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第六章
結言
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本研究では、電子ドナーとして機能する半導体部位HBCに、両親媒性を付与した一 連の化合物を用いて、LB法によって作製した単分子膜の構造解析を行うとともに、そ れらの光電流特性を調べ、両者の相関性を検討した。それらによって、半導体部位とし てHBC部位を有する化合物を用いた高効率な光電変換素子の構築の際に、満たされる べき要件に関する分子レベルでの知見を得ることが出来た。新規化合物の創製なしに、
既存の半導体分子を用いて、製膜条件を変化させるだけで、更なる性能向上を達成でき る可能性を見出した。
以下には、各章ごとの内容をまとめる。
第二章では、本研究で使用したHBC誘導体の最もシンプルなモチーフである
HBC-TEGを用いて、単分子膜構造と光電流特性の表面圧依存性を検討した。この化合
物は、HBCを核として、2本のドデシル鎖(疎水基)とフェニル基を介した2本のト リエチレングリコール(親水基)を有する。HBC-TEGは水面上で安定な単分子膜を形 成することが明らかになり、また単分子膜内ではHBC部位は秩序よく配列したスリッ プスタック構造をとっていることも明らかにした。本実験での表面圧の範囲内では、こ のスリップスタック構造が維持されていることも分かった。さらに、単分子膜内でHBC 部位は水面の法線方向に対して21.7 ‒ 24.6 °傾いて充填されていることが、XR解析によ って示され、また、HBC部位の傾き角は表面圧に依らないことも明らかにした。低表 面圧において、固体基板上に移行した単分子膜のAFM観察からは、幅20 nmの線状構 造の存在が示され、単分子膜内には空隙もみられた。高い表面圧で移行した単分子膜で は、その線状構造が寄せ集められるようにして単分子膜が形成され、ドメイン間に見ら れていた空隙も減少することが分かった。水面上単分子膜のGIXD測定より、単分子膜 内のドデシル鎖は、極角と方位角に傾きを持って充填されていることが示唆されたこと から、AFM画像と合わせて考えると、HBC-TEGは表面線状ミセルを形成していると推
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察される。また、圧縮によって、ドメイン同士が接触する際、分子内のドデシル鎖が立 ち上がるような配向変化を経ることが示唆された。HBC-TEG膜に対する光電流の表面 圧依存性を調べたところ、高い表面圧において、分子密度から推測した電流値よりも大 きな電流量が観察された。これは圧縮に伴って、表面線状ミセルが部分的に接触し、面 内に有効なキャリアパスが確保されたことに起因すると推察される。
第三章では、第二章で用いたHBC-TEG のHBC 部位と親水鎖間の連結部分であるフ ェニル基をアセチレン基に変えた化合物(HBC-Ac-TEG)を用いて、単分子膜構造と光 電流特性評価を行い、HBC-TEG単分子膜に対するそれらと比較した。UV-visスペクト
ルとFT-IRスペクトルから、HBC-Ac-TEG分子はHBC-TEG分子に比べて乱れた状態で
単分子膜内に充填されていることが明らかになった。また、これらの単分子膜のXR測 定の結果より、HBC-Ac-TEG単分子膜内のHBC部位は水面の法線方向に対して大きく 傾いた状態で充填されていることも明らかになった。一方、光電流測定の結果は、
HBC-Ac-TEG単分子膜に対しては、光照射による電流の発生が見られなかった。これは、
HBC-Ac-TEG分子の単分子膜内の充填構造が、電荷輸送機構であるホッピング伝導にと
って不利であったためと思われる。
第四章では、効率のよい光電変換素子を構築するためには、電子ドナーとアクセプタ ーを共存させることが必須であり、これまでに用いたHBC-TEG分子の親水鎖の片側あ る い は 両 側 末 端 に 、 ア ク セ プ タ ー を 付 与 し た 化 合 物 HBC-TEG-monoC60、
HBC-TEG-monoTNF、HBC-TEG-bisTNFを用いて、単分子膜構造と光電流特性を検討し
た。電子ドナー/アクセプター結合型 HBC 誘導体は、それらの単分子膜において
