本 研 究 で は 、 カ リ ッ ク ス[6]アレーンの機能化の基礎的アプローチとして、
1 ) コ ン ホ メ ー シ ョ ン 特 性 の 検 討 2)置 換 基 の 位 置 選 択 的 導 入 法 の 確 立 の 二 点 か ら 検 討 を 行 っ て き た。
第二章では、カリツクス [6Jア レ ー ン の コ ン ホ メ ー シ ョ ン 特 性 に つ い て 検 討 を
行 っ た と こ ろ 、 安 定 な コ ン ホ メ ー シ ョ ン が"1
ム
3‑altemate川構造で、あること、金属 添 加 に よ り 錯 化 し"cone"構造へと変化することが明らかとなった。このような、動 的 な 変 化 は 、 金 膏 添 加 を ト リ ガ ー と す る ア ロ ス テ リ ッ ク な ス イ ッ チ ン グ シ ス テ ム へ の 拡 張 等 に お い て 非 常 に 有 用 で あ る 。 更 に 、 水 酸 基 側 に コ レ ス テ リ ル 基 を掌入したカリツクス[6Jアレーンのコンホメーション異性が確認されたことで、
P置;呉基側からの反転(para‑substituent‑through‑the‑annulus rotation)の 明 確 な 証 拠 が 得られた。
第三章では、 1,3,5‑メチルー2,4、6‑teバーブチルエステルイ本のコンホメーションカf
凍 結 さ れ て い る と い う 従 来 の 説 は 誤 り で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ こ で 得 られたカリツクス[6Jア レ ー ン の 立 体 化 学 に 関 す る 知 見 は 、 今 後 カ リ ッ ク ス[6Jア レーンを基体とした分子設計を行う際の重要な指針となるであろう。
第 四 章 で は 、 置 換 基 の 位 置 選 択 的 導 入 注 の 確 立 に つ い て 検 討 を 行 っ た っ 様 々 な合成法(直接メチル化、脱メチル化法、保護ー脱保護法)を駆使し、カリック ス[6Jア レ ー ン を 出 発 原 料 と し た ひ メ チ ル 化 に お け る 全 低 置 換 誘 導 体 の 合 成 に 成 功 し た 。 更 に 、 残 存 す る 水 酸 基 の 特 性 に つ い て 比 較 検 討 を 行 っ た 。 全 メ チ ル 誘 導 体 に お い て 、 ベ ン ゼ ン 単 位 の 非 常 に 速 い 反 転 の た め 、 化 合 物 の 対 称 、 性 がlH̲ NルRス ペ ク ト ル の 分 裂 パ タ ー ン に 反 映 さ れ た 。 メ チ ル 誘 導 体 に 対 し て は 、 残 存 す る ヒ ド ロ キ シ ル 基 へ 機 能 性 の 置 換 基 を 容 易 に 導 入 す る こ と が 可 能 で あ る 。 つ まり、メチル基で、水酸基を保護していると考えると、カリックス[6Jアレーンに
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対しては「導入したい位置に導入したい数だけ」楼能性の官能基を配置するこ と可龍となった。
第五章では、実際にカリックス[6Jアレーン位置異性体(メチル誘導体)の残 存する水酸基に機能性官能基の導入を行った。全ての化合物の合成は、他の異 性体との混合物になることなく進行し、高収率で得られた。更に得られた誘導 体を用いて機能性分子における、位置異性と機能発現の相関関係を検討した。
具体的には、金属記位性を有する酢酸エステル基の導入を行い、その位置異性 と親和性を評価した。位置異性体間で、期待したような顕著な違いは観測され なかったが、今回の合成法が実際に応用できる極めて実用的な置換基導入法で あることは示された筈であるc
大量合成が可能なカリックスアレーン誘導体において、唯一C)対称性を有し 最大の潜在能力を有すると言われてきたカリックス [6Jアレーンであるが、これ までその柔軟性と精密な修苅の困難さから、その能力を発揮するまでには到っ ていなかった。しかしながら、第六章で示したようにメチル誘導体を出発原料 として用い、キシレニル基・メシチレニル基等により二点もしくは三点を架橋 することでカリックス[6Jアレーンのコンホメーションを制御することが可能と なった。いくつかの化合物については lH‑NルR のタイムスケールでは反転が確 認されず、極めて河IJ直な分子骨格の形成が実現された。
