環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
第6章 ケーススタディとしての設計提案 環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案
第6章 ケーススタディとしての設計提案
6-1 本提案の設定について
これまでの章で行った分析結果の有効性を示す試みとして、第5章で 得られた環境配慮手法を用いて、第3章で導いた類型のうちケーススタ ディとして一般的に最も多くみられる類型である類型Ⅰ(マンションの 一室)と類型Ⅳ(戸建住宅)において空気・熱・光の環境に配慮した設 計提案を行う。
Case1 の類型Ⅰ(マンションの一室)は田の字プランの RC 造マンショ ンの一室を既存建築とする。Case2 の類型Ⅳ(戸建住宅)は2階建て木 造戸建住宅を既存建築とする。
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
設計プロセスとして、設計対象となる各既存建築の3D モデルを作成 した後、改修前における空気の流れ、熱の影響、光の入り方に対してシ ミュレーションを行うことで改善するべき環境効果を検証した。その上 で、第5章で整理した環境配慮手法を適用して段階的にシミュレーショ ンを用いたスタディを行う。なお、第5章で熱に関する手法は素材の選 択が主であることと、光に関する手法は空気に関する手法と通じること を見い出したことより、ここでは空気に関するシミュレーションを中心 としたスタディを行う。
なお、空気、熱においては FlowDesigner10、光においては Visualizer を用いてシミュレーションを行った(図 6-2)。
6-2 シミュレーションを用いたスタディに基づく環境配慮手法の選定
図 6-2 シミュレーションの条件について
夏期風配図・平均風速 冬期風配図・平均風速 空気
夏期の日中を想定 風向 南南東 風速 2.5m/s 外気 27.5℃
室温 25℃
熱
冬期の夕方を想定 風向 北北西 風速 5m/s 外気 5℃
室温 15℃
光
冬期の日中を想定 解析高さ 1100mm
北
南
北東 北西
南東 南西
西 東
20 15 10 5 北
南
北東 北西
南東 南西
西 東
20 15 10 5
風向頻度[%]
平均風速[m/s]
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
□概要
南向きで日当りがよく、向かい側の墓地を遮蔽するように植えられた 樹木の木漏れ日が室内に導かれている。しかし、田の字型のプランで間 仕切りが多く、特にダイニング、キッチンは日当りが悪い。2DK 部分 のスケルトンが正方形であり南側を広々と使えることと、南北のつなが りを考慮した計画を行う。
Case1:類型Ⅰ マンションの一室
対象敷地
既存建物外観 所在地 東京都大田区南馬込
築年数 21 年(1992 年築)
面 積 58.86 ㎡ 間取り 3DK 構 造 PC 造
階 数 2階(3階建)
入居者 3 人(夫婦+子供1人)
既存建築平面図 S:1/300
4350
46506450
5550 1500 2850
▶
洋室 バルコニー
バルコニー 物入 物入 玄関
和室6帖 キッチン ダイニング
洋室
N
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フローリング
畳 木製枠 天袋 押入 壁
建具
襖
一般的なマンションのスケルトンは南北に細長い形 状をしているものが多い。さらに、この既存建築の場 合は PC 造であるために中央の壁を撤去できないとい う制約がある。南側に面した居室をどのように構成す ることで、マンションの一室全体の環境を改善するこ とができるかを検証する。
また、旧の要素として間仕切りの多く木製枠や壁、
押入などのディテールがみられる。事例分析では一旦 スケルトン状態に解体した後にインフィルを構成し直 すものが多くみられたが、今回はできるだけ旧の要素 を活かしたリノベーションの計画を行う。
□ 旧の要素
田の字型プラン
コンクリート躯体
墓地
公園 保育園
住宅
住宅 樹木
坂道
場所 空間
ディテール
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
□既存の環境要素
→間仕切りが南側の居室の風の流れを分断している
空気
plan 速度 m/s
2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0
→間仕切りが南側の居室の風の流れを分断している section
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
□既存の環境要素
