本調査では、国内外の主要な企業の事業再編動向を調査し、好循環を生み出す事業再 編のあり方やその実現に向けたKFSなどを整理した上で、政策サイドへの期待や日本企 業に求められることを考察してきた。
今回の調査において検証することができた最大のポイントは、事業売却を含めた事業 再編は決して後ろ向きな企業行動ではなく、むしろ企業や従業員にとっての飛躍のチャ ンスともなり得るということである。
一般的に、事業売却、とりわけ「後手」に回った売却には、後ろ向きなイメージが付 きまとう。実際、売却の意思決定においても、売却先企業へと転籍していく従業員の待 遇においても、限られた選択肢しか残されない場合もある。しかし、今回の調査におい て、特に、一定の収益性や成長性がある「優良な状態」で事業を売却する場合には、自 社では中核から外れた事業であっても、売却先においては優先投資対象となる中核事業 として扱われることで、事業それ自体はもちろんのこと、従業員にとっても「新たな成 長の機会」となっていることが見受けられた。従業員については、さらに、転籍に伴う 売却先での待遇に関する交渉がし易いということも確認できた。
また、昨今活発に議論が行われているコーポレートガバナンスの強化、特に、多様な 経験を有する社外取締役の存在が事業再編を後押ししていることが確認できたのも大き なポイントであったと思われる。本編で述べたとおり、日本企業におけるコーポレート ガバナンスは変革の時を迎えているが、事業ポートフォリオを継続的に組み替えていく ためには、経験豊富な社外取締役を加えながら、ガバナンスの強化を積極的に進めてい く必要があると考えられる。
少子高齢化が進み、限りあるリソースをいかに効果的に配分するかが、企業のみなら ず国家全体の課題となっている。このような中で、日本企業が高い収益性を伴う持続的 成長を遂げていくためには、「自社の掲げる長期的なビジョンや長期戦略などの定性的な 基準や目標とする収益率や成長性などの定量的な基準に合致しない事業、仮に市場全体 が成長していたとしても自社では大きく成長させられる可能性が低い事業は、黒字事業 で今後も一定の収益性や成長性などが見込まれるとしても売却を進める。そして、そこ で得たキャッシュを自社が中核と位置づける事業の強化や将来の収益の柱として育てる 新規事業に振り向ける」という好循環を生み出す事業再編のあり方を意識し、行動を起 こしていくことが必要である。いよいよ本格化し始めた日本企業の変化を止めることな く、官民が連携して好循環を生み出す事業再編をさらに加速させていくことが、明日の 日本を創る確かな一歩となろう。
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社
平成 26 年度産業経済研究委託事業
(事業再編に係る国内外企業の動向調査)
別紙 資料編
平成27年3月31日
1.調査対象企業における事業再編動向の比較・考察 P3-19 2.各社の事業再編に関する調査結果 P20-153
日立製作所 P22-34
東芝 P35-47
パナソニック P48-60
ソニー P61-71
旭化成 P72-83
富士フイルム P84-94
General Electric P95-106
Siemens P107-118
Philips P119-130
DuPont P131-142
BASF P143-P153
3.再編にかかる日独の労働法制の比較 P154-164
4.再編と外部要因の関連性 P165-174
5.その他(討議用に外部から収集した資料) P175-191
目次
1 . 調査対象企業における
事業再編動向の比較・考察
3
1. 事業再編動向の比較・考察 調査対象企業
調査対象企業の選定の考え方と一覧
企業名 本社
設置国 業界
選定基準
多数の事業 セグメントを
有する
20年以内に事業再
編を実施した 象徴的な再編がある
1
日本 企業
日立 日本 電機
○ ○
【買収】HGST【撤退】HGST,火力発電事業、空調事業2 東芝 日本 電機
○ ○
【買収】ウェスティングハウス、ランディスギア【撤退】液晶事業
3 パナソニック 日本 電機
○ ○
【買収】三洋電機【撤退】ヘルスケア事業4 ソニー 日本 電機
○ ○
【買収】ソフト事業(MGM、EMI)【撤退】液晶事業
5 旭化成 日本 化学
○ ○
【買収】ゾールメディカル【撤退】食品事業、酒造事業
6 富士フイルム 日本 化学
○ ○
【買収】富山化学工業【撤退】-7
外資 企業
GE 米国 電機
○ ○
【買収】Honeywell等多数【撤退】プラスティック事業、放送事業(NBCU)
8 Siemens ドイツ 電機
○ ○
【買収】ヘルスケア事業の複数買収【撤退】自動車部品事業
9 Philips オランダ 電機
○ ○
【買収】GG【撤退】PolyGram、半導体事業10 DuPont 米国 化学
○ ○
【買収】Danisco【撤退】Conoco、医薬品事業
11 BASF ドイツ 化学
○ ○
