• 検索結果がありません。

総合考察

ドキュメント内 様々な身体部位における (ページ 79-88)

本研究では, 様々な身体部位に物体を身に着 けた状況下 で歩行調整する際, ダ イナミックタッチで得られた情報が利用 されるのかについて検討を行ってきた。 目 的達成のために, 本研究では歩行中の棒 先端致 課題を主 とした4つの実験を行っ た。 本研究では, 特に2つの点 に着 目した。 1 つめの検証点 は, ダイナミックタッ チで得られた情報が実際の歩行調整に利用 可能であるかをであった。 2 つめの検証 点 は, ダイナミックタッチで得た情報を手以外の身体部位でも同 程度に利用 して 歩行調整を行っているのかであった。

1つ目 の検証点 については, 第1実験の結果, 静的な状況下 でのダイナミックタッ チと同様に, 歩行中の棒 先端致 課題においても , 棒 に取り付けた錘位置の変化に 応 じて歩行調整が行われることが分かった。 この慣性モメントの関与について は, 第2-4実験において, 手・ 頭部・ 体幹 のいずれの部位においても同 様の結果が 再 現された。 さらに, 第4実験では, 空間軸の位置関係によらず, 錘の位置が遠ざ かるとそれに応 じて棒 先端の位置が遠ざ かるように調整が行われること, さらに,

実際の身体位置としても空間軸 から遠ざ かる方向に歩行調整していることが明 らか になった。 以上の結果から, 物体を伴う中での歩行調整においても, ダイナミック タッチで得られた情報を利用していることが明 らかとなった。

2つ目 の着 目点 である身体部位間の行動特性については, 第1-2実験の結果から,

頭部のみ他 部位とは異 なる行動特性 ( 空間軸・ ドア から遠ざ かる方向への行動調 整) が生じた。 その後 , 第3実験の検証から, 頭部がドア と棒 先端が接触すること

を避 けたわけではないことを確認 した。 ま た, 第4実験の結果, 頭部において左方 向への空 間知覚バ イア スの影響 が大 き く 生じた のかを検討したが, 左空間軸に対し て棒 先端を合わせる場合には, 身体条件間で棒 先端の調整位置に差 には見られなか

っ た 。 こ れ ら の 結果 か ら , 頭部 に お け る 特異 的 な 行動特性 は , 右 空 間 に 特有 の 空 間 知 覚 特性 の 影響 で あ っ た 可能性 が あ る 可能性が示唆 さ れ た 。 加 え て , 頭部 中 心 と 空 間軸 の 距離 (実際 の 身体位置 が 空 間軸 か ら ど の 程度離れ た 位置 を 通過 し て い た か)

に つ い て も 検討 し た と こ ろ , 頭部条件 と 手条件 の 頭部 中 心 の 通過位置 に 顕著 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら , 右空間 の 知 覚 に お け る 知 覚 の 特異性 は , 歩行調 整 に 対 し て は 主 た る 影響 を 与 え て い な い こ と が示 唆 さ れ た 。 こ の こ と か ら , 頭部 に お い て も , 立位時 に お け る 棒 の 長 さ 知 覚 と 同様 に , ダ イ ナ ミ ッ ク タ ッ チ で得 た 情報