→奥まった空間の温度が低くなっている
熱
plan 温度℃
20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0
→奥まった空間の温度が低くなっている section
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□既存の環境要素
→和室の物入や垂れ壁により採光が室の奥まで届いていない 昼光率
8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0
光
plan
→和室の物入や垂れ壁により採光が室の奥まで届いていない section
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
□設計プロセス 01. 室上部のつながり
02. 垂れ壁を引く
03. 緩やかなつながり
04. 床を上げる
□ 環境配慮手法の適用
→天袋を撤去
→室上部のつながりが生まれる
→ロフトの箱が全体を緩やかに仕切る
→断面方向の風の流れ方が変化する 箱or棚
床の高さを上げる 壁撤去
天袋撤去
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
□設計プロセス □ 環境配慮手法の適用
→均質に風が流れ始める
→小上がりを全体に設ける 深い垂れ壁
エンガワ
05. 深い垂れ壁
06. バッファーゾーン
07. 内壁を設ける →風の流れが抑制される
内壁
08. 天井の形態 →勾配天井に沿って風が流れる
勾配天井
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
フラットなマンションの一室に多様な性格の場所を生み出すことで、
唯一南北につながるスケルトンの開口部を通じて風が流れやすいように 構成した。小上がりを設けたことによりできた段差の空間をバッファー ゾーンとし、光を室内の奥に導くように設けた勾配天井を兼ねた垂れ壁 は熱環境配慮につながっている。
6-3 設計提案と検証結果の提示 Case1:類型Ⅰ マンションの一室
▶
+300 ダイニング
平面図 S:1/100 N
キッチン 寝室
小上がり
書斎 スペース
S
N
内壁付加 木製枠を残す 異なる床材 南北のつながり
カウンター
既存押入
既存木製枠 上部ガラス
床の高さを上げる
S
内壁付加 サンルーム 環境の量を調節する バッファーゾーンの構成
バルコニー
カーテン インナー
テラス 4350
4650 6450
5550 15002850
既存躯体現し
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断面図 S:1/100
2000500
床の高さを上げる
内壁付加 勾配天井
S
サンルーム
インナー
テラス 小上がり カウンター キッチン 寝室
熱や光の溜まり 奥に導く構成 旧の要素を活かしたキッチン廻り
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
田の字プランを継承した小上がりとダイニング 拡散した光が差し込むダイニング
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
フローリング 木製枠 天袋 押入 壁
建具
できるだけ旧の要素を活かすように構成した。南側 の既存開口部を複製したような開口を設けた内壁に よ っ て、バ ッ フ ァ ー ゾ ー ン を 構 成 し て い る。バ ッ ファーゾーンとなるインナーテラスはガラスタイルで 構成し、リフレクターとして光を室内に導く。
床の高さが変化することで、ゆるやかにつながるワ ンルームの中に様々な場所を配している。既存の木製 枠を活かして欄間部分にガラスを使用することで光を 奥に導くように構成し、既存の押入に開口を設けるこ とでキッチンとのつながりを生みカウンターで囲うこ とで今まで仕切りの機能だった押入を溜まりの場所に
□ 旧の要素 / 新の要素の関係
環境調整可能な構成
コンクリート躯体
墓地
公園 保育園
住宅
住宅 樹木
坂道
場所 空間
ディテール
新 旧
ガラス
土間 開口 内壁 勾配天井
環境に配慮した住空間リノベーションの設計手法に関する研究及び設計提案 第6章 ケーススタディとしての設計提案
→間仕切りが南側の居室の風の流れを分断している
□ 改修前後の環境要素 空気
→キッチンまわりにも風の流れが生まれた
→高さ方向に均質な風の流れができた plan
section 速度 m/s
2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0
→間仕切りが南側の居室の風の流れを分断している 改修前
改修前
改修後 改修後