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簡易試験の実験結果と考察

ドキュメント内 導電性・電磁波遮蔽性を有する (ページ 80-84)

第5章 炭素粉末を添加したモルタルの電磁波遮蔽性

5.3 簡易試験の実験結果と考察

簡易試験の測定に先立ち,電子レンジの電磁波照射特性を確認するために予備試験を行った。

写真-5.3.1に電子レンジの中心に縦置きおよび横置きした供試体に電磁波を照射した際の温度分 布画像を示す。縦置きでは上部に比べて下部の温度が上昇しており,横置きでは供試体の中心に 比べて端部の表面温度が上昇している。これは,使用した電子レンジの電磁波照射特性が影響し ており,電磁波が下部へと集中し,かつ横から中心に向けて電磁波が照射した結果である。すな わち,本実験で用いた電子レンジでは図-5.3.1に示すような電磁波照射特性があると考えられる。

したがって,本研究では,供試体を電子レンジの中心に横置きし,電磁波の吸収による温度上昇 を評価する表面温度測定点を供試体の両端から

20mm

とし,2点の平均値を測定値とした。

入射波(EI) 反射波

透過 減衰

透過波(Et

)

図-5.2.6 透過試験の反射,透過概念

写真-5.3.1 電子レンジ照射後の温度分布 図-5.3.1 電子レンジの電磁波照射特性

図-5.3.2に,炉乾燥終了から

24

時間後(いずれの供試体も含水率

0.2~0.3%)に測定した炭素

粉末添加率と温度上昇量(電磁波照射前後の表面温度上昇量)の関係を示す。単位水量一定で水 セメント比を変化させた場合,いずれの水セメント比においても炭素粉末添加率が

15%までの範

囲においては,添加率の増加に伴って温度上昇量も直線的に増加した。W/C=50,60%の配合では 添加率

15%で温度上昇量のピークを示し,炭素粉末無添加のものに比べて約 40℃温度上昇量が増

加したが,それ以上炭素粉末を添加しても,温度上昇量はほぼ一定ないしは低下した。写真-5.3.2 に電磁波照射直後の温度分布画像を示す。電磁波照射後の温度分布は,予備試験の結果と同様に,

いずれの添加率においても電子レンジの電磁波照射特性によって供試体両端部で表面温度が上昇 しており,赤外線サーモグラフィーと放射温度計による温度測定結果とは概ね一致している。

図-5.3.2 炭素粉末添加率と温度上昇量の関係

図-5.3.3に水セメント比と温度上昇量の関係を示す。炭素粉末添加率

10%,W/C=60%の 1

点 を除くと温度上昇量は,炭素粉末添加率が同一であればほぼ同一の値を示すこと,同一水セメン ト比においては炭素粉末の添加率が大きいほど大きいこと,がわかる。このことから,温度上昇 量に影響を与える要因は炭素粉末添加率であり,水セメント比は影響を及ぼさないといえる。

縦置き 横置き

電子レンジ

20 40 60 80 100

0 5 10 15 20

温度上昇量(℃)

炭素粉末添加率(%)

W/C=50%

W/C=60%

W/C=70%

W=316kg

(添加率:0%) (添加率:5%) (添加率 10%)

(添加率:15%) (添加率:20%)

写真-5.3.2 簡易試験による電磁波照射直後の温度画像分布(W/C=50%)

図-5.3.3 水セメント比と温度上昇量の関係

簡易試験における温度上昇量は,第4章で検討した電気抵抗率の場合と同様に水と炭素粉末の 体積(VW+VCP

)に影響を受けると考えられる。そこで,図-5.3.4

V

W+VCPと温度上昇量の関係 を示す。図より,VW+VCPの増加に伴って温度上昇量は直線的に増加し,VW+VCP=450 ℓ付近で 最も大きくなる。供試体の表面温度の上昇が電磁波を吸収し,熱エネルギーに変換した結果であ ると考えると,温度上昇量が大きいほど電磁波を多く吸収したことになる。本研究においては,

W=316kg,炭素粉末添加率 15%で最も電磁波吸収量が多くなった。

20.0 110.0 °C

30 40 50 60 70 80 90 100

20.0 110.0 °C

30 40 50 60 70 80 90 100

20.0 110.0 °C

30 40 50 60 70 80 90 100

20.0 110.0 °C

30 40 50 60 70 80 90 100

20.0 110.0 °C

30 40 50 60 70 80 90 100

20 40 60 80 100 120

50 60 70

温度上昇量(℃)

W/C(%)

CP0% CP5%

CP10% CP15%

CP20%

W=316kg

図-5.3.4

V

W+VCPと温度上昇量の関係

次に簡易試験による温度上昇量が電磁波吸収以外の要因,特に試験体中の水分の影響を検討す るために,各含水率における温度上昇量を測定した。試験は炉乾燥による乾燥終了の

24

時間後の 温度上昇量を測定した後,試験体を恒温恒湿室に保存し,試験体の含水率が増加する状況下で,

各含水率の表面温度上昇量を測定した。

含水率と温度上昇量の関係を図-5.3.5に示す。図より温度上昇量は炭素粉末添加率

0, 5%では

含水率の増加とともにやや上昇ないしはほぼ一定値を保つが,炭素粉末の添加率が

10%以上では,

含水率の増加に伴って温度上昇量が減少する傾向を示した。電子レンジによる加熱の原理は,物 体の分子が電磁波による影響で振動し,熱エネルギーに変換されることによる。そのため,炭素 粉末添加率の小さい供試体では含水率の増加,すなわち水分子が増加することにより,表面温度 が上昇したと考えられる。一方,添加率の大きい供試体では水分子の挙動だけでなく,供試体中 の炭素粉末の存在が電磁波吸収性に影響を及ぼしていると考えられる。

図-5.3.5 含水率と温度上昇量の関係 20

40 60 80 100

300 350 400 450 500 550

度上昇量(℃

Vw+Vcp(ℓ)

W/C=50%

W/C=60%

W/C=70%

W=316kg

20 40 60 80 100

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

温度上昇(

含水率(%)

CP0% CP5% CP10%

CP15% CP20%

W/C=60%,W=316kg

炭素粉末を添加したモルタルの発熱原理は,誘電体であるモルタル中に炭素粉末が分散してお り,この材料の等価回路を考えた場合,図-5.3.6に示すような炭素粉末の抵抗と炭素粉末間(モ ルタル)の静電容量が複雑に連成した形としていると考えることができる。この材料に電界を加え ても,低い周波数ではほとんど電流が流れないため,抵抗による熱の発生はほとんど生じないが,

周波数が高くなると,周波数に反比例してコンデンサーのインピーダンス( 1⁄ )が小さくな るため,抵抗にも電流が流れ,抵抗体に熱が発生する誘電加熱8)の現象が生じる。モルタルの炭 素粉末添加率が増加すると温度上昇量が増加するのはこのような誘電加熱による現象と考える。

図-5.3.6 モルタル中の電気的な等価回路7)

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