自 体 は , 手 と 同程度 に 歩行調整 に 利用 し て い る こ と が示 唆 さ れ た 。

歩行 中 に お け る ダ イ ナ ミ ッ ク タ ッ チ の 利 用

第 l 実験 で行 っ た 歩行 中 の 棒先端致課題 で は , 棒 に 取 り 付 け た 錘位置 が把持部 か ら 遠 い ( す な わ ち 慣性モメ ン ト が大 き い ) 場合, 錘位置 が把持部 に 近 い条件で の 棒先端 の 調整位置 よ り 相 対 的 に 左側 (棒先端 が 空 間軸 ・ ド ア か ら 遠 ざ か る 方 向 ) を 通過す る よ う に 調整 が行 わ れ た 。 こ の 結果 は , 第 2-4 実験 に お い て も貫 し て 認 め ら れ た 。 ま た , 第 l 実験 で 静止立位 で の 棒先端致課題 に つ い て の 検討 を 行 っ た と こ ろ , こ の 課題 に お い て も 棒 の 抵抗 の 変化 に 基づ い て 棒先端位置 の 調整 が 行 わ れ る こ と が分 か っ た 。 従来 の 先行研究 に お い て も 知 覚 判 断課題 に 関 し て は , 錘位猶 の 操作 に よ る 慣性モメ ン ト の 変化 に 基づ い て , 自 身 の 行動 を 判 断 し て い る こ と が 報告 さ れ て い る (Wagman & Malek, 2007; Wagman & Taylor, 2005)。 今回 の 歩行 中 の 棒 先端致課題 の 場合, 棒先端 の位置 を 知覚 し た の ち , 空間軸 の 位置 関係 を 判 断 し , そ こ に 棒 を 合 わ せ て い く こ と が 求 め ら れ る が, こ の 時 に 歩行軌道 を 調整す る 時 に も 慣性モメ ン ト の 情報 に 基 づ い て 調整 が行 わ れ た と 考 え ら れ る 。 ま た , 本実験 に て 検討 を 行 っ た 頭部, 体幹部 に お い て も , 従来 の 先行研究 (体幹部 : Palatinus et al,

2011 ; 頭部:Wagman et al, 201 7) と同様に, ダイナミックタッチに基づく棒の長さ 知覚が行われていた。 さらには, 歩行 中の棒先 端致 課題においても各部位で錘位 置 の操 作に応 じ て棒先 端位閤 を調整していた。 このことから, 従来 の棒自体の特性 の知覚だけでなく, 物体知覚・ 歩行 調整などの行動に利用する際に, ダイナミック タッチの情報は各部位で共 通して利用されていたと考えられる。

今 回 の検討では, 第1-4実験まで貫 して錘位置 の操 作による棒先 端の調整位償 の変化が認められたが, 棒の長 さによって異なる結果が得られる場合があった。 例 えば, 第2実験の体幹部条件では, 65cm条件の時に比べて, 50 cm条件では錘位置 を操 作しても棒先 端の調整位置 の顕著 な変化が認められなかった(p47 -48, 図13※

三 要因反復測定分散 分析 のため, 統計 的に は検出 されず) 。 また, 第3実験では, 空 間 軸 ドア間 距離拡 大 条件における頭部条件(p 59 - 60 , 図18), ならびに空間 軸ド ア間距離通常条件では, 手・ 頭部ともに(p61-62 , 図19) , 50cm条件の時には錘位 置 の操 作による棒先 端の調整位置 の有意な変化 が認められなかった。

これらのいずれも貫 して棒の長 さが 50 cmの時に錘位置 の操 作による棒先 端の 調整位置 の変化が認められなかったのには, それぞ れの棒の長 さにおいて錘位置 の 操 作に伴う慣性モメントの変化 の大 きさが影響していた可能性がある。 本実験で 用いた各棒の長さ条件( 50, 65cm) では, 50 % の位置 から 75% の位置 に錘を変更 し た時, 慣性モメントは, それぞ れ 6.7X 10·3 kg/ m2 , 11.4 X 10·3 kg/面 増加 する設定と なっていた (表 l )。 この時, 50cmの条件では 65cmの時よりも慣性モメントの変 化量 が小 さい。 静的に棒の長 さを回答 する際には, 50cmの時にもこの慣性モメン トの変化を検出 し, その情報に基づいて物体の長さの知覚を行っていたと考えられ るが, 歩行中に棒先 端位置 を調整する際には, こうした抵抗の変化の情報が歩行調 整に十 分に反 映 されていなかったことが考えられる。 この点 については, 今 回 の実

験では貫 した結果が得られなかったため, 今後 の検討として, 棒の長さの要因を

定にし, 慣性モメントを定量 変化させた時には棒先 端の調整位置 がどの程度

変化するかを検討するなど, 慣性モメ ントの操作量 と行動調整との関係をより詳 細 に検証 する必要がある。

歩行中 静止立位において頭部の特異的な行動調整が見られた要因

今 回 , 第1-4実験では右側の空間軸に棒先端を調整する際には, 頭部において他 部位とは異なる棒先端位置の調整が行われることが分かった。 また, この影響は,

