本研究は、21世紀のクリーンエネルギとしてその実用化に高い期待が寄せら れている団体電解質型燃料電池の高性能化を目標とし、 その主要構成材料であ る酸化物セラミックスについて電解質、 電極およびインターコネクタとしての 材料開発の設計指針を得ることを目的に行ったものである。 また、 本実験で得 られた知見を下に実際に固体電解質型燃料電池を作製し、 その性能を評価する ことで、本研究の有効性についても検証した。
第1章では、 燃料電池の原理と種類について概要を述べ、 とくに固体電解質 型燃料電池の特徴について示した。 また、 固体電解質型燃料電池を構成する材 料やそのデザインについて現状の問題点を明らかにし、 電池性能(出力や耐久 性など)を向上するための課題を示した。 そして本研究の目的が、 優れた電気 化学的な特性と高い耐久性を有する酸化物セラミックスを開発することにあり、
これによって固体電解質型燃料電池の早期実用化に貢献できることに本研究の 意義があることを述べた。
第2章では、 空気極やインターコネクタに適用が考えられる種々のLa系ペ ロブスカイト型酸化物である(La1_xAx)M03_0 (α=Sr,Ca, M=Mn,Co)についてそ の物性について評価した。 これらの酸化物の物性に関するこれまでの報告値は ばらつきが多く、 未だ統ーした見解が得られていない。 その原因として実験に 用いた原料合成法やサンプル性状などに差があるためと考えられため、 本実験 では同ーの手法を用いてほぼ綴密なサンプルを作製し、 その焼結性や熱膨張率 および導電率などの物性を評価した。 その結果、 これらの酸化物の焼結性は粉 末の比表面積やX値およびAサイト欠損量に依存することを示した。導電率や 線膨張係数もまた組成に著しく依存し、 とくにBサイトにMnにCo を適量複 合することで線膨張係数がYSZと同程度で、導電率を例えば1000 ocで約2倍 に向上できることを示した。
(La1_XCaX) crO 3 の合成に際し、 出発物質や調製法を適正にすることで定比組 成で、綴密な焼結体の作製が可能であることを明らかにした。 また、 導電率と温 度の積のアレニウスプロットにおいて良い直線関係が得られ、 これらの導電機 構がスモールポーラロンホツピング機構であることが考えられた。
第3章では、(Lal-XSrX)1-Z(C01_wMow)1_Yl_Y2AlYlNiy203の化学式で与えられるペ ロプスカイト型酸化物について、電解質にYSZを用いた場合の空気極としての 特性について評価した。 評価手法としてカレントインタラプション法および交 流インピーダンス法を用いた。 その結果、 カレントインタラプション法により
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求めたオーミックな抵抗成分は交流インピーダンス法より求めたオーミツク抵 抗成分とほぼ一致し、 この抵抗成分は電極組成のみならず電極焼成温度にも大 きく依存した。 このオーミック抵抗成分は電解質/電極積層素子のイオン導電性 を示すものと考えられ、 したがって固体電解質型燃料電池の出力向上を目的と して、 電解質のイオン導電性の向上を図る場合、 電解質材料のみならず電極材 料との化学的な安定性をも考慮する必要があることが明らかとなった。 交流イ ンピーダンス法より求めた分極導電率も電極組成や焼成温度に依存することが 明らかとなった。 とくに焼成温度が高い場合、 分極導電率は酸化物組成が X=0.25, Y1 =0.015, Y2=0.09, W=lの時に最も高い値を示した。 X線回折法
を用いた結品相の同定結果から、X>0.25の酸化物ではYSZと反応して低イオ ン導電性の S rZr03生成する傾向にあり、一方X<0.25の酸化物では同じく低イ オン導電性のLa2Zr207を生成する傾向にあることが確認された。 このような反 応による新しい相の生成が、 電池のイオン導電率および分極導電率に犬きく影 響をおよぼすことが考えられた。
またBサイトにCoを複合した(W=0.75)電極の性能はMn系の酸化物 (W=l)に比べて著しく低下することがわかった。 Coを複合した酸化物では La2Zr207の生成が助長されることが確認され、 これが電極反応速度の低下の主
