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する流体力が表現できることを示した。

(3)第 4章においては,船体まわりの剥離渦層のモデ、ル化を行なった。操縦運動時の 船体の剥離線を推定することは非常に困難であるため,流れの可視化実験の報告 を参考にして,両舷のビルジ部に剥離線を仮定した。また,剥離渦層を離散的な 渦糸で置き換え,各船体横断面において流出した渦糸については,渦糸相互の影 響を考慮するために各渦位置での誘導速度を求め,その流出方向を決定した。そ の場合,できるだけ実際の流場に即した表現が行なえるように,それぞれの渦糸 の強さに時間的な減衰を考慮し,無次元旋回角速度の大きさに応じて減衰の度合 いを変化させることにした。また,各船体横断面において新たに発生する渦糸の 初期位置と剥離点との距離が問題になるが,本論文においては新たに sという係 数を定義し,吃水と係数 sの積でその距離を表現した。さらに,係数 sは船体 に作用する横力の船長方向分布に関係する重要なパラメータであると考えられる ため,剥離境界層の発達過程を簡単にモデル化しp 係数 sの値を船首より船尾方 向に向かつて船長方向に線形的に大きくしていく手法を提案した。とりわけ,船 体流体力の推定精度に対して大きな影響を及ぼすと考えられる, A.P.断面におけ る渦糸の初期発生位置を表わす係数 sα の値を変化させることで,本計算法を用 いた計算結果においても,船体まわりの流場の一般的な傾向を比較的良く表現で きることを示した。

(4)第 5章においては,実際の船型における係数 sα の値を調べるために, 6隻の計 算対象船型に対して第 2章 第 4章で述べた計算法を適用して,船体流体力の 推定計算を行なった結果を示した。偏角や無次元旋回角速度の大きい範囲におい ては,模型試験結果と推定結果との聞に多少定量的な差が生じた。本論文におい ては,船の運動によらず剥離点の位置を固定したまま船体流体力の推定計算を行 なったことが原因のーっとして挙げられるが,今後,特に旋回運動時の船体流体 力の推定精度向上のためにも,剥離点の仮定については検討の余地があると思わ れる。しかし,通常の船の操縦運動で考えられるような偏角および無次元旋回角 速度の範囲においては,定量的にも定性的にも比較的精度良く船体流体力を推定 することが可能であることを示した。また,本論文において取り扱った計算対象 船型に対する係数 αs の値を,(l‑CB)BjLという船型の特徴を表わすパラメー

タをベースにまとめた係数らの推定チャートを示した。この推定チャートの他 の船型への適用の可能性を調べるために,過去に東京大学の船舶航海性能試験水 槽において模型試験を実施したことのある VLCC船型に対して,本計算法を適 用して船体流体力の推定計算を行なった。そのとき,本章で提案した係数 sα の 推定チャートを用いて係数 αs の値を決定し,船体流体力の推定結果から針路安 定性指数を求め,針路安定判別の面から検討を行なった。針路安定性指数の模型 試験結果と推定結果との問に生じた定量的な差については問題が残ると思われる が,今後さらに数多くの船型に対して同様なアプローチで係数sα についてのデー タを収集することで,推定精度の向上が図れるものと考えられる。しかし, A船 型, B船型および C船型に対する模型試験結果においては,たとえ主要目が同 じであっても,局部的にフレームライン形状が異なることで

3

船型に対する針路 安定性に差が生じているが,本計算法を用いた推定結果においても同様な傾向が 見られ,定性的には,主要目に現われない局部的なフレームライン形状の違いを 考慮して,針路安定判別を行なうことが可能であることがわかった。また,本計 算法は針路不安定現象を検討するうえで,実用的な観点から有効な手法であると 考えられる。

以上のように,本論文においては,操縦運動時の船体に作用する流体力をフレーム ライン形状まで考慮して理論的に推定する手法について検討を行なった。本計算法は,

船体まわりの剥離渦層を離散的な渦糸に置き換えて表現しているため,その発達過程 を包括的に捉えることができる。また,本計算法を用いることで, CFDによる渦度分 布の計算結果と向精度の渦糸分布を非常に短い計算時間で得ることができ,その渦糸 分布の計算結果においては,船首渦や船尾縦渦に相当する密に集中した渦糸の分布が 確認できるため,比較的実際の流場に近い状態を表現することが可能で、あると思われ る。さらに,局部的なフレームライン形状の違いを渦糸分布の傾向に反映することも 可能である。

