第二章 電子ドナー型両親媒性 HBC 誘導体単成分単分子膜の構造と
第5節 結論
本章では、電子ドナーとして振る舞う HBC 部位に両親媒性を付与した化合物
HBC-TEGを用いて、水面上単分子膜、固体基板上移行膜を作製し、膜構造評価と固体
基板上移行膜の光電流特性の表面圧依存性を検討した。HBC-TEG 単分子膜は水面上で 安定な膜を形成することが分かった。また、膜を展開した直後に、形成したドメインが、
二次元的に圧縮されることで、単分子膜が形成されていると考えられる。また、水面上 単分子膜のXR解析から、ドデシル鎖と HBC部位は水面の法線方向に対して傾いてい る状態で充填されていることも分かった。またHBC部位の傾いた配向は、圧縮過程を 経ても変化はないということが示唆された。一方、ドデシル鎖は、FT-IRスペクトルか ら、低表面圧ですでにオールトランス状態をとっていることが確認されていることから、
圧縮によって下層水表面の法線方向に対して起き上がるような配向変化を経ているも のと思われる。また、固体基板上の UV-vis スペクトルにみられる主要な二つのピーク より、HBC 部位は単分子膜内でスリップスタック構造をとっていることが分かった。
それら二つのピーク位置は圧縮によって変化することはなかった。この結果は、圧縮し てもHBC部位は配向変化が起こらないとするXR解析と矛盾しない。XR解析、UV-vis スペクトルから予想される単分子膜内での分子充填構造の側面図と上面図を Figure 2-23に示す。AFM画像と水面上GIXD測定を併せて判断すると、圧縮によって炭化水 素鎖の充填構造の格子定数と傾き角tの減少が見られ、部分的にドメイン同士が接触し ているとした説明に矛盾しないものと思われる。これらの分子充填構造の模式図を Figure 2-24に示す。
また、分子占有面積の逆数をとった分子密度に対して、光電流発生量をプロットした ところ、分子密度から予想される光電流値を大きく上回る値を得ることが出来た。これ は本来、線状構造体内ではHBCの特性上、線状ドメインの長軸方向に沿って優先的に
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電荷キャリアが輸送されるところを、ドメイン同士が部分的に接触し、面内ドメイン間 の電荷輸送が可能になったためであると思われる。
本研究で使用した両親媒性HBC誘導体の基礎的知見を得ることが出来たとともに、
分子の潜在的な自己組織化能に加えて、能動的な圧縮という操作を加えることで、光電 流値を増大させることを明らかにした。
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Figure 2-23 単分子膜(表面線状ミセル)内での詳細な充填構造の側面図と 面内のキャリアパスの模式図。
Figure 2-24 HBC-TEG単分子膜内に見られた表面線状ミセルの模式図。
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