【買収】農業・農薬事業【撤退】Knoll 、Basel
多数の事業セグメントを有し、20年以内に多数の事業再編を実施した業界として、総合電機業界、化学業界を選定し、その中で事業ポートフォ リオを組み替えている主要な企業(但しグループ内の金融会社を除く)を対象として調査した
1. 事業再編動向の比較・考察 調査に使用したデータ
5
分析 取得データ 対象 取得元 取得年数 備考
共通 事業再編データ
日本調査対象企業 レコフM&Aデータベース 19年間 1995-2014における再編のうち、取引 金額が0であるものを除外
日本企業の再編データは、データベー ス整備の関係上1996年以降のみ 取得
外資系調査対象企業 Thomson Reuters 20年間
連結売上高 調査対象企業 Bloomberg 20年間 −
参 考 情 報
各 企 業 分 析
セグメント別売上高
日本調査対象企業 SPEEDA・Bloomberg 最大20年間 −
外資系調査対象企業 各Annual Report 最大20年間 データ取得年数は各企業のAnnual Report取得可能年数により変動 連結営業利益 全調査対象企業 Bloomberg 20年間 −
連結従業員数 全調査対象企業 Bloomberg 20年間 −
主要なM&A詳細 全調査対象企業 各企業HP、書籍等 − 20年間のM&Aのうち、取引額1,000 億円以上の売却案件を中心に取得
全 体 傾 向 調 査
為替指数 円・ドル・ユーロ 国際決済銀行 20年間
1995-2014における各通貨の名目 実効為替レートを使用
対象期間の平均を基準値とし、各年 の名目実行為替レートと基準値を比 較して指数化
長期金利 日本・米国・ユーロ圏 Bloomberg 20年間 1995-2014における各国/地域の国債 金利を使用
景気指数 日本・米国・ユーロ圏
International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2014
20年間 1995-2014における各国/地域のGDP 実質成長率を使用
1. 事業再編動向の比較・考察 調査の観点
観点 内容
規模の 観点
件数
取得・売却件数の割合 調査対象企業における過去20年分の取得・売却件数の割合 売上高に対する取得・売却件
数指数 調査対象企業における過去20年分の取得・売却件数を売上高で割り返したうえ指数化
金額規模
取得・売却の金額規模別件数
割合 調査対象企業における過去20年分の取得・売却の金額別の件数割合 取得・売却金額総額対売上高
の割合 調査対象企業における過去20年分の取得・売却の総額を売上高で割り返した割合 取得・売却1件あたりの金額 調査対象企業における過去20年分の取得・売却の1件あたりの金額の平均
取得・売却1件あたりの金額の 対売上高割合
調査対象企業における過去20年分の取得・売却の1件あたりの金額の平均を売上高の 平均で割り返した割合
要因の 観点
経営効率との 関連性
再編件数と一人あたり営業 利益成長率との関連性
調査対象企業における過去20年分の再編件数と一人あたり営業利益額の20年間の成 長率との関連性
再編件数とROA成長率との関
連性 調査対象企業における過去20年分の再編件数とROAの20年間の成長率との関連性 経営環境との
関連性
経営環境変化時期と主要な 再編実行時期との関連性
調査対象企業における過去20年分の大型再編件数の時期と経営者交代及び 営業利益額変動時期の関連性
事業再編と業績 の関連性
主要な事業再編後の既存事業 の短期的な収益性傾向
調査対象企業における大規模再編案件の再編後の既存事業の収益成長傾向
(営業利益率/営業利益/売上高のいずれか)
再編事業と既存 事業の関連性
主要な再編対象事業と既存事 業の関連性の強弱の傾向
調査対象企業における大規模再編案件の再編対象事業と継続事業のセグメントの近さ の傾向
売却事業成長 との関連性
主要な売却案件における売却
後の事業成長傾向 調査対象企業における大規模売却案件の売却後の売上高成長件数割合
1. 事業再編動向の比較・考察 取得・売却件数の割合
7
会社別事業再編件数比較(19年平均)
18%
32%
71%
27%
39%
25% 36% 37% 45% 44%
36%
82%
68%
29%
73%
61%
75% 64% 63% 55% 56%
64%
DuPont 52
Philips 91
Siemens 169
GE 246
富士フィ ルム
12
旭化成 28
ソニー 110
パナソ ニック 東芝 BASF
128 34
日立
94 59
売却件数
日本企業 外資系 取得件数
617
7%
外資系 平均 38%
62%
日本企 業平均
406
31%
69%
取得・売却 件数割合
年平均 再編件数
日本企業は事業再編件数が相対的に少なく、特に事業売却が少ない
出所: Thomson Reuters、レコフM&Aデータ、Bloombergデータを元にデロイト トーマツ コンサルティング作成