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結論

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うのを見る機会はなかったから、結構面白いなぁと思った」と語った。

Fさんは、日本人との接触が苦手で、普段日本人とあんまり関わらず、アルバイトが日本 語を使う唯一の繋がりであるため、彼女にとっては日本語を使う良い経験だと思った。

主に日本語の上達かな、やはり普段アルバイトをしないと、日本語をあんまり使わ ないから、あの時は日本語をよく使ったよね。あとは、どんなことをしても経験に なるから、いいことであろうが悪いことであろうが。またいろんな人と出会えてい いなと思う。

Gさんはあまり飲食店のアルバイトが好きではないため、良い印象を残ってなさそうだが、

飲食店で働いて「料理が作れるようになったね、日本の料理はね」と語った。また、彼が 仕事の場で「人との付き合い方とか、空気を読んで動くというところが上手になった」と いう風に思った。

HさんはAさんと同じく、日本食に対して前より深くわかるようになった。「日本食って 結構こだわりがあるよね、味噌汁と漬物とご飯の場所はちゃんと決まっている。ここに来 る前に、日本食については全然知らなかった。この店に入ってきて、日本人がどんな物を 食べているのかを知るようになった」と彼女はうれしそうに語った。

Jさんは働く中、つらい思いをしてやめようと何回も考えていたようだが、二年間頑張っ てアルバイトを続けていた。彼女にとっては「一個のことを二年間続けたというのがまあ、

悪くないかな」と思った。

Kさんが成長したと思ったことは、「笑顔を作ることができました」。

以上の事例を見ると、人それぞれで成長したところが見える。中国人留学生の場合は、

主に日本文化の理解の面で成長した様子が見える。食文化で刺激を受ける人も多いと考え る。当然、その働く過程で、日本語も上達していったはずだと思うが、彼ら自身が成長し たことを振り返る際に、あまり言葉の問題を意識してはいなかった。それは、その働く間 に日本語が上達するはずだと思っていたからではないだろうか。

日本人の場合は、インタビュイーがたった三人であるにもかかわらず、非常に個人差が あり、個人の経歴により、アルバイトを通して得たものが異なる。この件に関しては、よ り多くの対象者への質問調査と、長期の参与観察が必要となるため、今後の課題としたい。

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究では、中国人留学生は「日本社会・日本人との交流」を目的としてアルバイトに従事す ることが最も多いと述べている[黄 2019]。また、近年、中国の経済発展とともに、ア ルバイトに従事する学生も少なくなっている。そういった状況下で、「生活費獲得」や「日 本語能力の向上」等これまでよく言われてきた目的を示すだけではなく、新たな動機や展 開に着目することも重要だと思う。

それでは本論で明らかになった、中国人留学生が飲食業で働く上での動機やきっかけを 整理する。まず一つ目は、留学仲介業者の思惑にのせられることである。筆者が行なった8 人の中国人留学生に対するインタビュー調査では、多くの学生が日本に来る前に留学仲介 業によって日本の留学生活にはアルバイトが不可欠な物だと思わされていることに気付い た。また、インターネット上で「贴吧」や「Wechat」の利用によって、アルバイトをしな ければならないという先入観を抱くということが分かった。「皆がアルバイトをやってい るからそれが普通」というような発言がよく出た。この点は、本論文の五章の 5.4 節で詳 しく紹介しており、対象者自らの言葉によってこの結論が導きだされたと言える。

二つ目は、言葉ができなくても必要に迫られれば、働きやすくなっている飲食業界の現 状がある。現在日本の飲食業界ではオーダー機の設置とともに、日本語を使用せずアルバ イトができる状況になっている。人手不足のため、採用側の妥協もあって、来日したての 留学生でも早く働ける労働環境となっており、留学生の日本語能力はそこまで重視されず に労働力として使われている。一方、中国人留学生たちの日本語能力では、複雑な接客や 日本社会への理解が必要とされるアルバイトはできないという消極的な要因も、多くの中 国人留学生が飲食業アルバイトを選ばざるを得ない理由の一つになっていると考える。こ れは、本論文の五章の 5.2 節に紹介した日本語能力によるアルバイト経験の違いから推測 できると考える。

