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透過試験による複素比誘電率の算出

ドキュメント内 導電性・電磁波遮蔽性を有する (ページ 98-102)

第6章 炭素粉末を添加したモルタルの電磁波遮蔽性の予測手法

6.2 複素比誘電率による試験方法の評価

6.2.1 透過試験による複素比誘電率の算出

電磁波の伝播に関する電気的定数として,誘電率 と透磁率 があり,一般的にこれらの値は,

式(6.2.1)および(6.2.2)に示すように真空の値に対する比誘電率 ,比透磁率 で表現され る。

(6.2.1)

(6.2.2) ここに, :比誘電率 :誘電率 :真空中の誘電率( 8.854 10 F/m)

:比透磁率 :透磁率 :真空中の透磁率( 1.257 10 H/m)

誘電体であるモルタルは,電界が印加されると電気分極現象が起こる物質である。これを電気 的材料定数からみると,透磁率は次式で表される。

, 1

また,誘電率は損失が無い場合には実数として扱われるが,電波的に損失を持つ材料では,比 誘電率は複素数になり,複素比誘電率と呼ばれ,式(6.2.3)で表わされる。

’ ” (6.2.3) ここに, :複素比誘電率 ’:実数部 :虚数単位 ”:虚数部

透過試験における透過係数の算出方法を以下に示す1)

透過試験は図-6.2.1に示すように,境界面

b

および境界面

c

で接する

3

つの領域

1,2,3

が存 在しており,境界面

b

および

c

の各面において,式(6.2.4),(6.2.5)で与えられる値の反射と透 過が起こり,図中の矢印で示した各方向への進行波は,これら2つの境界面からの反射波および 透過波の合成として式(6.2.6)~(6.2.9)のように表される1)

(6.2.4)

2

(6.2.5)

ここに, :反射係数 :透過係数

:空気層の複素比誘電率 :モルタルの複素比誘電率

1 (6.2.6) :透過波 C の電界

(6.2.7) :反射波 D の電界

(6.2.8) :反射波 B の電界

(6.2.9) :透過波Eの電界

ここで,伝搬定数は,以下で与えられる。

図-6.2.1 透過試験の概念図1) 領域1

領域2

領域3 入射波A(=1)

透過波C

透過波E 反射波B

反射波D 供試体 L

境界面c 境界面b 空気層

11)

モルタル層 22)

空気層 11)

2

:モルタルの伝搬定数 :波長

これより反射波 と入射波 の比は,

1

とすると

1 (6.2.10) :境界面bでの透過係数

:境界面b,cでの反射係数

:境界面 b での透過係数 :虚数単位

:モルタル厚さ

となる。一方,透過波 と入射波 の比である透過係数 は,

1 (6.2.11) :境界面cでの透過係数

ここで, 1とすると, および は,

2

2

と表すことができ,透過試験の両アンテナ間に供試体を挿入した場合の透過係数は式(6.2.11)

により求めることができる。複素比誘電率の算出方法は,各周波数について,複素比誘電率の初 期値(任意)を入力し,式(6.2.11)から透過係数 を算出する。この透過係数 を用いて,

透過率 TSおよび位相差 θを式(6.2.12)および式(6.2.13)から算出する。計算値と

t=10mm

の 供試体で測定した透過率 TSおよび位相差 θの残差が設定した値以下になるように2次元のニュ ートン法を用いて複素比誘電率を導出した。図-6.2.2~4に各周波数で推定した気乾状態の複素 比誘電率を示す。炭素粉末添加率が大きいほど,また,周波数が高くなるほど,複素比誘電率を 求める解が収束せず,実数部および虚数部の推定が不可能となった。この傾向は含水状態が変化 しても同じ傾向を示した。そこで解が求まる周波数の範囲において,実数部と虚数部をそれぞれ 導出し,その平均値を各配合の複素比誘電率とした。

20 (6.2.12)

180

(6.2.13)

図-6.2.2 各周波数から推定した複素比誘電率(W/C=50% 気乾状態)

図-6.2.3 各周波数から推定した複素比誘電率(W/C=60% 気乾状態)

0 20 40 60 80 100

1 2 3

数部(εsre

周波数(GHz)

0%-Re 5%-Re 10%-Re 15%-Re 20%-Re W/C=50% 気乾

0 20 40 60

1 2 3

虚数部(εsim

周波数(GHz)

0%-Im 5%-Im 10%-Im 15%-Im 20%-Im W/C=50% 気乾

0 20 40 60 80 100

1 2 3

数部(εsre

周波数(GHz)

0%-Re 5%-Re 10%-Re 15%-Re 20%-Re W/C=60% 気乾

0 20 40 60

1 2 3

虚数部(εsim

周波数(GHz)

0%-Im 5%-Im 10%-Im 15%-Im 20%-Im W/C=60% 気乾

図-6.2.4 各周波数から推定した複素比誘電率(W/C=70% 気乾状態)

表-6.2.1に複素比誘電率の実数部 ,虚数部 ,誘電損失 の算出結果を示す。実数 部が誘電率,虚数部が損失に対応し,誘電損失は変位電流の大きさに対する導電電流の大きさを 表している。

表-6.2.1 透過試験による複素比誘電率の算出結果(供試体厚さ t=10mm)

含水状態

炭素粉末 添加率

(%)

実数部 虚数部 誘電損失

W/C

(%)

W/C

(%)

W/C

(%)

50 60 70 50 60 70 50 60 70

湿潤状態

0 13.07 12.81 12.00 2.68 2.05 2.30 0.21 0.16 0.19 5 20.62 23.18 22.37 5.20 4.24 5.87 0.25 0.18 0.26 10 38.87 42.59 40.35 13.24 13.56 11.87 0.34 0.32 0.29 15 55.31 65.53 78.94 24.61 32.56 32.13 0.44 0.50 0.41 20 83.29

- -

51.57

- -

0.62

- -

気乾状態

0 9.16 8.57 7.35 1.98 1.18 1.04 0.22 0.14 0.14

5 13.85 14.08 12.20 3.38 2.28 2.32 0.24 0.16 0.19

10 25.70 24.23 19.91 5.70 6.12 5.03 0.22 0.25 0.25

15 32.76 33.91 32.48 8.87 11.48 11.50 0.27 0.34 0.35

20 41.57 55.06 54.13 16.96 15.35 23.04 0.41 0.28 0.43

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