船体流体力の推定計算については,操縦運動が大きくなると,船体流体力の推定結 果と模型試験結果の問に若干定量的な差が生じたが,通常の船の操縦運動で考えられ るような偏角や無次元旋回角速度の範囲においては,比較的精度良く推定することが 可能であることを確認した。また,計算対象船型に対する船体流体力の推定結果をも

1 3 3  

とに針路安定判別を行なったところ,主要目に現われない局部的なフレームライン形 状の違いを考慮、して針路安定判別を行なうことが可能であることがわかり,本計算法 は,初期の設計段階において船の針路不安定現象を検討するうえで,実用的な観点か

ら有効な手法であると考えられる。

今後の研究課題は,偏角や無次元旋回角速度の大きい範囲における船体流体力の推 定精度の向上であり,そのためにも,船の運動と剥離位置の関係については検討を行 なう必要があると思われる。また,多くの船型に対する係数 αs の値を収集し,船の主 要目ベースの推定チャートを作成することも課題であると思われる。

謝 辞

本研究をまとめるにあたり,終始懇切丁寧なるご指導とご教示を賜りました九州大 学船舶海洋システム工学科教授貴島勝郎先生に心から感謝の意を表わし,厚くお礼申

し上げます。

また,本論文の作成にあたっては,九州大学工学部船舶海洋システム工学科教授中 武一明先生,九州大学工学部航空工学科教授桜井晃先生より懇切丁寧なご指導を賜

りました。心より感謝申し上げます。

さらに,終始暖かい激励と多くのご助言を賜りました九州大学工学部船舶海洋シス テム工学科助教授古川芳孝先生,九州大学工学部船舶海洋システム工学科勝野敏之 技官,名切恭昭技官,北海道大学水産学部海洋生産システム学科助手前川和義氏な らびに九州大学工学部船舶海洋システム工学科助手茨木洋氏に深く感謝いたします。

また,ディスカッション等を通して協力して頂きました博士後期課程2年 の 村 田 航 君,修士課程2年の江島光昭君,平川貴光君,渡遺航之助君,山本欽司君,そして 修士課程1年の岸本隆君,長久耕治君に深く感謝いたします。

その他にも本研究の実施にあたり,様々な形で多くの方々のご協力があったことを 記して,心からお礼を申し上げます。

135 

参 考 文 献

山 貴 島 勝 郎 : 安 全 性 , 日 本 造 船 学 会 誌 , 第

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p p .

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回シンポジウムテキスト

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5 7 8

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日本造船学会誌,第

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( 1 9 7 7 )

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1. 

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( 1 9 8 0 )

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[ 1 0 ]

日本造船学会:第

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( 1 9 8 1 ) .

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Kijima, K., Katsuno, T., Nakiri, Y. and Furukawa, Y. : On the Manoeuvring  Performance of a 

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( 1 9 9 0 )

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[ 1 2 ]

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[22]大 森 拓 也 , 藤 野 正 隆 , 宮 田 秀 明 , 金 井 誠:肥大船の操縦運動中の流場に関す る研究(第一報 斜 航 状 態 ),日本造船学会論文集,第176号(1994),pp.241‑250.  [23]大 森 拓 也 , 藤 野 正 隆 , 巽 圭 司 , 川 村 隆 文 , 宮 田 秀 明 : 肥 大 船 の 操 縦 運 動 中

の流場に関する研究(第三報定常旋回中の流場),日本造船学会論文集,第179号 (1996), pp.125‑138 

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[ 2 7 ]

日本造船研究協会:操縦運動時の船体周囲流場に関する研究,第

2 2 1

研究部会(第

1

年度)報告書

( 1 9 9 4 ) .

[ 2 8 ]

日本造船研究協会 :操縦運動時の船体周囲流場に関する研究,第

2 2 1

研究部会(第

2

年度)報告書

( 1 9 9 5 ) .

