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円筒状固体電解質型 燃料電池の発電特性

第1節 緒言

国体電解質型燃料電池の実用化のためには、 セル性能のみならずセルコスト が重要となる。 ここでセルに必要とされる性能には、 出力性能や耐久性能が挙 げられる。 出力性能において、 運転中は800 oC�l 000 oCの高い作動温度をセ ル自身のジュール熱により維持される (熱的な自立)必要があるため、 出力の 絶対値以外に出力密度も重要な評価項目となる。 また、 固体電解質型燃料電池 を発電プラントに適用する場合、 プラントは計画的にあるいは不測の事態に備 えて起動停止が行われるため、 その耐久性能には例えば定格長期運転下での経 時的な出力の劣化率の低減以外に、 ヒートサイクルなどの信頼性にも優れた特 性が要求される。

一方、 セルコストの低減を図るには量産性に優れたセル作製技術の開発が重 要となる。第1章に述べたように、国体電解質型燃料電池には円筒型1)・6)と平板 型7)ー10)の2つの型式が提案されている。 平板型は、 円筒型;こ比べて理論的に出 力の向上が期待されるが、 上述したようなヒートサイクル特性を満足しうるセ ル聞のガスシール技術や接触抵抗の低減に極めて高度な技術が要求され、 現在 のところ有効な技術が明らかでない11)。

一方、 円筒型は構造的に電流パスが長くなるため、 平板型に比べ単位体積あ たりの理論的な出力は低下するものの、 綴密な電解質やインターコネクタが作 製されればガスシールが比較的に容易であるため、 発電効率の向上が期待され る。 また、 独立した単セルを用いてモジュールが構成され、 単セル同士は例え ばNiフェルトのように剛性の低い材料を用いて接続可能であるため、 単セル に加わる力学的な応力が小さく、 ヒートサイクルなどの信頼性にも優れている ことが予想される。 そこで、本研究では信頼性の確保に重点を置き、 円筒状固体 電解質型燃料電池の開発に焦点を当て、 その発電特性におよぼす電池構成酸化 物の組成、 組織の効果を検討することとした。 円筒状固体電解質型燃料電池に は前述したように長い電流パスが存在するため、 出力の向上を図るためには、

電池構成材料に起因する内部抵抗を極力低減するための技術が必要とされる。

電極支持体型2),12)のセルデザインはガス拡散抵抗を大幅に低減しうることか ら、 内部抵抗を低減する上で効果的なセルデ、ザインと考えられる。 また、第1 章に示したように、 電解質やインターコネクタの薄膜化も必要とされるが、 そ のためには上述したようにセルコスト低減を考慮し、 量産化に適した薄膜技術 の採用が重要である。本研究では、薄膜技術の研究として化学蒸着技術(CVD) について検討したが、この方法では薄膜合成のために高い真空度が必要とされ、

また薄膜組織の合成温度依存性が比較的高いことが明らかとなり、 均質な薄膜

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合成のためには小規模なバッチ型生産になることが推測された。

一方、 近年量産性に優れる薄膜技術としてスラリーコート法12),13)などの湿式 法が提案されているo

そこで本章では、 これまでに行った研究(第l章~第5章)で得られた知見 をもとに、 電極支持体型の円筒状固体電解質型燃料電池を湿式法を用いて作製 し、 その性能を評価することで、 出力向上のために必要とされる空気極やイン ターコネクタなどの電池材料の望ましい特性を明らかにすることを目的に実験 を行った。

また、 低温作動特性についても検討を加え、 出力向上のために貴金属触媒の 添加効果について検討した。 最後に、 電池の連続運転試験を行い耐久性を評価 することで本研究の有効性を検証することを第2の目的とした。

