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第4節 結 百
麦イ乍期の圃場排水にともなう窒素流出の抑制方法についてシミュレーション 解析を行った.
まず, 窒素流出解析のため土壌構造タンクとマクロボアタンクを側面に配置 した圃場排水タンクモデルを構築し, 転換畑後の1984年麦作圃場と水田後の1 985年麦作圃場についてパラメータを同定した. それぞれのパラメータ値は前 作による土壌物理性と排水特性の違いを反映したものとなっており, 豊水年,
平水年, 渇水年の圃場排水に対するケーススタディにおいても妥当な結果を示 した.
次に, 圃場排水タンクモデルと第IV章で開発した窒素流出簡易評価モデルを 使って, 圃場排水特性の違いによる窒素流出特性と施肥方法の変更による窒素 流出特性についてシミュレーションを行った. その結果, 次のことが明らかに なった.
①作期内の総窒素流出量は圃場排水の総量よりむしろ, 圃場内の硝酸態窒素 量が最大となる施肥後60目前後の圃場排水量の影響を大きく受ける. そ のため, 圃場からの窒素流出の抑制のためには, 国場排水量の大きい時期 の圃場内硝酸態窒素量を低く抑えることが重要である.
②麦作圃場では, 分施による窒素流出抑制効果は期待できない. これは, 裏 イ乍では闘場排水の大部分が作期後半になる場合が多く, 分施によって圃場 内の硝酸態、窒素量の均等化を図ることは, 作期後半まで高い硝酸態窒素量 が存在することになり, むしろ窒素流出の増大につながることになる.
③基肥として硝化抑制剤入り化成肥料の施用は窒素流出抑制効果が大きい.
その効果は, 抑制率の増加とともに加速度的に増大する.
畑作圃場では圃場からの窒素流出抑制のためには施肥管理が重要である. 裏 イ乍圃場では分施による窒素流出抑制効果は期待できないことが示されたが, 夏
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作困場では降雨分布が作期前半の悔雨期に偏る場合が多いため, 分施の効果は あると考えられる.
また, 硝化抑制剤入り化成肥料の窒素流出抑制効果は緩効性肥料についても,
その特性から同様の効果が期待できるものと推察される.
なお, 本論で使用した窒素流出モデルでは作物吸収については強制的に岡場 内の栄養塩を吸収する構造となっており, 作物生育が施肥によって大きな影響 を受けない条件下での試算が可能であるため, 広域的水質管理のためのモデル として有効である. しかし, 土壌肥料学分野での作物生育を含めた合理的施肥 管理のためには, 栄養塩と作物生育の関係を考慮、したモデルの開発が必要であ
ろう.
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第VI章 総 括
農業
・農村地域の水質保全は,
生産環境の維持 ・保全上だけでなく, 水辺環境の景観価値を高め, 快適な農村の住空間整備のためにも重要な課題である.
従来より農村は, 環境浄化, 水質浄化の場として捉えられてきたこともあった.
しかし, 農地の生産性向上のため, 農薬, 化学肥料の多投によって入力負荷が 増大すると同時に, 農地の高度利用にともなう水田の畑転換が進められ, 農地 は負荷発生の場となってきた
水域の水質保全のためには, 合理的な水質保全計画のもとに発生負荷の削減 と自然の浄化機能を高めることが重要である. 特に農村地域においては, 大き な負荷発生源、である生活雑排水と農地に対する発生負荷削減対策が課題となる.
その中で, 生活雑排水の処理については農業集落排水事業によって着実に整備 がなされてきているが, 農地については発生負荷の定量的な把握の困難性と生 産性優先のため, 水質環境保全の観点から流出負荷の適正な管理が行われてい ない. このため, 農村地域の水質環境の悪化は近年著しくなってきており, 改
善の傾向はみられない.
今後の農業の発展のためには, 生産環境, 生活環境の整備 ・ 保全とあわせて 農地が農村地域内, さらには下流水域の水質環境に対して加害者とならないよ う, 農村地域内の水質管理を行う必要があろう.
そこで, 本論文では園場からの負荷流出の適正な管理のため, 特に畑作圃場 で問題となると思われる圃場からの窒素流出について, 佐賀平野の麦作園場を 対象に現地調査を行い, 窒素流出特性を明らかにしたうえで, 現象の定量的評 価のための数理モデルを構築し, さらに他作物や施肥条件への適用性と取り扱 い易さのため簡略な窒素流出モデ、ルへと改良を行った. また, 同時に圃場排水 モデルを開発し, これと窒素流出モデルを組み合わせて様々な圃場条件に対す る窒素流出量のケーススタディを行い, 窒素流出の抑制方策について検討を行
っfこ.
以下に, 各章について得られた結果を総括する.
第I章では, まず農業
・
農村地域の発生負荷源の1つである農地からの窒素,137
リンの流出特性について既往の知見を整理し, 次に水域水質の評価手法と水質 環境解析のため必要となるモデル解析手法について体系的にとりまとめた.
