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環境配慮手法の意匠的考察

4-1 環境配慮手法にみられる新旧の関係 4-2 調和の手法 4-3 対比の手法

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

第4章 環境配慮手法の意匠的考察

4-1 環境配慮手法にみられる新旧の関係

 リノベーションにおいて既存建築の選択部分(旧)と、新しく付加し た部分(新)の関係が意匠的な効果を生み、新しい空間を創出している。

環境配慮手法において前章の様々な制約の中での意匠的な工夫を読み取 り、新と旧の部分の関係を考察する。

 構造別にみると、RC 造の場合、スケルトンの形状を変えられないと いう制約が旧の要素となり、インフィルで多様な室の性格を構成してい く新の要素がみられる。木造の場合は、中でも狭小住宅や長屋のように 狭い間口という旧の要素に対して、垂直方向への広がりを確保した新の 要素がみられる。

 これらはできるだけ既存建築の構成を活かして旧の要素と新の要素が 調和しているものと、旧の要素に対比するように新の要素が強く表れて いるものに分類できる。第2章で抽出した意匠要素(形態・素材・色)

の構成について、4-2 項では新旧の要素が調和する手法、4-3 項では新 旧の要素が対比される手法について考察し、環境配慮手法における意匠 的な効果を明らかにする。

図 4-1 構造別にみる新旧の関係

旧:スケルトンの形状を変えられない 新:インフィルで多様な室の性格を構成

旧:長屋、狭小住宅の狭い間口 新:垂直方向への広がりを確保

旧:鉄骨フレームの形状 新:自由な形状の壁面

既存開口部

内壁

ブラインド

袖壁 立体的なつながり

湾曲した壁 No.11

No.32 No.46

RC 造

木造

鉄骨造

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

既存壁 隣家の壁

4-2 調和の手法

 新旧の要素が調和する手法は、既存の構成を活かした上で新たな操作 により視覚的な変化を生んでいるものが多い。

 既存の周辺環境を活用した手法として、No.2 では角地であることを利 用してバルコニー部分にかかるように形取った大きな屋根を掛け、内に 閉じていた既存バルコニーを周辺環境に開いたパブリックなスペースに 変換されている。No.12 では三軒長屋を一軒の住宅に改修することで路 地だった部分を中庭化し、室内に元々ある外部空間の風景を取り入れて いる。No.13 では木造住宅の既存壁の開口を新たに開けることで、隣家 の外壁に反射した間接光を室内にとりいれるという狭い敷地ならではの 手法である。これらは外に開くことで室内の採光、通風の効果を得るこ とにもつながっている。

図 4-2-1 既存部分を活かして周辺環境へ開く(No.2)

図 4-2-2 路地だった部分を中庭化する(No.12)

図 4-2-3 隣家の外壁に反射した間接光を室内にとりいれる(No.13)

路地を中庭化 一軒化 屋根 既存バルコニー

新/旧

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

 既存の平面構成に最小限の操作を加えることで、広がりのある空間へ 変換される手法が多くみられる。リノベーションでは広い天井高を確保 するために天井板を撤去したことで、既存の梁形が表出することがよく あるが、RC 造では No.1 の梁形のように表れた凸凹の面ごとにマテリア ルを使い分けるものや、No.45 の梁と壁の間に梁形に合わせたスリット が開けられているものがあり、制約となるような旧の要素を意匠に活か している。No.5 のような木造では小屋組を現しにすることで、空間の広 がりを確保するよう意図されている。

図 4-2-5 既存の制約となる要素を意匠に生かす(No.45)

図 4-2-6 小屋組を現し空間の広がりを確保する(No.5)

図 4-2-4 表れた凸凹の面ごとにマテリアルを使い分ける(No.1)

色の違い

天井撤去

スリット 既存梁

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

 ローコストの制約の中で改修されている事例では、できるだけ既存の 構成を活かしつつ印象を変える試みがなされており、No.3 では既存の間 取りはなるべくそのままで隣接する各室が必ず異なる色をもつように仕 上げを変えることで、バリエーションのある全体をつくるように意図さ れている。既存の部位を利用している事例として、No.29 では和室で使 われていた真壁、障子、長押などの部位を残し、磁器質タイルによる床、

間仕切りとしてのガラス壁を新たに計画することで、旧の要素の風合い を残しつつも現代の生活に合った空間に変換されている。No.16 では既 存の部屋の柱、梁、根太、野縁などの木材を再利用して寝室や水回りの 箱状空間を構成しており、改修時の環境負荷低減につながることが考慮 されている。

