区の橋種別、鋼橋の構造種別、および鋼橋床版種別の構成比

を示す。約15,200径間のうちの鋼橋は約30%(供用延長では約33%)、全鋼橋のうちの鋼 鈑桁橋は90%、鋼橋床版の殆どはRC床版である。

図-4.2.4に床版支間Lと床版厚Tの関係、図-4.2.5に鋼鈑桁橋のRC床版厚別の径間数を 示す。旧日本道路公団の設計要領)において、RC床版については、床版支間に対する床版厚 の設定方法が定められていたので、鋼鈑桁橋のRC床版厚300mm以下に対象範囲を限定す ると、床版支間Lは2~4mが約90%、床版厚Tは約80%が190~230mmとなっている。

49

高速道路橋の鋼鈑橋のRC床版については、図-4.2.6に示すように昭和47年1月から端部 の鉄筋補強、図-4.2.7に示すように昭和55年4月からは第一対傾構までの下面増厚が規定さ れている。

また、経年劣化対策として鋼鈑桁橋のRC床版の多くは、昭和 55~60年頃は鋼板接着や 縦桁増設が施工されたが、昭和63年以降は上面増厚が施工されている。

ただし、上面増厚の厚さ(以下、増厚厚さという)は、平成7年に上面増厚工法設計施工 マニュアル(案))で増厚厚さ60mmと規定される以前に施工された区間は、35~90mmと なっている。

なお、上面増厚コンクリートと既存RC床版との付着確保のために上面増厚の採用初期に は、ずれ止めが施工された事例もあったが、施工に時間がかかる、再施工性に劣る等の理由 から、現在では関西地区の上面増厚施工は全て増厚コンクリートの付着力のみに期待する工 法 3)となっている。表-4.2.1 は、前記の端部構造別の建設年代に分けて、床版厚別に上面増 厚施工済みの径間数を示す。 なお、表記中の未施工とは、床版損傷の有無に拘わらず、上 面増厚が施工されていない径間全てを示している。

170 180 190 200 210 220 230 240 250 260

未施工 43 26 30 15 75 3 7 0 12 3 214 施工済 6 50 70 76 160 0 0 0 0 0 362 比率(%) 12.2 65.8 70.0 83.5 68.1 0 0 0 0 0 62.8

未施工 4 44 316 268 153 20 61 10 3 14 893 施工済 0 27 0 76 56 50 1 0 4 0 214 比率(%) 0 38.0 0 22.1 26.8 71.4 1.6 0 57.1 0 19.3

未施工 0 0 6 9 103 632 630 157 17 9 1563

施工済 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

比率(%) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

*1 上段は上面増厚未施工の径間数,中段は上面増厚施工済の径間数,下段はそれらの比率 を示す。

総 計

'80~

'72~

'79

~'71

床版厚 T(mm) 増厚施工

の有無*1 建設

年代

表-4.2.1 建設年代別・床版厚別の上面増厚施工径間数

図-4.2.1 橋種別の構成比 PC橋

6.6%

RC橋 63.8%

鋼橋 29.6%

図-4.2.3 鋼橋床版種別の構成比 RC床版

PC床版 PCa-RC

PCa-PC 床版 床版

鋼床版

合成床版

図-4.2.2 鋼橋種別の構成比

連続 箱桁

その他 単純非合成桁

単純合成桁 単純箱桁

連続合成桁等

連続非合成桁

(切断合成桁、連結合成桁含む)

S47~

S54

S55~

S46

50

表-4.2.1から以下のことがわかる.

(a) 昭和 54 年以前は大半が 170~220mm であるのに対し,昭和 55 年以降は大半が 210~

240mmである。

(b) 上面増厚は、昭和46年以前に竣工した床版に対しては約60%が、昭和47年~昭和54 年に竣工した床版に対しては約19%が増厚補強施工済みである。一方、昭和55年以降に竣 工した床版に対しては、まだ補強を必要としていない。

4.2.3 RC 床版の劣化実態分析

4.2.2で示した RC床版を有する鋼鈑桁橋のうち、表-4.2.1に示す床版厚が170~260mm

の、約 3,250径間を対象に実施された直近の定期点検結果(RC床版については保全点検要

3)に従って、床版下面からの近接目視あるいはサーモグラフィ 4)による遠望目視点検)に 基づいて、RC床版の損傷要因の分析を試みた。

(1) 定期点検結果に基づく評価点算出方法

関西地区では、保全点検要領 3)に従った損傷毎のランク判定に加え、損傷毎に損傷種類別 の判定ランクに応じた評価点Pを算定し、その評価点Pに対して、4段階、すなわち、①損 傷種類別の評価(レベル 4)、②損傷発生部位別の評価(レベル 3)、③構造別の評価(レベ

床版片持長

80

舗装

図-4.2.7 床版端部の打下ろし範囲

(昭和55年4月)

打ち下ろし範囲 第一対傾構 Sec - "A" Sec - "B"

Sec-"A" Sec-"B"

図-4.2.4 床版厚と床版支間の関係 15

20 25 30

1 2 3 4 5

床版支間 L(m) 床版厚T(mm)

床版厚規定2)

150 200 250 300

図-4.2.5 鈑桁橋RC床版の床版厚別の径間数

0 200 400 600 800 1,000

150 200 250 300

床版厚 T(mm)