また非対称な架橋子を用いることで分子不斉カリックス[6Jアレーンを高収率 で合成することに成功したc 更にカリックス[6Jアレーン誘導体において初めて 光学分割に成功し、カリックス[6Jアレーンにおいて分子不斉をもっ化合物を合 成単離できることを明らかにした。光学分割されたそれぞれの鏡像体は熟異性 化実験においてもラセミ化が観測されなかった。これらの実験結果は極めて重 要な知見を与えてくれる、すなわちこれまでカリックス[6Jアレーンの立体化学 において議論の最大標的とされていたコンホメーションの固定の概念に関して、
"NMR time‑scale"における固定から、mpo凶 time‑scale"における固定へと明確な 実験的証拠を初めて示すことができたことになる。また、この化合物自身の存
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在が、カリックス[6Jアレーン;二分子不斉を導入可能であることを明確に証明し たことにもなる。今回の実験結果はカリックス[6Jアレーンの立体化学的議論に 一つの終止符を打つものであるコ今後、カリツクス[6Jアレーンを基体とした機 能性化合物を分子設計する際に、このような立体化学的知見は、極めて大きく 貢献することであろう。
三点架橋型のカリ ックス[6Jアレーン誘導体では、 lH‑N恥R測定、 NOESY測定、
分子力学計算(1vlM3)等によ り、そのコンホメーシヨンが固定されており、更にそ の特徴的な構造のため『閉じた空干しjを形成していることが明らかとなった。
第七章では、この三点架橋型のカリックス
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アレーン誘導体の包接挙動に関し て、 i)芳香環のπ電子、 u)架橋部位の酸素原子のローンペア、という 2つの特徴 的な電子源を巧みに利用することで、静電的相互作用・カチオンー π相互作用と い っ た 全 く 異 な る モ ー ド の 相 互 作 用 を 協 同 的 に 利 用 し て セ シ ウ ム イ オ ン の 高 選 択的な取り込みに成功したc し か も セ シ ウ ム イ オ ン と の 錯 体 は 極 め て 高 い 安 定 性を示し、錯化種-~日昔化種間の交換も極めて遅い。更にこの化合物はピクリン 鼓 ア ニ オ ン の 吸 収 を 利 用 し た 評 価 に お い て 、 全 て の ア ル カ リ 金 属 錯 体 に 関 し て 極 め て 大 き く 電 荷 分 離 し た 状 態 を と っ て い る 。 ま た 、 銀 イ オ ン ・アルキルアン モ ニ ウ ム イ オ ン に 関 し で も 極 め て 安 定 な 包 接 錯 体 の 形 成 が 確 認 さ れ 、 芳 香 環 に より形成された空孔(cavity)に由来する巧妙な選択性の先現が観jillされた。本研究で得られたの実敦結果!こよりカリックス[6Jアシーンの溶在能力の一部 を垣間見ること が出来たように思われる。 しかもそれを引き出すための実は、
まさに筆者の研究題目である
f
立体化学jで あ る と 思 わ れ る 。 こ れ ま で コ ン ホ メーションを制御することが困難で、あったカリックス[6Jアレーンであるカ人そ の立体的な特性が少しづっ任解かれるに連れて、異性イ本変換を利用したスイッ チング機能や今回の よ う な 固 定 に よ り 創 成 さ れ る 特 徴 的 な 杢 孔 を 利 用 し た 認 識 な ど 、 機 能 性 化 合 物 と し て の 沼 在 的 能 力 を 利 用 す る こ と が で き る よ う に ま で な ってきた。今 後 、 こ れ ま で に 得 ら れ た 知 見 を 基 に 更 に 高 度 か つ 精 密 な 楼 能 性 化 合物を、 カリックス[6Jア レ ー ン を 基 体 と し て 分 子 設 計 ・ 合 成 し て い く こ と が 可ー175‑
能である。
最 後 に 、 本 研 究 を 始 め た 当 初 、 カ リ ツ ク ス[4]アレーンに関しては非常に多く の 知 見 ( コ ン ホ メ ー シ ョ ン 異 性 ・ 位 置 選 択 的 置 換 基 の 導 入 ) が 得 ら れ て い た の に対し、カリックス[6Jア レ ー ン に 関 し て は 極 め て 僅 か な 情 報 し か 得 ら れ て い な い 状 況 で あ っ た 。 そ れ を 考 摩 す る と 、 四 年 間 と い う 短 い 期 間 に 、 カ リ ツ ク ス[6J ア レ ー ン に 関 す る 『 情 報