[ 2 9 ]

日本造船研究協会:操縦運動時の船体周囲流場に関する研究,第

2 2 1

研究部会(第

3

年度)報告書

( 1 9 9 6 )

[ 3 0 ]

別所正利:肋骨線に関する考察,日本造船学会論文集,第

1 2 2

( 1 9 6 7 )

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神 中 竜 雄 ; 船 体 の ま わ り の 流 線 の 計 算 法 に つ い て , 造 船 協 会 論 文 集 , 第

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( 1 9 6 5 )

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p p . 1 0 8 ‑ 1 1 4  

[ 3 2 ]

菅 信:船体まわりの流れの計算,日本造船学会論文集,第

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( 1 9 7 0 )

p p . 9 1 ‑ 1 0

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[ 3 3 ]  

Milne‑Thomson

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L.M.  : Theoretical Hydrodynamics, Dover PU山blicaiぬO

αn1

FifthEdition 

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p p . 1 5 7 τ

‑ 1 5 8

[ 3 4 ]

野中晃二:剥離渦層を流出しながら任意運動をしている物体に働く流体力,西部 造船会々報,第

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( 1 9 9 2 )

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[ 3 5 ]

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回シンポジウム テキスト

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種 子 田 定 俊 , 天 本 肇 :船の剥離渦(II),九州大学応用力学研究所所報,第

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[39]田 古 里 哲 夫 , 増 永 公明,岡本 恒 , 馬 場 信 義 : 肥 大 船 船 尾 ビ ル ジ 渦 に 関 す る 実 験的研究, 日本造船学会論文集,第123号(1968),pp.49‑58. 

[40]野 中 晃二 , 不破 健,二村 正:斜航模型船の表面圧力分布計測について,船 舶技術研究所研究発表会講演集,第36回(1980),pp.39‑42. 

[41]二村 正 , 野 中 晃 二 , 不 破 健 : 斜 航 船 体 ま わ り の 渦 度 分 布 計 測 に つ い て , 船 舶技術研究所研究発表会講演集,第38回(1981),pp.57 ‑60. 

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[43]奥 野 武 俊 , 木 下 民 法 : コ ン デ ン ス ミ ル ク 法 に よる船体まわりの流れの可視化,流 れ の 可 視 化 Vo.15supp ,.l (1985), pp.29‑34. 

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[47]永 野 三 郎 , 内 藤 政 彦 , 高 田 浩 之 : う ず 点 法 に よ る 長 方 形 柱 ま わ り の 流 れ の 解 析,

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[48]稲 室 隆二, 足立武司:うず放出モデルを用いたはく離を伴う非定常流れの一解法 (第2報単独円柱まわりの流れ),日本機械学会論文集(B編), 52巻476号(1986), pp.1600‑1607. 

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酢 見

コ 口 可

α1 (x) f"..Jα5(X)  Bieberbach変換(写像関数)に含まれる係数

a~ (x) f"..J α~(x α1f"..Jα5の船長方向の微分値 B : 船幅

B, B(y

, z ; t ) = O

船体表面を表わす方程式

b, b*  船体横断面において船体表面に引いた2次冗接線ベクトル C 方形係数

C 船体横断面に作用する横カ C :  積分定数

Cf"..J C 直進運動による撹乱を表わす単位複素速度ポテンシャルに

含まれる係数 d :船の吃水

dA  流体領域の中に設けた検査面 (Slab)の面素 d(x)  z軸横断面の Face側における吃水

dX1  流体領域の中に設けた検査面の厚さ

船体まわりの流場を表わす全複素速度ポテンシャル 11  直進運動による撹乱を表わす単位複素速度ポテンシャル

横運動による流場を表わす単位複素速度ポテンシャル 1;  横運動による撹乱を表わす単位複素速度ポテンシャル

剥離渦層による流場を表わす複素速度ポテンシャル F(X1)  流体領域の中に設けた検査面に作用する流体力

九(x) z軸横断面の Face側における渦糸の初期発生位置

1 撹乱流による運動量の直進運動成分 1 撹乱流による運動量の横運動成分

撹乱流による運動量の剥離渦層成分

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