その結果, 水田と畑では窒素, リンの流出特性に違いがあり, 特に畑地では 窒素流出が問題となりその定量的把握が必要であること, 水域水質の評価につ いては具体的な水質障害の観点から植物プランクトンなど生物学的評価が重要 となること, また富栄養化現象のモデル解析のためには水域の優占種の特定が 重要となることなどを示した.
そのうえで本論文の位置付けを明らかにし, 研究フィールドの特徴をまとめ fこ.
第E章では麦作圃場からの排水にともなう窒素, リンの流出について2ヶ年 の調査を行い, その結果についていくつかの共通する特性を明らかにした.
園場排水のうち暗渠からの排水量が95%以上を占めること, かつ暗渠排水の 窒素濃度は地表排水の濃度とほぼ同等の傾向をもつことから, 作期内の総窒素 流出量のほとんどが暗渠排水によるものであることが明らかとなった. このこ とから, 畑作圃場では暗渠排水にともなう負荷流出の管理が重要であるといえ る. また, 暗渠排水の窒素水質の時期的濃度変動については一定の傾向を持っ ていることが 示された. すなわち, 窒素濃度は施肥後次第に上昇し, 2""'3ヶ 月後に40mg/lを越えるピークとなりその後低下し, 5mg/l以下で推移した.
また, 流出窒素の99%以上が硝酸態窒素であった. 暗渠排水の濃度ピークの時 期と濃度は主として園場排水の時期的パターンによって前後するものと推察さ れた. この現象をもとに圃場内の窒素挙動のうち硝酸態窒素の変動を捉えるこ とが必要と考え, 硝酸態、窒素の生成と減少を速度論的に考察した. つまり, 1
2月から2月の暗渠排水の窒素水質の上昇する期間は, 土層内微生物の増殖に よる有機化や作物吸収による硝酸態、窒素の減少速度よりむしろ硝化反応による 生成速度の方が優っているが, 圃場排水中の窒素濃度が低下する3月以降は土 層内の温度上昇とともに, 微生物の有機化促進と作物吸収速度の増大が硝化速 度を上回るものと考えられた. さらに, 3月以降の暗渠排水で流出する窒素は 降雨負荷と有機態窒素の分解 ・ 硝化を起源とする流出であると推察された.
また, 暗渠排水の一連続排水中の窒素, リン濃度の変動を2つのパターンに
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分類できることを明らか にし, 窒素流出量の把握のため には1回の排水につい て1点での測定では誤差が大きくなることを示した.
第田章では, 上述の現地調査結果に基づき園場からの窒素流出のモデル化を 行い, 園場内の窒素循環の定量的解析から硝酸態、窒素の変動に対する要因につ いて考察した.
現地困場レベルでは窒素循環に関与する非定常な影響因子が多数存在し, 現 場計測技術の問題と圃場の不均一性のため, 様々の状態変量の絶対的な量的把 握が困難なことがモデル構築の難しさとなる. 一方, 複雑な窒素循環のうちの 素過程についても現象が定量的に解明されていないものが多く存在する. この ため, モデル構築に当たっては, 過去の知見を参考 にして主要な反応プロセス を中心に土層内の窒素循環を概念化し, 数理モデルのパラメータは調査結果か ら推定できるもの, 文献値が参考となるものを極力多く採用するよう心がけた.
また, 土層を分割し各層に窒素循環をモデル化するレーヤーモデルは, 実用的 なモデル構築を念頭においた場合, 現在の計測技術と状態変数, パラメータ数 の増大とのギャップがさらに大きくなり, モデルの性格が不明確になる恐れが あるため, 対象画場の表層から暗渠深さまでをlボックスとして扱った.
モデルの主な特徴は, ①暗渠排水の窒素水質を土層内の硝酸態、窒素量に比例 するとしたこと, ②Mehran & Tanjiモデルの考え方を踏襲し, 反応の全てを 1次反応式で表現したこと, ③反応の温度依存にArrhenius員Ijを適用したこと,
④土層中の窒素形態を6つ の各態窒素で表現したことなどである. その結果,
圃場排水の窒素流出現象を満足できる精度で推定できるとともに, 土層内の窒 素循環の様相をよく表現することができた. このモデルは圃場排水の窒素水質 から得られる情報と既往の知見から圃場内の窒素挙動を推察することに基づい たものであるため, 麦作圃場からの窒素流出に関わる主要な反応を定式化した ものということができ, 他の現場適応に対しても有効であると考えられる. さ らに, 温度依存にArrhenius員iJを適用していることから, 反応を律速する酵素 反応が変わらなければ夏作の畑園場へも適用できる可能性がある.
また, モデル解析から土層中の硝酸態窒素の減少には作物吸収と圃場排水が 大きな影響を及ぼすことが明らかとなり, 圃場からの窒素流出の制御が水質保
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