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7-1 総括 7-2 今後の展望

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第 7 章 総括と展望

第 7 章 総括と展望

7-1 総括

 スクラップアンドビルドではなく今ある建物を活かしていくべきであ るという現状に対して、既存建築を環境的な快適性という視点から現代 の暮らしに適応した新しい空間へ変換していくことで、今後も増えてい くであろう建築ストックの在り方に対する可能性を示すことができた。

環境に配慮した空間デザインの中でもリノベーションに特化したものを 対象とすることで、既存建築の構造、形態、周辺環境などの制約の中で、

環境性能だけでなく意匠的な面においてもよりよい室内環境を生み出し ているリノベーションならではの手法を見いだすことができた。特に建 築類型別に手法を整理することで、建築類型特有の手法の傾向を見いだ すことができ、スケルトンの形態が同じでもインフィルの構成の工夫に よって多様な空間をつくりだすことができる可能性を感じた。

 以上より、リノベーションにおける住空間について、快適性をもたら す通風、採光、断熱といった「環境」と、既存建築が持つ旧の要素と新 しく付加する新の要素の関係性から「意匠」という観点から分析するこ とで、環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法を示した。

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第 7 章 総括と展望

7-2 今後の展望

 環境に配慮した手法において,シミュレーションによって環境効果を 可視化することができるようになり、今回の研究においても

Flowdesigner、Visualizer といった環境シミュレーションソフトを使用 した。設計者がこのようなシミュレーションソフトを導入しながら設計 していくプロセスを踏むことができるようになったことは近年の技術の 進歩であるが、更に設計者が使用しやすいシミュレーションソフトが開 発されていくことに期待したい。また、そのようなシミュレーションソ フトを使用することより設計者が環境に対して意識的に設計していく きっかけとも成りうると感じた。それにより、今よりも多くの設計者が 環境に配慮した空間デザイン手法を導入していくことを今後の展望とし たい。

 リノベーションのデザインの多くはいかに既存の空間に変化を与える かといった対比の手法が多くみられてきた。しかし、旧の要素と新の要 素の違いを強調することよりも、価値のある旧の要素を引き出すように 新の要素が調和して新しい全体性をつくりだしていくことが本質的であ るように感じる。こういった既存建築の元のデザインを延長するように リノベーションするような調和の手法により、元の空間の良さを活かし ていく手法の可能性を見いだしていきたい。

 また、既存建築が持つ課題を解決しながらデザインを生み出していく 手法として、環境に配慮した設計手法がより一般化し、リノベーション だからこそできる質のよい建築が今後増えていくことを今後の展望とし たい。新しく建築をつくることよりも既存建築を使っていく手法の追求 が浸透することで、今後の住宅産業も変容していくように思う。

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 謝辞

謝辞

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 謝辞

 大学院入学時より、既存建築において環境に配慮した空間デザインを 取り入れていくことを研究テーマにしたいと日々邁進してきました。多 くの知識や出会いを得るために様々な場所に足を運びリノベーションの 世界を知るにつれて、新築とはまた違った魅力を再発見することができ、

日々の出会いに感謝しています。2013 年後半から友人たちとオーナー さんと始めたリノベーションプロジェクトを進行しつつの修士研究でし たが、修士研究提出間際にアトリエにこもってパソコンに向かっていた 日々は、やはり現場で実物を見ながら、触りながらの設計を多くこなし ていきたいという思いがただただ大きくなりました。卒業後もリノベー ションの仕事に携わることができそうなので、この修士研究を活かしな がら実務において環境に配慮した空間デザインを追求していきたいと 思っています。

 小泉雅生先生には日々のご指導に大変感謝しております。特にプロ ジェクトやコンペなどでご指摘いただいたビジュアルの点に関してとて も意識するようになりましたが、少しは成長できているといいです。光 嶋裕介先生にはいつも完結に的確なコメントをいただけて身の引き締ま る思いでした。忙しく駆け回っている印象だったなかでご指導いただけ たことを感謝しております。研究室のみなさんにはお世話になりっぱな しで、助け合える仲間に出会えてよかったです。短いようで長いような 2年間でしたが、後になるほど思い出がたくさんできました。また、最 後の方で切羽詰まった中、手伝う人を探してくれた友人たちに感謝して います。一人ではなにもできないのだと実感した修士設計でした。最後 に、大学が地元なら大学院で県外に出てもいいと高校時代に言われ、そ れを実際に実行させてくれた両親に感謝したいです。社会に出るまでに 25 年間かかってしまいましたが、やりたいことをやってくれないと今 までの意味がないと応援してくれることがとても支えとなり頑張れまし た。ありがとうございました。

