第三章 親水基構造の異なる電子ドナー型両親媒性 HBC 誘導体
第4節 親水基構造の異なる電子ドナー型両親媒性 HBC 誘導体単成分単分
Figure 3-12には、30 mN/mで膜移行したHBC-Ac-TEG膜の電流 – 時間プロファイル
を示す。HBC-Ac-TEG膜では、光の照射を行ったにも関わらず、電流の発生が見られな
かった。一方、30 mN/mで移行したHBC-TEG単分子膜の光電流値は2.34 pAであるこ とはすでに述べた。この光電流値の違いが表れた理由の一つには、単分子膜内の分子の 充填構造・秩序性の違いにあると推察する。HBC-Ac-TEG膜のUV-visスペクトルから、
単分子膜内の HBC 部位が乱れた状態で充填されていることが示された。また、XR 解 析結果からは、HBC 部位が水面の法線方向に対して大きく傾いていることが予想され る。このことから、HBC-Ac-TEG膜内では、HBC間の相互作用が弱く、π表面どうしの 重なりが小さくなったと考えられる。低分子系有機半導体においては、π-π表面間のホ ッピング伝導によってキャリアが移動することが知られているが、HBC-Ac-TEG膜内で のHBC部位の充填構造がキャリア伝導によって不利であったため、今回は電流値とし て観測することが出来なかったものと予想される。
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Figure 3-12 表面圧30 mN/mで移行されたHBC-Ac-TEG単分子膜の 電流 – 時間プロファイル。
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第5節 結論
本 章 で は 、 親 水 基 構 造 の 一 部 分 が 異 な る 両 親 媒 性 HBC 誘 導 体 HBC-TEG と
HBC-Ac-TEG を用いて、Langmuir 膜、固体基板上移行膜を作製し、それぞれの膜構造
評価と固体基板上移行膜の光電流特性を検討した。HBC-TEGと同様、HBC-Ac-TEGも 水面上で安定な単分子膜を形成した。また、HBC-Ac-TEG単分子膜に関して、π-A等温 線測定と同時に行った BAM 観察でも、HBC-TEG と同様の傾向が見られた。具体的に は、表面圧が0 mN/mの領域で既に固体様のドメインが観察されており、膜物質を水面 上に展開した直後に形成されているものと思われる。また表面圧が高い領域では、凝縮 相ドメインが面内の圧縮で寄せ集められることで単分子膜を形成しているものと思わ れる。また、水面上HBC-Ac-TEG単分子膜のXR解析の結果からは、HBC部位は水面 の法線方向に対して大きく傾いている状態で充填されていることも分かった。
固体基板上単分子膜の UV-vis スペクトル測定からは、HBC-TEG 単分子膜内の HBC 部位は自身の強い相互作用によって秩序性の高いスリップスタック配列構造をとるの に対して、HBC-Ac-TEG単分子膜内ではHBC部位間の相互作用の程度は弱いことが分 かった。また、固体基板上単分子膜のFT-IR スペクトル測定から、HBC-TEG単分子膜 内ではドデシル鎖はオールトランス状態をとっている一方で、HBC-Ac-TEG単分子膜内 では、オールトランス状態の中に若干の乱れが含まれていることも示された。さらには、
固体基板上単分子膜の XR 解析を行ったところ、2パターンの解析結果が得られたが、
パターンⅡの方が解析から得られた電子数と、分子構造から見積もった電子数がよく一 致した。パターンⅡのHBC-Ac-TEG膜内のHBC層の厚さは、HBC-TEG膜内のそれに 比べて薄いことが明らかになり、これは、水面上単分子膜の XR 解析結果と一致した。
これまでの構造解析の結果から予想されるそれぞれの化合物の単分子膜の模式図を Figure 3-13に示す。
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固体基板上HBC-Ac-TEG単分子膜の光電流測定を行ったところ、光の ON/OFFに伴 った電流値の変化は見られなかった。これは、UV-visスペクトルとXR解析からも示さ れているように、HBC-Ac-TEG単分子膜内では、HBC部位間の相互作用が極めて弱く、
キャリア輸送に有効な π 共役系の大きな重なりが達成出来なかったことに起因すると 考えられる。つまり、HBC-Ac-TEG は均一な単分子膜こそ形成するものの、膜内での HBC 部位の充填構造がキャリア輸送に不利であったために、今回光電流を検出するこ とが出来なかったものと思われる。
Figure 3-13 (左)HBC-TEGと(右)HBC-Ac-TEG単分子膜内の分子充填模式図。
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