第2節 実験方法

電極支持体型のインタ-コネクタが縦縞状(図1-6参照)の固体電解質型燃 料電池を作製した。 支持体用の電極として、 空気極あるいは燃料極のどちらを 採用するかは重要な課題である。 燃料極は一般にNi+YSZ などのサーメツトで あり、 ある程度の靭性も期待されるため支持体としての特性は、 空気極よりも 優れていることが予測される。 しかしながらこの場合、 集電が酸化雰囲気で、行 われるため集電材料に高価な貴金属(例えば白金)あるいはセラミックスの使 用が余儀なくされる。 このためコストの面であるいはセル聞の力学的な応力を 低減する面で不利となることが考えられる。 したがって本 研究では、 空気極支 持体型のセル構造を採用した。 空気極組成として、 比較的高い分極導電率(第 3章参照)とインターコネクタとの高い化学的安定性(第5章参照)を示した (Lao.7SSrO.2S)Mn03 (LSM)とした。 各種金属硝酸塩の熱分解法(第 2 章参照) で原料粉末を作製した。 850 oC�1300 ocの範囲で10 h仮焼した粉体を解砕整 粒し、 水、 パインダ(メチルセルロース系)を適量添加して混練した後、 押し 出し成型法にてチューブ状(直径13 mm�16 mm、 厚み1.7 mm�3.1 mm、 長 さ約50 mm�200 mm)の支持体を成形した。 乾燥後、 1300 oc � 1 400 ocの範 囲で焼成することで種々の特性の空気極支持体を作製した。

支持体と同じ素地で、バルクサンプル(直径6mm、 長さ50 mm)も同様に作 製し、 このサンプルについて直流4端子法による比抵抗の測定、 アルキメデス 法による気孔率の測定および3点曲げ試験による強度測定を行い、 支持体の特 性を代用することとした。 電解質については、 Zr02+8 mol% Y203 (YSZ)粉末 (TZ-8 Y)をエタノール、 パインダ(PVB)を用いてボールミル混合を行うこと

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でスラリを作製した。 YSZスラリに、 インターコネクタ部をマスキングした空 気極支持体を浸積(デイツピング)し、 乾燥後再度デイツピングを行った。 こ の処理を数回行い、 デマスキングした後、1450 ocで5 h焼成を行うことで電 解質膜を作製した。 膜の綴密性について、 インターコネクタ部などの非YSZ 膜領域を樹脂系の接着剤でマスキングした後、5X103 Paの差圧下で窒素ガス をチューブ内部に供給し、 外部への透過量を測定することで評価した。

インターコネクタについては、 先(第5章)に空気極との反応性を検討した (Laa.7SCaa.2S)Cr03とし、空気極同様硝酸塩の熱分解法(第2章参照)により粉末 を合成した。 合成した粉末にたいし、 電解質と同様な条件でスラリを作製し、

縦縞状に成膜するためのマスキングした後、 デイツピング法により成膜した。

デマスキングし乾燥後、1450 ocで5 h焼成することでインターコネクタを作 製した。

燃料極については、 Ni+YSZサーメットととし、 NiO(住友金属鉱山製, BET 2 m2 g-I)とYSZを重量比でNiO:YSZ=7:3 に混合した粉末を原料とし、

インターコネクタ部をテープマスキング、し、 デイツピンク、

により成膜した。

デマスキングし乾燥後、1350 ocで2 h焼成することで燃料極を作製した。

また一部のセルついて低温作動特性の向上を目的として、空気極へのpt触媒 添加効果を検討した。 Pt触媒として、 BET値が1.2 m2 g-Iの粉末を用いた。

850 ocで10 h仮焼したLSM粉にpt粉を適量混合したスラリを作製し、 空 気極支持体にデ、イツピング法により成膜し1450 ocで5 h焼成することで、 表 面にPtが担持された空気極支持体を作製した。 担持量は、LSM/Pt混合スラリ 中のPt量を制御することで、行った。 この触媒担持型空気極支持体を用いて、 電 解質膜、 インターコネクタおよび燃料極を同様にデイツピング法によって作製 した。

作製した固体電解質型燃料電池は、 図6-1 ( a) --( c)に示す様に3種類である。

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空気極支持体

電解質

燃料極 空気極支持体

電解質

φ10IHm

燃料極

6富島

(a)縦縞型円筒セル (c)平板型集電セル

Fig. 6-1 作製した3型式の国体電解質型燃料電池

図6-1(b)に示すセル(以後円筒型集電セルと示す), 図6-1(c)に示すセノレ(以 後平板型集電セルと示す)は、 インターコネクタを除いたセル構造である。

平板型集電セルの集電は、 平板型セル7)-10)と同じく円筒の円周方向の抵抗を 合まない集電方式である。発電性能の評価方法を図6-2(a)�(c)に模式的に示すo