J
は 他 の 研 究 グ ル ー プ の 貢 献 も 含 め 、 爆 発 的 に 増 加 し たと言っても過言ではなし30 カ リ ッ ク ス ア レ ー ン に 関 す る 分 野 は 他 の 有 議 化 学 の 分 野 と 同 様 に 日 進 月 歩 、 急 速 に 発 展 し て き て い る 。 現 在 、 カ リ ッ ク ス[6]アレ ーンは、以前のカリックス [4]ア レ ー ン を 扱 う よ う な 感 覚 で 感 じ ら れ る よ う に な ってきている。しかしながら、いまだ、機能性分子へのスタートラインに立った のみある。本研究によりカリックス[6]ア レ ー ン の 議 龍 化 に 関 し て 、 そ の 立 体 化 学 及 び 位 置 選 択 的 置 換 基 の 導 入 法 に お い て 、 極 め て 有 用 な 戦 略 も 示 さ れ た 。 今 後、カリックス[6Jアレーン自身の膨大な港在能力を最大限にヲl
き出すような研 究 が 、 本 研 究 で 得 ら れ た 基 礎 的 知 見 を 礎 と し て 大 き く 開 花 す る こ と を 期 待 し たし30
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謝 辞
本 研 究 を 行 う に あ た り 、 終 始 懇 切 な る ご 指 導 を 賜 り ま し た 九 州 大 学 工 学 部 新 海 征 治 教 授 に 心 よ り 感 謝 の 意 を 表 し ま す。
本 論 文 を 執 筆 す る に あ た り 、 有 益 な ご 教 示 、 ご 助 言 を 頂 き ま し た 九 州 大 学 工 学 部 青 山 安 宏 教 授 、 藤 原 祐 三 教 授 に 深 く 感 謝 し ま す。
ま た 、 本 研 究 の 大 部 分 に お い て 直 接 ご 指 導 頂 い た 、 荒 木 孝 司 助 手 (現 九 州 工 業 大 学 助 教 授)に深 く 感 謝 の 意 を 表 し ま す。
九 州 大 学 工 学 部 研 究 員 パ ベ ル ・ ロ ー タ ク 氏 ( 現 チ ェ コ 、 プ ラ ハ 大 学 助 教 授 )
とのデイスカッションが本研究の遂行に役だったことを感謝しミたします。
本 研 究 に お い て 、 特 殊 ガ ラ ス 器 具 を 製 作 し て 頂 い た 九 州 大 学 工 学 部 堀 内 秀 毅 技 官 に 厚 く 感 謝 致 し ま すc ま た 、 種 々 の 測 定 に 関 し て 研 究 に 励 ん で 頂 い た 新 技術事業団新海包接認識プロジェクトの研究員、井口文明氏(現荒川化学)、
中嶋和昭氏 (現 福 岡 県 工 業 技 術 セ ン タ ー ) 、 原 田 孝 明 氏 ( 現 大 日 本 イ ン キ ) に
謝意を表します。
さ ら に 新 海 研 究 室 に お い て ご 指 導 下 さ い ま し た 九 州 大 学 工 学 部 浜 地 格 助 教 授 、 長 崎 健 助 手 ( 現 大 阪 市 立 大 学 助 教 授 ) 、 池 田 篤 志 助 手、竹 内 正 之 助 手 に感謝致します。ま た 、 研 究 遂 行 に あ た り ご 協 力 下 さ い ま し た 森山美 知 子 補 佐 員、後 藤 利 香 補 佐 員 、 安 武 孝 子 補 佐 員 な ら び に 新 海 研 究 室 学 生 諸 君 一 向 に 感 謝 いたします。ま た 、 研 究 に 際 し 便 宜 を 図 っ て 頂 い た 九 州 大 学 工 学 部 応 用 物 質 化 学科分子システム工学コース (旧合成化学科)の職員の皆様に感謝しヨたします。
最 後 に 、 筆 者 は 新 海 研 究 室 の 誕 生 と 同 時 に 四 年 生 と し て 配 属 さ れ、以 来 新 海 研 究 室 の 発 展 と と も に 、 研 究 で き た こ と を 幸 せ に 感 じ て い ま す。
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平成八年六月 筆 者