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 参考文献

参考文献

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 参考文献

1)『新建築 2006 年 2 月号 -2013 年 2 月号』新建築社  2)『住宅特集 2003 年 2 月号 -2013 年 5 月号』新建築社  3)『更新する家―リノベーション住宅大研究』建築資料研究社  4)『最高に気持ちいい住まいのリノベーション図鑑』HEAD 研究会リノ ベ図鑑制作委員会、エクスナレッジ

5)『環境のイエ』小泉雅生、学芸出版

引用

1)既存建築図面

DIYP (http://www.diyp.jp/)…奥沢ハウス

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 梗概

梗概

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案

首都大学東京大学院建築学域 平成 25 年度修士論文梗概

12886411 金田 有紗 指 導 教 員  小泉 雅生 第1章 研究の背景と目的

 現代の日本は、膨大な建築ストックを抱えながら人口減少時代へ と向かっている。特に首都圏のように限られた土地に多くの人々が暮 らす場所では、古い建物を新しく建て直すよりも今既にある建物を 活かしていくことが現実的であり、かつて大量生産されてきた画一 的な空間をいかに現代の暮らしに合った空間に変換していくかが今 後の課題となる。

 新築よりも多くの制約の中での工夫が必要となるリノベーションの 手法には、既存建築の環境を改善していくことにより快適な空間に 変換されているものがみられる。ここでは、通風、採光、断熱といっ た環境的な快適性に着目して構成されたリノベーションにおける住空 間について探る。

 本研究では、住宅のリノベーション作品を対象に、建物の各部位 が空気・熱・光といった環境要素とどのような関係を持ち構成され ているかを分析することで、環境に配慮した住空間リノベーションの 設計手法を抽出し、断熱性、気密性といった環境性能からだけでは なく、形態・素材・色といった意匠的な視点からも検討したリノベー ションの在り方を導き出すことを目的とする。

第2章 既存建築における環境配慮手法の抽出と分析

 「新建築」、「住宅特集」において 2003 年以降に掲載された住宅 のリノベーション事例のうち、環境配慮に対して積極的と見なされる 50 作品を対象に、雑誌に掲載された図面・写真・文章を用いて分 析した。対象事例から 88 の環境配慮手法を抽出し、建築部位別に 7項目[a. 平面構成、b. 断面構成、c. 内外の関係、d. 天井、e. 床、f. 壁、

g. 建具]に分類した(図2)。既存建築における空間構成と関係を 持つ環境要素を空気・熱・光とし、抽出した手法における環境的効 果を記号化した。また、それぞれの環境要素に対する意匠的な要素 として、空間を印象付ける形態・素材・色について整理した。

a. 平面構成

 一般的な間取りを居住者の住まい方や既存建物のポテンシャルを 読み取ったプランへ変更されていると同時に、通風や採光に配慮し たものがみられる。また、最小限の操作で多様な空間をつくりだし ているワンルームや、既存建物の合体・分割や 2×4 住宅特有の壁 と分節を利用するという既存の構成を活かしつつ環境改善している ものがある。ゆるやかに室内空間がつながることで気積を大きくし、

風を抜いているものがみられる。

b. 断面構成

 外部との間に空気層をつくることでバッファーゾーンとして機能し、

室内を立体的につなぐことで煙突効果による換気を促す手法がみら れる。既存スケルトンに断熱性や気密性をもたせることが難しいと考 えられる場合には、入れ子の壁に断熱性能を与えるもの、通風を考 慮して入れ子の個室を配しているものがみられる。

c. 内外の関係

d. 天井

 天井を撤去することで各室の上部でつながりを生み、空間の広が りを確保して光や風をとりいれているものがみられる。また、天井 に勾配を与えて光や視線の抜けを考慮しているものや、断熱を考慮 したヴォールト天井など形態操作によって意匠的効果を付加させて いる。

e. 床

 熱環境を考慮した土間コンクリート床の事例が多くみられる。他 にもフローリングに冬の日射を蓄熱させるなど、素材の熱特性を活 かしている。また、床に日射を反射させることで室内に光を届けると いった、外部の要素を利用した手法がみられる。

f. 壁

 既存の壁に厚みを持たせて収納を確保すると同時に、間接光を得 ることや視覚的な広がりをもたせるなど、副次的な効果を付加させ ているものがみられる。また、垂れ壁の長さを考慮しゆるやかに空 間を仕切ることで、熱環境に配慮している。

g. 建具

表 2 事例リスト

竣工年 2012 2012 2012 2012 2012 2012 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2011 2010 2010 2010 2010