図 6-1(a)に示したセル (以後縦縞型円筒セルと示す)は、 図 6-2(a)に示す様 に、 内部に酸化剤の導入管(アルミナ製)を挿入したセルを石英管内に設置し、

インターコネクタおよび、これに対向する燃料極部にNiフェルトを介してNi製 の集電板を取り付けた。 インターコネクタを設けないセル(図6-1(b),(c))では、

図 6-2(b),(c)に示した様にセルをパイレツクス製 のリングを介して上下にアル ミナ管を配置し、 酸化剤と燃料のガスシールを行った。

セル内部からの集電にはPtメッシュを、 外部にはNiフェルトをそれぞれPt ペーストを用いて発電温度で、セルに固定化した。 セル出力および内部抵抗の測 定には、 集電材に取り付けたNiあるいはPtリード用いて直流4端子法および 交流インピーダンス法により行った。酸化剤にはO2(流量1 l/min) N2+50%02

(流量2l/min)あるいは空気(流量2l/min)を、 燃料にはHっ+ll%HっO(流量 900 cc/min)を供給した。 また、 昇湿中は燃料ガスの代わりにN2+3%H2を用い た。

作動温度は、 セル発電部近傍に取り付けた熱電対を用いて制御し、 800 OC�

1000 ocとした。

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酸化剤導入管

コネクターインター

Ni-フェjレト

Nト集電板 1'\イレックス

リング

石英管

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(H2

+ 11

%H20)

(a)縦縞型円筒セル (b)円筒型集電セル (c)平板型集電セル

Fig. 6-2各種の円筒型セルの発電方法の模式図

第3節 実験結果および考察

3-1 酸化剤と集電法の発電性能におよぼす効果

作製したセルについて行ったSEM観察の結果を図6-3、図6-4に示す。図6-3 に示す様に、 電解質膜の厚みは約30μmであり、 徹密質であることが確認さ

れた。 またインターコネクタ(図6-4)は、 厚みが約120μmで同様にほぼ綴 密で、あった。

電解質

空気極支持管

Fig. 6-3 空気極支持管上にスラリーコート法により作製した

電解質(YSZ)膜のSEM像

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Fig. 6-4 空気極支持管上にスラリーコート法により作製した

インタコネクタ{(La,Ca)Cr03}膜のSEM像

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図6-5 に空気極支持管(以後AETと示す)の厚みが約1.7 mmで、 有効面積 0.8 cm2の平板型集電セル(図6-1 (c))について、 作動温度1000 oc、 酸化剤と してO2, N2+50%02および空気を用いた条件での電流密度一電位曲線(以後I-V カーブと示す)および電流密度-出力密度曲線 (以後I-Pカーブと示す)を示

す。

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Current density / A cm-2

Fig. 6-5 平板型集電セルの発電性能におよぼす酸化剤の効果

各種酸化剤で得られた開回路電位(OCV)は、 ほぼ理論値を示しており、 ス ラリーコート法により作製された電解質は十分に綴密であることを確認した。

酸化剤にO2を用いた場合の最大の出力密度は約4. 6 W cm-2であり、 N2+50%02 では約2.0 W cm-2とO2を用いた場合の約43%に低下し、空気では約0.8 W cm-2 でありO2を用いた場合の約 17%に低下し、 酸化剤の酸素濃度が低下するにつ れて出力が大幅に低下することが確認された。 また酸化剤に空気を用いた場合 のI-Vカーブにおいて、 電流密度が約1.5 A cm-2以上で電位の急激な低下が観 察された。 図6-6 に各酸化剤での関回路電位(OCV)近傍で交流インピーダン ス法(振幅電圧7 mV)により求めたコールコールプロットを示す。 ピークの 周波数が、 700 Hz---900 Hz, 15 Hz---60 Hzおよび1 Hz---6 Hzである3 つの 円弧よりなるインピーダンスが観察された。 酸化剤の酸素濃度が低下するにつ れ、 オーミックな抵抗成分にはほとんど変化は観察されないものの、 円弧を伴 うインピーダンスが著しく増加することが確認された。第3章に示したように、

円弧を伴うインピーダンスには、電解質/電極反応に起因する成分や酸化種の移 動あるいは酸化物イオンの電極表面で、の拡散による成分が合まれると考えられ る。 酸化剤の発電性能におよぼす効果を調べる上で、 これらの電極反応がどの ように影響をおよぼすかは重要な課題である。

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