要因と考えられた。 交流インピーダンス法により求めたコールコールプロット において、 高温(1300 OC)で焼成したX>0.25電極では第2円弧が観察され たが、 焼成温度が低下(900 OC)するにつれ、 この円弧は消失した。
この円弧の出現は交流インピーダンス測定条件である試験極と参照極聞の分 極値にも依存し、 分極値が大きいほど第2円弧が出現し、 そのサイズも増大す る傾向にあることを確認した。高温焼成で最も高い分極導電率を示したX=0.25,
Y1 =0.015, Y2=0.09, W=lの電極において、 その厚み(t)が約15μmでは 高い分極条件下でも第2円弧は出現しないが、tミ40μmでは、 低い分極値か ら第2円弧が観察された。 このように第2円弧の出現は焼成温度(多孔度)や 電極の厚み、 分極値(印加電流 )に依存することから、 この円弧成分は電極内 あるいは電極表面の酸化種の拡散や移動に起因する抵抗成分と考えられた。
X=0.25, Y1 =0.015, Y2=0.09, W=lの電極の分極導電率が最も高かった要 因のーっとして、 この電極では電極内に適度な 多孔度が存在し、 その細孔を経
由することで、 酸化種の電極内あるいは電極表面上の拡散や移動に起因する抵 抗が小さくなることが考えられた。 作動温度が800 oC ---1000 oCの範囲で、 酸 素分圧(P02)の電極反応速度におよぼす効果について検討した。 P02�五104.33 Pa の範囲では、 カレントインタラプション法により求めた交換電流密度および交 流インピーダンス法により求めた分極導電率の対数とP02の対数は直線関係を
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示し、 その傾きは約1/2であった。 これらのことから、 本実験に用いた
(Lal-XSrX)1-Z(Col-wMnw)1_Yl_Y2AlYlNiY203の電極反応において、 酸素原子の電極表 面への吸着あるいは酸化物イオンの拡散が律速段階であることが考えられた。
以上のことから、 固体電解質型燃料電池の出力増大を目的として酸化物電極 の開発を進めるうえで、 電解質との化学的な安定性や電極の触媒活性度を考慮 した組成の検討のみならず、 多孔度などの組織の適正化をも考慮に入れて開発 を進めることが重要であることが明らかとなった。
第4章では、 固体電解質型燃料電池の内部抵抗低減のために重要な課題で、あ る電解質 (YSZ ) の薄膜技術について検討した。本研究では、 13-ジケトン金属 錯体を原料に用いたzr02 膜のCVDにおいて、まず高温合成を目的に酸化ガス 種(02, H2-C02) および炉内全ガス圧力の効果について検討し、次にZr02-Y203 膜の合成を目的として、 原料気化量や析出温度の効果について検討した。 その 結果、 酸化ガスにH2-C02を用い、 炉内全ガス圧力を低減することで、1000 oc 程度の高温での薄膜合成が可能であることを確認した。またzrOっ膜の合成にお いて、 析出温度が850 oC�l 000 ocの範囲で、 成膜速度の活性化エネルギーは 約4 7 kJ/molであった。zr02-Y203の合成において、 Zr (DPM)4およびY (DPM)3 のそれぞれの気化量を制御することで、 膜中のY203合有量を制御できること が明らかになった。 析出温度が6200Cで析出した膜の生成速度は、 約
1.8μm/hであり、 その組織は無配向で微粒多結晶よりなっていた。 析出温度 が660 oCで析出した膜の生成速度は約9.0μm/hであり、また、 これ以上の析 出温度で合成した膜の組織は、(100)面が基板面に平行に配向した樹枝状組織で あった。析出温度が600 oC,.__ 650 oCの範囲では、成膜速度の活性化エネルギー は約127 kJ/molであり、 合成過程において化学反応が律速段階と推察された。