HBC-TEGに比べて大きな分子占有面積を示した。また、UV-visスペクトルから、電子
ドナー/アクセプター結合型HBC誘導体単分子膜内のHBC部位同士の相互作用はとて
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も弱いことが明らかになった。XR解析の結果も考慮すると、電子アクセプター部位が HBC層に侵入している単分子膜構造が示唆された。これがHBC構造体形成を阻んだ原 因になっていると考えられる。これらの単分子膜に対しては、単分子膜内には電子ドナ ーとアクセプター部位が共存していることから、電荷分離が促され、HBC-TEG 膜より も大きな光電流値が得られると期待されたが、実際には予想よりもかなり小さい値が観 測された。本来、HBC 部位がスタックして形成する構造体がキャリアパスとして機能 するはずであるが、ここでは電子アクセプター部位がHBC層に侵入し、HBC構造体の 形成を阻害したため、効率のよりキャリア輸送が達成されなかったと思われる。
これまでの検討から、電子ドナー/アクセプターの共存と合わせて、それらの界面で 発生した電荷キャリアを効率よく取り出すためのキャリアパス形成の重要性が示され た。これらを踏まえて、第五章では、配列秩序性のよい膜を形成するHBC-TEGと、電 子ドナー/アクセプター結合型誘導体の二成分混合膜を作製することを試みた。XR解
析とUV-visスペクトルから、電子ドナー/アクセプター結合型誘導体の混合モル分率X
の減少に伴う混合単分子膜内の分子充填の秩序性の改善が見られた。これらの混合膜に 対して、Xに依存した光電流発生量を調べたところ、X = 0.05 ‒ 0.10付近で電流値が最 大になる傾向が見られた。最も大きな電流値が得られたのは、HBC-TEG-monoTNF と
HBC-TEGの混合膜で、62.4 pAであった。これはHBC-TEG単成分単分子膜に比べて約
27 倍も増大した値であった。この組成付近では,電子ドナーとアクセプター部位が共 存することによる電荷分離促進効果と、HBC-TEGを混合したことによるHBC層の配列 性の向上によるキャリアパスの形成の両者が、バランスよく達成されたことに起因する と思われる。
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謝辞
本論文を完成するにあたり、ご指導を賜り適切なるご助言をいただきました宇都宮大 学准教授 飯村兼一先生に深甚の謝意を表します。
また、学位論文審査の労をお執りくださいました宇都宮大学教授 加藤紀弘先生、宇 都宮大学教授 江川千佳司先生、宇都宮大学教授 鈴木昇先生、宇都宮大学准教授 大庭 亨先生には、貴重なご助言と温かいご支援を賜りました。記して感謝申し上げます。
本学位論文で用いた一連の化合物群は、筑波大学准教授 山本洋平先生、東京工業大 学教授 福島孝典先生に提供していただいたものです。山本洋平先生には、光電流測定 のご指導を賜りましたこと、化合物や一連の実験に関して多くのことを学ばせていただ きましたことを感謝申し上げます。深く、多くを学ばせていただき、終始丁寧なご指導 を賜りました福島孝典先生に感謝申し上げます。また、本研究で使用する化合物提供の ご支援を賜りました東京大学教授 相田卓三先生に深く感謝いたします。
本研究における水面上単分子膜のin situ X線反射率測定は、高輝度光科学研究セン ター(JASRI)SPring-8 にて行われました(第二、三章:2009B1603、第四、五章:
2010B1682)。測定に際しまして、JASRI 宇留賀朋哉博士、JASRI 寺田靖子博士、
JASRI 豊川秀訓博士、京都大学 谷田肇特定准教授をはじめとする多く方々の支援 をいただきました。また、水面上単分子膜のin situ 微小入射角X線回折測定に関し まして、マックスプランク研究所 Gerald Brezesinski教授、マックスプランク研究所
Cristina Stefaniu博士の多大なご協力とご配慮にこの場を借りて深く感謝します。
宇都宮大学教授(当時) 加藤貞二先生には、卒業論文のご指導を賜りましたこと、
また、界面化学に関して多くのことを学ばせていただきましたこと、心より御礼申し上 げます。また、学会活動を通して、ご意見・ご助言をいただいた多くの先生方に感謝申 し上げます。