作品名  HHH mina クサバアパートメント 御茶ノ水のリノベーション 1930 の家 観月橋団地 Switch Box in House 北白川の家 御殿場の別荘 KIM HOUSE2011 壬生東檜町の住宅 頭町の住宅 椹木町通の町家 垂水の家 弘明寺の住宅 神泉のリノベーション 駒沢公園の家 滑の家 町 -Building Casa Dourada 目黒本町の住宅 カテナハウス 8ビル FUNABORI

高野台のリノベーション / 多重領域 設計者 yHa architects 木村松本建築設計事務所 塩塚隆生アトリエ アラキ+ササキアーキテクツ SPEAC

星田逸郎空間都市研究所 ナフ・アーキテクトアンドデザイン 長坂大/ Mega 石崎建築設計 岸和郎+K.ASSOCIATES/Architects 魚谷繁礼

魚谷繁礼 荒谷省午建築研究所 トヨダヤスシ建築設計事務所 山口誠デザイン 能作淳平建築設計事務所 今村水紀+篠原勲/ miCo.

三宅正浩/ y+M design office 前田圭介/ UID 宮部浩幸/ SPEAC トラフ建築設計事務所 ikmo 塩塚隆生アトリエ 駒田建築設計事務所 htmn No 

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竣工年 2010 2010 2010 2010 2010 2010 2009 2009 2009 2009 2009 2008 2008 2008 2008 2008 2007 2006 2006 2005 2005 2005 2003 2003 2002

作品名 綾瀬の住宅 Yhouse renovation Blanks HANEGI G-House 翠ヶ丘の住宅 新金岡団地の改修 ICHINOE HIKARI-IDOU HOUSE 上大須賀の家 東松原の住宅 奥沢の家 r-ao 貝塚の住宅 千歳船橋の住宅 烏山の家 Sayama Flat 田無の住宅 イガタ 湯沢の住宅 梁の地形 panda オガタ 熊谷の家 NaI 邸 406 号室

設計者 納谷建築設計事務所 阿曽芙実建築設計事務所 Eureka 山口誠デザイン 藤田雄介/ CAMP DESIGN INC.

高橋功治アトリエ 駒田建築設計事務所 大藪義章

谷尻誠/ SUPPOSE DESIGN OFFICE 小谷研一建築設計事務所 スキーマ建築計画 エトラ株式会社 荒木洋+長澤浩二/ AN Architects メジロスタジオ 手嶋保建築事務所 スキーマ建築計画 納谷建築設計事務所 小泉アトリエ 納谷建築設計事務所 萩原剛 スキーマ建築計画

小泉アトリエ+首都大学東京 4-Met Center スタジオ・アーキファーム 山越武建築設計事務所 納谷建築設計事務所 No

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表 1 凡例 空気・熱・光の矢印

による表記 新旧の要素の表記

空気

No. 事例名

設計者

分類 類型

空気

形態 素材 色  図1 分析例

事例写真

部分図

環境要素 意匠要素

新の要素旧の要素

論文構成

第1章 研究の背景と目的 第2章 既存建築における     環境配慮手法の抽出と分析 第3章 既存建築の類型化 3-1 既存建築の形態類型

3-2 既存建築の構造別にみられる設計手法  第4章 環境配慮手法の意匠的考察 4-1 環境配慮手法にみられる新旧の関係 4-2 調和の手法

4-3 対比の手法

第5章 環境配慮手法の環境的考察 5-1 環境配慮手法にみられる環境効果 5-2 既存建築類型に適応する環境配慮手法

第6章 ケーススタディとしての設計提案 6-1 本提案の設定について

6-2 シミュレーションを用いたスタディに基づく     環境配慮手法の選定

6-3 設計提案と検証結果の提示 第 7 章 総括と展望

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