第5章では、 (La1_XCaX)Cr03 (0.15三五X豆0.3)のインターコネクタとしての特 性を検討した。大気中あるいは加湿水素中でアニール試験を行い、 導電率の測 定および結晶相の同定を行った。次に(L�.75C�.25)Cr03 (LCC)のディスクと空気 極材料である綴密または多孔質な(L�.75SrO.25)1-zMnl_ Yl_Y2AlYlNiy203 ディスクの 積層サンプルに対し、 インターコネクタを模擬した条件下で耐久試験を行い、
同様に評価した。 その結果、 大気中のアニール処理において導電率およびその 活性化エネルギーに変化は観察されず、 電気的特性の耐久性は良好で、あった。
XRD法およびSEMÆDXを用いた分析結果から、 Xミ0.2 の酸化物で、アニー ル時間に伴い表面にCa5 (Cr04)OO.5 が生成し、Xの増大とともに生成量が増加す ることを確認した。 加湿水素中で、アニール処理を行った酸化物では、 Xによら
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ずこのような Ca 系酸化物の生成は観察されなかったことから、 この生成には 大気中の酸素が関与することが推測された。 インターコネクタの模擬的な作動 条件下で300hの耐久試験を行い、 その結果空気極の性状によらず大気中での アニール試験と同様にLCCの導電率に変化は観察されず良好であった。
Aサイトが10%欠損した綴密な空気極(Cathode 1)とLCCの積層サンプル において、 Cathode 1の空気側表面にMn酸化物の著しい偏析が観察された。
またLCCのCathode 1側表面には、 Mn-Ca系酸化物の比較的小さなparticle が観察されたが、 相対する Cathode1ディスクのLCC側表面には、 そのような particle は 観 察 さ れ な か っ た 。 ディスク の 中 央 部 に 比べて 端部 の 方が 、 LCC/Cathodel聞の相互拡散あるいは反応は顕著であった。多くの領域で、LCC
は Cathode 1からのMn系酸化物の拡散に起因して、 La, Ca, Mnおよび Cr からなる酸化物に変化しており、 このような傾向は多孔質な空気極(Cathode2) を用いた場合も同様であった。 また、 LCCと相対する端部の Cathode 1の表面 は、 多孔質に変化しており、 これは Cathode 1側からLCC側にMn系酸化物が 拡散したことを支持するものと推測された。 また、 導電率に変化が観察されな かった理由として、 LCC表面に析出した Ca-Mn系酸化物に比較的高い導電性 を有することが推測された。 一方、 A サイトが 10%欠損した多孔質空気極 (Cathode2)のLCCの積層サンプルにおいては、 Mn系酸化物のLCC内への著 しい拡散およびこれに伴うLCC表面での Ca系酸化物の偏析が観察された。
また、 Aサイト欠損が1%で、綴密な空気極(Cathode 3)とLCCの積層サンプル においては、 ディスク端部では、 Mn, Ca, Cr の相互拡散の傾向が幾分観察さ れたものの、 中央部ではLCCと Cathode 3に Cathode 1,2に観察されたような 相互拡散あるいは反応は観察されなかった。 このような元素の相互拡散あるい は化学反応は、 熱力学的な検討の結果から酸化物内の多孔性に起因する酸素ポ テンシャルが関与すること推察された。 これらのことから、 LCCおよびその基 板であるLS�倒(空気極)の組成や組織(例えば綴密性)を適正にすることで 耐久性に優れるインタコネクタを作製可能であることが示唆された。
第6章では、 これまで、に行った研究(第1章~第5章)で得られた知見をも とに、 固体電解質型燃料電池を作製し、 その性能を評価した。 ここでは集電方 式が異なる2種類の円筒状の固体電解質型燃料電池を作製し、 まずセル性能に およぽす集電方式の効果について評価し円筒型セルの内部抵抗の要因について 明らかにし、 次に空気極支持管の特性や酸化剤の酸素濃度および作動混度の効 果について検討した。 平板型集電セルにおいて、 1000 ocで酸化剤にO2を用い て得られる最大出力密度は約4 W cm-2と高く、 電解質に起因するR損を考慮
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