図 4-2-7 隣接する各室が必ず異なる色をもつように仕上げを変える(No.3)

図 4-2-8 既存の風合いを残しつつ新しい空間へ(No.29)

図 4-2-9 既存の部屋の木材を再利用して構成(No.16)

異なる仕上げ 既存間取り

ガラス 長押

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

既存開口部 内壁

ブラインド

 構造ならではの制約として、No.46 では RC 造の高さの揃っていなく て狭い既存開口部の制約から、インフィルで新たな開口部をトリミング した内壁を新設し、その壁の厚みを利用したブラインドで覆い隠す手法 がとられており、開口部を変えられない RC 造の制約を逆手にとった手 法である。2×4工法では既存壁の構成を大きく組み直すのが難しいた め、2×4 住宅特有の壁と分節を利用していく必要がある。No.15 では できるだけ元の部屋の構成を生かし、撤去可能な壁を減らして室用途を 設定し、建具をガラスドアに変更することで建物全体の明るさや視線の 広がりを確保できている。

図 4-2-10 インフィルで新たな開口部をトリミングした内壁を新設(No.46)

図 4-2-11 ガラスドアにすることで建物全体の明るさや視線の広がりを確保(No.15)

ガラスドア まぐさ

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

4-3 対比の手法

 新旧の要素が対比される手法には、新たに付加されている要素が特殊 な形態をもっているものが多い。

 入れ子状に個室が配置されていることでプライベートな空間を確保し ている事例として、No.13 では既存の軸組架構の中に耐力壁として個室 の箱が挿入されており、それぞれの個室が断熱性能を確保できるように 構成している。No.18 では断熱性の高い厚みのある境界を風が流れるよ うに切妻屋根の小部屋が配されており、入れ子状の空間が室内風景をつ くりだしている。

図 4-3-1 入れ子状の個室でプライベート空間確保(No.13)

図 4-3-2 断熱性の高い厚みのある切妻屋根の小部屋(No.18)

入れ子

小部屋

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

 動線の機能を持つ空間が他の機能を兼ねているものとして、No.21 で は中央に置かれた箱状の階段が周囲の機能に合わせて面ごとに違う役割 を持ち、平面的にも断面的にも全体を緩やかに仕切って室を構成してい る。No.7 では既存壁の内側にデッキ材を目透かし張りした階段の箱を挿 入し、通風しながら視線を通さないように構成されていることでプライ バシーを確保している。No.33 では動線空間が光井戸を兼ねており、トッ プライトからの光を下階まで落とすようにアクリルミラーの上にポリ カーボネート波板を合わせたもので日射を反射拡散させている。

図 4-3-4 動線の機能を持ち全体を緩やかに仕切る(No.7)

図 4-3-3 中央に置かれた箱状の階段が全体を緩やかに仕切る(No.21)

図 4-3-5 光井戸を兼ねた動線空間(No.33)

箱状階段

ポリカーボネート波板 吹抜け

トップライト

箱状の空間

環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第4章 環境配慮手法の意匠的考察

 プライベートとパブリックな空間を上下階で分けることで構造的な強 度の問題を解決している手法として、No.2 では仕切り壁が必要なプライ ベートな居室を1階に集めることで構造的な強度を高め、2階は1室で 利用するパブリックな LDK を配置して採光や風の通る快適な空間を確保 している。

 木造の軸組を更新する手法として、No.17 では既存家屋を2つに分割 し、さらに増築したことで3つの家屋をつなげたような形態をつくりだ し、各棟の分割部分がガラスでつながっていることで採光や通風を確保 し、断続的に外部風景を取り込む内部空間をつくりだしている。

 鉄骨造の低層ビルである No.19 では階高が高いという既存ビルのもつ 性格と自由度の高い鉄骨フレームを生かしてフロアレベルの曖昧になる スリット状に抜かれたファサードを構成し、内部空間もフロアレベルの 変化によって様々な居場所を生み出すような垂直動線の多様性を意図し ている。

図 4-3-6 プライベートな居室を1階に集めて構造的な強度を解決(No.2)

図 4-3-7 各棟の分割部分がガラスでつながっていることで採光や通風を確保(No.17)

図 4-3-8 スリット状に抜かれたファサードを構成(No.19)

既存家屋 ガラス を分割

一室空間

仕切り壁

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