径間

図-4.2.6 床版端部の補強範囲

(昭和47年1月)

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ル2)および④損傷発生部材別の評価(レベル1)の段階毎に定める重み付け係数(L1~L4) を乗じた評価点Rを求め、評価レベル毎に評価点を集計して、評価レベル毎の評価点Ri あ るいは径間単位の評価点Rを算出している5)7)

図-4.2.8および(4.2.1)式に、鋼鈑桁橋のRC床版に対する評価点Rの算出方法を示す。

R=Σi (L1i×Σi (L2i×Σi(L3i×Σi(L4i×Pi)))) …(4.2.1) R :径間単位の評価点

Lni :評価レベル毎の重み付け係数 Pi :1損傷に対する判定ランク別評価点

この評価点Rは,本論文2.3.1(2)で示しているIUd と同様の意味を持ち、「損傷度」として 扱われるものと同じである。

なお、図-4.2.8 に示す係数は、2.3.1(2)で用いた係数を一部変更している。2.3.1 では、全 ての橋種の損傷傾向を知るために係数を設定しているが、本章では鋼橋のRC床版に着目し、

その損傷傾向のみを対象とするための係数値としている。

(2) 床版厚の分析

図-4.2.9は、上面増厚未施工径間を対象に、床版厚と評価点Rの床版厚別の平均値との関

係を集計した結果である。図中、端部は桁端から 1.5m 範囲、一般部はそれ以外の床版の点 検結果に基づいて、それぞれの評価点 R を算出し、床版厚別の平均値を求めた(図-4.2.10 参照)。

図から以下のことがわかる。

a) 一般部、端部ともに床版厚の増加とともに評価点Rが低下する傾向にある。

b) 特に、端部は床版厚 200mm 以下と 210mm 以上で評価点 R が大きく異なり、床版厚

210mm以上の評価点Rは、200mm以下のそれに比べて1/6以下である。

c) 一般部と端部の比率で見れば、200mm以下が約5~7倍であるのに対し、210mm以上は 20倍以上である。

図-4.2.8 評価点算出システム(鋼鈑桁橋・RC床版の場合)

主桁 0.323

二次部材 0.161

床版 1.000

張出床版 0.161

支承 0.016

伸縮 0.016

評価レベル 1 評価部位 区分 係数L1

主版部 0.50 主版端部 0.50 係数L3 評価レベル 3 損傷部位 中小区分

AA A1 A2,A3 B OK

ひび割れ 0.30 はく離・うき 0.10 鉄筋の露出・腐食 0.10 空洞・豆板 0.10 遊離石灰 0.10

錆汁 0.05

劣化・変色 0.05 補修・補強個所の はく離・はらみ 0.05

漏水 0.05

補修縦桁・鋼版の 充填・接着不良 0.05 その他 0.05

0 100

判定ランク別評価点 P

60 20 評価レベル 4

損傷種類 係数

L4 鋼橋 鋼床版 1.00

1.00 1.00 1.00 1.00 プレキャスト床版 1.00 RC橋

PC橋 複合橋 コンクリート床版

評価レベル 2 係数L2 点検対象区分

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評価点Rを床版面積で除した値、すなわち、単位面積当たりの評価点Rを算出し、先と同 様、床版厚との関係を求めた。結果を図-4.2.11に示す。

図から以下のことがわかる。

a) データ数が少ない床版厚170mmの例外はあるが、単位面積当たりでみると、床版厚180

~210mmのRC床版は、一般部に比べて端部の評価点Rが高い。

b) 一方、床版厚220mm以上のRC床版は、一般部より端部の評価点Rは低い。

c) 一般部は床版厚の増加とともに評価点が僅かに低下する傾向が見られる。

以上より、床版厚に着目すると,昭和47~昭和54年のRC床版(床版厚180~210mm) において、とりわけ端部に損傷が発生しやすいこと、昭和 55 年以降の RC 床版(床版厚

210mm 以上)では逆の傾向が見られることが明らかとなった。これは、図-4.2.7 に示した

床版端部における打下ろしの効果によるといえる。

(3) 供用時期の分析

図-4.2.12 は、構造年代別に供用時期と評価点 R の関係を示す。四角囲みで示す昭和 35

年時代に建設された名神高速道路の健全度状況が比較的健全であるのは、前で述べた理由 によるものと思われる。

それ以外は、バラツキはあるものの、供用年数が長いほど評価点Rが高くなる傾向が見 られる。

床版端部については、一部に高い値を示す区間があるものの、端部構造年代別に評価点 Rの平均値を求めると以下のようである。括弧内は、端部構造年代別の比率(S47~S54を 1.00として比較)と対象径間数を示す。

~S 46 :0.244(0.70,148径間)

S 47~S54 :0.350(1.00,205径間) S 55~ :0.009(0.03,485径間)

図-4.2.10 端部と一般部の区分

端部=1.5m 一般部 舗装

図-4.2.9 床版厚と床版厚別の評価点Rの 平均値の関係(増厚未施工部)

0 1 1 2 2

150 200 250 300

○:一般部

●:端部

床版厚 T (mm) 0.5

1.0 1.5 2.0

価点Rの床厚別の平

0

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