三つ目は、二つ目と関連しているが、より積極的なものであり、日本人と交流・日本語 を練習したいという理由で飲食業アルバイトをするということがある。この 8 人の対象者 の中には最初アルバイトを始めようとした目的に、日本語を上手になりたいという願望だ った人が多い。実際、アルバイト先で日本語が上達したり、日本人の同僚と仲良くしたり することがあった。

以上、始めの問いと目的に対する答えを整理した。

以下では、この研究を通じて得られた新たな発見について述べる。日本人学生の飲食業 アルバイト経験を参照としたインタビュー調査から、彼らが飲食業アルバイトをする目的 を聞いたところ、職場の人間関係についての観点が新たに浮上した。Iさんは職場の雰囲気 が良く、居心地が良いと感じ、楽しく働いた。反対に J さんが職場の人間関係が悪いと感 じていたが、自分に関わらないため、長く働いた。Kさんがストレスを感じたため前職を辞 職し、飲食店の人間関係ならば簡単で、精神的なストレスがないと思って始め、現在でも 続いている。三人のインタビュー調査を終えた後に、中国人留学生と比較で気付いたこと は、飲食店の人間関係が思いの外複雑ではないということである。このように単純な人間

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関係であることは中国人留学生にとって、飲食業アルバイトの「しやすさ」の一つと言え ると思う。つまり、中国人留学生が飲食業アルバイトをする際に、深く会話もしない職場 である限り、人間関係に気を遣うことが無く、仕事を終えたらその場を去ることができる ということである。深い人間関係を作らない限りトラブルを起こすことも無くて済む。こ れも中国人留学生が長く飲食業アルバイトを続けられる理由の一つと言える。

加えて、中国人留学生が如何に日本の飲食業アルバイトに従事するようになるのかを見 ていくと、その過程には非日常から日常に変わる変化が見える。最初は、外からの勧めで、

来日する前に日本の留学生活にはアルバイトが必要と言われてくる。来日後も、周りの環 境に影響され、日本語学校や自国の先輩などに影響をうける。また、日本語の上達や練習 のために、そして日本人と交流して日本社会に順応する手段としてアルバイトを始めた頃 は、それらは彼らにとって、中国での経験とは異なる、非日常な経験だった。しかし、長 く日本で留学生活をすると共に、アルバイトをすることが日常化していく。やがてアルバ イトをする動機も、アルバイトを探す手段もほぼ日本人と変わらなくなり、生活の一環に なった。

改めてこの視点から日本に長く住む中国人留学生の経験を見直すと、実は多くの中国人 留学生にとって、来日してからのルートはほとんど同じようなものとなっている。まず日 本語学校の生徒としてスタートし、ある程度日本語を覚えればアルバイトを始める。日本 語学校に最大二年間通う中で、進路を決める。そして、大学か大学院に進学をして勉強す る。卒業したら、日本の会社に就職する¹²⁾というようなプロセスである。こうして見ると、

アルバイトは、中国人留学生が日本の一員となる通過儀礼のようなものであるとはいえな いだろうか。

『文化人類学事典』における通過儀礼の説明は、以下のようになっている[石川、大林、

佐々木、 梅棹、蒲生、祖父江 1994:489]

人の一生は、1本の竹に似て、誕生、成人、結婚、死などいくつかの節がある。人は 出生以来この「人生の節」のひとつひとつを、それぞれの節に課された条件を満た しながら通過し、新しい役割や身分を獲得しつつ成長を遂げていく。その為、いか なる社会で、人生の折目の通過に際して、その平安を保障する目的で、それに応じ た一連の儀礼を行っている。こうした人生儀礼を一般に通過儀礼とよぶ。

ここで想定されているのは、「平安を保障する」という言葉に暗示されているように、

多くの成員がそこで生まれ、育ち、一生を終えるような伝統的な社会であろう。しかし、

人類学者の綾部真雄は、それを以下のように現代日本に応用している。20 歳で行う「形だ けの成人式」という儀礼があるのとは別に、大人になるための実質的な「成人儀礼」とし て日本人学生には「就活」があると論じている[綾部 2014:21-22]。この視点をさらに 拡大し、本論に即して言えば、日本人の「就活」が通過儀礼として見られているように、

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