左側の空間軸の時には消失することから, 右特有の空間知覚の特性の違いである可 能性が示 唆された。 行動中における身体部位間での空間知覚特性 の違い, ならびに

行動調整の違いについて検討したものは非 常に少なく, 神 経科学領域 の研究から,

身体部位特異的な空間座標 が存在し, 特に頭部や手などの部位ご とに特異的な空間 知覚領域 がある可能性 が示唆され ている範 囲 に留 まる(Clery ,Guipp oni , W ardak, & B en Hamed, 2015)。 しかしながら, これらが実際の行動調整に与える影響については, こ

れまで検討したものがない。 本研究では, 頭部 において右空間にのみ特異的な行動 調整が見られる可能性が示 唆されたが, これらは , 複数 の棒の長さ, ならびに錘の 操作も行ったうえで, さらに視 野が制限された状 況下 での結果であるため, 厳密 に 頭部の空間 知覚における特殊 性を示 しているとはいえない。 そのため, 今 回 示唆さ れた空間知覚の特殊性が正しい解釈であるかについては, より詳細 な部位間での比 較 検討を行う必要がある。

本研究では, 実験間で貫 した結果が得られたことから, 部位間での空間知覚 の特性の違いが行動調整の違いを生じさせた主 たる影響であったと考えた。 しかし ながら, その他 にも頭部と他 部位との間に異なる行動が生じた要因 が考えられる。

そのため, これらの要因 の影響を考察 していく。 まず l つ目の可能性は, 頭部では 物体の知覚の時点 で, 短 い棒を知覚する際に他 部位よりも棒を長く知覚している可

能性である。 第 l 実験では, 頭部と手の間に統計 的に有意 な回答値の違いは認めら れなかったものの, 第2実験において, 頭部では手に比べて特に 50cmの長さの棒,

ならびに錘位置 が把持部に近 い棒を手よりも有意 に長く匝答する傾向が認められた (p 50 - 5] , 固 15)。 この影響は参加者内 での凹答値の変動も多 かったことから, 棒の 長さ知覚自 体が大 きく異なっていたわけではないと考えた。 しかしながら, Wagman らが行った手と頭部における棒の長さ知覚実験においても短 い棒の条件の時には,

頭部の方が棒を長く回答する傾向が見 られていた( Wagman et al. , 2017)。 また, 歩行 調整課題についても, 特に頭部において, 50cmの条件, ならびに錘位置が把 持部に 近 い条件の時に, より左側に棒先端位置が調整される傾向が認められていた (第1

実験:p38, 図11; 第3実験:p 59, 図18)。 仮に, 頭部条件 では 50 cm条件の条件 で手に比べて棒を長く知覚する傾向が反映 された場合, 歩行中の棒先端致 課題に おいても棒先端が左 側を通過 することになる。 そのため, 頭部における棒先端左側 への調整は, 棒自 体を長く知覚したことによる影響であった可能性がある。 この影 響については, 実験間で貫 した結果がみられなかったため, 本実験からは詳細 な 言及 はできないが, 今後 , 棒の長さを1種類 にして検証するなど, 棒の長さご とで 身体部位間での違いが生じるのかについて検討する必要がある。

また, 頭部と他 部位との間で棒先端の調整位置 に違いが生じた別 の可能性とし て, 前庭 系 ・ 頸 部筋群 の固 有感 覚入力 が影響した可能性も考えられる。 歩行や立位 姿勢時 には, 前庭感 覚情報なども利用され, 進 行方向や重 心位置の制御 に影響を与 えることが示 唆 されている(B ent,Mcf adyen, M erkley, Kenn edy , & Ingli s, 20 0 0 ; F ransson

et al. , 20 03)。 また, 頸 部の固 有感 覚受容器 は, 全 身の姿勢制御 にも関与 しており, 立 位時や歩行中に触覚刺 激 が提 示された場合には, 歩行時の進 行方向は, 提 示刺 激 の 逆方向へ偏位することが知られている(l vanenko et al. , 20 0 0 )。 本実験の場合, 頭部の 右側に錘を取り付けた棒を振ったことで, 自 身の身体位置の知覚も変化し, 頭部や 自 身の身体位置や物体との相対的な位置 関係に対する知覚も変化した可能性は考え

ドキュメント内 様々な身体部位における (ページ 79-88)

関連したドキュメント